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【会計士監修】自宅兼事務所の会計処理方法:法人契約と個人契約の違いと正しい処理

目次
この記事で解決できる悩み
  • 自宅兼事務所の経費はどこまで計上できるの?
  • 法人成りしたら自宅の家賃はどう処理すればいいの?
  • 社宅として契約するメリットは?税務上の注意点は?
  • 個人契約のままでも経費にできる?按分計算の方法は?

自宅をオフィスとして使う「自宅兼事務所」の経費処理は、法人契約にするか個人契約のままにするかで大きく異なります。法人名義の社宅扱いにすれば、家賃の70~80%程度を会社の経費に計上できる一方、個人事業主時代のように個人契約のまま按分計算する場合は経費計上できるのは自宅家賃の20~30%程度が一般的です。

本記事では、自宅兼事務所の正しい会計処理方法として「法人契約パターン」と「個人契約パターン」それぞれの手法・メリットデメリットを徹底解説します。社宅利用時の現物給与の扱いや按分比率の決め方、税務調査での注意点まで網羅し、ニッチな疑問にも専門家視点でお答えします。自宅を事務所として活用する中小企業経営者や、個人事業から法人成りした方必見の内容です。

自宅兼事務所の経費処理は法人契約か個人契約かでどう変わる?

自宅を事務所として使う際の経費処理には大きく2パターンあります。どちらの方法を選ぶかによって、経費計上できる金額や手続きの煩雑さが変わってきます。

法人契約に切り替えると会社経費にできる家賃割合が大幅に増える一方、個人契約のままだと経費算入できるのは事業使用分に限られます。この違いは税負担に大きく影響するため、どちらが自社に適しているか見極める必要があります。

ぜいむたん
個人事業主から法人成りしたのですが、自宅の家賃はどう処理すればいいのでしょうか?
ゆーた
大きく分けて「法人名義に切り替えて社宅扱いにする方法」と「個人契約のまま事業使用分だけ経費にする方法」の2つがあるんやで。どっちが得かは状況次第やから、詳しく見ていこか!

法人契約パターンの会計処理(社宅利用による経費計上)

法人契約(社宅)とは?自宅を社宅扱いにする仕組み

法人契約パターンとは、自宅の賃貸契約名義を法人に変更し、会社が借上社宅として自宅を提供する形にすることです。具体的には、賃貸契約の名義を法人(会社)にして、会社が大家さんに直接家賃を支払います。

この方法では、社宅として会社が家賃等を負担し、入居者である経営者本人(役員)からは一定の使用料を徴収する仕組みになります。ただし、この方法を採用するには「法人名義で契約する必要がある」「オーナーや管理会社の許可・手続きが必要」といった前提条件をクリアする必要があります。

社宅使用料と現物給与の扱い(雇用保険法上の法的根拠)

法人契約で自宅を社宅とする場合に避けて通れないのが「社宅使用料」の設定です。国税庁の定める「賃貸料相当額」の計算式に基づき、入居者(役員・従業員)からその額以上の家賃を徴収すれば給与課税されません。従業員であれば賃貸料相当額の50%以上を徴収すれば課税不要というルールもあります。

あわせて雇用保険法など労働保険上の現物給与の扱いについても押さえておく必要があります。「家賃の実費に対し従業員負担が3分の1以上ならその差額は賃金とみなさない」とする法的根拠があり、社宅使用料を家賃の少なくとも3分の1以上徴収することが社会保険・労働保険上も求められます。

社宅使用料を十分徴収しないと現物給与(給与課税)とみなされるリスクがあるため、適切な金額設定が重要です。

ゆーた

雇用保険料の規定を元に、会社で支払った家賃の1/3を従業員から徴収して現物給与に該当するのを避けることが多いで。

法人契約パターンの仕訳例

法人契約で社宅とした場合の具体的な会計処理例を示します。例えば「毎月の家賃10万円を会社が支払い、役員から社宅使用料3万円を徴収するケース」を考えてみましょう。

  • 家賃支払い時(会社→大家):
    (借方)地代家賃
    100,000円
    (貸方)普通預金
    100,000円
  • 社宅使用料徴収時(役員→会社):
    (借方)普通預金
    30,000円
    (貸方)雑収入
    30,000円

給与支給時に家賃30,000円分を徴収するケースもあります。

上記の仕訳により、会社の実質負担家賃70,000円が経費計上されることになります。このように社宅利用時は家賃の大半を損金算入できるメリットがある一方、仕訳上は役員からの徴収額を控除する処理となります。

