📌 この記事でわかること
対象読者:法人の決算・税務を担当する経営者・経理担当者/読了の目安:約18分
- 防衛特別法人税の正確な施行時期(令和8年4月1日以後開始事業年度)と計算式(基準法人税額-500万円)×4%
- 「基準法人税額」の正しい定義と、中小企業が実質ゼロ負担になる課税所得の目安(国税庁一次資料から自分で計算し直した数値)
- 課税所得500万円〜3億円までの防衛特別法人税額シミュレーション表
- あわせて変わった中小法人の軽減税率(所得10億円超の事業年度は15%→17%)・地方法人税10.3%との関係
- 申告・納付の実務(法人税との同時申告・中間申告開始時期・決算期1年未満の按分)
- 根拠を確認したうえで残した、現行制度に基づく合法的な節税対策
ぜいむたん


防衛特別法人税とは?制度の目的と施行時期






| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 防衛特別法人税(防衛特別法人税に関する政令等の一部を改正する法律に基づく国税) |
| 納税義務者 | 各事業年度の所得に対する法人税を課される法人(個人事業主は対象外) |
| 課税事業年度 | 令和8年(2026年)4月1日以後に開始する各事業年度 |
| 税率 | 4% |
| 基礎控除額 | 年500万円(事業年度が1年未満の場合は月数按分) |
| 申告期限 | 各課税事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内(原則、法人税と同時) |
3月決算・12月決算など、事業年度の開始日で判定する
「令和8年4月1日以後に開始する事業年度」が対象なので、3月決算法人は2026年4月1日開始(2027年3月期)から、12月決算法人は2027年1月1日開始(2027年12月期)からそれぞれ対象になります。2026年4月〜12月の期間だけを含む事業年度(たとえば2026年3月開始・2027年2月終了の事業年度など、開始日が2026年4月1日より前のもの)は対象外です。開始日がいつかで1年変わるため、決算月ごとに自社がいつから対象になるかを確認しておきましょう。防衛特別法人税の計算方法|「基準法人税額」の正しい定義






防衛特別法人税額 = (基準法人税額 - 500万円) × 4%
ポイントは「基準法人税額」の定義です。国税庁の資料では、基準法人税額は「一定の制度を適用しないで計算した各事業年度の所得に対する法人税の額」と定義されています。ここでいう「一定の制度」とは、所得税額控除・外国税額控除・分配時調整外国税相当額の控除など、法人税額から差し引く各種の税額控除を指します(出典:国税庁「令和7年度 法人税関係法令の改正の概要」防衛特別法人税の創設)。つまり、基準法人税額は、これらの控除を適用する前の(=控除を適用した後の実際の納付税額より大きくなりうる)法人税額である点に注意が必要です。多くの中小企業では所得税額控除・外国税額控除の適用額が小さいため、基準法人税額と実際の法人税額(課税所得×法人税率で計算した額)はおおむね近い金額になります。防衛特別法人税額を求める3ステップ
所得税額控除・外国税額控除などを適用する前の法人税額。中小企業の目安は「課税所得×法人税率」に近い金額。
基準法人税額が500万円以下ならここで課税標準法人税額はゼロになる。事業年度が1年未満なら月数按分。
控除後の課税標準法人税額に4%を掛けた金額が防衛特別法人税額(外国税額控除等の税額控除を適用できる場合あり)。
中小企業への影響はどこまで?免除ラインを正確に計算する






中小法人(軽減税率適用)の実質免除ライン:課税所得 約2,438万円 計算過程:800万円×15%=120万円。残りの(500万円-120万円)=380万円を23.2%で割り戻すと380万円÷0.232≒1,637.9万円。これに800万円を足すと1,637.9万円+800万円≒2,438万円。 ※課税所得が約2,438万円以下であれば、基準法人税額は500万円を超えず、防衛特別法人税額はゼロになります(外国税額控除等がない前提の概算)。
大法人(資本金1億円超等・本則税率23.2%が全額に適用)の場合は、500万円÷0.232≒2,155万円が同様の目安になります。中小法人のほうが軽減税率の分だけ免除ラインが高くなる点がポイントです。「約2,438万円」はあくまで概算値
この金額は、外国税額控除・所得税額控除等の適用がなく、課税所得の全額に中小法人の軽減税率・本則税率をそのまま適用したと仮定した場合の逆算値です。実際には交際費の損金不算入額・各種の税額控除の有無などで基準法人税額は変動するため、正確な判定は決算数値をもとに税理士に確認してください。決算前に確認したい3つのチェックポイント
超えそうなら、決算の2〜3ヶ月前に基準法人税額の概算を出し、防衛特別法人税がいくら発生するかを試算しておく。
適用している場合、500万円の基礎控除はグループ全体で按分される(詳細は後述)。
設立初年度・決算期変更の年度は基礎控除500万円が月数按分され、免除ラインが下がる点に注意。
【シミュレーション】課税所得別の防衛特別法人税額






