個人事業主にとって、12月31日は「決算日」です。法人と違い、個人事業主の事業年度は毎年1月1日〜12月31日と決まっています。つまり、12月末時点の帳簿の数字がそのまま確定申告書の数字になるのです。
「確定申告は2月からだから、まだ余裕がある」と思っていませんか?実は、12月中に行わなければならない経理作業は想像以上に多く、これをサボると確定申告の数字が間違う→税務調査で指摘を受けるという最悪のパターンに陥ります。
この記事では、個人事業主が12月に行うべき決算準備を全12ステップでガイドします。売掛金・買掛金の確認から減価償却費の計算、家事按分の確定、棚卸し、決算整理仕訳まで、この1本で年末の経理作業が完了します。
あの……「決算」って法人だけの話だと思ってたんですけど、個人事業主にも決算があるんですか?
あるで!個人事業主は12月31日が決算日や。法人みたいに「決算月を自由に選ぶ」ことはできひん。12月中にちゃんと帳簿を締めて、来年の確定申告に備えるんが大事やで!
決算準備の全体像|12ステップで完了
12月の決算準備は、以下の12ステップで進めます。上から順番に取り組めば、漏れなく完了できます。
| ステップ | 作業内容 | 目安時間 |
|---|---|---|
| 1 | 12月分の取引を全て入力する | 1〜3時間 |
| 2 | 売掛金の確認・計上 | 30分〜1時間 |
| 3 | 買掛金・未払金の確認・計上 | 30分〜1時間 |
| 4 | 前払費用・前受金の確認 | 15〜30分 |
| 5 | 減価償却費の計算 | 30分〜1時間 |
| 6 | 家事按分の確定 | 30分〜1時間 |
| 7 | 棚卸し(在庫がある場合) | 1〜3時間 |
| 8 | 貸倒引当金の計上 | 15〜30分 |
| 9 | 現金残高の実査 | 15分 |
| 10 | 銀行口座残高の照合 | 15〜30分 |
| 11 | 決算整理仕訳の入力 | 30分〜1時間 |
| 12 | 試算表・決算書の確認 | 30分〜1時間 |
合計で5〜13時間程度の作業量です。12月中旬から少しずつ進め、12月31日までに完了させましょう。
ステップ1:12月分の取引を全て入力する
まず最初に、12月分の全取引を会計ソフトに入力します。これは決算準備の土台となる作業です。
freee会計やマネーフォワード クラウド会計を使っている方は、銀行口座・クレジットカードの自動連携で取引データが取り込まれているはずです。以下をチェックしてください。
- 自動取込された取引の勘定科目が正しいか確認・修正
- 現金取引(レシート・領収書ベース)がすべて入力されているか
- 入力漏れの取引がないか、通帳やクレジットカード明細と照合
- 個人的な支出が事業経費に混入していないか
12月は忘年会や年賀状の印刷費など、経費になるかならないか判断が難しい支出が増える時期です。事業に関連する支出は経費、個人的な支出は事業主貸として処理してください。
あの……忘年会の費用って経費にしていいんですか?
取引先や同業者との忘年会なら「接待交際費」として経費にできるで!ただし、プライベートの友人との飲み会は経費にはならへん。誰と・何の目的で飲んだかを記録しとくのが大事やな。領収書の裏に「○○株式会社 △△さん 仕事の打ち合わせ」って書いとくとベストや!