法人契約パターンのメリット・デメリット

  • 社宅化することで家賃の多くを会社経費にでき、法人税の軽減につながる
  • 経営者個人としても本来自腹で払っていた家賃を会社負担に置き換えられる
  • 役員報酬をその分下げて節税するといった調整も可能(社会保険料の負担軽減効果も)
  • 敷金礼金や更新料なども会社負担にできるため、トータルのキャッシュアウトが減る
  • 事業で使っていないプライベート部分も含め経費化できる点は法人ならではのメリット

個人契約パターンの会計処理(按分計算による経費計上)

個人契約のまま自宅を事務所利用する方法とは

賃貸物件の契約名義を個人(社長個人)のままにして、自宅の一部を事務所として会社で使うケースを考えてみましょう。、法人はどのように経費処理できるのでしょうか。

基本的な考え方は、個人から会社へ事業スペースを又貸しするイメージです。会社が直接個人の家賃を肩代わりすると給与課税となるため、そうではなく会社と個人の間で賃貸借契約(又貸し契約)を結ぶ方法が現実的です。つまり、個人が自宅の一部を会社に貸し出し、会社はその部分に相当する家賃を個人(貸主)に支払うという形になります。

賃貸物件の場合には、「家賃×事業利用割合」を基に算定した賃料を会社が支払う方法が多いです。

個人契約パターンで経費計上できるのは自宅のうち事業で使用している部分のみであるため、その按分比率の決め方が重要になります。

按分比率の決定基準

  1. 床面積比による按分:自宅全体50㎡のうち書斎10㎡を事務所利用している場合、20%を経費計上
  2. 時間割合による按分:リビングなど共用空間を特定時間だけ仕事に使う場合は「1日のうち業務で使用する時間割合」で按分
  3. 費目別の按分:電気代など使用時間で案分する方が適切なものもあるため、費目ごとに合理的な基準を選ぶ

根拠資料の残し方

  • 賃貸物件なら間取り図面を用意し事務所スペースを色分けする
  • 持ち家なら類似物件の賃料相場を調査した資料を保存する
  • 按分計算の詳細を記録したメモやエクセル表を作成する

按分比率については一概に何%でないといけないという基準は無いですが、社会通念上妥当な範囲に留めるべきです。

一般的には事業用途が半分以下(2~3割程度)であるケースが多く、過度に高い按分は税務署から疑問視されやすい点に注意しましょう。

個人契約パターンの仕訳例

個人契約・按分計上の場合の具体的な仕訳例を示します。例えば「家賃月10万円(個人支払い)のうち30%相当を会社経費とするケース」を想定してみましょう

  • 家賃計上時(個人→大家):


    (借方)地代家賃

    30,000円

    (貸方)未払金

    300,000円


  • 家賃支払い時(会社→個人):
    (借方)未払金
    30,000円
    (貸方)普通預金
    30,000円

上記仕訳により、会社は3万円を経費計上します。一方、個人側では3万円の不動産収入が発生しますが、同額を実際の家賃支払いに充てているため利益はゼロとなります。

持ち家の場合で会社から個人に賃料を支払うケースも、仕訳の考え方は同様です。会社側は近隣相場等で決めた一定額を地代家賃として計上し個人に支払い、個人側では不動産所得として計上します(こちらは別途個人で確定申告が必要になる点に注意しましょう)。

個人契約パターンのメリット・デメリット

  • 賃貸契約を個人名義のまま維持できるため大家との契約変更や交渉が不要で手軽
  • 法人名義にできない物件や、事業利用割合がごく一部で社宅化までする必要がないケースでは現実的
  • 会社と個人の間で賃貸契約書を交わしておけば取引関係が明確になり、税務上も一定の説明が付く

法人契約vs個人契約それぞれの選択による税務調査での注意点

法人契約パターン、個人契約パターンそれぞれについて、税務調査で問題視されやすいポイントを整理しておきましょう。

法人契約(社宅)パターンの税務調査ポイント

  • 社宅使用料の金額が適正かがチェックされる
  • 不適切に低い(または徴収していない)場合、本来受け取るべき差額が役員給与(現物給与)と認定される可能性がある
  • 法人側では経費が否認され追徴課税、個人側でも給与所得として課税される二重のリスクがある
  • 調査対応としては、賃貸料相当額の計算根拠や実際の社宅使用料の受領記録(給与天引きの明細など)を示せるようにしておくことが重要

