インボイス制度が開始され、中小企業経営者や個人事業主の皆さんは「何をどうすればいいのか」と戸惑いを感じているのではないでしょうか。適格請求書の発行から消費税申告まで、手作業で対応するには負担が大きすぎるというのが現実です。
実は、会計ソフトを活用すれば、インボイス制度への対応も効率的に行うことができます。freee・マネーフォワードなど主要会計ソフトの導入支援を多数手がけてきた実務経験から、本当におすすめできる会計ソフトと失敗しない選び方をお伝えします。
インボイス制度対応で発生する課題とは
インボイス制度の基本要件と中小事業者への影響
インボイス制度(適格請求書等保存方式)は2023年10月から開始された制度で、適格請求書発行事業者のみが消費税の仕入税額控除の対象となる請求書を発行できる仕組みです。
特に中小事業者への影響は深刻で、これまで免税事業者だった年商1,000万円以下の事業者も、取引先からの要請で課税事業者への転換を迫られるケースが増加しています。適格請求書発行事業者として登録すると、消費税の申告義務が発生し、経理業務の負担が大幅に増加するのが実情です。
freee・マネーフォワード対応前の請求書発行業務の複雑化
インボイス制度により、具体的に以下の新しい業務が発生します:
- 適格請求書の様式確認:登録番号、適用税率、税額の明記が必須
- 消費税区分の詳細管理:標準税率・軽減税率・免税取引の正確な区分
- 仕入税額控除の管理:適格請求書以外は控除対象外となる厳格な管理
- 消費税申告書の複雑化:課税売上・課税仕入の詳細な計算と申告
これらの業務を手作業で行うと、月次で10〜20時間の追加作業が発生すると想定されます。クラウド会計ソフトの活用により、この負担を大幅に軽減することが可能です。
手作業対応のリスクと計算ミスの実例
Excelや手書きでインボイス対応を行う場合、以下のようなリスクが発生します:
- 税率区分の転記ミス:標準税率10%と軽減税率8%の混同による課税額誤り
- 適格請求書要件の漏れ:登録番号記載忘れによる仕入税額控除の否認
- 消費税計算の誤り:端数処理や按分計算の間違いによる申告ミス
実際に、手作業対応で消費税の計算ミスが発生し、税務調査で追徴課税を受けた事例も報告されています。クラウド会計ソフトの自動計算機能により、こうしたリスクを大幅に軽減できます。
クラウド会計ソフトでインボイス対応するメリット
freee・マネーフォワードの請求書発行から記帳まで一元管理
会計ソフトの最大のメリットは、請求書発行から帳簿記録まで一貫して処理できる点です。例えば、freeeでは請求書発行画面で適格請求書の必須項目が自動チェックされ、発行した請求書データが自動的に売上として帳簿に反映されます。
実際の導入事例では、手作業で月間200件の請求書を処理していた企業が、会計ソフト導入後は作業時間を60%削減し、入力ミスをゼロにすることができました。特に消費税区分の自動判定機能により、税率の転記ミスが完全に解消されています。
消費税区分の自動処理と確定申告書作成の効率化
会計ソフトでは、取引内容に応じて消費税区分(課税・免税・軽減税率)を自動で判定し、消費税額を正確に計算します。年度末には、蓄積されたデータを基にボタン一つで消費税申告書を作成できるのが大きな特徴です。
手作業の場合、消費税申告書作成に平均15〜20時間を要しますが、クラウド会計ソフトを使用すると2〜3時間で完了します。端数処理や按分計算も自動で行われるため、計算ミスのリスクが大幅に軽減されます。

