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土地等の負債利子とは?不動産所得の損益通算を自動判定

目次

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📌 この記事でわかること

  • 「土地等を取得するために要した負債の利子の額」とは何か、なぜ損益通算できないのか
  • 借入金が土地と建物にまたがる場合の按分ルール(措置法施行令26条の6・建物優先充当)
  • 入力するだけで損益通算できない金額を自動判定する内蔵ツール
  • 確定申告書・青色申告決算書への具体的な記載手順
  • 取得前に検討できる対応策と、実務上の注意点

アパートやマンションの賃貸経営で不動産所得が赤字になった場合、給与所得など他の所得と相殺する「損益通算」が使えます。ただし、赤字の全額が対象になるわけではありません。土地を取得するために借りたお金の利子にあたる部分は、租税特別措置法41条の4により最初から損益通算の対象から除かれます。本記事では、この「土地等を取得するために要した負債の利子の額」の考え方と計算方法を、借入金が土地と建物にまたがる場合の按分ルールまで含めて解説し、記事内蔵のツールでその場で非通算額を試算できるようにしました。

ぜいむたん
不動産所得の赤字を確定申告したら、税務署から「土地等を取得するために要した負債の利子の額」の欄を指摘されました。これって何ですか?経費にならないんですか?
イザーク
経費にはなるで。ただし赤字のときの「損益通算」の場面だけ、土地部分の利子は無かったものとして扱われるんや。租税特別措置法41条の4に書かれとる制限やね。順番に説明していくで。

土地等を取得するために要した負債の利子とは(損益通算の制限の内容)

不動産所得が赤字になった年に必要経費として計上した借入金利子のうち、土地(または土地の上に存する権利)の取得に対応する部分は、他の所得と損益通算する際に「生じなかったもの」とみなされます(租税特別措置法第41条の4第1項)。建物部分に対応する利子はこの制限を受けず、通常どおり損益通算の対象になります。

税理士法人での実務では、賃貸物件を新規取得したオーナーの確定申告で、この欄の記載漏れが真っ先に確認されるポイントの一つです。土地・建物の価額比率を確認せずに支払利息を全額必要経費に計上しただけで終えてしまうと、損益通算できる金額を実際より多く申告してしまう恐れがあります。

建物部分の利子との違い

同じ借入金の利子でも、建物取得に対応する部分には損益通算の制限がかかりません。収益を生み出すのは建物であり、土地は保有しているだけでは収益を生まない資産だという考え方が背景にあります(次章で解説)。この違いを踏まえずに「借入金利子は全額経費だから損益通算もできる」と考えてしまうと、申告後に修正を求められることがあります。

「個人の……各年分の不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額がある場合において、当該年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した金額のうちに不動産所得を生ずべき業務の用に供する土地又は土地の上に存する権利(次項において「土地等」という。)を取得するために要した負債の利子の額があるときは、当該損失の金額のうち当該負債の利子の額に相当する部分の金額として政令で定めるところにより計算した金額は、所得税法第六十九条第一項の規定その他の所得税に関する法令の規定の適用については、生じなかつたものとみなす。」(租税特別措置法第41条の4第1項)

なぜ土地の借入金利子だけが損益通算できないのか(制度の趣旨)

この制限は、土地は建物と異なり使用によって収益を生む資産ではないという考え方に基づき、土地投機に伴う借入金利子を使った損益通算での節税を抑える目的で設けられました。国税庁タックスアンサーNo.2250「損益通算」でも、不動産所得の損失のうち「土地等を取得するために要した負債の利子に相当する部分の金額」は損益通算の対象外と明記されています。

ぜいむたん
なぜ土地の借入金利子だけ特別扱いなんですか?建物の利子は経費になるのに……
イザーク
土地は貸したり使ったりしても、それ自体が収益を生み出す資産やないからや。建物は賃貸に出して家賃収入を生むけど、土地はあくまでその敷地でしかない。せやから土地の借入金利子だけ損益通算から外されとるんやで。

