個人事業主の消費税申告ガイド【2026年版】課税事業者・簡易課税の手順を解説
「消費税の申告って、自分は対象になるの?」「簡易課税と本則課税、どちらを選べばいい?」――確定申告の時期になると、消費税の申告について不安になる個人事業主の方は多いはずです。
所得税の確定申告と違い、消費税の申告は判定基準・計算方法・申告期限がすべて異なります。しかも2023年10月からのインボイス制度導入により、これまで免税事業者だった方も課税事業者になるケースが増えています。
この記事では、2026年版の最新情報をもとに、個人事業主が消費税申告を行う際に知っておくべきすべてのポイントを、ステップ別にわかりやすく解説します。
消費税の申告は「慣れたら難しくない」やけど、最初の判定をミスると余計な税金を払ったり、逆に申告漏れになったりするで。一緒に順番に確認しよう。
消費税の申告って、所得税と別にやるんですか? 締め切りも違うんでしょうか?
そう、消費税の申告期限は所得税より2週間後の3月31日やで。この記事で全部まとめて説明するから、一度通して読んでみてな。
消費税課税事業者の判定基準【2026年版】
まず最初に確認すべきは「自分が消費税の申告義務があるかどうか」です。消費税の課税事業者になるかどうかは、以下の3つの基準で判定します。
基準期間の課税売上高1,000万円とは
消費税の判定で最も基本となるのが、「基準期間」の課税売上高が1,000万円を超えるかどうかです。
個人事業主の場合、基準期間は2年前(前々年)の1月1日〜12月31日です。たとえば2026年(令和8年)分の消費税申告の基準期間は、2024年(令和6年)1月1日〜12月31日になります。
| 申告年度 | 基準期間 | 判定の課税売上高 |
|---|---|---|
| 2026年(令和8年) | 2024年(令和6年) | 2024年の課税売上高 |
| 2025年(令和7年) | 2023年(令和5年) | 2023年の課税売上高 |
ここでの課税売上高とは、消費税が課税される売上(税抜金額)の合計額です。非課税売上(家賃収入・保険金など)や輸出免税売上は含みません。
ポイント:「1,000万円」は税抜き金額で判定します。インボイス登録後は税込み取引が増えるため、会計ソフトで税抜き金額を正確に集計しましょう。
特定期間(前年1月〜6月)の判定
基準期間の売上が1,000万円以下であっても、特定期間の課税売上高または給与等支払額が1,000万円を超える場合は課税事業者になります。
個人事業主の特定期間は前年(1月1日〜6月30日)です。2026年分を申告する場合、2025年1月〜6月の課税売上高または給与等支払額が判定対象になります。
2年前は売上が少なかったけど、去年の前半が急に忙しかった場合も課税事業者になるってことですね。
そのとおり。「2年前は大丈夫だったから今年も免税」と思い込まずに、前年上半期の売上も必ずチェックするんやで。
インボイス登録事業者は自動的に課税事業者
2023年10月以降にインボイス(適格請求書発行事業者)登録をした個人事業主は、売上高にかかわらず自動的に課税事業者となります。これはインボイス制度の最重要ポイントです。
注意:インボイス登録をしていて、2026年の消費税申告が初めてという方は特に要注意。基準期間の売上が1,000万円以下であっても、インボイス登録者は消費税の申告・納付が必要です。申告を忘れると無申告加算税が課される場合があります。
また、2023〜2025年9月まで適用されていた「2割特例」(売上消費税の8割を控除)は2025年9月末で終了しています。2026年分の消費税申告からは、本則課税または簡易課税のどちらかを選択して申告する必要があります。
本則課税と簡易課税の違い・選び方
課税事業者になることが確認できたら、次は申告方法の選択です。消費税の申告には「本則課税(原則課税)」と「簡易課税制度」の2つがあります。
本則課税(原則課税)のメリット・デメリット
本則課税は、受け取った消費税(売上消費税)から実際に支払った消費税(仕入消費税)を差し引いて納税額を計算する方法です。
計算式:納付消費税 = 売上消費税 - 仕入消費税(実際の支払い分)
| 内容 | |
|---|---|
| メリット | 設備投資・仕入れが多い年は納税額が少なくなる。還付申請も可能。 |
| デメリット | 経費の領収書をすべてインボイス(適格請求書)で保存する必要がある。経理処理が煩雑になりやすい。 |
