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「事業承継・M&A補助金の事業承継促進枠を使いたいけれど、結局どの経費が補助されるのか分からない」——これは申請を考える多くの事業者が最初にぶつかる壁です。この補助金は費目こそ広いものの、パソコン・タブレット・一般的なソフト・税理士費用などは対象外という細かい線引きがあり、ここを外すと「補助対象経費が下限100万円に届かない」という事態になりかねません。
本記事では、事業承継促進枠(15次公募)の補助対象経費に的を絞り、「何が補助されて・何が対象外か」を公募要領(Ver.1.0)の記載に沿って整理します。業種を問わず使える内容で、設備費の20万円基準・交付決定前の発注が対象外になる落とし穴・相見積・支払方法まで、公認会計士試験合格者が実務目線で解説します。数値・要件は公募要領本体で一つひとつ裏取りしています。
この記事の結論(先に要点)
- 対象経費の主役は設備費(内装・電気/LAN工事、据置き機器、業務専用システム等)。品目1件あたり20万円以上(税抜)が条件
- PC・タブレット・スマホ等の汎用品/一般事務用ソフト/税理士費用は対象外
- 交付決定日より前に発注・契約したものは対象外(フライング厳禁)。支払は振込かクレカ1回払いのみ
- 補助下限は補助額100万円。補助率2/3なら対象経費150万円、1/2なら200万円以上が必要
ぜいむたん


事業承継・M&A補助金「事業承継促進枠」とは?対象経費を見る前の基礎
4つの枠のうち「事業承継促進枠」の位置づけ
事業承継・M&A補助金は、中小企業・個人事業主の事業承継やM&Aに伴う設備投資等を支援する制度で、4つの枠で構成されています。このうち「事業承継促進枠」は、これから親族内承継・従業員承継を予定している後継者が中心となって取り組む、生産性向上のための設備投資等を対象とする枠です。第三者へのM&A(売買)はこの枠ではなく「専門家活用枠」の対象となる点に注意してください。
| 枠 | 主な対象 | 本記事の対象 |
|---|---|---|
| 事業承継促進枠 | 親族内・従業員承継を予定する後継者の設備投資等 | ★これを解説 |
| 専門家活用枠 | M&A(第三者売買)のFA・仲介・DD費用 | — |
| PMI推進枠 | M&A成約後の経営統合費用 | — |
| 廃業・再チャレンジ枠 | 廃業に伴う費用 | 促進枠と併用可(後述) |
補助率・補助上限・下限(対象経費がいくら必要か)
対象経費を設計するうえで、先に「お金の枠」を押さえておきましょう。補助率は小規模事業者なら2/3、それ以外は1/2です。ここでいう小規模事業者とは、補助率判定用の定義で「商業・サービス業は従業員5人以下、製造業その他は20人以下、宿泊業・娯楽業は20人以下」を指します(中小企業者に該当するかの資本金・従業員基準とは別の基準です)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助率 | 小規模事業者 2/3/それ以外 1/2 |
| 補助上限額 | 800万円(賃上げ要件を満たすと1,000万円) |
| 補助下限額 | 補助額100万円(下回る申請は受付不可) |
| 賃上げでの引上げ | 従業員1人当たり給与支給総額の上昇率3%以上を表明。ただし800万円超〜1,000万円部分の補助率は1/2 |
ポイントは補助下限が「補助額100万円」であること。逆算すると、補助率2/3なら対象経費150万円、1/2なら200万円以上を組めないと申請できません。だからこそ「どの経費を対象にできるか」が決定的に重要になります。なお賃上げで1,000万円を狙う場合、800万円超〜1,000万円の部分は補助率が1/2に下がり、未達なら引上げ分(最大200万円)の返還がある点も押さえておきましょう。