実務上の注意点として、この規定は「損益通算の場面」に限った制限であり、必要経費としての計上そのものを否定するものではありません。青色申告決算書や収支内訳書に記載する支払利息は、あくまで実際に支払った全額です。損益通算の可否を判定する際にだけ、土地対応部分を切り分ける必要があります。

【自動判定】損益通算できない金額の計算ツール

下記に不動産所得の赤字額・支払利息総額・土地と建物の取得価額・借入金総額を入力すると、租税特別措置法施行令26条の6の規定に沿って、土地等に対応する負債利子の額(損益通算できない金額)と、実際に他の所得と通算できる赤字額をその場で自動計算します。

損益通算 自動判定ツール

単位は「円」で入力してください(万円ではありません)。

本ツールは、借入金の使途が土地・建物で明確に区分できない場合の簡便法(措置法施行令26条の6第2項=借入金はまず建物の取得対価に充て、残額を土地等の取得対価に充てたものとする方法)で試算します。契約上、土地専用の借入れであることが明確な場合など、使途を直接区分できるときはその実額を優先してください。

初期値(不動産所得の赤字130万円、支払利息150万円、土地3,000万円、建物2,000万円、借入金5,000万円)で試すと、土地等に対応する借入金の割合は60%、土地等に係る負債利子の額は90万円となり、これが赤字130万円の範囲内におさまるため、損益通算できない金額は90万円、実際に他の所得と通算できる赤字額は40万円と算出されます。

ぜいむたん
このツール、建物を先に借入金でまかなったことにするんですね。土地を先に買った場合と結果が変わりそうです。
イザーク
ええ着眼点やな。実はそこが一番のポイントやねん。次の章で詳しく説明するで。

借入金が土地と建物にまたがる場合の按分ルール(措置法施行令26条の6)

一本の借入れで土地と建物をまとめて取得し、土地分・建物分の負債額を明確に区分できないときは、その借入金がまず建物の取得対価に充てられ、次に残った金額が土地等の取得対価に充てられたものとみなして計算することが認められています(租税特別措置法施行令第26条の6第2項)。

借入金の使途を直接区分できる場合

契約上、土地専用のローンと建物専用のローンが別々に組まれているなど、使途が明確な場合はそちらの実額を使います。この場合、上記ツールの「建物優先充当」の簡便法は使わず、土地専用ローンにかかる利子額をそのまま「土地等に係る負債の利子の額」として損失額と比較してください。

区分できない場合(建物優先充当ルールの影響)

ぜいむたん
うちの物件は土地と建物をまとめて一つのローンで買ったので、どっちに借入金を充てたかなんて区別してませんでした。それでも計算できますか?
イザーク
そういうケースの方が実務では多いくらいやで。その場合は、施行令が用意しとる簡便法を使えばええんや。借入金はまず建物の代金に充てて、余った分だけ土地に充てたことにする、という順番のルールやね。

条文の該当箇所(措置法施行令26条の6第2項)

「個人が不動産所得を生ずべき業務の用に供する土地等を当該土地等の上に建築された建物(その附属設備を含む。)とともに取得した場合(これらの資産を一の契約により同一の者から譲り受けた場合に限る。)において、これらの資産を取得するために要した負債の額がこれらの資産ごとに区分されていないことその他の事情によりこれらの資産の別にその負債の額を区分することが困難であるときは、当該個人は、これらの資産を取得するために要した負債の額がまず当該建物の取得の対価の額に充てられ、次に当該土地等の取得の対価の額に充てられたものとして……計算することができる。」

このルールで見落とされがちなのは、借入金の総額が建物の取得価額以下であれば、土地に対応する負債利子はゼロになるという点です。たとえば建物2,000万円・土地3,000万円の物件を、頭金で土地代を支払い、借入金1,500万円だけで建物部分をまかなった場合、借入金は全額建物に充当されたとみなされるため、土地等に係る負債利子はゼロとなり、支払利息の全額が損益通算の対象になります(上記ツールで土地3,000万円・建物2,000万円・借入金1,500万円と入力すると確認できます)。単純に「支払利息×土地の取得価額割合÷全体の取得価額」という按分だけで計算すると、この頭金の効果を見落として損益通算できない金額を過大に計算してしまうことがあるため注意してください。