| 向いている業種 | 製造業・建設業・機器購入が多いIT業・設備投資が多い事業 |
簡易課税制度のメリット・デメリット
簡易課税制度は、実際の仕入れ消費税を計算する代わりに、業種ごとに定められた「みなし仕入率」を使って納税額を概算で計算する制度です。課税売上高が5,000万円以下の事業者が選択できます。
計算式:納付消費税 = 売上消費税 × (1 - みなし仕入率)
みなし仕入率は業種によって以下のとおり定められています。
| 事業区分 | 業種の例 | みなし仕入率 |
|---|---|---|
| 第1種事業 | 卸売業 | 90% |
| 第2種事業 | 小売業、農業・林業・漁業(食用) | 80% |
| 第3種事業 | 製造業、建設業、農業(食用以外) | 70% |
| 第4種事業 | 飲食業、その他の事業(第1・2・3・5・6種以外) | 60% |
| 第5種事業 | サービス業(金融・保険・運輸・情報通信など) | 50% |
| 第6種事業 | 不動産業 | 40% |
注意:フリーランスのエンジニア・デザイナー・ライターなどは基本的に第5種事業(みなし仕入率50%)に該当します。ただし業種の判定は活動内容によって変わるため、不明な場合は税理士や税務署に確認しましょう。
| 内容 | |
|---|---|
| メリット | 帳簿管理が簡単。仕入れの領収書を消費税計算のために細かく区分する必要がない。 |
| デメリット | 実際の仕入れ消費税がみなし仕入率より高い場合は損になる。還付は受けられない。 |
| 向いている業種 | 仕入れ・経費が少ないサービス業・コンサル・フリーランス |
どちらを選ぶべきか判断基準(売上規模・業種別)
本則課税と簡易課税、どちらが有利かは「実際の仕入れ消費税額」と「みなし仕入率で計算した控除額」の大小で決まります。
私はWebデザイナーをしていて、仕入れはほとんどソフトウェア代くらいです。どっちがいいんでしょう?
Webデザイナーは第5種事業でみなし仕入率50%やから、経費が売上の半分以下なら簡易課税の方が有利なことが多いで。計算してみると分かりやすいで。
たとえば年間売上300万円(税抜)のWebデザイナーで、実際の仕入れ消費税が5万円の場合を比較してみましょう。
| 本則課税 | 簡易課税(第5種) | |
|---|---|---|
| 売上消費税(300万×10%) | 30万円 | 30万円 |
| 控除できる仕入消費税 | 5万円(実額) | 15万円(30万×50%) |
| 納付消費税 | 25万円 | 15万円 |
この例では簡易課税の方が10万円有利です。仕入れ・経費が少ないサービス業やフリーランスは、一般的に簡易課税が有利になるケースが多いといえます。
重要:簡易課税制度を選択する場合は、適用を受けようとする課税期間の初日の前日(=前年12月31日)までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を税務署に提出する必要があります。2026年分に簡易課税を適用したい場合、届出期限は2025年12月31日です。今から選択することはできません。
消費税確定申告の手順【ステップ別解説】
申告期限と納付期限(2026年)
個人事業主の消費税確定申告の期限は、所得税の確定申告(3月15日)より遅く設定されています。
| 項目 | 期限 |
|---|---|
| 申告期限(消費税) | 2026年3月31日(火) |
| 納付期限(消費税) | 2026年3月31日(火) |
| 参考:所得税の申告期限 | 2026年3月15日(日)※土日祝の翌営業日 |
期限厳守:消費税の申告を期限内に行わないと、無申告加算税(15〜20%)や延滞税(年約8.7%)が課される場合があります。期限に余裕をもって申告・納付を済ませましょう。
必要書類の準備
消費税の申告に必要な書類を事前に準備しておきましょう。
- 売上帳・請求書控え:課税売上・非課税売上・免税売上を区分したもの
- 経費・仕入れの領収書(本則課税の場合):インボイス(適格請求書)であることが必要
- 前年の消費税申告書の控え:繰越情報の確認のため
- 課税事業者届出書の控えまたはインボイス登録通知書
- 簡易課税制度選択届出書の控え(簡易課税を選択している場合)
- 会計ソフトの集計データ:消費税区分別の売上・仕入れ一覧
