令和7年度税制改正によって、配偶者控除の「年収の壁」が103万円から123万円へ引き上げられました(令和7年12月1日施行・令和7年分から適用済み)。基礎控除の引き上げ(48万→58万円)と給与所得控除最低保証額の引き上げ(55万→65万円)というダブルの改正により、多くの共働き世帯・個人事業主世帯で節税チャンスが広がっています。
2025年12月の年末調整・2026年2〜3月提出の令和7年分確定申告では、新制度(123万円基準)が既に適用されています。本記事は2026年(令和8年)の年末調整・令和8年分確定申告(2027年2〜3月提出)を対象とした実務ガイドです。1年目の経験を踏まえ、書き方・計算方法・MFクラウド入力まで完全解説します。
ぜいむたん


【令和7年度税制改正】配偶者控除とは——何がどう変わったのか
配偶者控除とは、生計を一にする配偶者の年収が一定額以下の場合に、納税者本人の所得から38万円(70歳以上の老人配偶者は48万円)を控除できる所得税の制度です。控除を受けられると、本人の所得税・住民税の負担が軽くなります。
令和7年度税制改正(令和7年3月成立・令和7年12月1日施行)によって、配偶者控除の適用範囲が大幅に拡大しました。改正の仕組みを正確に理解するためには、「給与所得控除」と「基礎控除」の2つの改正をセットで押さえる必要があります。
令和7年度税制改正:3つの変更ポイント
55万円 → 65万円に引き上げ。給与年収162.5万円以下の全員に適用される底上げ改正。
48万円 → 58万円に引き上げ。納税者本人・配偶者の所得計算に影響する大きな改正。
配偶者の合計所得金額の上限が 48万円以下 → 58万円以下(給与年収換算で103万 → 123万円)に拡大。
改正前(令和6年分まで)は「配偶者の給与年収103万円以下(所得48万円以下)」が配偶者控除の条件でした。改正後(令和7年分以降)は「給与年収123万円以下(所得58万円以下)」が条件となりました。
なぜ103万→123万円になるのかを計算で確認しましょう。
- 配偶者の給与年収が123万円の場合、給与所得控除は65万円(最低保証・新制度)
- 給与所得 = 123万円 − 65万円 = 58万円
- 新制度の配偶者控除所得要件:58万円以下 → ぴったり適用される
令和7年度税制改正の施行日は令和7年(2025年)12月1日ですが、令和7年分(2025年分)の所得税から適用されます。2025年12月の年末調整・2026年2〜3月提出の令和7年分確定申告では既に新制度が使用済みです。令和8年分(2026年分)はその継続運用となります。「令和7年12月1日施行」を「令和8年分から適用」と誤解しないよう注意してください。
一次ソース:国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等」 / No.1190 配偶者控除






令和8年分 配偶者控除・配偶者特別控除の控除額一覧(新制度)
令和8年分(2026年分)の配偶者控除・配偶者特別控除は、令和7年分から引き続き新制度(123万円基準)が適用されます。控除額は本人(配偶者控除を受ける側)の合計所得金額によって変わります。
- 本人の合計所得金額 900万円以下:38万円(老人配偶者70歳以上は48万円)
- 本人の合計所得金額 900万超950万円以下:26万円(老人配偶者は32万円)
- 本人の合計所得金額 950万超1,000万円以下:13万円(老人配偶者は16万円)
- 本人の合計所得金額 1,000万円超:配偶者控除の適用なし
配偶者の年収が123万円を超える場合は「配偶者特別控除」が適用されます。配偶者特別控除は配偶者の所得が増えるほど控除額が段階的に減少し、配偶者の所得133万円超(給与年収約201.6万円超)で控除額ゼロとなります。
配偶者特別控除 控除額一覧(本人所得900万円以下・令和7年分以降)
(年収123万超〜133万円以下)
控除額:38万円
(年収133万超〜148万円以下)
控除額:36万円
(年収173万超〜183万円以下)
控除額:16万円
(年収約201.6万円超)
控除額:0円(適用なし)
詳細な控除額テーブルは国税庁「No.1195 配偶者特別控除」を参照してください。






