役員貸付金の基本と利息計算の重要性
役員貸付金とは、会社が役員に貸し付けたお金のことです。無利息のまま、あるいは相場より低い利率のままにしておくと、適正な利率で計算した利息との差額が役員給与として課税されます。その適正な利率は「いつ貸したか」で決まり、令和8年中に貸し付けたものは年1.3%、令和4年から令和7年中に貸し付けたものは年0.9%です(所得税基本通達36-49)。
- 役員貸付金に利息が必要な理由と法的根拠
- 貸し付けた年ごとの利率(令和8年中の貸付けは年1.3%)
- 税務調査で指摘されないための適正利率
- 月別残高に基づく正確な利息計算方法
- 役員貸付金と役員借入金の相殺処理の方法
- 会社が役員から借りている場合(役員借入金)に課税されない理由
- 実務で使える計算例と仕訳例
中小企業では、会社の資金を役員が一時的に使用し、それを役員貸付金として処理するケースが多く見られます。この処理自体は問題ありませんが、適切な利息を設定していないと、税務調査で思わぬトラブルに発展することがあります。
ぜいむたん
イザークこの記事では、役員貸付金の正しい利息計算の方法と、計算を怠った場合のリスクについて解説します。実務で即活用できる計算例も交えながら説明していきます。
役員貸付金に利息が必要な理由とリスク
ぜいむたん
イザーク利息を取らないとどうなるのか?
- 役員報酬とみなされるリスク:利息がない場合、貸付金自体が役員報酬と判断され、源泉所得税の納付漏れや不納付加算税が発生
- 贈与とみなされるリスク:利息相当額が役員への贈与と判断され、法人税の損金不算入項目となる可能性
- 同族会社の行為計算否認:税務署が不当な税額減少と判断し、更正処分の対象となる可能性
特に税務調査では、役員への貸付金が長期間にわたる場合や金額が大きい場合に注目されやすくなります。適切な利息計算を行うことで、これらのリスクを回避することができます。
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イザーク法的根拠と適正利率
国税庁の公式見解では、無利息貸付は経済的利益の供与とみなされます。
「使用者が役員又は使用人に貸し付けた金銭の利息相当額については、当該金銭が使用者において他から借り入れて貸し付けたものであることが明らかな場合には、その借入金の利率により、その他の場合には、貸付けを行った日の属する年の租税特別措置法第93条第2項《利子税の割合の特例》に規定する利子税特例基準割合による利率により評価する。」
出典: 国税庁 所得税基本通達36-49(利息相当額の評価)/年ごとの利率はタックスアンサー No.2606「金銭を貸し付けたとき」(令和8年4月1日現在法令等・2026年10月6日確認)
貸付けを行った年ごとの利率(認定利息の計算に使う利率)
| 貸付けを行った年 | 利率(年) |
|---|---|
| 平成30年から令和2年 | 1.6% |
| 令和3年 | 1.0% |
| 令和4年から令和7年 | 0.9% |
| 令和8年 | 1.3% |
表のとおり、令和8年の利率は1.3%で、令和7年までの0.9%から上がっています。ここで実務上いちばん間違いが起きるのが、複数の年にまたがって貸し付けているケースです。利率は「計算する年」ではなく「貸し付けた年」で決まるため、令和6年に貸した300万円は0.9%、令和8年に追加で貸した200万円は1.3%と、同じ役員に対する貸付金でも年ごとに利率が分かれます。残高を合計して当年の利率を一律に掛けると、計算が合わなくなります。
もう一つ、通達が先に挙げている分岐も見落とされがちです。会社が銀行などから借りたお金をそのまま役員に貸した場合は、上の表ではなく「その借入金の利率」を使います。会社が年2.5%で借りて役員に貸したなら、認定利息の基礎になるのは1.3%ではなく2.5%です。自己資金から貸したのか、借入金を回したのかで利率が変わる点は、契約書や資金の流れで裏づけておきたいところです。
- 根拠法令: 所得税法36条、所得税基本通達36-49、租税特別措置法93条2項
- 適用対象者: 法人の役員(使用人兼務役員も含む)
- 計算時期: 毎月末または貸付・返済時(月次計算が望ましい)
- 勘定科目: 「受取利息」として計上
役員貸付金利息の正しい計算方法
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イザーク基本的な計算式と考え方
役員貸付金利息の基本計算式
月ごとの利息 = 月末貸付金残高 × 貸し付けた年の利率(令和8年中の貸付けは1.3%) ÷ 12ヶ月
年間利息合計 = 各月の利息の合計
初心者向け解説:月割計算の重要性
