相続税の申告は書類集めから始まります。どんな書類が必要なのか、どこで入手できるのか、事前に把握しておくことで申告準備をスムーズに進めることができます。本記事では、相続税申告に必要な書類を網羅的にリスト化し、その入手方法や注意点を解説します。




この記事でわかること
- 相続税申告に必要な書類の全リスト
- 各書類の入手方法と取得時の注意点
- 税理士が代理取得可能な書類と委任状が必要なもの
- 項目別の書類チェックリスト(相続人情報、預貯金、不動産など)
- 相続税申告までの流れと書類収集のタイムライン
相続税申告に必要な書類の全体像
相続税申告に必要な書類は、大きく分けて以下のカテゴリーに分類されます。これらを漏れなく収集することが、スムーズな申告への第一歩です。
- 相続人に関する書類(戸籍謄本、住民票など)
- 被相続人に関する書類(死亡診断書、住民票の除票など)
- 財産に関する書類(預貯金、不動産、有価証券、保険金など)
- 債務や葬式費用に関する書類(未払い金、葬儀費用の領収書など)
- その他の書類(生前贈与の記録、過去の申告書など)






相続人・被相続人に関する必要書類
まずは相続人と被相続人自身に関する基本書類の収集から始めましょう。これらの書類は相続関係を証明するための基礎資料となります。
No. | 項目 | 資料名等 | 取得場所・注意点 | 代理取得 |
---|---|---|---|---|
1 | 全般 | 法定相続情報一覧図(原本) | 法務局で取得可能(任意取得書類) | – |
2 | 被相続人情報 | 被相続人の住民票の除票(原本) ※省略していないもの | 被相続人の最後の住所地の市区町村役場 | 〇 |
3 | 相続人情報 | 相続人全員の現在の住民票(原本) ※省略していないもの | 各相続人の住所地の市区町村役場 | 〇 |
4 | 死亡証明 | 被相続人の死亡診断書(コピー) | ご遺族が保管しているもの | – |
5 | 連絡先 | 相続人全員の現在の住所・職業・電話番号(メモ) | 相続人から情報収集 | – |
6 | マイナンバー | 相続人全員の個人番号カード(コピー) ※通知カードの場合は身分証明書も必要 | 各相続人が保有 | – |






法定相続情報一覧図のメリット
- 戸籍謄本の束を何度も集める必要がない
- 家系図のような形式で相続関係の確認が楽になる
- 銀行や証券会社の窓口での確認時間が短くなる
- 郵送での手続きにおいても処理時間が短くなる
- 不動産や預貯金、株式などの名義変更が複数ある方や相続税の申告が必要な方にとってメリットが大きい






住民票や戸籍謄本は「省略のないもの」を取得することが重要です。省略されたものでは、相続関係の確認ができないことがあります。また、これらの公的書類は発行から3ヶ月以内のものを求められることが多いです。これは法令で一律に定められているわけではありませんが、多くの金融機関や行政機関が独自の有効期限を設けているため、実務上の指針として覚えておくと良いでしょう。
金融資産関連の必要書類
被相続人が保有していた預貯金や有価証券などの金融資産に関する書類です。これらは相続財産の中でも比較的把握しやすい財産です。
No. | 項目 | 資料名等 | 取得場所・注意点 | 代理取得 |
---|---|---|---|---|
7 | 預貯金・出資金 | 預貯金・出資金の金融機関残高証明書(コピー) ※基準日は相続開始日(死亡日) | 各金融機関 | – |
8 | 定期性預金 | 定期性預金の既経過利息計算書(コピー) ※基準日は相続開始日 | 各金融機関 | – |
9 | 口座履歴 | 被相続人名義の預貯金口座の通帳コピー(過去5年間分) | ご遺族が保管しているもの | – |
10 | 有価証券 | 証券会社の残高証明書(コピー) ※基準日は相続開始日 | 各証券会社 | – |
11 | 配当金 | 配当金等の支払通知書(コピー) | ご遺族が保管しているもの | – |






不動産関連の必要書類
土地や建物などの不動産は、相続財産の中でも金額が大きくなりやすい資産です。評価額の算出のために様々な書類が必要となります。
No. | 項目 | 資料名等 | 取得場所・注意点 | 代理取得 |
---|---|---|---|---|
12 | 土地 | 登記事項証明書(原本) | 法務局 | 〇 |
13 | 土地 | 住宅地図(コピー) | 市販の住宅地図 | 〇 |
14 | 土地 | 公図の写し(原本) | 法務局 | 〇 |
15 | 土地 | 地積測量図(原本) | 法務局(登記されている場合のみ) | 〇 |
16 | 土地 | 固定資産税納税通知書及び課税明細書(コピー) | 市区町村から送付されるもの | – |
17 | 建物 | 登記事項証明書(原本) | 法務局 | 〇 |
18 | 建物 | 固定資産評価明細書(原本) | 市区町村役場 | 〇 |
不動産の評価は相続税申告において非常に重要です。固定資産税評価額をベースに計算されますが、土地の場合は路線価方式や倍率方式などの計算方法があります。また、建物の場合は固定資産税評価額がそのまま評価額となります。






