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【損害賠償責任保険】税理士が最も間違いやすい消費税申告の落とし穴

目次

この記事でわかること

  • 税理士が間違いやすい消費税申告の具体的ポイント
  • 簡易課税と原則課税に関する届出の注意点
  • 課税事業者選択に関する実務上の落とし穴
  • 一括比例配分方式と個別対応方式の適切な選択方法
  • インボイス制度導入後の新たな注意点

税理士が最も間違いやすい消費税申告の落とし穴

消費税申告時の注意点を実務的な観点で解説します。あらゆる税金の申告の中で、税理士が最も誤って申告しているのが消費税です。

ぜいむたん
消費税って法人税みたいに別表が沢山あるわけでもなければ
所得税のように個人の事情を考慮しない分、
間違える要素がないような気がするんです…
ゆーた
いやいや、そんなことないで!
実際の税理士損害賠償責任保険の調査によれば事案件数と金額は以下のとおりや。データが全てを物語ってるわ。
税理士損害賠償責任保険の事案分析グラフ
税理士賠償責任保険の集計による税目別事故件数と平均支払額
ぜいむたん
細かい税区分のミスなら多そうだけど件数だけじゃなくて金額も多いんですね♪

届出関連が最も多く、インボイスの導入に伴う制度改正や特例措置のことも考えると今後もリスクが高い税目と言えます。

この記事では、税理士が実務で間違いやすい消費税申告のポイントと、それを防ぐための具体的対策を解説します。特にインボイス制度導入後の注意点についても触れていきます。

消費税申告で注意すべき5つのポイント

消費税申告の注意点をざっくり紹介すると以下のとおりです。

  • 簡易課税選択届出書(不適用届出書)の提出失念
  • 課税事業者選択届出書(不適用届出書)の提出失念
  • 簡易課税と原則課税の誤選択
  • 免税事業者と課税事業者の誤選択
  • 一括比例配分方式と個別対応方式の誤選択
ゆーた
主な注意点と実務上取るべき対応策について解説していくわ!はじめは届出書関連のミスから見ていこか。

届出書関連の注意点とミス防止策

簡易課税選択届出書/簡易課税選択不適用届出書の提出失念

この件に関しては、2つのミスが主な原因となっています。

  1. 期限の勘違い:簡易課税の届出は前期末までにするべきこと
  2. 履歴確認の不足:過去の消費税に関する届出の未確認

まず、簡易課税関連の届出は申告を行う期に入ってからでは遅いというのがよくある間違いの一つです。
一見すると当たり前のことで間違えているように思えませんが、税理士は決算期から2ヶ月後を目安に税務申告を行います。
申告を行う前に対応をしておかないといけないというのがミスの原因になっていることが多いでしょう

ぜいむたん
税理士さんたちは確定申告の時期になって急いでいるときに気づくことが多いんですか?
ゆーた
そうなんや。ワイも新人の頃にやらかしてしもたことあるわ。確定申告の時期に「あ、簡易課税にしたかったのに届出出してへんかった!」って気づいても、もう手遅れやねん。
届出の種類提出期限特記事項
簡易課税選択届出書適用開始課税期間の前日まで2年間継続適用が原則
簡易課税選択不適用届出書適用やめる課税期間の前日まで2年間継続した後に提出可能
課税事業者選択届出書適用開始課税期間の前日まで2年間継続適用が原則
課税事業者選択不適用届出書適用やめる課税期間の前日まで2年間継続した後に提出可能
ぜいむたん
全部「前日まで」なんですね。これは覚えておかないと!
ゆーた
そやねん!「前日まで」これ超重要やで!特に3月決算の法人やと、「来期は簡易課税にしよう」と思ったら3月31日までに出さなあかんねん。4月になったら手遅れや。

過去の消費税に関する届出の確認をクライアントに必ず行う

また、過去の届出の確認を行うことも重要です
簡易課税の届出であれば、課税売上高が変動したり、免税事業者になったとしても、過去の簡易課税選択届出書や簡易課税選択不適用届出書の効果は無期限有効となります。
したがって、クライアントに対して過去に消費税関連の届出を行なったかどうかを念入りに確認しましょう。

ぜいむたん
特に今年度から課税事業者となる場合には、設立と同時に出していないかなど要注意ですね♪
ゆーた
その通りや!実はワイの失敗談なんやけど、引継ぎ先のクライアントで過去の届出確認せんと申告したら、なんと設立時に簡易課税届出出しとったんや。結果、原則課税で申告してもうてクライアントに多額の追徴課税が発生してもうた…
ぜいむたん
それは大変でしたね…どうやって解決したんですか?
ゆーた
もう泣く泣く税理士賠償責任保険使わせてもらったわ。それ以来、新規のクライアントさんには必ず税務署に「消費税課税事業者届出等の履歴確認書」を請求するようにしてるんや。これで過去の届出歴がバッチリわかるからな!