貸付金は月によって金額が変動することが一般的です。年末残高だけで計算すると、実際よりも多く(または少なく)利息を計上することになり、税務上不適切となります。月ごとの残高を基に計算することで、実態に即した適正な利息となります。
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イザーク役員貸付金と役員借入金の相殺処理
- 月末時点の役員貸付金残高を確認
- 月末時点の役員借入金残高を確認
- 両者を相殺(貸付金−借入金)
- 相殺後の純額がプラスの場合のみ、利息を計算(マイナスの場合は計算不要)
これにより、実質的な貸付額に対してのみ利息が発生するため、より公正な処理となります。
ただし相殺できるのは、貸付金と借入金を相殺する合意が当事者の間にある場合です。帳簿の上で差引きした金額だけを記録していても、契約書や議事録に相殺の取り決めが残っていないと、税務調査で貸付金の総額に対する認定利息を指摘されるリスクがあります。相殺を前提に利息を計算するなら、その根拠も一緒に残しておきたいところです。
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役員借入金(会社が役員から借りている場合)の利息はどうなるか
逆方向、つまり会社が役員からお金を借りている場合は、無利息でも課税関係は生じません。役員貸付金とは扱いが正反対になります。
理由は両者で課税される対象が違うためです。会社が役員に無利息で貸した場合は、役員が利息を払わずに済んだ分の経済的利益を受け取ったことになり、その差額が役員給与として課税されます。一方、会社が役員から無利息で借りた場合、得をしているのは会社側ですが、法人税の計算では利息の受贈益と支払利息が同額で両建てになるため、差引きの所得は変わりません。役員側も利息を受け取っていないので所得は発生しません。
したがって、同族会社で社長が会社に資金を貸し付けているケースで、利息を取らないまま決算を組んでも、それ自体が問題になることはありません。むしろ気をつけたいのは相続のほうです。役員借入金は会社から見れば負債ですが、貸し付けた役員から見れば会社に対する債権で、相続財産になります。返済の見込みがないまま積み上がっていると、現金がないのに相続税の課税対象だけが残ります。
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実践!役員貸付金利息の計算例
ぜいむたん
イザーク| 月 | 役員貸付金残高 | 役員借入金残高 | 相殺後残高 | 月間利息(1.3%÷12・円未満切捨て) |
|---|---|---|---|---|
| 4月 | 1,000,000円 | 300,000円 | 700,000円 | 758円 |
| 5月 | 1,200,000円 | 300,000円 | 900,000円 | 975円 |
| 6月 | 1,500,000円 | 500,000円 | 1,000,000円 | 1,083円 |
| 7月 | 1,300,000円 | 500,000円 | 800,000円 | 866円 |
| 8月 | 1,300,000円 | 700,000円 | 600,000円 | 650円 |
| 9月 | 1,500,000円 | 700,000円 | 800,000円 | 866円 |
| 10月 | 1,800,000円 | 800,000円 | 1,000,000円 | 1,083円 |
| 11月 | 2,000,000円 | 800,000円 | 1,200,000円 | 1,300円 |
| 12月 | 2,500,000円 | 1,000,000円 | 1,500,000円 | 1,625円 |
| 1月 | 2,300,000円 | 1,000,000円 | 1,300,000円 | 1,408円 |
| 2月 | 2,100,000円 | 1,200,000円 | 900,000円 | 975円 |
| 3月 | 2,000,000円 | 1,200,000円 | 800,000円 | 866円 |
| 合計 | – | – | – | 12,455円 |
上記の例では、1年間の利息合計は12,455円となります(各月の利息は円未満切捨て。切捨てをせずに年額で計算すると12,458円で、3円の差が出ます)。これを期末に役員に請求するか、給与から天引きするなどの方法で回収します。
計算された利息は、会計上適切に仕訳処理する必要があります。
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イザーク利息計上時(決算時):
利息入金時:
または、給与から天引きする場合:

税務調査対策と実務上の注意点
ぜいむたん
イザーク税務調査でよくある指摘事項
