- 認定利息って何?いつ必要になるのか知りたい
- 役員への貸付金に利息をつけていないけど、税務上問題ないの?
- 認定利息の計算方法を具体的に教えてほしい
- 税務調査で指摘されないための対策を知りたい
会社から役員や従業員に無利息・低利で貸付を行っていると、税務上「認定利息(みなし利息)」という問題が発生します。
特に中小企業のオーナー経営者は要注意です。本来受け取るべき利息を取っていないと、税務調査で指摘されるリスクがあります。
この記事では、認定利息の基礎知識から計算方法、税務上の処理まで徹底解説します。実務で使えるExcel計算シート(テンプレート)の活用法も紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。




認定利息(みなし利息)とは何か – 基本概念と法的根拠
認定利息とは、本来受け取るべき利息相当額を税法上擬制的に認定するものです。
法人が役員や従業員、親族などに対し無利息や低利で金銭を貸し付けた場合、本来であれば受け取っているはずの利息分を会社の利益(受取利息)として計上し、課税対象にする仕組みを指します。
つまり、実際には受け取っていない利息を「認定」して益金に算入し、税負担の公平を図る制度です。
法的根拠と関連する税法
認定利息に関する規定は、法人税法や所得税法、さらに関連する通達で整備されています。
認定利息の法的根拠
- 法人税法第34条(同族会社の行為計算否認規定)
- 法人税法第37条(寄附金の損金不算入に関する規定)
- 所得税基本通達36-49(役員や従業員への低利貸付に係る経済的利益)
認定利息と普通の利息の違い
- 実際の利息:契約に基づき実際に支払われる収益
- 認定利息:契約で定めた利息がない場合でも税務上強制的に計上される利息
- 会社から見ると認定利息は「受取利息(収益)」として計上
- 借り手(個人)から見ると「経済的利益の供与」(利息相当分を負担しなかった利益)
認定利息は税務上の経済的利益の一種であり、実際の利息収受がなくても課税上はあったものとみなされる点が重要なポイントです。
認定利息が適用される状況と具体的なケース
認定利息(みなし利息)の適用される典型的なケースは、関係者間での無利息・低利の貸付です。以下に具体例を挙げ、その状況を解説します。
会社から役員への無利息貸付
中小企業でよく見られるのが、社長や役員が会社資金を一時的に借り上げるケースです。
役員貸付金として社内で計上されますが、契約上利息を付けていない場合、税務上は適正利息との差額を認定利息として計上する必要があります。
社長が1年間無利息で1,000万円を借りている場合、後述する基準利率で算定した利息(例:令和5年なら0.9%で9万円)が認定利息として課税対象となります。



役員が会社資金を持ち出しているケースのことですか?



そうやね!勘定科目に関係なく、貸付金や仮払金など会社から資金を持ち出している場合が該当するで!!
会社から親族・従業員への低利貸付
社員や役員の親族など特別な関係者に市場より低い利率で貸し付ける場合も対象です。
社員に住宅資金を年0.5%で貸し付けた場合、市中金利との差額部分が経済的利益とみなされ、その差額が給与(賞与)として課税されるケースがあります。
給与課税が不要となる例外
- 災害時の緊急貸付
- 住宅資金等で一定条件を満たす場合
- 会社の事業遂行上必要な貸付
同族会社間の無利息貸付
親会社と子会社、兄弟会社といった同じオーナーグループ内の法人間で無利息融資を行うケースです。
親会社が子会社に資金を無利息で貸し付けた場合、本来子会社から受け取るべき利息を放棄して子会社に利益移転させたと考えられます。
同族会社間貸付の税務処理
- 貸手の親会社側:放棄した利息相当額が寄附金とみなされ、税務上寄附金として損金不算入になる可能性
- 借手の子会社側:利息を支払わずに済んだ分の経済的利益が受贈益とされる可能性
- 完全親子関係の特例:100%親子関係では寄附金を益金不算入とする特例もあり
同族会社間では利益の移転(租税回避)と見なされやすいため、特に注意が必要です。



