- 軽油引取税は非課税?不課税?どちらが正しいのか知りたい
- 軽油購入時の正しい仕訳方法を覚えたい
- 軽油引取税の勘定科目は何を使えばいいか分からない
軽油引取税は非課税?それとも不課税? この疑問を持つ経理担当者は少なくありません。軽油を購入した際の経理処理で迷っていませんか?
結論から言うと、軽油引取税は「不課税」です。「非課税」ではありません。この違いを理解せずにレシート金額をそのまま課税仕入として処理すると、消費税の申告計算を誤ってしまいます。
この記事では、軽油引取税の非課税と不課税の違いから、正しい消費税処理方法、勘定科目の選び方まで、実務で本当に必要な知識を分かりやすく解説します。
軽油引取税とは?基本的な仕組みを理解しよう
軽油引取税は、ディーゼル燃料である軽油の購入時に課される地方税です。この税金には消費税がかからないという特別な扱いになっています。
一方、ガソリンに課されるガソリン税(揮発油税)は消費税の課税対象に含まれており、ガソリン代にはガソリン税も含めて消費税が課税されています。この違いを正しく理解することが、適切な経理処理の第一歩です。




軽油引取税の税率と計算方法(不課税処理のための基礎知識)
軽油引取税の標準税率は1リットル当たり32.1円です。この税率は都道府県によって多少異なる場合がありますが、ほとんどの地域で統一されています。
軽油40リットルを購入した場合の軽油引取税額は以下のようになります:
軽油引取税額 = 40リットル × 32.1円 = 1,284円






軽油引取税は「非課税」ではなく「不課税」が正解
軽油引取税は「非課税」ではなく「不課税」であることを正しく理解することが重要です。軽油引取税は最終消費者である購入者が負担する税金で、この部分にまで消費税をかけてしまうと二重課税になってしまうため、法律上消費税が課されない仕組みになっています。
したがって、経理処理においても軽油引取税分は「消費税なし(不課税)」として処理する必要があります。間違って「非課税」で処理しないよう注意しましょう。
- ガソリン:ガソリン税も含めた燃料代全体が消費税の課税対象
- 軽油引取税:消費税の不課税取引として除外(非課税ではない)
- 処理方法:軽油のレシートは内訳を確認して不課税部分を分ける
ガソリンを購入した場合は、ガソリン税も含めた燃料代全体が消費税の課税対象になるため、レシート記載の金額全額を課税仕入(課税対象)として仕訳計上して構いません。
しかし、軽油の場合はレシートに「軽油税」として明記されている金額がありますので、その部分は消費税の不課税取引(課税対象外)として除外し、残りの金額のみを課税仕入として計上する必要があります。
軽油引取税で混同しやすい「不課税」と「非課税」の違いを正しく理解しよう
軽油引取税のように消費税がかからない取引には「不課税」と「非課税」の2種類があります。どちらも一見「消費税がかからない」点では同じですが、税法上の扱いや計算上の扱いが異なります。
不課税取引とは
そもそも消費税の課税対象となる取引自体に該当しないものを指します。事業者が事業として対価を得て行う取引に当たらないものは消費税の対象外です。
- 軽油引取税など各種税金の支払い
- 補助金の受取
- 寄附金
- 国外取引
不課税取引は消費税法の適用範囲外のため、消費税の計算上もなかったものとして扱われます。
非課税取引とは
課税の対象となり得る取引ではあるものの、法律で消費税を課さないことと定められた特例的な取引です。社会政策的配慮などから消費税が免除されています。
- 土地の譲渡
- 住宅の家賃
- 利子
- 医療費(保険診療)
非課税取引は課税の枠組みには入りますが税率0%と考えることもでき、帳簿上は消費税区分「非課税」として扱います。
課税売上割合への影響
課税売上割合の計算(消費税の仕入税額控除に関わる計算)においても両者は扱いが異なります。
- 非課税売上:原則として総売上高の分母に含める
- 不課税取引:分母にも分子にも算入しない
- 影響:非課税売上が多いと課税売上割合が下がり仕入税額控除が制限される
軽油引取税は上記のうち「不課税取引」に当たります。しばしば軽油引取税を「非課税」と混同する人がいますが、正しくは「不課税」です。文字どおり課税されないのであって免除されているわけではない点に留意しましょう。