| 課税所得 | 基準法人税額(目安) | 500万円控除後 | 防衛特別法人税額(×4%) |
|---|---|---|---|
| 500万円 | 75万円 | 0円(控除内) | 0円 |
| 800万円 | 120万円 | 0円(控除内) | 0円 |
| 1,000万円 | 約166.4万円 | 0円(控除内) | 0円 |
| 1,500万円 | 約282.4万円 | 0円(控除内) | 0円 |
| 2,000万円 | 約398.4万円 | 0円(控除内) | 0円 |
| 約2,438万円 | 約500万円 | 0円(ちょうど控除額) | 実質0円 |
| 3,000万円 | 約630.4万円 | 約130.4万円 | 約5.2万円 |
| 5,000万円 | 約1,094.4万円 | 約594.4万円 | 約23.8万円 |
| 8,000万円 | 約1,790.4万円 | 約1,290.4万円 | 約51.6万円 |
| 1億円 | 約2,254.4万円 | 約1,754.4万円 | 約70.2万円 |
| 3億円 | 約6,894.4万円 | 約6,394.4万円 | 約255.8万円 |
- 課税所得2,438万円以下の中小企業 → 実質ゼロ負担(多くの中小企業・成長途上のスタートアップが該当)
- 課税所得3,000万円でも年間5万円程度 → 月4,000円強の増税インパクト
- 影響が明確に大きくなるのは課税所得1億円超の中堅企業以上
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マネーフォワード クラウド会計を見る →あわせて変わった法人税率|軽減税率15%が17%になるケースとは






| 税目 | 税率の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 法人税(軽減税率) | 15%(当期所得10億円超の事業年度は17%) | 年800万円以下の所得部分。令和9年3月31日までに開始する事業年度が対象 |
| 法人税(本則税率) | 23.2% | 年800万円超の所得部分・大法人は全額 |
| 地方法人税 | 10.3% | 基準法人税額に対する税率(令和元年10月1日以後開始事業年度〜) |
| 防衛特別法人税(新設) | 4% | (基準法人税額-500万円)×4%。基準法人税額500万円以下は税額ゼロ |
| 法人事業税・特別法人事業税 | 所得に応じ段階的 | 自治体・所得区分により税率が異なる |
| 法人住民税(均等割) | 年7万円程度〜 | 資本金1,000万円以下・従業者50人以下の目安。赤字でも発生 |
申告・納付の実務ポイント






| 事項 | 内容 |
|---|---|
| 申告書提出期限 | 各課税事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内(原則、法人税と同一のタイミング) |
| 納付期限 | 申告期限と同日 |
| 申告様式 | 法人税・地方法人税の申告書別表に防衛特別法人税の欄を追加 |
| 中間申告 | 法人税の中間申告書を提出すべき法人は防衛特別法人税の中間申告書も提出。令和9年4月1日以後に開始する課税事業年度から適用 |
| 税額がゼロの場合 | 基準法人税額が500万円以下でも、申告書の提出義務(いわゆる零申告)は残る |
決算期が1年未満の場合
課税事業年度が1年に満たない場合は、基礎控除額500万円を12で除し、その課税事業年度の月数を乗じた金額が基礎控除額になります(出典:国税庁「令和7年度 法人税関係法令の改正の概要」防衛特別法人税の創設)。たとえば決算期が6ヶ月であれば、控除額は500万円×6/12=250万円となり、その分だけ実質免除ラインも下がります。設立初年度や決算期変更を行った事業年度は特に注意しましょう。グループ通算制度適用の場合
グループ通算制度(複数の関係会社を1つのグループとして法人税を合算計算する制度)を適用している企業グループでは、基礎控除額の枠がグループ全体の按分計算の対象になります。法人数が多いグループほど1社あたりの実質的な控除額が小さくなりやすいため、グループ内での試算・按分方法は顧問税理士と早めに確認しておくことをおすすめします。防衛特別法人税に備える、根拠のある節税対策