グループ会社の場合は税務署に目を付けられやすいから要注意や。金銭の貸借がある場合には利息を取っといた方がええで。
認定利息の計算方法 – 利率の決め方と計算式
認定利息の計算は、基本的に「貸付金元本 × 適正利率 × 貸付期間」で求めます。
ポイントは「適正利率」をいかに決定するかと、貸付期間が年度をまたぐ場合の取扱いです。
適正利率の決定:国税庁公表利率や借入金利の参照
自己資金を貸し付けている場合は、その貸付を開始した年の「No.2606 金銭を貸し付けたとき」に基づく年利を使います。
貸付実行年 | 認定利息計算に用いる利率(年) |
---|---|
平成22~25年 | 4.3% |
平成26年 | 1.9% |
平成27~28年 | 1.8% |
平成29年 | 1.7% |
平成30~令和2年 | 1.6% |
令和3年 | 1.0% |
令和4~令和5年 | 0.9% |
令和4年(2022年)以降の貸付は年0.9%の利率で計算します。今後利率が改正された場合は国税庁の公告(租税特別措置法関係)を確認してください。
認定利息の計算式と計算例
基本の計算式は「貸付金元本 × 適正利率 × 貸付期間」とシンプルです。実務でよくあるケースを例に、具体的な計算方法を解説します。
【例1】年間通しての貸付
ある会社が役員に対し令和5年4月1日に1,000万円を貸し付け、年度末(令和6年3月31日)まで返済がなかったケースを考えます。
認定利息額 = 10,000,000円 × 0.9% × 365日/365日 = 90,000円
この90,000円が会社の受取利息(みなし利息)として計上され、法人税の課税所得に含まれます。



実務的には日数より月数で計算することの方が多いで!
例2】期間中に部分返済があった例
会社が役員に令和6年1月1日に1,000万円を貸し付け、同年7月1日に200万円返済、さらに10月1日に300万円返済したとします(利息は契約上ゼロ)。
令和6年の利率は仮に0.9%とします。この場合、期間を分割してそれぞれ認定利息を計算します。
期間 | 期首貸付金残高 | 認定利息額 |
---|---|---|
1月~6月(6か月) | 10,000,000円 | 45,000円(10,000万円×0.9%×6/12) |
7月~9月(3か月) | 8,000,000円 | 18,000円(8,000万円×0.9%×3/12) |
10月~12月(3か月) | 5,000,000円 | 11,250円(5,000万円×0.9%×3/12) |
合計(年間) | – | 74,250円 |
返済や追加貸付がある場合は期間ごとに元本残高を確認して認定利息を算出します。令和6年分の認定利息合計は74,250円となります。
認定利息の計算は単利計算で行います。前年に認定利息を計上して未収利息が残っていても、それに対し翌年さらに利息を乗せるような複利計算はしません。
Excelで簡単!認定利息計算シートの活用方法
認定利息の計算は複数期間に及ぶと煩雑になりがちですが、Excelシートを活用することで効率的に計算・管理できます。
特に役員貸付金が長期化していたり、役員からの借入金(会社から見れば借入)と相殺したりする場合は、Excelで計算式を組むとミスを防げます。
エクセル計算シートの作り方のポイント
- 月ごとの貸付金期首・期末残高を一覧にし、平均残高や期間を計算
- 複数の貸付・借入が混在する場合は、MAX関数で純額の正の部分にのみ利息計算
- 端数処理(円未満の端数)にも注意
- 過去の貸付分も含めて一覧管理できるようにする
認定利息計算用のExcelテンプレートは別記事で無料配布しています。サンプルファイルを活用して、毎月の利息計上や残高管理にお役立てください。


