- 会社設立後にどんな手続きが必要なのか知りたい
- 税務署への届出の期限が不安
- 社会保険の手続きはどうすればいいの?
- 法人の年間スケジュールを把握したい
- 初めての従業員雇用に必要な手続きを知りたい
会社設立は起業の第一歩ですが、設立後にもさまざまな手続きが待っています。期限内に必要な届出を行わないと、後々大きなトラブルになる可能性もあります。
この記事では、会社設立後に必要な手続きを期限ごとに整理し、法人経営の年間スケジュールまで徹底解説します。




会社設立後にやるべき手続き
会社設立には定款の認証と設立登記が必要です。ほとんどの場合、司法書士に依頼することになります。
定款には決算期や事業目的を記載します。
会社設立時の法務局への届出
- 定款の作成(電子定款推奨)
- 定款の認証(公証役場)
- 資本金の払込
- 設立登記申請(法務局)
- 登記事項証明書・印鑑証明書の取得
会社設立後に必要な税務署への届出一覧
従業員10人未満の場合、申請により半年に1回の納付で済みます。資金繰りや手間の軽減に役立ちます。
一度提出すれば無期限有効となり、申告期限を1ヶ月伸ばすことができます。国税と地方税の両方に提出が必要です。
法人の場合、少額資産の一括経費化や欠損金の繰越控除などの恩恵を受けられます。提出期限を過ぎると翌期以降の適用になるため注意が必要です。
役員報酬を含む給与の支払者は提出が必要です。本店移転などの場合は変更届も必要となります。
法人の代表者や法人番号等の情報を国指定の様式で提出します。東京都の場合は国と都の2か所、その他の地域では国・県・市の3か所に提出が必要です。
インボイス制度の番号を取得するための申請です。登録しないと取引上不利になる可能性があります。
e-Tax(国税)とeLTAX(地方税)の両方の利用者識別番号を取得します。現在は電子申告が原則となっています。






社会保険の手続きはいつまで?必要な届出と期限まとめ
届出名 | 提出期限 | 提出先 |
---|---|---|
雇用保険適用事業所設置届 | 従業員雇用後10日以内 | ハローワーク |
雇用保険被保険者資格取得届 | 従業員雇用後10日以内 | ハローワーク |
労働保険関係成立届 | 従業員雇用後10日以内 | 労働基準監督署 |
労働保険概算保険料申告書 | 従業員雇用後50日以内 | 労働基準監督署 |
健康保険・厚生年金被保険者資格取得届 | 従業員雇用後5日以内 | 年金事務所 |
労働基準法に基づく適用事業報告 | 従業員雇用後遅滞なく | 労働基準監督署 |
36協定(時間外・休日労働協定届) | 時間外労働をさせる前 | 労働基準監督署 |
就業規則(10人以上の場合) | 作成後遅滞なく |
新規適用届出を管轄年金事務所に対して設立から5日以内に提出する必要があります。
従業員がいない場合でも、役員だけの会社でも適用届出の提出は必須です。多くの経営者が見落としがちなポイントです。
健康保険法第48条 適用事業所の事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、被保険者の資格の取得及び喪失並びに報酬等に関する事項を厚生労働大臣に届け出なければならない。
出典: 健康保険法第48条(届出等)






役員報酬決定の手順
- 株主総会の開催(設立後3カ月以内)
- 役員報酬額の決議
- 株主総会議事録の作成
- 毎月同額の報酬支給
設立後3カ月以内に株主総会を開催し、役員報酬の額を決定する必要があります。
実務的には株主総会を実際に開催しないケースも多いですが、税務調査に備えて株主総会議事録は必ず用意しておきましょう。
【年間カレンダー付】法人経理の年間スケジュール






事業年度と決算期の基礎知識
事業年度とは、企業や個人事業主が決算書を作成する対象となる一定の期間のことです。
区分 | 事業年度 | 決算期 | 申告期限 |
---|---|---|---|
法人 | 定款で定めた1年間(例:4月〜3月) | 事業年度の最終月(例:3月) | 決算期から2か月以内(例:5月末) |
個人事業主 | 1月〜12月 | 12月 | 翌年3月15日まで |
中間申告・予定納税
個人も法人も一定の場合には事業年度の途中に税金を納める必要があります。
年間スケジュール図解
- 事業年度スタート(新年度)
- 役員報酬の決定・変更(3ヶ月以内)
- 算定基礎届(7/10まで)
- 労働保険年度更新(7/10まで)
- 中間申告・納付(原則11/30まで)
- 年末調整(1/31まで)
- 償却資産税申告(1/31まで)
- 法定調書合計表提出(1/31まで)
- 決算作業
- 棚卸
- 決算書作成
- 法人税等確定申告(5/31まで)
- 法人住民税・事業税申告(5/31まで)
- 消費税確定申告(5/31まで)
- 固定資産税納付
法人の場合(3月決算の例):
4/1(期首)→ 11/30(中間申告)→ 1/31(年末調整・償却資産税申告)→ 3/31(決算期)→ 5/31(申告期限)
個人事業主の場合:
1/1(期首)→ 7/31(予定納税①)→ 11/30(予定納税②)→ 12/31(決算期)→ 3/15(申告期限)
従業員雇用時の必要手続きと期限まとめ