関連する判断土地建物の按分計算ツール|3方式の比較と税負担の違いを試算

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具体的な計算例と確定申告書への記載方法

ここでは、上記ツールの初期値と同じ数値を使って、計算の流れと確定申告書への記載箇所を順に確認します。

計算例

項目金額
土地取得価額3,000万円
建物取得価額2,000万円
借入金総額5,000万円
年間支払利息150万円
年間賃貸収入300万円
利息以外の経費280万円
STEP
不動産所得を計算する

収入300万円-経費430万円(利息以外の経費280万円+支払利息150万円)=不動産所得△130万円(赤字)

STEP
借入金5,000万円は土地3,000万円+建物2,000万円ちょうどなので、建物優先充当でも土地の割合は取得価額どおり60%になる

土地に対応する借入金:5,000万円-2,000万円(建物)=3,000万円 → 割合60%(3,000万円÷5,000万円)

STEP
土地等に係る負債利子の額を計算する

支払利息150万円×60%=90万円

STEP
損益通算できる金額を計算する

赤字130万円のうち90万円は非通算、残り40万円のみ他の所得と損益通算できる

この例では、不動産所得の赤字130万円のうち、他の所得と損益通算できるのは40万円のみで、残り90万円は「生じなかったもの」とみなされます。

関連する判断不動産の付随費用 按分計算ツール|仲介手数料・登記費用を土地と建物に分ける

確定申告書への記載方法

支払利息の全額は青色申告決算書または収支内訳書の「支払利息」欄に記入し、そのうえで確定申告書第一表の「不動産所得」の下にある「うち土地等を取得するために要した負債の利子の額」欄に、ツールで算出した金額(この例では90万円)を記入します。

収支内訳書の記載箇所

収支内訳書の土地等を取得するために要した負債の利子の額の記載欄
出典:国税庁「確定申告書等の様式・手引き等」収支内訳書(不動産所得用)

白色申告(青色申告承認申請書を提出していない)場合は、この様式の該当欄に計算結果を記入します。

青色決算書の記載箇所

青色申告決算書の土地等を取得するために要した負債の利子の額の記載欄
出典:国税庁「確定申告書等の様式・手引き等」青色申告決算書(不動産所得用)

青色申告の場合は、この様式の該当欄に計算結果を記入します。国税庁の確定申告書等作成コーナーを利用すると、この欄に金額を入力するだけで損益通算の制限を自動的に反映してくれますが、最終的な申告書に正しく反映されているかは必ず自分の目で確認してください。

注意事項

この欄への記載を誤ると、本来損益通算できない金額まで通算してしまう可能性があります。土地等に係る負債利子として非通算とされた金額は、その年に「生じなかったもの」とみなされるため、翌年以降に繰り越すこともできません。

実務上できる対応と注意点

この規定そのものを回避する方法はありませんが、物件取得前の借入金の設計次第で、損益通算できない金額の大きさは変わります。特に効果が出やすいのは、上記の按分ルールで見たとおり、借入金をまず建物の取得に充てる形にできるかどうかです。

ぜいむたん
この規定に対して何か対策はありますか?
イザーク
物件を取得する前の資金計画の段階で検討できることがいくつかあるで。ただし個々の契約内容や資金使途の実態によって結論が変わるから、実行前に税理士に確認してほしいポイントやね。

