「基礎控除が178万円に上がると聞いたけど、個人事業主の自分はいくら得するの?」——2026年分(令和8年分)の所得税から、基礎控除が最大104万円(旧48万円)に引き上げられます。課税最低限が103万円から178万円へと大幅に拡大し、約80%の納税者(年収665万円以下)が恩恵を受ける令和8年度最大の個人向け税制改正です。独自試算では、事業所得500万円のフリーランスで年間約16.8万円の節税になることが明らかになりました。
本記事ではEY Japan・PwC・KPMG・Nippon.comの英語圏公式情報と、辻・本郷税理士法人・税理士法人山田&パートナーズ・AGS税理士法人の日本語一次情報を横断して、事業所得規模別の年間節税額シミュレーション・青色申告との合算効果・今すぐやることを個人事業主・フリーランス目線で完全解説します。
【速報】基礎控除178万円引き上げの概要:2026年分から適用
令和8年度(2026年度)税制改正で成立した「年収の壁178万円引き上げ」の骨格は次のとおりです。
| 項目 | 改正前(令和7年分まで) | 改正後(令和8〜9年分) | 増加額 |
|---|---|---|---|
| 基礎控除(本則) | 480,000円 | 580,000円 | +40,000円(恒久) |
| 基礎控除(特例上乗せ) | なし | +420,000円 | +420,000円(令和8〜9年分限定) |
| 基礎控除(合計) | 480,000円 | 1,040,000円 | +560,000円 |
| 給与所得控除(本則最低額) | 650,000円 | 690,000円 | +40,000円(恒久) |
| 給与所得控除(特例上乗せ) | なし | +50,000円 | +50,000円(令和8〜9年分限定) |
| 課税最低限(給与所得者) | 1,030,000円 | 1,780,000円 | +750,000円 |
適用対象: 総所得金額が2,350万円(改正前は2,400万円)以下の方全員。年収665万円以下の方は特例上乗せを最大限受けられます。
適用時期: 2026年分(令和8年分)の所得税から。個人事業主・フリーランスは2027年2〜3月の確定申告で初めて恩恵を享受できます。
個人事業主・フリーランスへの特別インパクト:青色申告との合算
給与所得者の課税最低限が178万円になる一方、個人事業主(青色申告65万円控除あり)の非課税ラインはさらに高くなります。
| 属性 | 控除の合計額(令和8年分) | 事業所得がいくらから課税? |
|---|---|---|
| 給与所得者(会社員) | 給与所得控除74万円 + 基礎控除104万円 = 178万円 | 年収178万円超から |
| 個人事業主(白色申告) | 基礎控除104万円のみ | 事業所得104万円超から |
| 個人事業主(青色申告65万円) | 青色申告65万円 + 基礎控除104万円 = 169万円 | 事業所得169万円超から |
青色申告の個人事業主は控除の合計が169万円に達します。事業所得が169万円以下であれば、所得税は実質ゼロです。旧制度(113万円)と比べ56万円分の所得まで非課税ラインが拡大しました。
【独自試算】事業所得別・年間節税額シミュレーション
基礎控除の増加分(+56万円)に対して、所得税率と住民税率(一律10%)を掛け合わせた年間節税額を独自試算しました。令和8年分(2026年分)の確定申告から適用されます。
※前提: 青色申告65万円控除適用、社会保険料控除は変化なし、復興特別所得税(2.1%)を含む概算。住民税の基礎控除増加分(+4万円)は本則増加分のみで計算。
| 事業所得 | 課税所得(改正前) | 課税所得(改正後) | 所得税率 | 所得税削減額 | 住民税削減額 | 合計年間節税額 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 200万円 | 87万円 | 31万円 | 5% | 約28,000円 | 約56,000円 | 約84,000円 |
| 300万円 | 187万円 | 131万円 | 5% | 約28,000円 | 約56,000円 | 約84,000円 |
| 400万円 | 287万円 | 231万円 | 10% | 約56,000円 | 約56,000円 | 約112,000円 |
| 500万円 | 387万円 | 331万円 | 20% | 約112,000円 | 約56,000円 | 約168,000円 |
| 800万円 | 687万円 | 631万円 | 20% | 約112,000円 | 約56,000円 | 約168,000円 |
| 1,000万円 | 887万円 | 831万円 | 23% | 約128,800円 | 約56,000円 | 約184,800円 |
ポイントは所得税率が10〜20%台の事業所得400万〜1,000万円層で恩恵が大きいことです。事業所得500万円以上なら、基礎控除引き上げだけで年間約16〜18万円の節税が実現します。
試算ケース詳細:事業所得500万円のフリーランスの場合
| 計算ステップ | 改正前(令和7年分) | 改正後(令和8年分) |
|---|---|---|
| 事業所得 | 5,000,000円 | 5,000,000円 |
| 青色申告特別控除 | △650,000円 | △650,000円 |
| 基礎控除 | △480,000円 | △1,040,000円 |
| 課税所得(概算) | 3,870,000円 | 3,310,000円 |
| 所得税額(20%控除前) | 774,000円 | 662,000円 |
| 所得税額(▲427,500円控除後) | 346,500円 | 234,500円 |
| 復興特別所得税(2.1%) | +7,277円 | +4,925円 |
| 所得税合計 | 353,777円 | 239,425円 |
| 住民税(概算10%) | 387,000円 | 331,000円 |
| 所得税+住民税 合計 | 740,777円 | 570,425円 |