申告書の書き方(仕入税額控除の計算)
消費税の申告書(一般課税の場合)は「消費税及び地方消費税の確定申告書」を使用します。大まかな記入の流れは以下のとおりです。
- 課税標準額の計算:課税売上高を税率ごと(標準税率10%・軽減税率8%)に分けて集計する
- 売上消費税額の計算:各税率の課税売上高に対応する消費税額を計算する
- 仕入税額控除の計算(本則課税のみ):インボイスが保存された経費・仕入れの消費税額を合計する
- 差引税額の計算:売上消費税額から仕入税額控除を差し引く
- 地方消費税の計算:差引税額に22/78を掛けて地方消費税額を計算する
- 合計納付税額の確定:国税(消費税)+地方消費税の合計が納付額となる
手書きで申告書を作成するのは難しそうですね…。
実際には会計ソフト(freeeやマネーフォワード)を使うのが圧倒的に楽やで。日々の仕訳を正しく入力しておけば、申告書のほとんどは自動で作成してくれるんや。
freee・マネーフォワードで消費税申告する方法
会計ソフトを使えば、消費税申告書の作成がぐっと楽になります。ここでは、個人事業主に人気の2大クラウド会計ソフトの消費税申告手順を解説します。
freeeでの消費税申告手順
freeeは、日々の売上・経費を入力しておくだけで消費税申告書を自動生成できます。消費税申告に対応しているのはスタンダードプラン以上です。
- 税務設定を確認する:freeeの「設定」→「税務・会計設定」で、消費税の会計処理方式(税込/税抜)・計算方式(本則/簡易)が正しく設定されているか確認する
- 仕訳の消費税区分を確認する:1年間の仕訳で消費税区分(課税/非課税/免税/対象外)が正しく設定されているかチェックする
- 消費税申告書を作成する:「税金」→「消費税申告」から消費税申告書の作成画面へ進む。freeeが自動で集計し、申告書の各欄に数値を埋めてくれる
- 内容を確認して提出する:申告書のプレビューを確認し、e-Taxで電子申告するか、印刷して税務署に持参・郵送する
- 消費税を納付する:e-Tax経由のダイレクト納付・振込納税・コンビニ納付(QRコード)から選択できる
freee活用のポイント:freeeはインボイス制度(適格請求書)に対応しており、取引先のインボイス登録番号の管理や、控除対象仕入れの自動判別もできます。日々の入力を正確にしておくことが申告精度アップの鍵です。
マネーフォワードでの消費税申告手順
マネーフォワード クラウド確定申告でも、消費税申告書を効率的に作成できます。消費税申告に対応しているのはパーソナルプラス以上のプランです。
- 消費税設定を確認する:「設定」→「消費税設定」から、課税方式(本則/簡易)・事業区分(簡易課税の場合)を確認・設定する
- 仕訳の消費税区分をチェックする:銀行口座・クレジットカードの自動取り込みデータの消費税区分が正しく割り当てられているか確認する
- 消費税申告書を作成する:「消費税申告」メニューから申告書作成へ進む。集計された数値をもとに申告書が自動生成される
- 申告書を確認・提出する:e-Tax連携でそのまま電子申告できる。e-Tax未対応の場合はPDFで出力して郵送・持参する
- 納税する:口座振替・ダイレクト納付・コンビニ払いなどから選択する
freeeとマネーフォワード、どちらを選べばいいか迷います。
ざっくり言うと、操作のシンプルさを重視するならfreee、銀行・カード連携の自動化に強いのはマネーフォワードやな。どちらも無料トライアルがあるから、まず試してみるのがおすすめやで。詳しい比較はこちらの記事を参考にしてな。
よくある失敗・ミス3選と対処法
消費税申告で個人事業主がつまずきやすいポイントを3つ厳選しました。
失敗1:「免税だと思っていたら課税事業者だった」
インボイス登録をした個人事業主が、「前々年の売上が1,000万円以下だから免税」と思い込んで消費税申告をしないケースがあります。
対処法:インボイス登録者は売上にかかわらず課税事業者です。登録通知書を確認し、課税事業者になった年から必ず申告しましょう。申告漏れに気づいた場合は、速やかに税務署に相談し期限後申告を行うことで、加算税を軽減できる場合があります。
失敗2:「仕入税額控除にインボイスでない領収書を使ってしまった」
本則課税で申告する場合、控除できる仕入れ消費税はインボイス(適格請求書)が保存されているものに限られます。インボイス登録番号のない領収書では、原則として控除できません。