軽油引取税の勘定科目の選び方と実務のポイント
軽油引取税の経理処理で迷いやすいのが勘定科目の選択です。実務では、業種や使用目的、社内の会計方針によって様々な勘定科目が使用されています。






主要な勘定科目パターン
軽油購入時に使用される主な勘定科目は以下の通りです:
燃料費で処理するケース(最も一般的)
製造業や建設業など、重機や機械で軽油を使用する業種で最も多く採用される科目です。
- 製造現場での重機燃料
- 建設現場での機械燃料
- 農業での農機具燃料
- 発電機などの燃料
軽油代と軽油引取税をまとめて「燃料費」として処理し、消費税区分だけを分ける方法が実務的です。
車両費で処理するケース(運送業に多い)
トラックやバスなど車両運行が主業務の企業で採用されることが多い科目です。
- 運送業のトラック燃料
- バス事業の車両燃料
- タクシー業の車両燃料
- 営業車両の燃料
車両関連費用を一括管理したい場合に便利です。車検代、保険料、修理費と合わせて管理できます。
旅費交通費で処理するケース(営業活動中心)
営業活動や出張での軽油使用が中心の企業で採用される科目です。
- 営業車での顧客訪問
- 出張時のレンタカー燃料
- 配送業務での燃料
- サービス提供での移動費
電車賃、高速代、宿泊費と合わせて出張費用を一元管理できるメリットがあります。
軽油引取税部分の勘定科目選択
軽油引取税部分については、以下の2つの処理方法があります:
- 分離処理:軽油代と軽油引取税を別々の科目で処理
- 同一科目処理:軽油代と軽油引取税を同じ科目内で消費税区分だけ分ける
どちらの方法でも消費税計算に影響はありませんが、管理のしやすさや会計ソフトの設定によって選択しましょう。
分離処理の場合:
- 軽油代:燃料費(課税)
- 軽油引取税:租税公課(不課税)
同一科目処理の場合:
- 軽油代:燃料費(課税)
- 軽油引取税:燃料費(不課税)
軽油購入時の仕訳と具体的な処理例
実際に軽油を購入した際の仕訳処理を、具体的な例を使って詳しく解説します。軽油引取税分を切り分けて仕訳することがポイントです。
基本的な仕訳例
例:1リットルあたり税抜120円(このうち軽油引取税32.1円を含む)で軽油を40リットル購入した場合。合計支払額は6,564円になります。
レシートには以下のような内訳が記載されます:
- 軽油本体(税抜価格): 4,800円(120円 × 40L)
- 軽油引取税: 1,284円(32.1円 × 40L)
- 消費税(10%): 480円(4,800円 × 10%)
- 合計: 6,564円
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 | 消費税区分 |
---|---|---|---|---|
燃料費 | 4,800円 | 現金 | 6,564円 | 課税 |
租税公課 | 1,284円 | 不課税 | ||
仮払消費税 | 480円 | ─ |
この部分を課税仕入に含めると消費税申告でミスが発生します。






勘定科目別の仕訳パターン
同じ取引でも、選択する勘定科目によって仕訳の表示が変わります:
車両費での仕訳例(運送業向け)
軽油代と軽油引取税を同一科目内で処理する場合
借方:車両費 4,800円(課税)/ 貸方:現金 6,564円
借方:車両費 1,284円(不課税)
借方:仮払消費税 480円
旅費交通費での仕訳例(営業活動向け)
営業車の燃料として処理する場合
借方:旅費交通費 4,800円(課税)/ 貸方:現金 6,564円
借方:租税公課 1,284円(不課税)
借方:仮払消費税 480円
免税事業者の仕訳例(中小企業向け)
消費税の免税事業者(前々期売上1,000万円以下など)の場合
借方:燃料費 5,280円 / 貸方:現金 6,564円
借方:租税公課 1,284円(不課税)
※仮払消費税を計上せず、税込金額で処理