配偶者年収別 節税シミュレーション(令和7年分以降の新制度ベース)
実際に改正前後でどう変わるのかを3つのケースで確認しましょう。本人(夫または妻)の合計所得金額は900万円以下を前提としています。
ケース①:配偶者年収110万円(103万円超・旧制度の壁を超えていた世帯)
旧制度(令和6年分まで)では、配偶者年収110万円の場合の給与所得は「110万円−55万円(旧最低保証)=55万円」。所得48万円超のため配偶者控除は受けられず、配偶者特別控除(所得55万円台・控除額38万円)が適用されていました。
新制度(令和7年分以降)では、給与所得は「110万円−65万円(新最低保証)=45万円」。所得58万円以下となり、配偶者控除38万円が適用されます。
ケース①まとめ:配偶者年収110万円
旧制度(令和6年分まで)
配偶者特別控除
38万円
新制度(令和7年分以降)
配偶者控除
38万円
※控除額は同じ38万円でも、記入する申告書の欄が変わります。年末調整では「配偶者特別控除額」欄→「配偶者控除額」欄へ移行。
ケース②:配偶者年収150万円(新制度で控除額が大幅アップ)
旧制度では:給与所得=150万円−55万円=95万円 → 配偶者特別控除21万円(所得86万超96万以下の区分)。
新制度では:給与所得=150万円−65万円=85万円 → 配偶者特別控除31万円(所得78万超88万以下の区分)。
控除額が21万円→31万円に増加(10万円アップ)。所得税率が20%の場合、年間税負担が約2万円軽減されます(住民税効果を合わせると約3万円超)。
ケース③:配偶者年収200万円(改正の恩恵は限定的・上限近辺)
給与年収200万円の場合、給与所得控除は「200万円×30%+8万円=68万円」(旧新制度共通・最低保証65万円より大きいため変わらず)。
給与所得=200万円−68万円=132万円。所得133万円以下のため配偶者特別控除の対象内ですが、123万超133万以下の区分は控除額が少額です。200万円年収帯では改正の恩恵は限定的であり、最も恩恵が大きいのは「旧103万〜新123万円の壁エリア」(年収103〜123万円の配偶者)です。
今回の改正は所得税・住民税の控除要件の変更です。社会保険(健康保険・厚生年金)の扶養認定基準(いわゆる106万円・130万円の壁)は別の制度であり、今回の改正では変わっていません。配偶者を社会保険の扶養に入れたい場合は、勤め先の人事・社会保険担当者に確認してください。






2026年(令和8年)年末調整での配偶者控除の書き方【ステップ別実務手順】
令和8年分(2026年分)の年末調整は2026年12月に実施されます。使用する様式は「給与所得者の配偶者控除等申告書(令和8年分)」です。以下のステップで正確に記入しましょう。
給与のみの配偶者
→ 年収−65万円(新最低保証)=給与所得。他に所得があれば合算
事業所得のある配偶者
→ 事業収入−必要経費=事業所得。青色申告特別控除も適用可
所得58万円以下(年収123万円以下)
→ 配偶者控除欄に記入(38万円)
所得58万超〜133万以下(年収123万超〜201.6万以下)
→ 配偶者特別控除欄に段階的控除額を記入
申告書の右側に「あなたの本年中の合計所得金額の見積額」の欄があります。自身の合計所得金額(給与所得+事業所得等)を記入し、900万円以下・900万超950万以下・950万超1,000万以下の区分を確認。区分に応じた控除額が自動決定されます。
配偶者の給与収入がわかる書類(源泉徴収票の見込み額・給与明細の合計など)を準備。年収から給与所得控除65万円(年収162.5万円以下の場合)を引いて給与所得を計算します。
「給与所得者の配偶者控除等申告書(令和8年分)」の「配偶者の合計所得金額の見積額」欄に計算した金額を記入。58万円以下なら「配偶者控除の額」欄、58万円超なら「配偶者特別控除の額」欄に該当額を記入します。
MFクラウド年末調整を利用している場合は、配偶者の給与収入額を入力すると控除額が自動計算されます。「配偶者控除」か「配偶者特別控除」かの判定も自動で行われるため、誤記入を防げます。令和7年度改正(123万円基準)には既に対応済みです。
記入した申告書を勤務先の経理・人事担当者に提出します。提出期限は通常11月末〜12月上旬(勤務先による)。提出後に配偶者の年収が見積額を大きく超えた場合は翌年の確定申告で調整が必要です。
「配偶者の年収110万円だから配偶者特別控除」と思い込み、特別控除欄に記入してしまうケースが多発しています。新制度(令和7年分以降)では年収110万円の配偶者は所得45万円(58万円以下)となり、「配偶者控除」の欄に記入するのが正しいです。前年の申告書をそのまま流用しないよう注意してください。