実務上の対応策

  • 新規顧問契約時に過去の消費税届出書の控えを必ず確認する
  • 年間スケジュールに「次年度消費税届出検討」を組み込む
  • e-TAXの利用者情報から過去の提出歴を確認する
  • 税務署に「消費税課税事業者届出等の履歴確認書」を請求する

簡易課税と原則課税の誤選択

簡易課税と原則課税の選択ミスは主に以下の2点が原因です。

  • 継続適用ルールの見落とし:簡易課税は原則として2年間適用を継続しなければ原則課税に変更できない
  • 設備投資計画の未考慮:翌年度に設備投資や赤字による還付が見込まれているのに簡易課税不適用届出書の提出を失念

特に問題となるのは、将来の設備投資や事業拡大を考慮せずに簡易課税を選択してしまうケースです。クライアントから翌年度に大きな設備投資の計画があることを聞いていたにもかかわらず、簡易課税不適用届出書の提出を失念して簡易課税で申告してしまうと、還付を受けられなくなります。

ぜいむたん
設備投資がある場合は原則課税の方が有利なんですね?
ゆーた
その通りや!例えば5,000万円の設備投資をした場合、消費税は500万円かかるわけやけど、原則課税なら全額控除できる可能性があるんや。でも簡易課税やと、みなし仕入率でしか控除できへん。業種にもよるけど、最大でも70%程度やから、150万円以上は余分に税金払うことになってまうねん。
ゆーた
このようなケースは過去に高額な損害賠償請求につながっているねん。事前にクライアントとの十分な打ち合わせが必要や!
ぜいむたん
税理士さんとして、クライアントとの定期的なミーティングは欠かせないんですね。
ゆーた
そのとおり!特に12月頃には翌年の事業計画をヒアリングする機会を必ず作っとくべきやな。「来年大きな設備投資の予定ありますか?」って一言聞くだけで、選択ミスを防げるんや。

課税方式の選択と計算に関する注意点

一括比例配分方式と個別対応方式の誤選択

一括比例配分方式と個別対応方式の選択ミスは、主に以下の2点に由来します。

  • 一括比例配分方式を選択した場合には2年連続強制適用
  • 課税区分の誤選択
ぜいむたん
一括比例配分方式って、2年連続で使わないといけないんですか?
ゆーた
せやねん!これが落とし穴なんよ。一度一括比例配分方式を選んだら、次の課税期間も強制的に一括比例配分方式になってまうんや。これ、多くの税理士が見落としがちなポイントやわ。

一括比例配分方式の二年連続強制適用

昨年一括比例配分方式を利用していた場合、今年度のシミュレーションの結果、個別対応方式が有利であったとしても一括比例配分方式を使用しなくてはなりません。

この規定を失念して、昨年一括なのに今年度個別対応で税額を計算してしまうミスが多いのです。

ぜいむたん
引継ぎ案件だと、前任者がどちらの方式を使っていたか確認するのも大事ですね。

課税区分の誤選択

消費税法の勉強では、課税売上にのみ対応する課税仕入(課のみ)と共通対応の課税仕入(共通)と非課税売上げにのみ要する課税仕入れ(非のみ)が問題文から判別できますが、現実ではそううまくいきません。

ぜいむたん
大半があいまいなものといっても過言ではないですね♪
ゆーた
せやねん!実務では「これは絶対に課のみやな」って判断できるもんは意外と少ないんや。例えば事務所家賃。一見「共通」に見えるけど、その事務所で非課税売上の業務だけやってるなら「非のみ」になるし。現場は複雑やねん。

そこで、実務的には売上原価計上のものを課のみ、販管費を共通として分類して個別対応方式と一括比例配分方式の選択を行うことが多いです。

不動産賃貸を行なっている企業以外の中小企業であれば基本的には課税売上割合が95%を超えている場合が多いため、クライアントに確認した上で保守的に一括比例配分を使うケースが多いです。

中途半端に個別対応を選択して課のみが否定されるケースもあるので注意をしましょう。

しかし、販管費を共通として一括で考えてしまうからこそ、居住用賃貸建物の購入や居住用賃貸建物の販管費に要した費用を非のみではなく共通として選択してしまうというミスが多いのです

ぜいむたん
実例を教えていただけますか?
ゆーた
例えばな、ある経営者が会社名義でマンション買って、社宅として使ってる場合を考えてみ。この社宅の購入費用は「非のみ」になるんやけど、間違えて「共通」にしてしまうミスがよくあるんや。税務調査でよく指摘される項目やから要注意やで!