初心者が陥りやすいミスと注意点
軽油引取税と消費税の処理に関して、経理初心者が特に注意すべきポイントをまとめました。実務での間違いを避けるため、しっかりと理解しておきましょう。
軽油引取税の会計ソフト設定ミス(非課税ではなく不課税で処理)
会計ソフトを使用している場合、以下の点に特に注意が必要です:
軽油引取税は本来消費税の対象外にもかかわらず、会計ソフトの自動設定などで誤って「課税仕入」として処理されてしまうケースがあります。
このままでは消費税申告の内容に誤りが出てしまうため、レシート入力時には軽油引取税部分に「対象外」や「不課税」といった税区分を正しく設定してください。
特に初期設定や勘定科目のデフォルト設定で課税区分が固定されている場合は、自社向けに変更しておくと安心です。






レシート金額の丸ごと課税計上
ガソリン代と同じ感覚で、軽油のレシートに記載された合計金額をそのまま課税仕入として仕訳してしまうミスがよく見られます。
軽油代には消費税がかからない部分(軽油引取税)が含まれているため、そのまま全額を課税扱いにすると仕入税額控除を過大計上してしまうことになります。
税務調査においても「軽油引取税の不課税分を課税仕入に含めていないか」は指摘されやすいポイントです。
必ずレシートの内訳を確認し、軽油引取税分は除いて処理しましょう。






ガソリン税との取り違え
ガソリンに含まれる揮発油税(ガソリン税)は消費税の課税対象であるのに対し、軽油引取税は課税対象外です。この違いを把握せずに処理すると誤りの原因になります。
- ガソリン購入時:レシート総額を課税仕入でOK
- 軽油購入時:内訳の軽油引取税部分を抜く必要がある
燃料の種類によって処理方法が異なることを忘れないようにしましょう。






- 軽油引取税とガソリン税の消費税処理(非課税・不課税)はなぜ違うのですか?
-
これは税法上の取り扱いの違いによるものです。軽油引取税は地方税として課され、その性質上消費税の課税対象外(不課税)とされています。一方、ガソリン税(揮発油税)は国税として課され、商品価格に含まれる形で消費税の課税対象となっています。軽油引取税は「非課税」ではなく「不課税」として処理するのが正解です。
- 軽油引取税も経費として計上できますか?非課税・不課税の違いで扱いは変わりますか?
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はい、軽油引取税は消費税の対象外(不課税)とはいえ、会社にとって立派な経費(費用)です。ガソリン税と同様に損金算入が認められており、税務上問題なく経費計上できます。不課税として処理することで、消費税区分上は除外しつつも、金額自体は忘れずに経費として計上しましょう。
- 会計ソフトで軽油引取税の税区分を設定する方法は?非課税ではダメですか?
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多くの会計ソフトでは「対象外」「不課税」「課税対象外」などの選択肢があります。軽油引取税部分には「不課税」または「対象外」を選択してください。「非課税」ではないことに注意が必要です。軽油引取税は非課税ではなく不課税なので、間違えないよう気をつけましょう。
- 免税事業者でも軽油引取税の不課税・非課税の区分は意識する必要がありますか?
-
免税事業者であっても、軽油引取税の正しい処理方法(不課税)を理解しておくことは重要です。将来的に課税事業者になる可能性があるため、軽油引取税は「非課税」ではなく「不課税」であることを覚えておきましょう。また、税務調査や会計処理の正確性の観点からも必要な知識です。
まとめ:軽油引取税は「不課税」!非課税との違いを理解して消費税申告ミスを防ごう
軽油引取税の処理は、一度理解してしまえば決して難しいものではありません。重要なポイントを整理して、正確な経理処理を心がけましょう。
軽油購入のレシートで「軽油税」「軽油引取税」の金額を必ず確認する
軽油代:課税仕入、軽油引取税:不課税(対象外)として正しく区分する
業種や使用目的に応じて燃料費・車両費・旅費交通費から適切な科目を選択
軽油引取税が誤って課税仕入として自動計上されないよう設定を見直す
月次で軽油購入の処理が正しく行われているか、消費税区分をチェックする
軽油引取税は「非課税」ではなく「不課税取引」であり、消費税の課税対象外です。ガソリンとは異なる処理が必要であることを理解し、レシートの内訳を確認して正しく仕訳することで、消費税申告のミスを防ぐことができます。
軽油引取税の処理で迷った時は「非課税ではなく不課税」と覚えておけば間違いありません。不明点がある場合は税理士や会計の専門家に相談しつつ、正確な経理処理を心がけましょう。








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