ステップ2:売掛金の確認・計上
売掛金とは、サービスを提供済み・商品を納品済みだが、まだ入金されていない売上のことです。12月に納品した仕事の報酬が1月に入金される場合、12月の売上として計上する必要があります。
確認すべきポイントは以下のとおりです。
- 12月末時点で未入金の請求書をすべてリストアップ
- 各請求書の金額を売掛金として計上(「売掛金 / 売上高」の仕訳)
- 源泉徴収税がある場合は、売上金額を総額で計上し、源泉徴収税は「事業主貸」または「仮払金」で処理
- 長期間未回収の売掛金がある場合は、回収の見込みを確認
よくあるミス:入金された日に売上を計上してしまう「現金主義」での処理。個人事業主は原則として発生主義(サービス提供日 or 納品日に計上)で記帳する必要があります。
ステップ3:買掛金・未払金の確認・計上
買掛金は商品の仕入れに関する未払い、未払金はその他の経費に関する未払いです。12月中に発生した費用で、まだ支払いが完了していないものを計上します。
- 12月分のクレジットカード利用分(引き落としは1月以降でも、12月の経費として計上)
- 12月に届いた請求書で未払いのもの
- 外注費で12月に納品されたが支払いが翌月のもの
- 社会保険料(12月分で1月に引き落とされるもの)
仕訳の例:12月に仕入れた商品10万円が未払いの場合
借方:仕入高 100,000円 / 貸方:買掛金 100,000円
ステップ4:前払費用・前受金の確認
前払費用
前払費用とは、12月末時点で支払い済みだが、まだサービスの提供を受けていない(翌年分の)費用のことです。代表例は以下のとおりです。
- 家賃:12月に支払った1月分の家賃
- 保険料:年払いで支払った保険料のうち、翌年分に相当する部分
- サブスクリプション:年払いで支払ったソフトウェアライセンスの翌年分
ただし、短期前払費用の特例があり、1年以内に提供されるサービスの前払いは、支払った年の経費として一括計上できます。たとえば12月に1年分のサブスク料金を支払った場合、全額を今年の経費にすることが可能です(毎年継続して同じ処理をすることが条件)。
前受金
前受金とは、サービスの提供前に受け取ったお金です。12月中にクライアントから来年のプロジェクトの着手金を受け取った場合、それは今年の売上ではなく前受金(負債)として処理します。
仕訳:着手金30万円を12月に受け取った場合
借方:普通預金 300,000円 / 貸方:前受金 300,000円
翌年にサービスを提供した時点で「前受金 / 売上高」の振替仕訳を入力します。
あの……12月にもらったお金でも、まだ仕事してなかったら売上にしちゃダメなんですね。
そのとおり!「お金をもらった日」と「売上を計上する日」は違うんや。売上を計上するのは「サービスを提供した日」やで。逆に、12月に仕事を完了して1月に入金される売上は、12月の売上として計上する。これが「発生主義」の基本やな!
ステップ5:減価償却費の計算
10万円以上の固定資産(パソコン、車、設備など)を持っている場合は、減価償却費の計算が必要です。
減価償却の基本ルール
- 10万円未満:全額をその年の経費(消耗品費)
- 10万円以上20万円未満:一括償却資産として3年間で均等償却(年1/3ずつ)
- 10万円以上30万円未満:青色申告の特例で全額をその年の経費(年300万円まで)
- 30万円以上:法定耐用年数に基づいて減価償却(定額法 or 定率法)
主な資産の法定耐用年数
| 資産の種類 | 法定耐用年数 |
|---|---|
| パソコン | 4年 |
| 事務用机・椅子 | 8〜15年 |
| 普通自動車 | 6年 |
| 軽自動車 | 4年 |
| コピー機・プリンター | 5年 |
| ソフトウェア(自社利用) | 5年 |
| 建物(木造・店舗用) | 22年 |
| 建物(鉄骨・事務所用) | 38年 |
年の途中で購入した場合は月割り計算
今年途中に購入した固定資産は、使い始めた月から12月までの月数で按分して減価償却費を計算します。たとえば、7月に購入した耐用年数4年のパソコン(40万円)の場合:
年間償却費 = 40万円 ÷ 4年 = 10万円
今年の償却費 = 10万円 × 6か月/12か月 = 5万円
freee会計やマネーフォワード クラウド確定申告では、固定資産台帳に資産を登録しておけば、減価償却費が自動計算されます。月割り計算も自動で行われるため、手計算の必要はありません。
ステップ6:家事按分の確定
自宅兼事務所で仕事をしている方は、家賃・水道光熱費・通信費などの一部を家事按分によって経費計上できます。年末は按分割合を確定させるタイミングです。
家事按分できる主な経費と按分基準
| 経費項目 | 按分基準の例 | 一般的な按分率 |
|---|---|---|
| 家賃 | 面積比(仕事部屋の面積 ÷ 全体面積) | 20〜50% |
| 電気代 | 面積比 or 使用時間比 | 20〜40% |
| ガス代・水道代 | 使用割合 | 10〜30% |
| 通信費(インターネット) | 使用時間比 | 30〜80% |
| 携帯電話代 | 使用割合(通話記録ベース) | 30〜70% |
| 自動車関連費 | 走行距離比 | 30〜80% |
注意点:按分割合は合理的な根拠が必要です。「なんとなく50%」ではなく、面積の計測結果や使用時間の記録など、客観的に説明できる資料を準備しておきましょう。税務調査で「根拠は?」と聞かれた時に答えられることが重要です。
あの……家事按分の割合って、税務署に届出が必要なんですか?