【全体像】補助対象経費は6費目+廃業費|まず費目を押さえる
事業承継促進枠の補助対象経費(事業費)は、公募要領で6つの費目に分かれています。加えて、廃業・再チャレンジ枠を併用した場合のみ「廃業費」が上乗せできます。費目名は広く見えますが、後述のとおり各費目に細かい「対象外」の規定があります。
| 費目 | 内容 | 上限など |
|---|---|---|
| 設備費 | 国内の店舗・事務所の工事、国内で使う機械・器具・備品、業務専用ソフトウェア | 品目1件20万円以上(税抜) |
| 産業財産権等関連経費 | 特許・商標等の取得にかかる弁理士費用等 | 事業費の1/3が上限 |
| 謝金 | 専門家(士業・大学教授等)への謝金 | — |
| 旅費 | 販路開拓等の出張交通費・宿泊費 | 規程あり |
| 外注費 | 業務の一部の外注(請負) | 50万円未満でも原則相見積必須 |
| 委託費 | 業務の一部の委託(委任) | 事業費の1/2が上限/50万円未満でも原則相見積必須 |
| 廃業費(併用時のみ) | 廃業支援費・在庫廃棄費・解体費・原状回復費・リース解約費・土壌汚染調査費・移転移設費 | 最大+300万円 |
多くの事業者にとって現実的に金額を積める中心は「設備費」です。次章から、この設備費を軸に「対象になる経費」と「対象外の経費」を具体的に見ていきます。






【本題①】対象になる経費リスト|設備費が主役
設備費は「品目1件あたり20万円以上(税抜)」が条件
設備費は、国内の店舗・事務所の工事費や、国内で使用する機械・器具・備品、そして当該補助事業のみに利用する特定業務用のソフトウェアが対象です。ただし重要な条件として、公募要領は「品目1件に対し20万円以上(税抜)の設備のみが申請可能」と定めています。少額の備品を数多く集める使い方はできません。
図1:対象になりやすい経費(設備費の例)
店舗・事務所の工事
内装・改装・外装工事、電気/LAN/電話・ネット回線の工事など。
機械・器具・備品
製造・加工機械、工具、据置き型の複合機・固定電話・FAXなど(1件20万円以上)。
業務専用システム
当該事業のみに使う特定業務用ソフトウェア(汎用の事務用ソフトは除く)。
設備費以外の費目では、特許・商標の取得にかかる弁理士費用(産業財産権等関連経費)、士業・大学教授等の専門家への謝金、販路開拓のための旅費、業務の一部を外部に頼む外注費・委託費などが対象になり得ます。ただし委託費は事業費の1/2、産業財産権等関連経費は事業費の1/3が上限で、これらの費目には後述のとおり多くの「対象外」が含まれます。






【本題②】対象にならない経費リスト|ここでほぼ全員つまずく
ここが本記事の核心です。「使えそう」に見えて対象外になる代表例を、公募要領に沿って挙げます。特にパソコン等の汎用品・一般事務用ソフト・税理士費用は誤解が非常に多いポイントです。
図2:対象外になりやすい経費
汎用品
パソコン(デスクトップ・モバイル共)、タブレット、スマートフォン、携帯電話、カメラ等、容易に持ち運べて他の目的にも使えるもの。
汎用ソフト・ライセンス
家庭用・一般事務用ソフトウェアの購入費やライセンス費用。一般事務用に該当する汎用の会計ソフト等は対象外の扱いと考えられます。
士業への費用
税務申告・決算書作成のための税理士・公認会計士費用、本補助金の書類作成代行費用。
被承継者への支払い
事業承継に伴う資産等の譲渡費用(事業の買取費用)など、被承継者に支払う費用は原則対象外。
購入・資産系
中古品、不動産購入、自動車購入(通常のリースは可/ファイナンスリースは対象外)、消耗品。
ランニング・その他
光熱水費・通信運搬費、借入金の支払利息、振込手数料・為替差損、公租公課(消費税等)。
最も誤解が多い「ソフトウェア」の線引き
特に注意したいのがソフトウェアの扱いです。対象になるのは「特定業務用」で「当該補助事業のみに利用する」専用ソフトに限られ、家庭用・一般事務用のソフトやライセンスは対象外とされています。日常業務で広く使う汎用の会計ソフトや事務ソフトは、この「一般事務用」に該当し対象外と読むのが自然です。判断に迷う専用システムは、事務局(事業承継促進枠のコールセンター)に事前確認するのが安全です。