対処法:経費の領収書を受け取る際、取引先がインボイス登録事業者かどうかを事前に確認しましょう。会計ソフトで取引先のT番号を登録しておくと、自動で控除可否を管理できます。なお、1万円未満の少額取引については経過措置があります(令和11年9月30日まで)。
失敗3:「消費税の納付資金を使ってしまった」
売上に含まれる消費税分を事業資金として使ってしまい、申告時に納付資金が不足するケースです。特に年間売上が大きくなるほど、消費税の納付額も増えるため注意が必要です。
対処法:売上を受け取ったら、消費税相当額(標準税率10%なら税抜き売上の10分の1)を別口座に積み立てておく習慣をつけましょう。また、予定納税制度(中間申告)がある場合は半年ごとの納付が必要なため、資金計画に組み込んでおきましょう。
チェックリスト:消費税申告前の確認事項
消費税の申告書を提出する前に、以下の項目を必ず確認してください。
- 課税期間(1月1日〜12月31日)が正しく設定されているか
- 課税売上高・非課税売上高・免税売上高が正しく区分されているか
- 本則課税の場合:仕入税額控除の対象となる領収書がインボイスであるか確認した
- 簡易課税の場合:事業区分(第1〜6種)が業種に合っているか確認した
- 軽減税率(8%)が適用される取引(食品・新聞等)が正しく区分されているか
- 前年に中間申告・納付をした場合、その金額が申告書に反映されているか
- 消費税申告書の数値と会計ソフトの集計値が一致しているか
- e-Taxまたは書面で申告する準備ができているか
- 3月31日までに納付できる資金が確保されているか
- 申告書の控え・送信完了通知を保存したか
まとめ
個人事業主の消費税申告について、2026年版のポイントをまとめます。
- 課税事業者の判定:前々年の課税売上高1,000万円超、前年上半期1,000万円超、またはインボイス登録者が対象
- 2割特例は2025年9月終了:2026年分からは本則課税または簡易課税で申告する
- 簡易課税はみなし仕入率で計算:サービス業・フリーランスは第5種(50%)が適用されることが多い
- 申告・納付期限は2026年3月31日:所得税より2週間遅い点に注意
- 会計ソフトを活用する:freeeやマネーフォワードで日々の帳簿を正確に管理すると申告がスムーズになる
消費税の申告は初めてだと複雑に感じますが、課税事業者の判定→計算方式の選択→申告書の作成という手順を一つひとつ確認していけば、着実に進められます。会計ソフトの力を借りながら、期限内に正確に申告・納付を完了させましょう。
消費税の申告は「難しい」より「知らないと損する」制度やから、一度しっかり学んでおくと毎年楽になるで。わからないことは税務署の無料相談窓口や税理士に聞くのもありやからな。
免責事項:本記事は2026年3月時点の税制情報に基づき作成していますが、税法は改正される場合があります。実際の税務判断は税理士または税務署にご確認のうえ、ご自身の責任において行ってください。
よくある質問(FAQ)
はい、同じ時期に申告作業を行えますが、申告書は別々です。所得税の確定申告書(第一表・第二表)と消費税の確定申告書(消費税及び地方消費税の確定申告書)は別の書類で、提出先も税務署への提出は同じですが期限が異なります。所得税は3月15日、消費税は3月31日が期限です。会計ソフトを使えば、両方の申告書をまとめて作成できます。
はい、必要です。インボイス(適格請求書発行事業者)に登録した日以降、売上高にかかわらず課税事業者として消費税の申告・納付義務が発生します。インボイス登録の初年度は、登録日以降の取引分について消費税の申告が必要です。会計ソフトの消費税設定を「課税事業者」に切り替え、日々の取引を正確に記帳してください。
はい、変更できますが、原則として簡易課税を選択してから2年間は変更できないという縛りがあります(消費税法第37条の2)。2年間が経過した後、翌課税期間の初日前日(=前年12月31日)までに「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を税務署に提出することで、本則課税に戻せます。設備投資を予定している年は、事前に試算して最適な課税方式を選びましょう。

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