個人契約(按分)パターンの税務調査ポイント

  • 按分比率の妥当性がチェックされる(「事業で本当にそんな高い割合で使っているのか?」)
  • 按分根拠として提示できる資料(間取り図・面積計算、光熱費の使用記録等)を事前に準備しておくと安心
  • 会社から個人への支払いが適正かも見られる
  • 契約書や支払い実績を整備し、賃料が客観的に合理的な金額であることを説明できるようにする

両パターン共通の注意点

  • 経費計上の裏付け資料をきちんと残しているかが問われる
  • 家賃や光熱費の領収証・請求書、社内決裁書類、社宅使用料の授受記録など、関連する証憑類はすべて保存し、調査時に提出できるようにしておく
  • 適切に処理していれば恐れる必要はないが、形式だけ整えて実態が伴わない場合(例:実際は自宅を全く業務に使っていないのに経費計上している等)は指摘を受ける可能性がある
ぜいむたん

実際、実務ではどの程度の金額を経費計上することが多いんですか?

ゆーた

社宅なら支払った家賃の3割を受取家賃として計上(7割経費)、個人契約なら2割くらいがMAXのイメージやな~!!

自宅兼事務所にまつわるよくある質問と回答(FAQ)

法人契約(社宅)と個人契約のどちらが得ですか?

一般的には法人契約にして社宅扱いとする方が経費算入できる額が大きく、法人税・所得税の節税メリットがあります。会社負担で家賃を支払うことで個人の手出しも減るためトータル有利です。

賃貸オーナーが法人契約を許可してくれない場合、どうすれば良いですか?

その場合は無理に社宅化せず、個人契約のまま按分で経費計上する方法を取りましょう。会社とご自身との間で事業用スペースの賃貸契約を結ぶ形にすれば、会社側で按分相当額を経費計上できます。

按分割合はどのように決めればいいですか?税務署に基準はありますか?

按分割合は合理的で客観的な方法で算定する必要があります。代表的なのは床面積比で、専用の仕事部屋があるならその面積割合を使います。例えば自宅100㎡中20㎡の部屋をオフィス兼用なら20%です。

会社から支給された住宅手当で家賃を払っています。この場合も経費になりますか?

住宅手当として現金支給された場合は、それ自体が給与所得となり課税されます。会社にとっても給与手当の支出であり、社宅のような形での非課税メリットは受けられません。経費として認められるのは、会社が直接家賃を負担し事業用途に供している場合のみです。もし手当ではなく会社負担で自宅を使いたい場合は、社宅契約に切り替えるか、前述の按分ルールに沿って会社から個人に賃料を支払う方法へ変更することを検討しましょう。

実務上のポイント・注意事項まとめ

STEP
賃貸契約書の確認

自宅を事務所用途に使ってよいか、法人契約への変更が可能かをチェック。黙って法人利用するとトラブルになる可能性があるため、契約上問題ない範囲で慎重に進める。

STEP
社内手続きの整備

自宅を経費にする旨を社内稟議や取締役会で正式に決定。特に社長個人との取引になるケースでは、社内決裁書や賃貸借契約書を交わし証拠を形式上整える。毎月の社宅使用料の徴収は給与天引きにする、按分家賃の支払いは定期的に役員報酬とは別に送金するなど、支払い方法もルール化する。

STEP
証憑の適切な管理

家賃や光熱費の領収証、使用料の授受記録、按分計算表、間取り図などは税務調査や経理監査に備えてファイリング。特に現物給与まわりは税務のみならず社会保険の調査でも確認されるポイント。

STEP
定期的な見直し

事業内容や働き方の変化で自宅の使用状況が変わることもある。オフィスを別に借りた、あるいはテレワーク中心になった等、利用実態の変化に応じて契約形態や按分割合を見直すことも検討する。常に「実態に即した経費処理」であることが信頼性確保のポイント。

ゆーた
結局のところ、自宅兼事務所の会計処理は「法人契約で社宅化するか」「個人契約のまま按分するか」の2択やけど、それぞれにメリットデメリットがあるわけや。状況に応じて最適な方法を選んで、何より「実態に即した処理」を心がけることが大事やで!
ぜいむたん
ありがとうございます!きちんと根拠資料を揃えて、自分の状況に最適な方法を選びたいと思います。税務調査のことも考えると、形だけではなく実態に合った処理が大切なんですね。
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