会社設立後にやるべき手続き




法務局への届出
会社設立には定款の認証と設立登記が必要です。ほとんどの場合、司法書士に依頼することになります。定款には決算期や事業目的を記載します。
ポイント:定款に記載されていない事業は法律上できないことになっているため、事業目的は広めに設定しておくことをお勧めします。
会社設立後に必要な税務署への届出一覧
従業員10人未満の場合、申請により半年に1回の納付で済みます。資金繰りや手間の軽減に役立ちます。
一度提出すれば無期限有効となり、申告期限を1ヶ月伸ばすことができます。国税と地方税の両方に提出が必要です。他の記事で解説しています。


法人の場合、少額資産の一括経費化や欠損金の繰越控除などの恩恵を受けられます。提出期限を過ぎると翌期以降の適用になるため注意が必要です。
役員報酬を含む給与の支払者は提出が必要です。本店移転などの場合は変更届も必要となります。
法人の代表者や法人番号等の情報を国指定の様式で提出します。東京都の場合は国と都の2か所、その他の地域では国・県・市の3か所に提出が必要です。
インボイス制度の番号を取得するための申請です。登録しないと取引上不利になる可能性があります。
e-Tax(国税)とeLTAX(地方税)の両方の利用者識別番号を取得します。現在は電子申告が原則となっています。






社会保険の手続きはいつまで?必要な届出と期限まとめ
従業員を初めて雇う場合の届出チェックリスト
届出名 | 提出期限 | 提出先 |
---|---|---|
雇用保険適用事業所設置届 | 従業員雇用後10日以内 | ハローワーク |
雇用保険被保険者資格取得届 | 従業員雇用後10日以内 | ハローワーク |
労働保険関係成立届 | 従業員雇用後10日以内 | 労働基準監督署 |
労働保険概算保険料申告書 | 従業員雇用後50日以内 | 労働基準監督署 |
健康保険・厚生年金被保険者資格取得届 | 従業員雇用後5日以内 | 年金事務所 |
労働基準法に基づく適用事業報告 | 従業員雇用後遅滞なく | 労働基準監督署 |
36協定(時間外・休日労働協定届) | 時間外労働をさせる前 | 労働基準監督署 |
就業規則(10人以上の場合) | 作成後遅滞なく | 労働基準監督署 |
新規適用届出を管轄年金事務所に対して設立から5日以内に提出する必要があります。従業員がいない場合でも、役員だけの会社でも適用届出の提出は必須です。多くの経営者が見落としがちなポイントです。
健康保険法第48条 適用事業所の事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、被保険者の資格の取得及び喪失並びに報酬等に関する事項を厚生労働大臣に届け出なければならない。
出典: 健康保険法第48条(届出等)






役員報酬の決定
設立後3カ月以内に株主総会を開催し、役員報酬の額を決定する必要があります。実務的には株主総会を実際に開催しないケースも多いですが、税務調査に備えて株主総会議事録は必ず用意しておきましょう。
重要:役員報酬は、後述の事前確定を除けば、原則として毎月同額支給しなければ経費として認められません。役員報酬の変更は事業年度開始から3カ月以内に1回のみ可能です。


【年間カレンダー付】法人経理の年間スケジュール






事業年度と決算期
事業年度とは、企業や個人事業主が決算書を作成する対象となる一定の期間のことです。
区分 | 事業年度 | 決算期 | 申告期限 |
---|---|---|---|
法人 | 定款で定めた1年間(例:4月〜3月) | 事業年度の最終月(例:3月) | 決算期から2か月以内(例:5月末) |
個人事業主 | 1月〜12月 | 12月 | 翌年3月15日まで |
中間申告・予定納税
個人も法人も一定の場合には事業年度の途中に税金を納める必要があります。






年間スケジュール図解
- 事業年度スタート(新年度)
- 役員報酬の決定・変更(3ヶ月以内)
- 算定基礎届(7/10まで)
- 労働保険年度更新(7/10まで)
- 中間申告・納付(原則11/30まで)
- 年末調整(1/31まで)
- 償却資産税申告(1/31まで)
- 法定調書合計表提出(1/31まで)
- 決算作業
- 棚卸
- 決算書作成
- 法人税等確定申告(5/31まで)
- 法人住民税・事業税申告(5/31まで)
- 消費税確定申告(5/31まで)
- 固定資産税納付
法人と個人事業主の決算期の違い
法人の場合(3月決算の例):
4/1(期首)→ 11/30(中間申告)→ 1/31(年末調整・償却資産税申告(※))→ 3/31(決算期)→ 5/31(申告期限)
個人事業主の場合:
1/1(期首)→ 7/31(予定納税①)→ 11/30(予定納税②)→ 12/31(決算期)→ 3/15(申告期限)