①役員報酬の定期同額給与(今期中の判断が重要)
役員報酬は、定期同額給与(支給時期が1ヶ月以下の一定期間ごとで、各支給時期の支給額が同額である給与)の要件を満たせば全額を損金に算入できます。改定は原則として事業年度開始の日から3ヶ月以内に行う必要があり、期中でむやみに金額を変更すると、変更後の増額分(または一部)が損金不算入になるリスクがあります(出典:国税庁タックスアンサー No.5211「役員に対する給与」)。決算の着地見込みを踏まえ、期初の役員報酬額をどう設定するかが、翌期以降の基準法人税額に大きく影響します。②中小企業経営強化税制(即時償却・税額控除)
中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき対象設備を取得した場合、即時償却(取得価額の全額をその事業年度に損金算入)または取得価額の10%(資本金3,000万円超の法人は7%)の税額控除を選択適用できます。令和7年度税制改正で適用期限が2027年3月31日まで延長されました(出典:国税庁タックスアンサー No.5434「中小企業経営強化税制」)。設備投資を予定している場合、大きな利益が見込まれる決算期に前倒しすることで、課税所得の圧縮につながります。③少額減価償却資産の特例(取得価額40万円未満・2026年4月〜)
中小企業者等が取得した減価償却資産について、取得価額が一定金額未満であれば、その全額をその事業年度に損金算入できる特例です。2026年3月31日までに取得した資産は取得価額30万円未満、2026年4月1日以後に取得した資産は取得価額40万円未満が対象となり、適用期限は2029年(令和11年)3月31日まで延長されています(対象資産の取得価額の合計額は年間300万円が上限。出典:国税庁タックスアンサー No.5408「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」)。パソコン・什器備品など少額の設備投資をまとめて行うタイミングの参考になります。④経営セーフティ共済(倒産防止共済)
取引先の倒産リスクに備えながら、掛金(月額最大20万円・年間最大240万円)を全額損金算入できる制度です。2024年10月1日以降に解約して再加入する場合、解約日から2年を経過するまでの掛金は損金算入できなくなる改正が行われている点に注意してください(節税目的の短期解約・再加入への規制強化。出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)」)。長期保有を前提に活用するのが基本です。根拠を確認できた節税対策4つ(適用期限つき)
期首から3ヶ月以内に決定。期中の増減額は損金不算入リスクがあるため、期初の設計が重要。
即時償却または10%(7%)税額控除。適用期限は2027年3月31日まで。経営力向上計画の認定が必要。
2026年4月以後取得分は40万円未満に拡大。年間合計300万円が上限。適用期限は2029年3月31日まで。
年間最大240万円を損金算入。2024年10月以降、解約後2年以内の再加入は損金算入不可に改正済み。
「必ず節税になる」と断定できるものではありません
上記はいずれも国が定めた制度で、要件を満たせば適法に利用できるものです。ただし、自社の状況によって効果の大小は異なり、要件を誤ると否認されるリスクがあります。個別の適用可否・具体的な効果額は、必ず顧問税理士に確認したうえで実行してください。個人事業主・所得税への影響はあるか






税理士に相談すべきケースとは






- 課税所得が2,000万円を超えている、または今後超えそうな企業:防衛特別法人税の負担が実際に発生する可能性があるため、決算前の試算が有益
- グループ会社がある企業:グループ通算制度における基礎控除500万円の按分方法を確認する必要がある
- 設備投資・役員報酬の見直しを検討している企業:中小企業経営強化税制・少額減価償却資産の特例・定期同額給与の設定タイミングを最適化できる
- 顧問税理士がいない、または見直しを検討している企業:新税制への対応も含め、パートナー選びのよいタイミング
よくある質問(FAQ)
- 防衛特別法人税は赤字の会社にも課税されますか?
-
課税されません。防衛特別法人税の課税標準は基準法人税額であり、赤字で法人税額が発生しなければ基準法人税額もゼロになるため、防衛特別法人税額もゼロです。ただし、法人税の申告義務がある法人は、防衛特別法人税についても申告書(税額ゼロの場合は零申告)の提出が必要です。
- 3月決算の会社と12月決算の会社では、いつから対象になりますか?
-
「令和8年(2026年)4月1日以後に開始する事業年度」が対象なので、3月決算法人は2026年4月1日開始の事業年度(2027年3月期)から、12月決算法人は2027年1月1日開始の事業年度(2027年12月期)から対象になります。開始日がそれより前の事業年度は対象外です。
- 中小企業への影響はどのくらいですか?
-
中小法人(軽減税率適用)の場合、課税所得が約2,438万円以下であれば基準法人税額が500万円を超えず、防衛特別法人税額は実質ゼロです。多くの中小企業がこの範囲に収まると見込まれますが、外国税額控除等がある場合は基準法人税額が変わるため、正確な判定は税理士に確認してください。
- 法人税の中間申告を行っている会社はどうなりますか?
-
法人税の中間申告書を提出すべき法人は、防衛特別法人税の中間申告書も提出する必要があります。ただしこの中間申告の規定は、令和9年4月1日以後に開始する課税事業年度から適用されます。2026年度・2027年度の早い時期はまず確定申告のみの対応となる法人が多いと見込まれます。
- 個人事業主も防衛特別法人税の対象ですか?
-
対象外です。防衛特別法人税は法人税を課される法人のみが対象です。個人については、令和9年(2027年)1月から「防衛特別所得税」が源泉徴収を通じて導入される見込みですが、これは防衛特別法人税とは別の制度です。
- 税額がゼロでも申告書を提出する必要がありますか?
-
必要です。防衛特別法人税確定申告書は、原則として法人税の申告と同じタイミング(事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内)に提出義務があります。基準法人税額が500万円以下で税額がゼロでも、申告書の提出(零申告)は省略できません。
まとめ:防衛特別法人税は「基準法人税額500万円」がボーダーライン
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