MENU

【2025年版】中小企業向け賃上げ促進税制 – 税額控除や繰越控除を解説

目次
この記事で解決できる悩み
  • 賃上げ促進税制の計算方法がわからない
  • 計算手順を具体的に知りたい
  • 「補塡額」と「雇用安定助成金額」の違いがわからない
  • 効果的な税額控除の活用方法を知りたい

令和6年4月1日以降に開始する事業年度から適用される「賃上げ促進税制」が大きく改正されました。この制度を活用すれば、賃上げを行った中小企業は最大で45%もの税額控除を受けられます。

本記事では、制度の概要から具体的な計算方法、申請手続きまで、実務で使える情報を徹底解説します。

ぜいむたん
あの…賃上げ促進税制って聞いたことあるんですが、具体的にどういう制度なんでしょうか?うちの会社でも使えるのかな…
ゆーた
そやな、使えるで!この制度は従業員の給与を増やしたら、その増加分の一部を法人税から差し引けるっていう、かなりお得な制度やねん。国税庁のタックスアンサーでも解説されとるわ。

中小企業向け賃上げ促進税制の概要

中小企業向け賃上げ促進税制は、従業員の給与を増加させた中小企業者等に対して税額控除を行う制度です。令和6年度税制改正では制度が大幅に拡充されました。

制度の目的

この制度は、中小企業の賃上げを税制面から後押しし、労働者の所得向上を通じて経済全体の好循環を実現することを目指しています。

企業の収益拡大が従業員の所得向上につながることで、消費増加や景気回復に貢献するという政策的意図があります。

適用対象者

  • 中小企業者等(資本金1億円以下の法人など)
  • 青色申告書を提出する常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主
ぜいむたん
中小企業者等って具体的にどんな会社が当てはまるんですか?
ゆーた
中小企業者等には、資本金1億円以下の法人や協同組合等が含まれるねん。ただし、大企業の子会社などは対象外やから注意してな。詳しくは国税庁の中小企業者等の範囲も参考にしてみてや。

適用期間

  • 令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する事業年度
  • 個人事業主については、令和7年から令和9年までの所得

税額控除の基本仕組み

賃上げ要件控除率
雇用者給与等支給額が前年度比1.5%以上増加15%
雇用者給与等支給額が前年度比2.5%以上増加30%

さらに、次の上乗せ要件を満たすことで、控除率がアップします

上乗せ要件追加控除率
教育訓練費が前年度比5%以上増加など10%
くるみん認定・えるぼし認定(2段階目以上)等の取得5%
ぜいむたん
最大で45%も控除できるんですね!でも雇用者給与等支給額って何ですか?
ゆーた
雇用者給与等支給額っていうのは、簡単に言うと従業員全員に支払った給与やボーナスなどの合計額のことやねん。役員報酬や役員の親族への給与は含まれへんから注意が必要やで。

賃上げ要件の詳細

賃上げ促進税制を受けるためには、まず雇用者給与等支給額の増加率を算出する必要があります。

雇用者給与等支給額1.5%増加要件

雇用者給与等支給額が前事業年度と比べて1.5%以上増加している場合、控除対象雇用者給与等支給増加額の15%が税額控除の対象となります。

雇用者給与等支給額の計算方法

計算には、国内雇用者に対する給与等の支給額の総額を基準とします。

給与支給額から「補塡額」を控除し、「雇用安定助成金額」や「役務の提供の対価として支払を受ける金額」は別途調整します。

重要なのは、「補塡額」は控除されますが、「雇用安定助成金額」は控除されないという点です。

ぜいむたん
計算方法がわかりません…実際どうやって計算するんですか?
ゆーた
まず前事業年度と適用事業年度の給与支給額を確認するんや。次に「補塡額」として出向者の給与負担金などがあればその金額を控除する。一方、「雇用安定助成金額」は別途処理するから、間違えないようにしてな。これらの数値から増加率や控除額を計算していくねん。具体的な計算例を下の表で見てみよか。