令和8年分 確定申告で配偶者控除を受けるには(2027年2〜3月提出)
個人事業主・フリーランスや、給与所得者でも年末調整を受けられなかった方は、令和8年分の確定申告(2027年2〜3月提出)で配偶者控除・配偶者特別控除を申告します。
e-Tax(確定申告書等作成コーナー)での入力方法
国税庁の確定申告書等作成コーナー(e-Tax)では、「所得控除の入力」→「配偶者控除・配偶者特別控除」から申告できます。
配偶者の令和8年分の源泉徴収票(給与収入の場合)または決算書(事業所得の場合)を手元に用意。年末確定の実額で計算します(年末調整時の見積額ではなく確定額)。
e-Tax の入力ガイドに従い「配偶者の合計所得金額」を入力すると、配偶者控除か配偶者特別控除かが自動判定されます。本人の合計所得金額も入力することで、控除額が自動計算されます。
MFクラウド確定申告を利用している場合は、「所得控除」メニューから「配偶者控除・配偶者特別控除」を選択し、配偶者の収入金額を入力するだけで所得計算・控除額判定が自動実行されます。改正後の65万円給与所得控除にも自動対応しています。
個人事業主・フリーランスが注意すべきポイント
個人事業主の方が配偶者控除を受ける場合、配偶者の所得の種類と計算方法に注意が必要です。
- 配偶者が給与所得者の場合:給与収入−65万円(最低保証・令和7年分以降)=給与所得
- 配偶者が青色申告者の場合:事業収入−必要経費−青色申告特別控除(最大65万円)=事業所得
- 配偶者が白色申告者の場合:事業収入−必要経費=事業所得(青色控除なし)
- 配偶者に複数の所得がある場合:全所得を合算した「合計所得金額」で判定
- 配偶者控除対象外:本人と生計を一にしていない・事業専従者として給与を受けている配偶者
青色申告の個人事業主が配偶者に青色事業専従者給与を支払っている場合、その配偶者は「事業専従者」として扱われるため、配偶者控除・配偶者特別控除の対象外となります。専従者給与を支払いながら配偶者控除も申請するのは二重取りで誤りです。必ず確認してください。






配偶者控除 よくある疑問・ミス3選(令和8年分対応)
令和7年分の年末調整・確定申告で実際に多かった疑問・ミスをまとめました。令和8年分でも同様のポイントに注意が必要です。
よくあるミス①:旧制度(103万円)のまま判断してしまう
「配偶者の年収が108万円だから配偶者控除は受けられない」と思い込んでいるケース。令和7年分以降は年収123万円以下(所得58万円以下)なら配偶者控除38万円が受けられます。旧制度の感覚が抜けていない方は要注意です。
よくあるミス②:配偶者の所得計算で「65万円控除」を忘れる
年末調整申告書の「配偶者の合計所得金額の見積額」欄に、給与年収をそのまま書いてしまうケース。記入するのは「所得金額」(年収−給与所得控除後の金額)です。年収123万円なら所得は58万円と記入します。給与収入をそのまま書くのは誤りです。
よくあるミス③:年途中の収入増加を申告しない
年末調整時点では「123万円以内に収まる見込み」で申告したが、12月の残業代・賞与で123万円を超えてしまったケース。この場合、翌年に確定申告で修正申告が必要です。超過分については延滞税・加算税の対象となりますので、年末に向けて配偶者の収入を注意深く管理しましょう。