保険・その他の財産に関する必要書類
生命保険金や損害保険の返戻金、その他の財産に関する書類です。見落としがちな財産も含まれています。
No. | 項目 | 資料名等 | 取得場所・注意点 | 代理取得 |
---|---|---|---|---|
19 | 生命保険金等 | 保険金の支払通知書(コピー) | 各保険会社 | – |
20 | 生命保険 | 他者名義だが被相続人が保険料を支払っていた保険契約の解約返戻金計算書(コピー) | 各保険会社 | – |
21 | 損害保険料等 | 損害保険の解約返戻金計算書(コピー) ※基準日は相続開始日 | 各保険会社 | – |
22 | 電話加入権 | 電話加入権の保有回線数及び電話番号・所在地(メモ) | 契約書類等 | – |
23 | 車両 | 自動車の車検証(コピー) | ご遺族が保管しているもの | – |
24 | 書画骨董等 | 品名・作者名・写真等(メモ) | 現物の確認 | – |
25 | 家財 | 特記すべきものの明細(メモ) | 現物の確認 | – |
生命保険金は、契約形態によって相続財産になるか否かが変わります。被相続人が契約者かつ被保険者、受取人が相続人の場合は「みなし相続財産」として相続税の対象となります。また、車両や書画骨董などの財産も評価額によっては申告が必要です。
その他の資産および債務関連の必要書類
未収入金、未払債務、貸付金、借入金など、申告漏れが起きやすい項目に関する書類です。
No. | 項目 | 資料名等 | 取得場所・注意点 | 代理取得 |
---|---|---|---|---|
26 | 未収入金 | 相続発生後に入金された保険料、税金等の還付金の通知書等(コピー) | ご遺族が保管しているもの | – |
27 | 未払債務 | 未払債務等(未払医療費・保険料・公共料金等)の領収証等(コピー) | ご遺族が保管しているもの | – |
28 | 未払税金 | 未払税金(未払住民税、未払固定資産税等)の通知書・納付書(コピー) | ご遺族が保管しているもの | – |
29 | 葬式費用 | 葬式費用の請求書・領収証等(コピー) | ご遺族が保管しているもの | – |
30 | 貸付金 | 金銭消費賃借契約書(コピー)、又は資金移動・残高のわかる通帳コピー | ご遺族が保管しているもの | – |
31 | 借入金 | 金銭消費賃借契約書、銀行の残高証明書(コピー) ※基準日はご逝去日 | 各金融機関 | – |
未払債務や借入金は相続税の計算上、債務控除として課税価格から差し引くことができる重要な項目です。特に個人間の貸付金・借入金は、契約書や資金移動の証拠がなければ認められないことがありますので、証拠書類の保管が重要です。






生前贈与関連の必要書類
相続税申告に際して確認が必要なその他の書類です。特に生前贈与の記録は重要です。
No. | 項目 | 資料名等 | 取得場所・注意点 | 代理取得 |
---|---|---|---|---|
32 | 生前贈与 | 相続前7年以内の贈与に係る贈与税申告書・契約書等(コピー) | ご遺族が保管しているもの | – |
相続開始前の一定期間内に被相続人から相続人への贈与があった場合、その贈与財産は相続財産に加算する「相続開始前の贈与加算」の対象となります。贈与税の申告書や契約書等の書類を確認しましょう。






会計士からのワンポイントアドバイス






- 収集計画を立てる
必要書類のチェックリストを作成し、取得方法、期限を明確にしましょう。 - 代理取得を積極的に活用する
税理士に委任状を提出し、不動産関連書類や公的書類の取得を依頼することで、効率よく収集できます。 - デジタル管理を徹底する
取得した書類はすぐにスキャンし、項目ごとにフォルダ分けして保存しましょう。紙の原本も整理して保管します。 - 相続人間で分担する
複数の相続人がいる場合は、書類収集の役割分担を明確にすると効率的です。



まとめ:相続税申告の書類収集を効率的に進めるために
相続税申告に必要な書類の収集は、多岐にわたり労力を要しますが、計画的に進めることでスムーズに対応できます。
- 相続税申告には多くの書類が必要ですが、代理取得可能な書類も多くあります
- 委任状と本人確認書類を用意することで、税理士が代理取得できる書類があります
- 書類収集を計画的に進めるために、チェックリストを活用しましょう
- 被相続人の自宅にある書類を丁寧に確認することが重要です






- 相続税申告の期限はいつまでですか?
-
相続税の申告・納付期限は、相続開始を知った日(通常は被相続人の死亡日)から10ヶ月以内です。この期限を過ぎると、延滞税や無申告加算税などのペナルティが課される可能性があります。余裕をもって準備を進めましょう。
- 相続税申告は自分でもできますか?
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法律上は自分で申告することも可能ですが、相続税申告は複雑な財産評価や各種特例の適用判断が必要なため、専門知識がない場合は税理士に依頼することをおすすめします。特に不動産や事業用資産がある場合は、専門家のサポートを受けることで、適切な節税対策も検討できます。
- 生命保険金はすべて相続税の対象になりますか?
-
生命保険金は、契約形態によって課税関係が異なります。被相続人が契約者かつ被保険者で、受取人が相続人の場合、「みなし相続財産」として相続税の対象となりますが、法定相続人1人あたり500万円×法定相続人の数の非課税枠があります。一方、受取人自身が契約者の場合は、相続税の対象外です。



今日の授業は終わり!また来てや!!
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