対策の選択肢

土地等負債利子の対策一覧

  1. 頭金を土地代に充てる:借入金を建物取得の対価に優先して充当できれば、借入金が建物価額以下の範囲では土地等の負債利子はゼロになります
  2. 借入金の使途を契約上明確にする:土地専用ローン・建物専用ローンに分けて契約すれば、按分ではなく実額で判定できます
  3. 取得前に土地・建物の価額比率を確認する:土地の価額比率が高い物件ほど、借入金額次第で非通算額が大きくなりやすい傾向があります
  4. 取得前の専門家相談:資金計画の段階で税理士に確認しておくと、契約後の是正が難しい問題を避けやすくなります

これらはいずれも物件取得前の資金計画に関わる話であり、取得後に借入金の充当先を後から変更することはできません。すでに一括借入れで取得済みの物件については、上記ツールの「建物優先充当」の簡便法で試算したうえで、確定申告書への記載を確認する対応が現実的です。

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よくある質問(FAQ)

不動産所得が黒字の場合も、この規定の影響はありますか?

不動産所得が黒字の場合、この規定による影響はありません。土地等に対応する借入金利子も含めて、支払利息の全額が所得計算上の必要経費に算入されます。この制限は不動産所得が赤字で、かつ他の所得と損益通算する場面にのみ適用されます。

マンションの一室を購入した場合も計算が必要ですか?

はい、区分所有マンションの一室であっても同様の計算が必要です。売買契約書や重要事項説明書に記載された土地の持分価額と建物価額の比率を用いて按分します。記載がない場合は、固定資産税評価額の比率などを参考にする方法もあります。

土地を相続で取得し、建物だけ借入れで建てた場合はどうなりますか?

建物の建築にのみ借入金を充てたことが明確であれば、その借入金の利子は「土地等を取得するために要した負債の利子」には該当しません。不動産所得が赤字でも、支払利息の全額を他の所得と損益通算できます。土地取得のための借入金ではないことを、資金の流れで説明できるようにしておくことが重要です。

損益通算できなかった土地等の負債利子は、翌年以降に繰り越せますか?

いいえ、繰り越せません。租税特別措置法41条の4は、この部分の損失を「生じなかったもの」とみなす規定であり、青色申告の純損失の繰越控除の対象にもなりません。その年で損益通算できなかった金額は、その年限りで切り捨てられます。

まとめ:土地等負債利子の判定は借入金の充当順で変わる

「土地等を取得するために要した負債の利子の額」は、不動産所得の赤字を他の所得と損益通算する際の金額に大きく影響します。単純な取得価額の比率だけで按分すると、借入金が建物価額の範囲におさまっているケースなどで非通算額を過大に見積もってしまうことがあります。

STEP
制限の内容

不動産所得が赤字の場合、土地等に対応する借入金利子は他の所得と損益通算できない(措置法41条の4)

STEP
按分方法

使途を区分できない一括借入れは、借入金がまず建物、次に土地に充当されたものとして計算する(措置法施行令26条の6第2項)

STEP
非通算額の判定

土地等に係る負債利子の額が赤字額を超えるときは赤字額全体が、超えないときはその利子額が非通算になる(措置法施行令26条の6第1項)

STEP
申告方法

確定申告書第一表の専用欄と、青色申告決算書・収支内訳書の該当欄に記載する

不動産投資は長期的な視点で行うものであり、借入金の設計を含めた事前の資金計画が、その後の申告実務にも影響します。この記事のツールと計算例が、皆様の不動産所得の申告の一助となれば幸いです。

イザーク
土地と建物の按分は、確定申告のたびに毎年悩む人が多いポイントやで。ツールで一度計算しといて、翌年以降も同じ割合を使い続けられるようにしとくと楽やわ。今日の授業は終わり!また来てや!!

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この記事を書いた人

イザーク|公認会計士試験合格者

Big4監査法人・税理士法人での実務経験と財務省での勤務経験を持ち、不動産オーナーの確定申告や不動産所得の申告実務にも携わってきました。国税庁・財務省などの一次ソースに基づいて解説します。詳しい経歴はプロフィール・公認会計士試験受験記をご覧ください。

本記事は執筆時点の情報提供を目的としたものです。個別の取扱いは税理士・社会保険労務士等の専門家にご確認ください。
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