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補助金の申請では直近の決算書・確定申告書が必要になり、採択後も経費の証憑管理や実績報告が求められます。マネーフォワード クラウド会計なら、日々の取引を自動で記帳し、決算・経費管理までまとめて効率化。事業承継の準備と並行して経理体制を整えられます。
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費目が対象でも、進め方を誤ると経費が認められません。公募要領が定める4つの鉄則を必ず守りましょう。
- ①発注は「交付決定日以降」:契約・発注は交付決定日(採択後の交付決定・9月下旬予定)以降でなければ対象外です。採択前・交付決定前のフライング発注は認められません。検収・支払も補助事業期間内に完了させます。
- ②支払方法は振込かクレカ1回払いのみ:補助事業者名義の事業用口座からの銀行振込、またはクレジットカード1回払いのみが対象。現金払い・電子マネー(PayPay・Suica等)・分割払いは対象外です。
- ③1件50万円以上は相見積が必須:1件(案件・発注)50万円以上(税抜)は、2者以上からの相見積が必須。外注費・委託費については、50万円未満でも原則として相見積が必要です。
- ④消費税は対象経費から除く:補助対象経費からは消費税額・地方消費税額を減額します。金額を組むときは税抜ベースで考えます。
この4点は、補助金の「王道の落とし穴」です。特に①のフライング発注は、良かれと思って早めに動いた結果アウトになる典型例。他の補助金(ものづくり補助金の申請ガイドや小規模事業者持続化補助金の申請方法)でも共通の鉄則なので、補助金全般の基本として覚えておくと安全です。






補助下限100万円をどう組む?対象経費の設計の考え方
ここまでの対象/対象外を踏まえ、実際に申請できる形に「組む」考え方を整理します。前提として、補助額100万円の下限を満たすには、補助率2/3なら対象経費150万円、1/2なら200万円以上が必要です。
- 設備費を軸に組む:対象外の汎用品・汎用ソフト・士業費用を外し、内装・電気/LAN工事+据置き機器+業務専用システムで必要額を積み上げます。
- 1件20万円以上(税抜)を意識:少額の備品は設備費の対象外。まとまった設備・工事で構成します。
- 生産性向上のストーリーと結びつける:促進枠は5年計画で付加価値額(または1人当たり付加価値額)の年3%以上の向上が求められます。「導入設備→業務効率化→付加価値向上」の因果を描ける経費を選びます。
- 賃上げでの上限引上げは慎重に:1,000万円を狙う場合、800万円超〜1,000万円部分は補助率1/2で、未達なら引上げ分の返還リスクがあります。無理なら上限800万円で堅く組むのが安全です。
なお、事業承継の設備投資は資金の立て替えが先行します(補助金は精算払い=後払い)。資金繰りが不安な場合は、中小企業の資金調達方法7選|融資・補助金・出資の違いもあわせて確認し、つなぎ融資を早めに検討しておくとよいでしょう。






廃業費で最大+300万円|廃業・再チャレンジ枠の併用
事業承継促進枠は、廃業・再チャレンジ枠と併用できます。個人事業主の事業譲渡のように、承継後に元の経営者(被承継者)が廃業するスキームでは、廃業に伴う費用を「廃業費」として最大+300万円上乗せできる場合があります。
廃業費に含まれるのは、廃業支援費・在庫廃棄費・解体費・原状回復費・リース解約費・土壌汚染調査費・移転移設費の7費目です。原状回復や設備の解体・移設、リース契約の解約などが発生する場合は、廃業費の上乗せを取りに行く価値があります。廃業の手続き自体については個人事業の廃業届の書き方と手続き完全ガイドも参考にしてください。






