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自宅の一部を法人の事務所として使う場合、選べる形は3つあります。誰が賃貸契約の当事者か、そして自宅が賃貸か持ち家かで、法人の損金になる金額も、役員個人に課税が発生するかどうかも変わります。
とくに注意したいのが、役員個人が借りている部屋の家賃を会社が肩代わりするパターンです。国税庁は「入居者が直接契約している場合の家賃負担」は社宅の貸与と認められず給与として課税されるとはっきり書いています。良かれと思って会社から払っていると、役員給与としての源泉徴収漏れを指摘される可能性があります。
個人事業主の家事按分については【2026年版】自宅兼事務所の家事按分を完全解説で扱っているため、本記事は法人が自宅を事務所として使う場合に絞って掘り下げます。
📌 この記事でわかること
- 法人の自宅兼事務所で選べる3パターン(社宅/法人が役員から賃借/持ち家を法人へ賃貸)の違い
- 3つの質問に答えると使えるパターンがわかる判定ツール
- 役員個人の契約のまま会社が家賃を払うと給与課税になる理由(国税庁の原文)
- 社長の持ち家を法人に貸す場合に、役員側で発生する不動産所得の計算
- 各パターンの仕訳例と、税務調査で確認される3点
- 賃料が高すぎる・安すぎる場合にそれぞれ生じるリスク
法人の自宅兼事務所は3パターン|契約者と所有者で決まる
整理の起点は「誰が大家と契約しているか」「自宅は賃貸か持ち家か」の2つだけです。ここが決まれば、選べるパターンは自動的に絞られます。
ぜいむたん


やってはいけないのは「契約は個人のまま、会社が家賃を払う」
3パターンのどれにも当てはまらないのが、役員個人が大家と契約したまま、会社が家賃を振り込む形です。国税庁タックスアンサーNo.2600「役員に社宅などを貸したとき」が明確に否定しています。
給与として課税されるということは、法人側では役員給与として扱われるということです。これは法人税基本通達9-2-9(10)「役員等のために個人的費用を負担した場合におけるその費用の額に相当する金額」に当たります。
ここでよくある誤解が「だから損金にならない」というものですが、そうとは限りません。同通達9-2-11(4)は、9-2-9(10)の金額のうち「毎月負担する住宅の光熱費、家事使用人給料等(その額が毎月著しく変動するものを除く。)」を、定期同額給与に該当するものとして例示しています。家賃の肩代わりのように毎月おおむね一定の負担であれば、同様に定期同額給与として損金算入されるのが一般的です。
では何が問題かというと、役員個人の側です。給与課税される以上、その分だけ役員の所得税・住民税と社会保険料が増えます。会社が源泉徴収していなければ不納付加算税・延滞税の対象にもなります。社宅にすれば賃貸料相当額の徴収だけで済んだものを、まるごと給与にしてしまうのが損なのであって、法人の損金性が否定されるからではありません。
【判定ツール】自社はどのパターンを使えるか
3つの質問に答えると、選べるパターンと最初にやるべきことが出ます。
パターン①法人契約の社宅|賃貸料相当額を徴収すれば給与課税なし
法人が大家と賃貸借契約を結び、役員に社宅として貸す形です。家賃の全額が法人の損金になり、役員から賃貸料相当額を受け取っていれば給与課税もありません。






小規模な住宅かどうかは床面積で判定する
国税庁No.2600は、小規模な住宅を「法定耐用年数が30年以下の建物の場合には床面積が132平方メートル以下、法定耐用年数が30年を超える建物の場合には床面積が99平方メートル以下」と定めています。区分所有の建物は、共用部分の床面積をあん分して専用部分に加えたところで判定します。
| 区分 | 判定基準 | 賃貸料相当額の考え方 |
|---|---|---|
| 小規模な住宅 | 耐用年数30年以下は132㎡以下/30年超は99㎡以下 | 建物の固定資産税課税標準額×0.2%+12円×総床面積÷3.3㎡+敷地の課税標準額×0.22% |
| 小規模でない住宅(借上げ) | 上記を超えるもの | 会社が家主に支払う家賃の50%と、自社所有の場合の算式(建物の課税標準額×12%〔耐用年数30年超は10%〕+敷地の課税標準額×6%、の12分の1)で出した額のいずれか多い金額 |
| 豪華社宅 | 床面積240㎡超で取得価額・内外装等を総合勘案/240㎡以下でもプール等がある場合 | 上記の算式は適用されず、通常支払うべき使用料に相当する額 |
パターン①の仕訳例
家賃15万円を法人が支払い、役員から賃貸料相当額2万円を給与天引きで徴収した場合です。
| 時点 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 家賃の支払 | 地代家賃 | 150,000 | 普通預金 | 150,000 |
| 役員報酬の支給時に天引き | 役員報酬 | 800,000 | 受取家賃(または地代家賃の戻し) | 20,000 |
| 普通預金ほか(手取り・源泉税等) | 780,000 |
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役員との取引は、記録が残っているかで結論が変わります
社宅の徴収額も、役員から借りる賃料も、毎月同額を同じ科目で処理し続けられているかが問われます。マネーフォワード クラウド会計なら定型仕訳を登録して毎月呼び出せるので、処理のブレを防げます。
マネーフォワード クラウド会計を見る →パターン②法人が役員から事務所部分を賃借する
大家が法人契約に応じてくれない場合の現実的な選択肢です。ポイントは、会社が家賃を肩代わりするのではなく、会社が役員から事務所部分を借りて賃料を払うという形にすることです。