- 適正利率の適用:貸し付けた年の利率(令和8年中の貸付けは1.3%、令和4年から令和7年中は0.9%)未満になっていないか
- 月次計算の正確性:年末残高だけで計算していないか
- 相殺処理の妥当性:役員貸付金と借入金の相殺が適切に行われているか
- 利息の実際の回収:計上した利息が実際に回収されているか
- 長期未回収の貸付金:実質的に返済の意思がない貸付金がないか
ぜいむたん
イザーク実務上の対応策
- 貸付金契約書の作成:金額、期間、利率、返済方法を明記した書面を作成
- 月次の残高管理表作成:Excel等で月次の貸付金・借入金残高を記録
- 実際の利息回収:計算した利息を実際に回収し、証憑を保存
- 返済計画の作成:長期にわたる貸付金は返済計画を策定
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役員貸付金の利息対策の手順
役員貸付金の税務対策では、以下の手順に従って処理を行います。初めての方は特に契約書の作成と証憑の保存に注意してください。
ぜいむたん
イザーク金額、期間、利率、返済方法を明記した契約書を作成し、役員と会社双方で保管します。
役員貸付金と役員借入金の残高を月次で記録し、管理表を作成します。
月次残高に基づき、貸し付けた年の利率(令和8年中の貸付けなら年1.3%)÷12で利息を計算します。
決算時に未収収益と受取利息で仕訳を計上します。
現金での回収または給与からの天引きにより、実際に利息を回収します。
契約書、計算書、入金証明などの証憑を保存します。
特に貸付金契約書の作成と利息の実際の回収については、税務調査で重点的に確認されるポイントです。書面での取り決めと実際の金銭の動きを証明できるようにしておきましょう。不明点がある場合は、税理士に相談することをおすすめします。
ワンポイントアドバイス
ぜいむたん
イザーク具体的には、役員貸付金が長期間(3年以上)返済されないケースでは、税務調査でより厳しくチェックされます。計画的な返済スケジュールを立て、定期的に返済実績を作ることが重要です。また、利息の計算と回収を忘れずに行いましょう。この点は私のクライアントさんもよく注意されていますね。
税務調査では、不自然な貸付金に対して特に注意が向けられます。特に貸付金額が大きい場合や長期間返済がない場合は、正当な事業目的があるかどうかの説明を求められることが多いです。
- 利率は毎年同じですか?変わることもあるんですか?
-
変わります。所得税基本通達36-49は「貸付けを行った日の属する年の租税特別措置法93条2項に規定する利子税特例基準割合による利率」と定めていて、この割合は年ごとに見直されます。直近では令和4年から令和7年中の貸付けが0.9%、令和8年中の貸付けが1.3%です。ただし見直されるのはこれから貸し付ける分の利率で、すでに貸し付けた分の利率は貸付年のまま据え置かれます。令和6年に貸した分を令和8年になったから1.3%に付け替える、という処理は不要です。
- 貸付金の金額が少額の場合も利息の計算は必要ですか?
-
基本的にはどんな金額でも利息を計算するのが安全です。ただ、実務上は短期間かつ少額(例えば10万円未満で1か月以内)の貸付については、利息計算を省略しても問題にならないケースが多いです。ただし、これは明確な基準があるわけではなく、税務調査官の判断によるところもあるので、安全を期すなら利息計算をしておくことをお勧めします。
- 役員貸付金を返済する予定がない場合はどうすればいいですか?
-
返済予定のない役員貸付金は、税務上非常にリスクが高いです。実質的に給与や賞与とみなされる可能性が高くなります。このような場合は、正式に臨時株主総会などで役員賞与として計上し直すか、きちんとした返済計画を立てて実行することをお勧めします。放置すると税務調査で大きな問題になる可能性が高いですよ。
申告書の書き方役員貸付金の勘定科目内訳明細書の書き方(記載例と個別記載ルール)
まとめ:適切な役員貸付金の管理方法
役員貸付金の利息計算は、税務上のリスクを避けるために非常に重要です。正しい計算方法と処理手順を守ることで、税務調査でも安心して対応できます。
- 貸し付けた年の利率(令和8年中の貸付けは1.3%)で利息を計算する
- 月次の残高に基づいて計算する(年末残高だけでは不適切)
- 役員貸付金と役員借入金は相殺して純額で計算する
- 貸付金契約書を作成し、条件を明確にする
- 計算した利息は実際に回収する
- 証憑類を適切に保管し、税務調査に備える
ぜいむたん
イザーク役員貸付金に関して他にも疑問点がある場合は、コメント欄でお気軽にご質問ください。また、貴社の状況に合わせた具体的なアドバイスが必要な場合は、税理士への個別相談をお勧めします。
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