よくある質問(FAQ)
- 配偶者がパートで年収120万円——令和7年分から配偶者控除38万円が受けられますか?
-
はい、受けられます。令和7年分(2025年分)以降の新制度では、配偶者の給与年収が123万円以下(給与所得65万円以下→所得58万円以下)であれば、本人(配偶者控除を受ける側)の合計所得金額が900万円以下の場合に38万円の配偶者控除が適用されます。年収120万円の給与所得は「120万円−65万円=55万円」で58万円以下のため、配偶者控除の対象です。2025年12月の年末調整または2026年2〜3月の令和7年分確定申告で既に適用できています。
- 配偶者が青色申告している個人事業主の場合、配偶者控除はどう計算しますか?
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青色申告者の配偶者の所得は「事業収入−必要経費−青色申告特別控除(最大65万円)」で計算した「事業所得」が合計所得金額の基礎となります。青色申告特別控除後の事業所得が58万円以下であれば配偶者控除(38万円)の対象となります。なお、配偶者に青色事業専従者給与を支払っている場合は、その配偶者は事業専従者扱いとなるため配偶者控除・配偶者特別控除は受けられません。この点は税務調査でも確認されるポイントのため必ず正しく処理してください。
- 本人の年収が1,000万円を超える場合、配偶者控除は受けられますか?
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受けられません。配偶者控除・配偶者特別控除には、控除を受ける側(本人)の所得制限があります。本人の合計所得金額が1,000万円超の場合は配偶者控除も配偶者特別控除も適用されません(控除額ゼロ)。本人の合計所得金額が900万超950万円以下の場合は控除額が26万円(配偶者控除)、950万超1,000万円以下の場合は13万円に段階的に減額されます。
- 配偶者特別控除と配偶者控除は同時に申請できますか?
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いいえ、同時には申請できません。配偶者控除と配偶者特別控除はどちらか一方のみ適用されます。配偶者の合計所得金額が58万円以下なら配偶者控除、58万超133万以下なら配偶者特別控除という区分けです。なお、本人が配偶者控除(または配偶者特別控除)を受ける年分において、配偶者自身も本人を「配偶者控除の対象」とすることはできません(相互適用は不可)。
- 年収123万円の基準はいつ確定しますか?年途中に収入が増えたら?
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年収の確定はその年の12月31日時点です。年末調整では「見込み額」で申告しますが、最終的には確定した年収で判断されます。年途中にパート時間が増えて123万円を超えてしまった場合は、翌年の確定申告で正しい控除額(配偶者特別控除)を申告して過不足を精算します。年間を通じて配偶者の収入を把握する習慣をつけ、超過しそうな場合は年末前に勤務時間を調整するか、確定申告での修正を前提に計画しましょう。






配偶者控除 令和7年改正まとめ:3つのポイントと実務アクション
基礎控除(48万→58万円)と給与所得控除最低保証(55万→65万円)のダブル引き上げにより、配偶者年収123万円以下(所得58万円以下)まで配偶者控除38万円が適用されます。令和8年分(2026年分)でも同じ基準が継続されます。
令和8年分の年末調整(2026年12月)は新制度2年目。配偶者の実際の年収をもとに所得計算し、「配偶者控除」か「配偶者特別控除」かを正確に判定して申告書に記入します。前年の申告書の流用はミスのもと。必ず当年の収入で再計算してください。
MFクラウド確定申告は令和7年度改正に完全対応。配偶者の収入を入力するだけで控除額を自動計算し、基礎控除58万円も自動適用されます。個人事業主の方も年末調整のない分、確定申告での正確な入力が節税の鍵です。
所得税・住民税の観点では年収123万円まで配偶者控除38万円が受けられるようになりました。「103万円に抑えてきた」配偶者は、収入を増やすことで世帯手取りを増やせる可能性があります。ただし社会保険の扶養要件(106万円・130万円)は別ルールのため、勤務先の制度と合わせて判断してください。



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この記事の監修
公認会計士試験合格者が在籍。税務・会計の実務経験に基づき、正確な情報提供を心がけています。
公認会計士試験合格者在籍、Big4監査法人・税理士法人での実務経験、財務省勤務経験
免責事項
本記事の内容は情報提供を目的としたものであり、特定の税務判断を推奨するものではありません。具体的な税務・会計の判断については、必ず税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。記事の内容は執筆時点の法令・制度に基づいています。


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