従業員雇用時の必要手続きと期限まとめ






雇用保険関連届出
- 保険関係成立届出(労働基準監督署へ、設立から10日以内に提出)
- 雇用保険適用事業所設置届(ハローワークへ提出)
- 雇用保険被保険者資格取得届(ハローワークへ提出)
- 労働保険概算保険料申告書(労働基準監督署または都道府県労働局へ提出)
健康保険・厚生年金保険関連届出
従業員を雇用後5日以内に「健康保険・厚生年金被保険者資格取得届」を提出する必要があります。また、従業員が退職した場合には「資格喪失届」の提出も必要です。



労働基準法関連届出
従業員を雇用する場合、業種を問わず「労働基準法に基づく適用事業報告」を提出する必要があります。
36協定と就業規則
使用者は、・・・労働者に、休日労働をさせ、又は一日について八時間、一週間について四十時間を超えて労働させる場合においては、労働組合・・・との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、・・・その協定で定めるところによつて労働させることができる。
出典: 労働基準法第36条(時間外及び休日の労働)






また、従業員を10名以上雇用する場合には、就業規則を作成して労働基準監督署に届け出なければなりません。就業規則の内容は労働基準法に従う必要があります。
源泉所得税・住民税の納付
納付特例を利用していない場合(または従業員が10名以上の場合)、毎月10日までに前月分の源泉所得税と特別徴収住民税を納付する必要があります。
納付特例を利用している場合は、12〜5月分をまとめて6月10日に、6〜11月分をまとめて1月10日に納付します。






社会保険料の納付
健康保険料・厚生年金保険料は、毎月日本年金機構から送られてくる納付書で翌月末までに納付します。こちらも口座振替の設定をしておくと便利です。


固定資産税・自動車税の納付
固定資産税は毎年5月頃、自動車税は毎年6月頃に納付書が送られてきます。固定資産税は分割納付も可能です。
定時決定(算定基礎届)の提出






労働保険の年度更新
毎年7月10日までに、労働保険(労災保険・雇用保険)の概算保険料と前年度の精算を行う「年度更新」の手続きを行います。





労働保険の申告書は結構税理士事務所に依頼されるパターンが多いんだけど、専門外だからあまり関わりたくないわほんまに…
賞与支払届の提出
従業員や役員に賞与を支給した場合、支給後5日以内に「被保険者賞与支払届」を提出する必要があります。






重要ポイント:役員報酬を変更する場合、株主総会の決議が必要で、議事録を作成・保管しなければなりません。また、報酬額が大きく変動した場合は社会保険料の随時改定手続きも必要です。
内国法人がその内国法人の役員に対して支給する給与…事前確定届出給与…あらかじめ定められた支給時期に確定した金額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与で、その支給時期が一月以下の一定の期間ごとであるもの以外のもの
出典: 法人税法第34条(役員給与の損金不算入)
株主総会を開催し、役員賞与の金額を決定します。
前期決算から4か月以内または株主総会決議日から1ヶ月以内のいずれか早い日までに届出を提出します。
届出書に記載した支給日に届出金額と同額を支給します。






株式会社は毎事業年度終了後に定時株主総会を開催する必要があります。実務的には小規模企業では実際の会議を開催しないケースも多いですが、少なくとも毎年の議事録は作成しておく必要があります。
定時総会では、役員報酬の決定・変更、役員賞与の支給、役員の選任・解任などを決議します。









よくある失敗例と対策
よくある失敗 | 対策 |
---|---|
源泉所得税・住民税の納付忘れ | ダイレクト納付(口座振替)の設定を行い、自動引落としに |
社会保険の加入漏れ | 従業員雇用後5日以内の届出を徹底。役員も加入が必要 |
役員報酬の不規則な変更 | 期首から3ヶ月以内の年1回のみ変更可能というルールを厳守 |
事前確定届出給与の日付ミス | 届出した支給日を社内カレンダーに記載し、必ず当日に支給 |
固定資産台帳の未整備 | 減価償却資産は台帳を作成し、1月の償却資産税申告の基礎資料に |






税務署への異動届出、ハローワークへの変更届、年金機構への変更届出、法務局への変更登記が必要です。
税務署への異動届出、法務局への変更登記申請が必要です。株主総会議事録も作成します。
株主総会議事録の作成が必要です。決算期や事業目的を変更する場合は異動届出書の提出も必要です。
税務署への異動届出、法務局への変更登記申請が必要です。代表者の住所変更のみの場合も届出が必要です。









よくある質問
Q1: 法人設立後に何をいつまでにやればいいですか?



Q2: 役員1人だけの会社でも社会保険は加入が必要ですか?



Q3: 役員報酬はいつどのように決めるべきですか?



Q4: 法人と個人事業主の違いは何ですか?



Q5: 個人事業主から法人成りした場合の注意点は?



Q6: 税務調査で最も指摘されやすいポイントは?





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