特に金額が大きな課税仕入は課のみとなるか共通となるか慎重に検討する必要があります。

実務上のアドバイス

  • 課税仕入の区分判定に迷う場合は、保守的に「共通対応」に区分する
  • 税務調査で否認されやすい「課のみ」区分は、明確な証拠がある場合のみ適用する
  • 課税売上割合が95%以上の場合は、課税仕入れ全額を控除できる点に注意
  • 高額な設備投資がある場合は個別シミュレーションを行う
  • 居住用不動産関連費用は「非のみ」に区分する原則を守る

インボイス制度導入による消費税申告の新たな注意点

インボイスの導入によって消費税申告はさらに複雑になり、税務署による指摘事項も増加することになると思われます。

ぜいむたん
インボイス制度って実務でどんな影響があるの?
ゆーた
結論から言うと以下のような点に特に注意が必要やねん。インボイスは「適格請求書」のことやけど、これがないと仕入税額控除が受けられなくなるんや。
  • 適格請求書の確認義務:請求書がない場合にはそもそも不課税として処理する
  • 経過措置の適用可否:請求書があり、税額の記載がある場合には経過措置
  • 控除対象外取引の識別:適格請求書発行事業者以外からの仕入は仕入税額控除が取れない

インボイスや2割特例に関する詳細は、別の記事で詳しく解説する予定です。

会計士からのワンポイントアドバイス

ぜいむたん
実務では具体的にどんな対策を取ればいいの?
ゆーた
現場の経験から言うとな、チェックリストとカレンダー管理が超効果的やねん!特に消費税申告は中間がなんどもあったり、期限が複雑やから、クライアントごとのスケジュール管理表を作成することをお勧めするわ!
ゆーた
ワイは毎年10月頃に翌年の消費税に関する届出書の提出検討を始めるんや。クライアントの決算書や試算表を確認して、シミュレーションを行うんよ。これで1月〜3月の繁忙期に慌てることなく対応できるわけや。

消費税申告の実務チェックリスト

  1. 過去の消費税届出書類の確認(初回は特に重要)
  2. クライアントの設備投資計画のヒアリング
  3. 原則課税と簡易課税のシミュレーション比較
  4. 個別対応方式と一括比例配分方式の比較検討
  5. 非課税売上がある場合の課税区分の厳密な検討
  6. インボイス対応状況の確認(取引先の登録番号確認含む)

よくある質問

ぜいむたん
過去に提出した届出書の控えがない場合はどうすればいいの?
ゆーた
税務署に「消費税課税事業者届出等の履歴確認書」を請求するとええねん!これで過去の届出状況を確認できるから安心やわ。e-TAXの場合はメッセージボックスの履歴でも確認できるでな。
ぜいむたん
簡易課税を選択していたけど、大きな設備投資が急に決まったらどうすればいいの?
ゆーた
残念ながら、簡易課税選択届出の効果を途中でやめることはできへんねん。でも設備投資の時期をずらすことで、原則課税に戻した後に投資するという対策は取れるで!長期的な事業計画の相談が重要なんや。

まとめ:消費税申告ミスを防ぐためのポイント

消費税申告は一見シンプルに見えて、実は多くの落とし穴があります。特に届出書の提出期限管理と過去の履歴確認が重要です。税理士が間違いやすいポイントを理解し、事前に対策を講じることで、クライアントと自分自身を守りましょう

消費税申告の注意点まとめ

  • 届出書の提出期限は「適用する期間の前日まで」と覚えておく
  • 簡易課税と原則課税は2年間の継続適用が原則
  • 一括比例配分方式を選択した翌年は強制的に一括比例が適用される
  • 課税区分判定は保守的に行い、特に高額項目は慎重に検討する
  • 新規顧問契約時には過去の消費税届出書を必ず確認する

消費税のミスは高額な賠償につながることもあります。日頃から情報をアップデートし、クライアントとのコミュニケーションを密に取ることが、リスク回避の最善策です。

ゆーた
今日の授業は終わりや!また来てな!!
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