| 年間節税額 | ▲170,352円(約17万円削減) | |
2027年以降:物価スライド制でさらに控除が増える
今回の改正のもうひとつの柱が物価スライド制の導入です。令和9年(2027年)以降、基礎控除・給与所得控除の最低額は消費者物価指数(CPI)に連動して2年ごとに見直しされます。
日本のCPI上昇率が年1〜2%と仮定した場合のシナリオ試算:
| 時期 | 基礎控除(本則)想定額 | CPI前提 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 令和8〜9年分(2026〜2027年) | 580,000円 + 特例420,000円 = 1,040,000円 | − | 特例期間(現行) |
| 令和10〜11年分(2028〜2029年)想定 | 600,000〜620,000円(CPI+3〜7%試算) | +1.5%/年 | 特例終了・CPI連動開始 |
| 令和12〜13年分(2030〜2031年)想定 | 620,000〜650,000円(CPI+7〜12%試算) | +1.5%/年継続 | 物価高定着シナリオ |
特例期間(令和8〜9年分)終了後は、本則ベースに戻りながらも物価スライドで段階的に控除が拡大していく設計です。個人事業主・フリーランスにとって中長期的に有利な制度変更です。
個人事業主が今すぐやること:2026年版アクションプラン
基礎控除引き上げの恩恵を最大化するために、今すぐ実施すべきアクションを時系列でまとめました。
| 時期 | アクション | 目的 |
|---|---|---|
| 2026年4〜5月(今すぐ) | 会計ソフトを令和8年度改正に対応したバージョンに更新 | 基礎控除額の自動反映を確認 |
| 2026年4〜5月(今すぐ) | 青色申告承認申請が未提出なら至急提出(その年の3/15締切を過ぎた場合は翌年分から) | 65万円控除の適用資格確保 |
| 2026年12月 | 年間の事業所得を試算し、節税シミュレーションを再実施 | 小規模企業共済・iDeCoなど追加節税策の余地を確認 |
| 2027年1月 | 確定申告書の基礎控除欄が「1,040,000円」になっていることを確認 | 旧バージョンソフトでの誤入力防止 |
| 2027年2〜3月 | e-Tax(電子申告)で確定申告提出(青色申告65万円控除の要件) | 控除の最大化・75万円控除の要件(令和9年分〜)を先取り準備 |
freee会計で基礎控除を自動反映する方法
freee会計では、令和8年度改正に対応したアップデートが順次反映されます。確定申告書類作成時に基礎控除額が自動で「1,040,000円」(2026年分・所得2,350万円以下の方)として計算されることを確認してください。
よくある質問(Q&A)
Q1. 基礎控除104万円は2026年以降ずっと続きますか?
A. 特例上乗せ(42万円)は令和8〜9年分(2026〜2027年分)の2年間限定です。令和10年分(2028年分)以降は本則の62万円に戻り、その後はCPI連動で2年ごとに調整されます。令和8〜9年分の2年間が特例として最も恩恵が大きい時期です。
Q2. 事業所得が2,350万円を超える場合はどうなりますか?
A. 総所得金額が2,350万円超の場合、特例上乗せ(42万円)の適用はなく本則の62万円のみ(旧48万円からは14万円増)となります。さらに2,400万円超になると控除額が段階的に逓減し、2,500万円超でゼロとなります。
Q3. 住民税の基礎控除も変わりますか?
A. 住民税の基礎控除は所得税と別立てで、本則が43万円→47万円(+4万円)に引き上げられます。ただし特例上乗せは住民税にはありません。住民税の節税効果は、本則増加分の4万円×住民税率10%=年間4,000円が主な恩恵です(本記事の試算表では別途加算していないため、実際の節税額はさらに若干上乗せされます)。
Q4. 白色申告でも恩恵を受けられますか?
A. 基礎控除の引き上げは白色申告の個人事業主にも適用されます。ただし、青色申告特別控除(65万円)との合算ができないため、節税効果は青色申告者より低くなります。現在白色申告の方は、これを機に青色申告への切り替えを検討することで、基礎控除104万円+青色申告65万円=169万円の二重恩恵を受けられます。
Q5. 「iDeCoを増やすより基礎控除引き上げを待つべき」という考え方は正しいですか?
A. 基礎控除引き上げはすべての個人事業主に自動適用される「ベースライン減税」であり、iDeCoや小規模企業共済などの「追加節税策」とは併用できます(所得控除は加算方式)。基礎控除引き上げで浮いた税金をiDeCo掛金に充てることで、さらに節税効果を積み上げることが可能です。
まとめ:2026年は個人事業主にとって歴史的な減税年
令和8年度(2026年分)の基礎控除178万円引き上げは、個人事業主・フリーランスにとって申請不要で自動適用される過去最大規模の個人所得税減税です。
- 基礎控除が48万円→104万円に(56万円増加)
- 青色申告65万円との合算で169万円まで非課税(旧113万円から56万円拡大)
- 事業所得500万円のフリーランスで年間約17万円の節税
- 2027年以降はCPI連動で物価上昇に合わせて控除が自動調整
- 特例期間は令和8〜9年分(2026〜2027年分)の2年間が最大恩恵
今すぐやることは① 会計ソフトを最新版に更新して基礎控除1,040,000円が正しく反映されるか確認する、② 青色申告承認申請が未提出であれば早急に対応する、の2点です。
節税策のさらなる上積みを検討している方は、プロの税理士への相談や節税セミナーの活用も有効です。
本記事の内容は令和8年度税制改正大綱(2025年12月19日与党公表)に基づくものです。改正法案の審議・成立状況により内容が変更される場合があります。個別の税務判断については税理士等の専門家にご相談ください。


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