「交際費は年800万円まで経費にできる」とよく言われますが、交際費はいくらまで経費(損金)にできるのか、そして800万円を超えたらどうなるのかは会社によって答えが変わります。中小法人にはもう一つ「接待飲食費の50%を損金にする」という選択肢があり、どちらか有利な方を選べるからです。多くの会社は800万円の定額控除が得ですが、接待飲食費が非常に多い会社では50%基準の方が有利になることも。本記事では、あなたの会社がどちらを選ぶべきかを自動で判定する計算ツールを用意しました。あわせて、見落としやすい控除対象外消費税額等の影響と、集計を楽にする補助科目の設定まで、監査法人・税理士法人での実務経験をもとに、公認会計士試験合格者の視点で解説します。
📌 この記事でわかること
- 交際費はいくらまで経費(損金)にできるのか──中小法人の「800万円定額控除」と「接待飲食費50%」の仕組み
- 自分の会社は800万円と50%のどちらが得か、その場でわかる自動計算ツール
- 定額控除と50%方式の分かれ目が「接待飲食費 年1,600万円」になる理由
- 1人1万円以下の飲食費を交際費から外す判定(2024年4月改正)と具体的な事例
- 税抜経理の会社で有利判定に効く「控除対象外消費税額等」の按分(接待飲食費÷交際費×控除対象外消費税額)と、集計が楽になる補助科目の作り方
ぜいむたん


結論:交際費はいくらまで経費に?中小法人は「800万円定額控除」と「接待飲食費50%」の有利な方を選べる
交際費等は原則として損金(税務上の経費)になりませんが、期末資本金1億円以下の中小法人には次の2つの枠があり、いずれか有利な方(損金不算入額が小さくなる方)を選択できます。
この制度(定額控除・接待飲食費50%の特例)は、令和6年度税制改正で3年延長され、令和9年(2027年)3月31日までに開始する事業年度まで適用されます(国税庁 No.5265)。まずは下のツールで、あなたの会社がどちらを選ぶべきかを確認しましょう。
【判定ツール】定額控除 vs 接待飲食費50% 有利選択シミュレータ






どんな場合に定額控除が有利で、どんな場合に接待飲食費50%が有利か






どちらが有利かは、次のシンプルな比較で決まります。
- 定額控除の損金算入額=交際費等の総額(上限800万円)
- 接待飲食費50%の損金算入額=接待飲食費 × 50%
接待飲食費50%の損金算入額(飲食費×50%)が800万円を上回るのは、接待飲食費が年1,600万円を超えるときです(1,600万円 × 50%=800万円)。つまり——
| 会社のタイプ | 有利な方式 | 理由 |
|---|---|---|
| 交際費の総額が年800万円以下 | 定額控除 | 全額が枠内に収まり、飲食費以外も含めて全額損金になる |
| 総額は800万円超だが接待飲食費は1,600万円以下 | 定額控除 | 飲食費×50%が800万円に届かず、定額控除枠の方が大きい |
| 接待飲食費が年1,600万円を超える | 接待飲食費50% | 飲食費×50%が800万円を上回り、上限のない50%枠が効いてくる |
接待飲食費が年1,600万円を超える会社は、月あたり130万円以上を接待に使う計算です。監査法人・税理士法人で多くの中小企業の申告に関わってきた実務経験から言うと、実際に50%方式が有利になる会社はごく一部で、多くの中小企業は定額控除(800万円)を選んでおけば間違いありません。とはいえ飲食接待が非常に多い業種(一部の営業会社等)では、毎期この判定ツールで比較しておく価値があります。なお、大法人(資本金100億円超を除く)は接待飲食費50%しか使えず、定額控除は中小法人だけの特例です。
1人あたり1万円以下の飲食費は交際費から除外できる(2024年4月改正)






令和6年(2024年)4月1日以後に支出する飲食費から、1人あたり1万円以下の社外飲食費(旧基準は5,000円)は交際費等の範囲から除外され、会議費などとして全額損金にできます。判定は「その飲食費 ÷ 参加人数」で行います(社内のみの飲食は対象外)。具体例で見てみましょう。
| 事例 | 計算(飲食費÷人数) | 判定・処理 |
|---|---|---|
| 事例1:取引先を接待。飲食費20,000円/当社2名+取引先3名=5名 | 20,000円 ÷ 5名 = 4,000円 ≦ 1万円 | 交際費から除外。会議費等として全額損金 |
| 事例2:取引先を接待。飲食費66,000円/当社2名+取引先3名=5名 | 66,000円 ÷ 5名 = 13,200円 > 1万円 | 接待飲食費(50%損金 or 定額控除の対象) |
| 事例3:取引先に贈る贈答品3,000円を購入 | 飲食費ではない | その他の交際費(定額控除の対象・飲食50%方式では損金不算入) |
ただし、1人1万円以下の飲食費を全額損金にするには、日付・参加者の氏名や関係・人数・金額・店名などを記載した帳簿書類の保存が必要です。会議費で処理する場合も同じで、記載漏れがあると全額損金が認められないおそれがあります。交際費と会議費の具体的な仕訳例や、税務調査で否認されないための書類要件は、交際費と会議費の違い・仕訳例|1人1万円基準の書類要件で詳しく解説しています。あわせて、混同しやすい諸会費と交際費の違いと判断基準も確認しておくと、勘定科目の判定で迷いません。
【注意点1】控除対象外消費税額等は「有利判定」にも影響する(税抜経理の会社)