用意しておくもの
役員と法人の間で賃貸借契約書を作成し、対象となる部屋・面積・賃料・期間を明記します。あわせて、元の賃貸借契約で転貸や事業利用が禁止されていないかを確認し、必要であれば大家の承諾を取ってください。ここを飛ばすと、税務上は成立していても賃貸借契約の違反になります。
役員側では不動産所得になる
受け取った賃料は役員個人の不動産所得です。国税庁タックスアンサーNo.1370のとおり「総収入金額-必要経費」で計算し、必要経費には大家に支払っている家賃のうち転貸部分が含まれます。法人からの賃料と大家への家賃の按分部分が同額なら、不動産所得はほぼゼロになります。
パターン②の仕訳例
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 地代家賃 | 45,000 | 普通預金 | 45,000 | 役員への事務所賃料(15万円×30%) |
| 水道光熱費 | 6,000 | 普通預金 | 6,000 | 電気代の事業使用分 |
パターン③役員の持ち家を法人に貸す|不動産所得が発生する
社長が所有する自宅の一部を法人に貸すパターンです。賃貸物件と違って大家がいないぶん自由度は高いのですが、役員個人に不動産所得が生まれる点が決定的に違います。






役員側の必要経費になるもの
No.1370は、不動産所得の必要経費として固定資産税・損害保険料・減価償却費・修繕費を挙げています。自宅の一部を貸している場合は、これらのうち貸付部分に対応する金額が必要経費です。住宅ローンの利息のうち貸付部分も必要経費になります。
住宅ローン控除との関係に注意
住宅ローン控除は、床面積の2分の1以上を専ら自己の居住の用に供していることなどが要件で、事業用に使っている部分は控除の対象から外れます。事務所部分の割合が大きくなると控除額が減るため、持ち家パターンを選ぶ前に、控除の残存期間と減少額を試算しておくことをおすすめします。なお事業用部分の割合が小さい場合の取扱いもあるため、自社のケースで実際に控除額が減るのかどうかは所轄税務署または顧問税理士にご確認ください。
赤字になっても土地分の利息は損益通算できない
不動産所得が赤字になった場合、原則として他の所得と損益通算できます。ただし国税庁タックスアンサーNo.1391のとおり、「不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した土地等を取得するために要した負債の利子に相当する部分の金額」は損益通算の対象になりません。住宅ローンには土地の取得分が含まれているのが普通なので、赤字を見込んで持ち家パターンを選ぶ場合はこの制限を織り込んでください。
賃料が高すぎても安すぎてもリスクになる
| 設定 | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 相場より高い賃料 | 実質的に役員への利益供与と見られ、超える部分が役員給与と扱われるおそれ | 近隣の同条件物件の募集賃料を複数集め、根拠として保存する |
| 相場より著しく低い/無償 | 法人側で経費が過少になるだけでなく、経済的利益の授受として整理を求められることがある | 面積割合に応じた合理的な金額を設定する |
| 契約書がない | そもそも賃貸借の事実を証明できず、支払額の性質を説明できない | 賃貸借契約書を作成し、株主総会・取締役会の手続きも確認する |
税務調査で見られる3点のチェックリスト
Big4監査法人・税理士法人で中小企業の調査に立ち会ってきた経験から言うと、自宅兼事務所で確認されるのはほぼこの3点です。






法人契約なのか、役員と法人の賃貸借なのか。契約書がない支払いは説明できません。
間取り図に事務所部分を書き込み、面積を計算した紙を1枚残します。口頭の説明だけでは根拠になりません。
月によって金額が動いていると、その理由を聞かれます。合理的な理由がなければ利益調整と見られかねません。
給与天引きの明細と、計算の基礎にした固定資産税の課税標準額の資料をセットで保存します。
よくある質問(FAQ)
- 事務所として使う面積の割合は、どのくらいまで認められますか?
-
法令に上限の定めはなく、実際に事業に使っている部分がどれだけあるかで決まります。専用の部屋があるならその面積、リビングの一角なら使っている面積を測って根拠にします。実態を超える割合を設定すると、超える部分は役員に対する経済的利益として整理を求められるおそれがあります。間取り図に事務所部分を書き込んだ資料を残しておくのが確実です。
- 法人契約の社宅にすると、事務所部分の家賃も全額損金になりますか?
-
法人が大家に支払う家賃は、居住用部分も含めて法人の損金になります。そのうえで、居住用部分について役員から賃貸料相当額を受け取っていれば給与課税されない、という構造です。事務所として使っている部分について追加で役員から徴収する必要はありませんが、賃貸料相当額の計算は国税庁No.2600の算式に従って行ってください。
- 水道光熱費や通信費も法人の経費にできますか?
-
事業で使っている部分は経費にできます。ただし按分の基準は費目ごとに考えます。電気代は使用時間や面積、通信費は業務利用の割合というように、その費目の性質に合う基準を選んでください。家賃と同じ割合を機械的に当てはめるより、費目ごとに根拠を書き分けたほうが説明しやすくなります。
- 持ち家を法人に貸した場合、確定申告は必要ですか?
-
役員報酬などの給与所得がある方で、給与以外の所得の合計が20万円以下であれば所得税の確定申告は不要とされています。ただし不動産所得が20万円を超えるなら申告が必要ですし、住民税は20万円以下でも申告が必要です。減価償却費や固定資産税を必要経費に入れた結果いくらになるかで変わるため、計算してから判断してください。
まとめ|選ぶ前に確認する3つの手順
3パターンのどれが有利かは、家賃の額・床面積・役員の所得水準で変わります。ただし選び方を間違えると損得の話ですらなくなるのが、役員個人の契約のまま会社が家賃を払う形です。そこだけは避けてください。
この2つでパターンはほぼ決まります。本記事の判定ツールで確認できます。
役員と法人の間の賃貸借契約書、間取り図と面積計算。この2つが調査で最初に求められます。
床面積で小規模住宅かどうかを判定し、固定資産税の課税標準額を取り寄せて計算します。



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