届出は不要やで!自分で合理的な基準を決めて、毎年一貫性を持って適用するのが大事や。たとえば家賃なら「仕事部屋8畳 ÷ 全体25畳 = 32%」みたいに計算根拠をメモに残しとくと、税務調査の時にスムーズに説明できるで。
ステップ7:棚卸し(在庫がある場合)
物販業・製造業の方は、12月31日時点の在庫(棚卸資産)を数え、棚卸表を作成する必要があります。
棚卸しの手順
- 12月31日時点の在庫を実際に数える(実地棚卸)
- 商品ごとに「品名・数量・単価・金額」を棚卸表に記録
- 破損品・不良品・陳腐化した商品は評価損を検討
- 会計ソフトに「期末棚卸高」を入力
棚卸資産の評価方法
棚卸資産の評価方法は以下のいずれかを選択できます(届出がない場合は「最終仕入原価法」が自動適用)。
- 最終仕入原価法:最後に仕入れた単価で評価(最も簡単で一般的)
- 先入先出法:先に仕入れたものから先に売れたと仮定
- 移動平均法:仕入れのたびに平均単価を再計算
- 総平均法:年間の平均仕入単価で評価
なぜ棚卸しが重要か:期末在庫の金額は売上原価の計算に直結します。
売上原価 = 期首在庫 + 当期仕入 – 期末在庫
期末在庫が多ければ売上原価が減り、利益(=納税額)が増えます。逆に期末在庫が少なければ売上原価が増え、利益が減ります。正確な棚卸しは適正な納税のために不可欠です。
ステップ8:貸倒引当金の計上
青色申告の個人事業主は、12月31日時点の売掛金等の5.5%を貸倒引当金として計上できます。これは「将来回収できない可能性のある売掛金」に対する備えで、経費として計上できます。
仕訳:12月31日時点の売掛金が200万円の場合
貸倒引当金繰入額 = 200万円 × 5.5% = 110,000円
借方:貸倒引当金繰入 110,000円 / 貸方:貸倒引当金 110,000円
なお、前年に計上した貸倒引当金がある場合は、その全額を戻し入れ(取り崩し)してから新たに計上する処理を行います。
ステップ9:現金残高の実査
事業用の現金(レジの現金や手持ちの小口現金)がある場合は、12月31日時点で実際の現金残高と帳簿上の現金残高が一致しているか確認します。
差異がある場合は以下の対応を行います。
- 帳簿が多い場合:記帳漏れの支出がないか確認。不明な場合は「雑損失」で処理
- 現金が多い場合:記帳漏れの収入がないか確認。不明な場合は「雑収入」で処理
事業用の現金を管理していない個人事業主(銀行振込のみで事業を行っている場合)は、このステップは省略できます。
ステップ10:銀行口座残高の照合
事業用の銀行口座について、12月31日時点の通帳残高(またはネットバンキングの残高)と帳簿上の残高が一致しているか確認します。
不一致の主な原因は以下のとおりです。
- 記帳漏れ:通帳に記載された取引が会計ソフトに入力されていない
- 二重計上:同じ取引を2回入力してしまった
- 未達の入出金:12月31日付で処理されたが、通帳に反映されるのが翌年の取引
- 事業主貸/事業主借の計上漏れ:個人的な出金・入金の処理忘れ
freee会計やマネーフォワード クラウド会計で銀行口座を自動連携している場合は、未処理の取引がないか「未仕訳の取引」一覧を確認するだけでOKです。
ステップ11:決算整理仕訳の入力
ステップ2〜10で確認した内容に基づき、以下の決算整理仕訳を入力します。
| 仕訳の内容 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 売掛金の計上 | 売掛金 | 売上高 |
| 買掛金・未払金の計上 | 仕入高/各経費 | 買掛金/未払金 |
| 前払費用の振替 | 前払費用 | 各経費 |
| 前受金の振替 | 売上高 | 前受金 |
| 減価償却費の計上 | 減価償却費 | 各固定資産 |
| 家事按分の振替 | 事業主貸 | 各経費 |
| 期末棚卸高の計上 | 棚卸資産 | 期末棚卸高 |
| 貸倒引当金の計上 | 貸倒引当金繰入 | 貸倒引当金 |
クラウド会計ソフトを使っている場合、減価償却費や家事按分は自動計算・自動仕訳される場合が多いため、手動で入力する必要があるのは売掛金・買掛金・前払費用・前受金の計上が中心です。
ステップ12:試算表・決算書の確認
すべての仕訳入力が完了したら、試算表を出力して全体のバランスを確認します。
確認すべきポイント
- 貸借対照表の借方合計と貸方合計が一致しているか
- 売上高が実際の年間売上と一致しているか(取引先ごとの支払調書と照合)
- 経費の各勘定科目に異常な金額がないか(前年と大きく変動している科目を確認)
- 現金・預金残高が実際の残高と一致しているか
- 事業主貸・事業主借の金額が妥当か
問題がなければ、青色申告決算書(損益計算書+貸借対照表)を出力して保存します。この決算書が確定申告書の基礎となります。
あの……12ステップ、全部やるのは大変そうですけど、会計ソフトがあればだいぶ楽になりそうですね。
そのとおり!手書き帳簿でやったら地獄やけど、freeeやマネーフォワードを使えば半分以上は自動化されるんや。銀行連携で取引取込→自動仕訳→減価償却・家事按分の自動計算→決算書の自動生成。手動で確認するのは売掛金・買掛金の計上と棚卸しくらいやな。まだ導入してない人は今すぐ入れるべきやで!