これは「別表への書き方」の話ではなく、さきほどのシミュレーションの数字そのものが変わるという話です。課税売上割合が100%でない会社が税抜経理をしている場合、交際費等にかかる消費税のうち仕入税額控除できなかった部分(控除対象外消費税額等)を、交際費等の額に加算して損金不算入額を計算します(参考:TKC WEBコラム)。まず交際費等の全体について控除対象外消費税額等を計算します(一括比例配分方式なら、おおむね「交際費に係る消費税額 ×(1 − 課税売上割合)」)。
ここで大事なのが、接待飲食費に係る控除対象外消費税額等は別途、按分して求めるという点です。交際費全体で計算した控除対象外消費税額等のうち、接待飲食費に対応する分を
で按分し、この金額を接待飲食費の額に加算します(残りは飲食費以外の交際費に加算)。結果として、①定額控除の総額(800万円枠を超えやすくなる)と②接待飲食費50%の損金算入額の両方が増え、有利判定が変わることがあります。上の判定ツールはこの控除対象外消費税額等を含めていませんので、税抜経理で控除対象外消費税額等がある会社は、上式で按分した金額を接待飲食費と交際費総額にそれぞれ上乗せしたうえで判定してください。なお税込経理の会社は控除対象外消費税額等が発生しないため、この影響はありません。税理士法人での実務でも、交際費の税務調査でまず確認されるのがこの控除対象外消費税額等の加算漏れでした。加算した金額は、別表十五(交際費等の損金算入に関する明細書)の「控除対象外消費税額等」の欄にも忘れず記載します。
| 支出交際費等の額(7の計) | 1 | ×××円 | 損金算入限度額 ((1)と(2)のうち少ない金額) |
3 | ×××円 |
| 定額控除限度額 (800万円 × 月数/12) |
2 | ×××円 | 損金不算入額 ((1)-(3)) |
4 | ×××円 |
| 支出交際費等の額の明細 | |||||
| 科目 | 支出額 5 | 交際費等の額から控除される費用の額 6 | 差引交際費等の額 7 | ||
| 交際費 | ×××円 | ×××円 | ×××円 | ||
| 控除対象外消費税額等 ← | ×××円 | ×××円 | ×××円 | ||
| この行の記載モレに注意(税抜経理の会社) | |||||
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決算・申告をスムーズにするには、日々の記帳の段階で交際費を内訳ごとに分けておくのが有効です。勘定科目「接待交際費」に、次のような補助科目(補助コード)を設定しておきましょう。
| 勘定科目 | 補助科目(補助コード) | 損金の扱い |
|---|---|---|
| 接待交際費 | ①接待飲食費(1人あたり1万円以下) | 交際費から除外し全額損金になるもの |
| ②接待飲食費(1人あたり1万円超) | 50%損金 または 定額控除の対象 | |
| ③その他(飲食費以外・社内飲食費) | 定額控除の対象(飲食50%方式では損金不算入) |
こう分けておけば、決算時に「接待飲食費(②)の合計」と「交際費等の総額(①を除く②+③)」がすぐ集計でき、定額控除と50%方式の有利判定も一瞬です。なお、1人1万円以下の接待飲食費(①)は「会議費」など別の勘定科目で処理しても差し支えありませんが、その場合も帳簿書類への必要事項の記載は必須です。
よくある質問(FAQ)
- 中小法人は毎期、定額控除と接待飲食費50%のどちらを使うか変えてもいいですか?
- はい。中小法人はいずれか有利な方を選択でき、事業年度ごとに有利な方式を選べます。別表十五で、その期に有利な方の損金算入限度額を用いて計算します。
- 接待飲食費が年1,600万円を超えないと50%方式は使えないのですか?
- 使えないわけではなく、1,600万円を超えて初めて「50%方式の方が有利」になるという意味です。飲食費×50%が800万円(定額控除枠)を上回るのが1,600万円超のためです。それ以下なら定額控除の方が損金算入額が大きくなります。
- 1人あたり1万円以下の判定は、税込・税抜のどちらで行いますか?
- 会社が採用している経理方式(税込経理なら税込金額、税抜経理なら税抜金額)で判定します。判定は「飲食費 ÷ 参加人数」で1人あたり金額を計算します。
- 交際費の定額控除(800万円)はいつまで使えますか?
- 令和6年度税制改正で3年延長され、令和9年(2027年)3月31日までに開始する事業年度まで適用されます。接待飲食費50%の特例も同様に延長されています。
- 税抜経理だと交際費の有利判定は変わりますか?
- はい。税抜経理で課税売上割合が100%未満の会社は、控除対象外消費税額等を交際費等の額に加算するため、交際費等の総額と接待飲食費の額が増え、定額控除と接待飲食費50%の有利判定が変わることがあります。税込経理の会社は控除対象外消費税額等が発生しないため影響ありません。
まとめ
期末資本金1億円以下なら「800万円の定額控除」と「接待飲食費50%」の有利な方を選べる。
接待飲食費が年1,600万円を超えて初めて50%方式が有利。大半の会社は定額控除でOK。
2024年4月から基準が5,000円→1万円へ。帳簿書類の保存が条件。
税抜経理は別表十五の「控除対象外消費税額等」の記載モレに注意。補助科目で内訳を分けると集計が楽。



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