認定利息の正しい仕訳方法
認定利息を計上する際の仕訳方法を、具体的なケースごとに解説します。
基本的な仕訳パターン
決算時に認定利息を計上する基本的な仕訳は以下のとおりです。
実際に利息を受け取った場合の仕訳:
役員賞与認定された場合の仕訳
認定利息が役員賞与として認定された場合は、以下のような処理になります。
実務上の注意点 – 貸付金管理・契約書整備・税務調査対応
貸付金管理と資金流出の抑制
役員貸付金が慢性化すると毎期認定利息を計上する羽目になり、会社の法人税負担が増えます。
資金繰りが厳しいからと安易に会社資金を役員が使い込むことのないよう、日頃から役員貸付金残高を管理しましょう。
- 役員報酬を増やして持ち出しを減らす
- 一時的な立替は短期間で清算する
- 早期に返済計画を立てる
- 役員報酬から天引きで返済する方法も検討
契約書の整備と返済条件
会社と役員・親族との間で金銭消費貸借を行う際は、契約書を作成しておくと安心です。
契約書に記載すべき項目
- 貸付金額
- 貸付日
- 返済期限(明確な期限設定)
- 利率(国税庁公表利率以上)
- 返済方法(一括・分割の別)
- 遅延損害金の定め
- 契約解除条項
契約書には上記項目を明記し、双方署名押印します。これにより当該貸付があくまで貸付(返済義務あり)であることを示せます。
返済期限の定めが「出世払い」「催促なし」等あいまいだと返済義務なしと判断されかねません。明確な期限を設定しましょう。
税務調査での指摘事項
役員貸付金やグループ内貸付は税務調査で注目されやすい項目です。
調査官は貸借対照表の役員貸付金勘定や借入金勘定をチェックし、契約書の有無や利息計上状況を確認します。
税務調査での主な指摘事項
- 認定利息の計上漏れ
- 契約書の不備または不存在
- 返済実績の欠如
- 利率が適正利率を下回っている
- 長期間にわたる未返済状態
日頃から「指摘される前に自主的に適切処理」を心がけ、エビデンス(契約書や利息計算記録)を整備しておきましょう。
認定利息の税務上の取り扱い – 法人税・所得税・消費税の観点
法人税上の益金算入
法人が認定利息を計算すべき貸付を行っている場合、原則としてその利息相当額を受取利息(益金)に算入します。
現実に利息を受領していなくても、税務調整で益金に加算することになります。
法人税上の注意点
- 会社が自発的に決算で未収利息計上していればそのまま課税所得に含まれる
- 計上していなければ調査で益金漏れとして指摘される
- 認定利息が役員への給与認定される場合、法人税法上の損金算入要件を満たさないと損金不算入
- 認定利息相当額を役員報酬とみなされた場合、会社は益金が増え損金は増えない(二重課税的な不利扱い)となる可能性
同族会社間の無利息融資では、貸手側で利息相当額が寄附金(損金不算入)とされ、借手側で受贈益計上(課税)または益金不算入(グループ税制適用時)といった処理が行われます。