12月の決算と合わせてやるべき節税対策
決算準備と並行して、以下の節税対策も12月中に検討しましょう。
- 小規模企業共済の前納:年間最大84万円の所得控除
- 経営セーフティ共済の前納:年間最大240万円を経費計上
- 30万円未満の固定資産購入:青色申告の特例で全額経費
- ふるさと納税の駆け込み:12月31日が期限
- 不要な在庫の処分:廃棄処分すれば「棚卸資産廃棄損」として経費計上
- 不良債権の貸倒処理:回収不能な売掛金を貸倒損失として計上
詳しい節税対策については「【2026年版】年末までにやるべき節税チェックリスト」をご参照ください。
まとめ:12月の決算準備が確定申告の成否を決める
個人事業主の決算準備は、12月中に以下の12ステップを完了させることが目標です。
- 12月分の取引を全て入力
- 売掛金の確認・計上
- 買掛金・未払金の確認・計上
- 前払費用・前受金の確認
- 減価償却費の計算
- 家事按分の確定
- 棚卸し(在庫がある場合)
- 貸倒引当金の計上
- 現金残高の実査
- 銀行口座残高の照合
- 決算整理仕訳の入力
- 試算表・決算書の確認
クラウド会計ソフト(freee会計・マネーフォワード クラウド確定申告)を活用すれば、多くの作業が自動化され、数時間で完了できます。まだ手作業で帳簿をつけている方は、この機会にぜひ導入を検討してください。
関連記事もご参照ください。
よくある質問(FAQ)
- 決算整理仕訳はいつ入力すればいいですか?
- 決算整理仕訳の日付は「12月31日」で入力してください。実際の入力作業は12月31日以降(1月に入ってからでも)構いませんが、仕訳の日付は必ず12月31日にします。これにより、12月31日時点の正確な決算書が作成されます。freeeやマネーフォワードでは「年度締め」機能があり、期をまたいだ仕訳を防ぐことができます。
- クレジットカードの12月利用分は今年の経費にできますか?
- はい、12月中にクレジットカードで決済した分は今年の経費として計上できます。引き落としが1月以降でも、決済日(利用日)を基準に計上します。「未払金」として処理し、1月に引き落とされた時点で「未払金の消込」の仕訳を入力します。freeeやマネーフォワードでクレジットカードを連携していれば、利用日ベースで自動的に取り込まれます。
- 事業主貸と事業主借の残高が大きいのですが問題ありますか?
- 事業主貸(事業資金から個人の支出を支払った場合)と事業主借(個人の資金を事業に入れた場合)の残高が大きいこと自体は問題ありません。個人事業主は事業と個人の財布が完全に分離していないことが多いため、ある程度の金額は自然に発生します。ただし、事業主貸が異常に大きい場合は「生活費以上の引き出し」とみなされる可能性があるため、内容を説明できるように記録を残しておくことをおすすめします。
今日の授業は終わり!また来てや!!
※この記事は2026年12月時点の情報に基づいて作成しています。税制改正や会計基準の変更により、記載内容が変更される場合があります。具体的な税務判断・会計処理については、お近くの税理士にご相談ください。最新情報は国税庁公式サイト(nta.go.jp)でご確認ください。
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免責事項:本記事の内容は執筆時点の法令・制度に基づいて作成しています。税制は毎年改正される可能性があるため、最新の情報は国税庁のウェブサイトでご確認ください。具体的な税務判断については、税理士等の専門家にご相談されることをお勧めします。本記事にはアフィリエイトリンクが含まれていますが、記事の内容は独自の調査・分析に基づくものです。


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