雇用者給与等支給額2.5%増加要件

雇用者給与等支給額が前事業年度と比べて2.5%以上増加している場合は、控除対象雇用者給与等支給増加額の30%が税額控除の対象となります。

用語解説:控除対象雇用者給与等支給増加額

控除対象雇用者給与等支給増加額とは、「適用事業年度の雇用者給与等支給額」から「前事業年度の雇用者給与等支給額」を控除した金額です。

ただし、調整雇用者給与等支給増加額が上限となるため注意が必要です。

実際の計算例を見てみましょう:

前事業年度の雇用者給与等支給額
5,000万円
適用事業年度の雇用者給与等支給額
5,200万円

実務での計算例

ここでは実際の計算例を紹介します。以下は架空の中小企業A社の事例です。

項目前事業年度適用事業年度計算式/結果
国内雇用者給与等支給額9,500万円9,900万円
他から支払を受けた給与の額100万円150万円控除対象
雇用安定助成金等の額50万円0円別途控除
調整後雇用者給与等支給額9,350万円9,750万円9,900万円-150万円
増加率(9,750万円-9,350万円)÷9,350万円=4.28%
雇用者給与等支給増加額9,750万円-9,350万円=400万円
基本控除率30%(2.5%以上増加)
基本税額控除額400万円×30%=120万円

計算のポイント

賃上げ促進税制の計算では、以下の情報を正確に集計することが重要です:

  • 前事業年度と適用事業年度の「給与等支給額」「補塡額」「雇用安定助成金額」
  • 前事業年度と適用事業年度の「教育訓練費の額」
  • 事業年度の月数が異なる場合は適切に調整する

上乗せ要件の詳細

基本の控除率に加えて、さらに控除率を上乗せできる制度があります。これを活用することで、最大45%の税額控除を実現できます。

上乗せ要件①:教育訓練費増加要件

以下の2つの条件を両方満たすと、控除率が10%上乗せされます:

  • 教育訓練費の額が前事業年度比で5%以上増加していること
  • 教育訓練費の額が適用事業年度の雇用者給与等支給額の0.05%以上であること
ぜいむたん
教育訓練費の計算方法を教えてください。具体的には何の費用が含まれるんですか?
ゆーた
教育訓練費は前事業年度と適用事業年度の額を比較して、5%以上増加してるかどうかを計算するんや。実務では、「採用教育費」「研修費」などの勘定科目から教育訓練に関わる費用を抽出して計算するんやで。freeeの知識ベースにも参考になる情報があるわよ。

教育訓練費に含まれる費用

  • 研修施設やセミナールームの賃借料
  • 教育訓練のための外部委託費
  • 従業員を外部研修や講習会に参加させる費用
  • 資格取得・技能習得の費用補助

実務での教育訓練費抽出方法

多くの企業では教育訓練費を単独の勘定科目として管理していないため、以下の勘定科目から教育訓練に関する支出を抽出する必要があります:

  • 「採用教育費」教育訓練に関する部分
  • 「研修費」の全額または一部
  • 「福利厚生費」から社員研修や資格取得支援に関する費用

抽出する際は内容を確認し、教育訓練の目的で支出された費用かどうかを判断することが重要です。

項目前事業年度適用事業年度計算式/結果
教育訓練費の額80万円95万円
増加率(95万円-80万円)÷80万円=18.75%
雇用者給与等支給額に占める割合95万円÷9,900万円=0.96%(0.05%以上)
要件判定適用可(5%以上増加)
上乗せ控除率10%
上乗せ税額控除額400万円×10%=40万円
合計税額控除額120万円+40万円=160万円

上乗せ要件②:子育て両立・女性活躍支援要件

厚生労働省が認定する「くるみん認定」や「えるぼし認定(2段階目以上)」を取得していると、控除率が5%上乗せされます。

ぜいむたん
上乗せ要件はどちらか一方でもいいんですか?それとも両方必要ですか?
ゆーた
どちらか一方でも適用されるし、両方満たせば合計で15%上乗せされるんや。だから、最大で45%の税額控除を受けられるわけやね。基本適用されへんから、まずは教育訓練費の要件から検討してみるといいと思うわ。freeeの賃上げ促進税制解説も参考になるで。