給与認定を避けるためにも、長期の貸付は利息を取っておいた方がええで!
所得税・贈与税上の扱い
認定利息は法人側の概念ですが、その裏で個人側にも影響があります。
会社から役員・使用人への無利息貸付では、その利差益は経済的利益=みなし給与として所得税課税対象となります。
給与課税不要の例外
- 災害時の貸付
- 社内利率が合理的な場合
- 小額の場合
親族間貸付では、無利息で借りた側に贈与税のリスクが生じます。
親子間など特別の関係での無利息貸借は「利息分をタダでもらった=贈与」とみなされ得ます。その利息相当額が年間110万円(贈与税の非課税枠)を超えれば贈与税申告・納税が必要です。
返済義務が事実上ないと判断されれば借りた元本全額が贈与認定される厳しいケースもあります。会社→役員の貸付金が贈与認定となった場合、税務上は役員賞与(または配当)と認定し、法人側は役員報酬の損金算入不算入や源泉所得税の徴収・納付漏れが指摘されるおそれがあります。
消費税の扱い
金融取引に係る利息は消費税法上非課税取引に分類されています。
銀行預金の利息や貸付金の利息は非課税であり、認定利息も形式上は「受取利息」の一種なので消費税は課されません。
よくある質問と回答(FAQ)
- 認定利息の利率は具体的に何を使えばよいのでしょうか?
-
基本的には国税庁が公表する利率(基準利率)を使用します。
この利率は毎年変動し、令和4年以降は年0.9%となっています(令和3年は1.0%、令和2年以前は1.6%以上)。国税庁のサイト(タックスアンサー)や租税特別措置法の通達で数値が公開されていますので、「みなし利息 国税庁」などで検索して最新の利率を確認してください。
- 役員に返済義務がなければどうなるのですか?
-
もし役員に返済義務がない(事実上返さなくてよい)貸付だと税務署に判断された場合、単に認定利息の問題にとどまらず、貸付金そのものが別の課税対象とみなされる可能性が高いです。
具体的には、その貸付金は名目こそ「貸付」ですが、実質は会社から役員への経済的な供与(利益移転)と見做されます。
したがって税務上は、会社が役員に贈与・賞与したものとして扱われるおそれがあります。
- 法人税: 貸付金を回収不能として貸倒損失に計上しても、それが役員への一方的な供与であれば損金算入は否認されます。むしろその金額は役員賞与ないし役員への寄附金と認定され、損金不算入となります。
- 所得税: 役員個人側では、会社からの金銭供与を給与所得(役員賞与)として課税される可能性があります。また、役員がその会社のオーナーであれば、みなし配当とみなされ、配当所得課税される可能性もあります。
- 認定利息は実際に利息を払わなくても計上すべきですか?
-
はい、実際に利息を受け取っていなくても計上すべきです。
認定利息はあくまで税務上の擬制計上なので、現金の授受有無に関わらず発生します。会社としては未収の利息であっても決算で収益計上しなければなりません。
一方で、その利息を相手から徴収するかどうかは任意ですが、徴収しない場合でも翌期以降も未収利息として債権管理を続けることになります。
税務的には未収のまま放置しても複利で増えることはありませんが、長期間未収だと「結局回収しない=事実上利息免除では?」と見られる恐れがあります。
従って、可能であれば実際に利息相当額を入金させるのが望ましいです(入金が難しければせめて元本返済に充てる等)。
- 認定利息を計上し忘れた場合の対処法は?
-
認定利息の計上を忘れていた場合は、以下の対処法があります。
- 決算前に気づいた場合:速やかに認定利息を計算し、決算修正で計上
- 税務調査で指摘された場合:過年度分まで遡って修正申告(加算税・延滞税が発生)
実務上は、決算前のチェックリストに「貸付金の残高が大きく長期に及んでいる場合の役員貸付金の認定利息計算」を入れておくことをお勧めします。
まとめ:認定利息の適切な管理とリスク回避
無利息・低利貸付によるトラブルを避けるため、可能ならば金銭消費貸借契約書を作成しましょう。貸付金額・貸付日・利率・返済期限・返済方法を明記し、双方署名押印します。
国税庁が公表する利率(令和5年なら0.9%)や資金の転貸利率を適用し、無利息貸付を避けましょう。実際に利息を徴収するか、未収利息として計上するかは状況に応じて判断します。
年度末に役員貸付金残高を確認し、認定利息を計算します。「(未収)役員貸付金利息 / 受取利息」の仕訳で計上しましょう。自発的に計上しておくことで、税務調査でのリスクを軽減できます。
認定利息の計算はExcel等で記録し、万一の税務調査に備えて証拠を残しておきましょう。長期にわたる貸付や複数の貸付がある場合は特に重要です。
根本的な対策として、役員貸付金は早期に返済するよう努めましょう。長期にわたって放置すると、認定利息の問題だけでなく、様々な税務リスク(寄附金・給与認定など)につながる可能性があります。
認定利息を適切に理解・対応することで、税務調査でのリスクを最小限に抑えることができます。
会社から役員・親族などに無利息や低利でお金を貸した際は、放置せずに適正利率を適用した利息を計上しましょう。契約書の整備や早期返済に努めることで、健全な企業運営につながります。







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