受け取った補助金は課税される?税務上の注意点
補助金は原則「課税対象」・固定資産に充てた分は特例も
見落としがちですが、受け取った補助金は原則として課税対象です。個人事業主なら交付を受けた年の事業所得の収入、法人なら益金として、所得税・法人税の対象になります。設備投資のために使い切っても「補助金分の利益」が出る形になり、思わぬ納税が生じることがあります。
ただし、固定資産の取得・改良に充てた国庫補助金等については、一定の要件と手続き(確定申告書への明細書添付等)を満たせば、個人事業主は総収入金額不算入、法人は圧縮記帳により、その年の課税を繰り延べられる特例があります。詳しくは国税庁のタックスアンサーNo.2202「国庫補助金等を受け取ったとき」を確認してください。適用の可否は個別事情によるため、最終的には税理士等の専門家に相談するのが安全です。






よくある質問(FAQ)
- パソコンやタブレットは補助対象になりますか?
-
対象外です。公募要領は、パソコン(デスクトップ・モバイル共)、タブレット端末、スマートフォン、携帯電話、カメラ等、容易に持ち運びができて他の目的にも使えるものを対象外としています。設備費で対象になるのは、据置き型の機器や工事、業務専用システムなどです。
- 会計ソフトのライセンス費用は対象になりますか?
-
家庭用・一般事務用のソフトウェアやライセンス費用は対象外です。対象になるのは「特定業務用」で「当該補助事業のみに利用する」専用ソフトに限られます。日常業務で広く使う汎用の会計ソフトは一般事務用に該当し対象外と読むのが自然です。個別の専用システムの可否は事務局への事前確認をおすすめします。
- 税理士に払う申請サポート費用は補助されますか?
-
対象外です。税務申告・決算書作成のための税理士・公認会計士費用や、本補助金の書類作成代行費用は補助対象になりません。なお、補助金の申請書類の有償作成代行は、一般に行政書士の業務とされています(士業以外の有償代行はできないとされています)。
- 採択されたので、すぐに設備を発注してよいですか?
-
いいえ。契約・発注は「交付決定日以降」でなければ対象外です。採択と交付決定は別の段階で、交付決定(9月下旬予定)より前に発注したものは補助対象になりません。フライング発注は最も多い失敗のひとつです。
- 設備費に金額の下限はありますか?
-
あります。設備費は「品目1件あたり20万円以上(税抜)」の設備のみが対象です。少額の備品を多数集める使い方はできません。また補助額の下限は100万円のため、補助率2/3なら対象経費150万円、1/2なら200万円以上を組む必要があります。
まとめ:対象経費は「設備費を軸に・交付決定後に・税抜で」組む
事業承継促進枠の対象経費は、費目こそ広いものの「対象外」の線引きが細かいのが特徴です。次のステップで、自社の投資計画を対象経費に落とし込みましょう。
PC・汎用ソフト・税理士費用・被承継者への支払い・中古品/不動産/自動車などを候補から除きます。
内装・電気/LAN工事+据置き機器+業務専用システムで、1件20万円以上(税抜)を意識して積み上げます。
付加価値額 年3%以上の5年計画に、その設備が効く因果を数字で示します。
交付決定後に発注/振込・クレカ1回払い/50万円以上は相見積/税抜で計上。最新の公募要領で最終確認を。
なお本記事は15次公募(申請受付 2026年6月19日〜7月24日17:00・電子申請のみ)の公募要領 Ver.1.0に基づいています。採択率は14次公募で約60.9%(申請169・採択103)でした。要件・数値は公募回ごとに変わり得るため、申請前に必ず事業承継・M&A補助金の公式サイトで最新の公募要領を確認してください。



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