雇用保険関連届出(一元適用事業の場合)
- 保険関係成立届出(労働基準監督署へ、設立から10日以内に提出)
- 雇用保険適用事業所設置届(ハローワークへ提出)
- 雇用保険被保険者資格取得届(ハローワークへ提出)
- 労働保険概算保険料申告書(労働基準監督署または都道府県労働局へ提出)
健康保険・厚生年金保険関連届出
- 健康保険・厚生年金被保険者資格取得届(従業員雇用後5日以内)
- 健康保険・厚生年金被保険者資格喪失届(従業員退職後5日以内)
- 被扶養者(異動)届(従業員から申出があった日から5日以内)
- 健康保険被保険者証再交付申請書(紛失等の申出があった日から速やかに)
従業員を雇用後5日以内に「健康保険・厚生年金被保険者資格取得届」を提出する必要があります。
また、従業員が退職した場合には「資格喪失届」の提出も必要です。



労働基準法関連届出
従業員を雇用する場合、業種を問わず「労働基準法に基づく適用事業報告」を提出する必要があります。
36協定と就業規則
使用者は、・・・労働者に、休日労働をさせ、又は一日について八時間、一週間について四十時間を超えて労働させる場合においては、労働組合・・・との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、・・・その協定で定めるところによつて労働させることができる。
出典: 労働基準法第36条(時間外及び休日の労働)






また、従業員を10名以上雇用する場合には、就業規則を作成して労働基準監督署に届け出なければなりません。就業規則の内容は労働基準法に従う必要があります。
源泉所得税・住民税の納付スケジュール
納付方法 | 納付時期 | 対象 |
---|---|---|
通常納付 | 毎月10日まで | 従業員10人以上の事業所 |
納期特例 | 1月10日と7月10日 | 従業員9人以下の事業所(届出必要) |
納付特例を利用していない場合(または従業員が10名以上の場合)、毎月10日までに前月分の源泉所得税と特別徴収住民税を納付する必要があります。
納付特例を利用している場合は、12〜5月分をまとめて6月10日に、6〜11月分をまとめて1月10日に納付します。






社会保険料の納付
健康保険料・厚生年金保険料は、毎月日本年金機構から送られてくる納付書で翌月末までに納付します。こちらも口座振替の設定をしておくと便利です。
固定資産税・自動車税の納付
固定資産税は毎年5月頃、自動車税は毎年6月頃に納付書が送られてきます。固定資産税は分割納付も可能です。
労働保険の年度更新
毎年7月10日までに、労働保険(労災保険・雇用保険)の概算保険料と前年度の精算を行う「年度更新」の手続きを行います。
定時決定(算定基礎届)の提出






賞与支払届の提出
従業員や役員に賞与を支給した場合、支給後5日以内に「被保険者賞与支払届」を提出する必要があります。






内国法人がその内国法人の役員に対して支給する給与…事前確定届出給与…あらかじめ定められた支給時期に確定した金額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与で、その支給時期が一月以下の一定の期間ごとであるもの以外のもの
出典: 法人税法第34条(役員給与の損金不算入)
株主総会を開催し、役員賞与の金額を決定します。
前期決算から4か月以内または株主総会決議日から1ヶ月以内のいずれか早い日までに届出を提出します。
届出書に記載した支給日に届出金額と同額を支給します。






- 役員報酬を途中で変更することはできますか?
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役員報酬は原則として事業年度開始から3カ月以内に1回のみ変更可能です。それ以外の時期では、災害による著しい業績悪化など特別な事情がある場合を除いて変更できません。変更する場合は必ず株主総会決議と議事録の作成が必要です。
- 社会保険の新規適用事業所届出を忘れていた場合はどうなりますか?
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社会保険の新規適用事業所届出を忘れていた場合でも、法律上は設立日から加入義務があったものとみなされます。発覚した場合、過去に遡って保険料を納付することになります。延滞金が発生する場合もありますので、気づいた時点で速やかに届出を行うことをお勧めします。
- 税務署への届出書類は自分で作成できますか?
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税務署への届出書類は自分で作成することも可能です。国税庁のウェブサイトから様式をダウンロードできます。ただし、初めての場合は税理士に相談するのがおすすめです。特に青色申告承認申請書や源泉所得税の納期特例など、経営に大きく影響する手続きは専門家のアドバイスを受けると安心です。
まとめ:会社設立後の手続きスケジュールと重要ポイント
青色申告承認申請書、源泉所得税の納期特例、法人設立届出書など、会社の基本的な税務手続きを早めに済ませましょう。
役員のみの会社でも社会保険の新規適用事業所届出は必須です。期限が非常に短いので注意しましょう。
役員報酬は税務上重要な意味を持ちます。毎月同額支給のルールを確認し、議事録を作成しておきましょう。
法人は個人事業主と異なり、年間を通じてさまざまな届出や申告が必要です。カレンダーに記入するなど、忘れないよう管理体制を整えましょう。
従業員を雇う予定がある場合は、事前に必要書類や手続きを確認し、期限内に届出できるよう準備しておきましょう。
会社設立後の手続きは多岐にわたりますが、期限を守って適切に対応すれば問題ありません。特に税務署・年金事務所・労働基準監督署への提出書類は期限が厳しいものが多いため、カレンダーに記入するなどして管理しましょう。
不安な場合は税理士や社会保険労務士などの専門家に相談することをお勧めします。



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