繰越控除措置(令和6年度からの新設)

令和6年度税制改正では、新たに繰越控除措置が導入されました。これにより、賃上げを実施した年度に控除しきれなかった金額について、最長5年間の繰越しが可能になりました。

ぜいむたん
赤字の年でも繰越しができるんですか?
ゆーた
そうやねん。例えば令和6年度に賃上げをして税額控除の要件を満たしたけど、赤字で法人税がゼロやった場合でも、税額控除額は未控除額として翌年度以降に繰り越せるんや。
項目令和6年度令和7年度令和8年度
法人税額0円(赤字)200万円300万円
控除可能額160万円残り160万円残り40万円
当期控除額0円120万円(※)40万円
繰越残額160万円40万円0円
※法人税額の上限(200万円×20%=40万円)の範囲内で適用

繰越控除の重要ポイント

未控除額が発生した事業年度以後の各事業年度の確定申告書に「繰越税額控除限度超過額の明細書」を必ず添付してください。この明細書の提出がないと、未控除額は繰り越せません。

申請手続きと必要書類

賃上げ促進税制を利用するためには、確定申告時に必要書類を提出する必要があります。

必要書類リスト

  • 確定申告書
  • 控除対象雇用者給与等支給増加額の計算明細書
  • 控除を受ける金額の明細書
  • 適用額明細書(法人のみ)
  • 繰越控除制度を利用する場合は、繰越税額控除限度超過額の明細書

計算上の注意点

賃上げ促進税制を適用する際は、以下の点に注意が必要です。

決算期変更時の調整方法

前事業年度と適用事業年度で月数が異なる場合は、雇用者給与等支給額の調整が必要です。

  • 前事業年度が12か月で適用事業年度が6か月の場合:前事業年度の雇用者給与等支給額×6/12
  • 前事業年度が6か月で適用事業年度が12か月の場合:前事業年度の雇用者給与等支給額×12/6
ぜいむたん
「補塡額」と「調整雇用者給与等支給増加額」の違いがよくわかりません
ゆーた
「補塡額」は他から受け取った給与負担金などで、雇用者給与等支給額から差し引く項目やねん。一方、「調整雇用者給与等支給増加額」は雇用安定助成金額を控除した給与支給額の増加分やわ。計算する際は、これらの違いを押さえておくことが大切やで。
賃上げ促進税制は会社設立初年度でも利用できますか?

会社設立初年度は「前事業年度」がないため、原則として賃上げ促進税制は適用できません。この制度は前事業年度からの給与増加率を基準としているためです。2期目以降に前年比での賃上げを実施した場合に適用可能になります。

賃上げ促進税制は複数年にわたって適用できますか?

はい、適用期間内であれば毎年適用できます。ただし、毎年の申請が必要で、各事業年度ごとに要件を満たす必要があります。例えば、令和6年度に適用を受けても、令和7年度は別途その年の要件を満たす必要があります。

法人成りした場合、個人事業時代の給与額と比較できますか?

法人成りした場合、原則として前事業年度がないため初年度の適用は難しいです。しかし、特例として実質的に事業の同一性が認められる場合には、個人事業時代の給与支給額との比較が認められるケースがあります。税理士に確認することをお勧めします。

まとめ:賃上げ促進税制の活用ポイント

中小企業向け賃上げ促進税制は、従業員の給与を増やすことで税負担を軽減できる大変有利な制度です。

令和6年度から導入された繰越控除措置により、さらに使い勝手が向上しました。

STEP
給与水準の確認と計画

雇用者給与等支給額を前年度比で1.5%以上(または2.5%以上)増加させる計画を立てる

STEP
上乗せ要件への対応

教育訓練費増加などの上乗せ要件を満たすと最大45%の税額控除が可能になる

STEP
必要書類の準備

確定申告時に必要書類を漏れなく提出する

STEP
繰越控除の活用

赤字決算の場合でも繰越控除措置により最大5年間控除を繰り越せる

ゆーた
今日の授業は終わり!また来てや!!
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次