法改正対応とサポート体制による安心感
クラウド会計ソフトの場合、法改正や制度変更に自動でアップデート対応されるため、常に最新のルールに準拠した処理が可能です。インボイス制度や電子帳簿保存法など、頻繁に改正される税務ルールに自社で対応する必要がありません。
また、freeeやマネーフォワードなどの主要ソフトでは、電話・チャット・メールでのサポートが充実しており、操作方法や税務処理で不明な点があっても迅速に解決できます。特に確定申告時期には専門スタッフによる手厚いサポートが受けられるのも安心材料です。
- 作業時間削減効果:60〜80%の時間短縮を実現
- ミス削減効果:入力ミス・計算ミスがほぼゼロに
- 法改正対応:自動アップデートで常に最新ルールに対応
- サポート体制:専門スタッフによる充実したサポート
失敗しないインボイス対応会計ソフトの選び方
適格請求書発行機能の要件対応確認ポイント
適格請求書には以下の項目を必ず記載する必要があります:
- 適格請求書発行事業者の氏名または名称及び登録番号
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率対象品目である場合はその旨)
- 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜きまたは税込み)及び適用税率
- 消費税額等
- 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
主要な会計ソフト(freee、マネーフォワード、弥生)は全てこれらの要件に対応済みですが、古いバージョンや一部の安価なソフトでは対応が不十分な場合があります。
消費税申告機能とe-Tax電子申告連携の重要性
インボイス制度対応では、年次の消費税確定申告書作成機能が必須です。選定時には以下の点を確認してください
- 消費税申告書の自動作成機能:課税売上・課税仕入の自動集計と申告書出力
- e-Tax連携機能:電子申告による効率的な申告手続き
- 税務署提出用書類の出力:PDF形式での申告書出力機能
特にe-Tax連携があると、申告作業が大幅に効率化されます。手作業でe-Taxサイトに入力する手間が省け、申告ミスのリスクも軽減されます。
料金プランとサポート体制の選び方のコツ
会計ソフトの料金体系は、利用規模や必要機能により大きく異なります。以下の観点で比較検討してください:
比較項目 | 個人事業主 | 小規模法人 | 中規模法人 |
---|---|---|---|
月額料金目安 | 1,000〜3,000円 | 3,000〜6,000円 | 6,000〜15,000円 |
ユーザー数制限 | 1名 | 3〜5名 | 10名以上 |
サポート形式 | メール・チャット | 電話・メール・チャット | 専任担当者付き |
データ容量 | 年間1,000仕訳 | 年間5,000仕訳 | 無制限 |
初心者の場合は、サポート体制の充実度を重視することを強くおすすめします。電話サポートやチャット相談があるかどうかで、導入後の安心感が大きく変わります。
機能充実度:freee スタンダード(月額1,980円)
バランス重視:マネーフォワード パーソナル(月額1,280円)
インボイス制度対応におすすめのクラウド会計ソフト5選




freee会計 – 初心者向けインボイス対応機能が充実
freee会計は、会計知識がない初心者でも直感的に使える操作性が最大の特徴です。クラウド会計ソフトのシェアNo.1を誇り、個人事業主から中小企業まで幅広く利用されています。
- 適格請求書自動作成:登録番号や必須項目の自動チェック機能
- 銀行・クレジットカード連携:自動仕訳で入力作業を大幅削減
- 消費税申告書作成:課税売上・仕入の自動集計と申告書出力
- 充実のサポート体制:チャット・メール・電話での手厚いサポート
料金プラン(2025年最新):
- スターター:月額980円(税込)- 個人事業主向け
- スタンダード:月額1,980円(税込)- 小規模法人向け
- プレミアム:月額3,316円(税込)- 中規模法人向け
実務経験からの評価:freeeは特に「簿記を知らない」「会計は苦手」という経営者におすすめです。質問形式で入力していくだけで適切な仕訳が自動生成されるため、経理の専門知識がなくても安心して使えます。


マネーフォワード クラウド会計 – バックオフィス業務統合に強み
マネーフォワード クラウド会計は、経費精算・請求書管理・給与計算など他の業務システムとの連携に優れている点が特徴です。バックオフィス業務全体を効率化したい企業に特におすすめです。
- 豊富な外部連携:2,400以上の金融機関・サービスと連携
- バックオフィス一元化:経費・請求・給与・労務の統合管理
- AI自動仕訳:取引パターンを学習し仕訳精度が向上
- 税理士連携:全国3,000以上の税理士事務所との連携実績
料金プラン(2025年最新):
- パーソナルミニ:月額900円(税込)- 個人事業主向け
- パーソナル:月額1,280円(税込)- 個人事業主向け
- スモールビジネス:月額2,980円(税込)- 中小企業向け
実務経験からの評価:マネーフォワードは経理に一定の知識がある担当者がいる企業に適しています。機能が豊富な分、初心者には少し複雑に感じる場合もありますが、業務の効率化効果は非常に高いです。


弥生会計オンライン – 老舗ブランドの安心感
弥生会計オンラインは、30年以上の実績を持つ弥生ブランドのクラウド版です。従来の弥生会計に慣れ親しんだユーザーや、安定性を重視する企業に支持されています。
- 豊富な導入実績:法人の2社に1社が弥生製品を利用
- 会計事務所連携:全国1万以上の事務所との連携体制
- 安定した動作:長年の開発ノウハウによる高い安定性
- 業界最大規模のサポート:カスタマーセンターの充実
料金プラン(2025年最新):
- セルフプラン:年額28,600円(税込)- サポートなし
- ベーシックプラン:年額35,200円(税込)- 電話・メールサポート付き
- トータルプラン:年額41,800円(税込)- 業務相談込みのフルサポート
実務経験からの評価:弥生は「確実性」「安定性」を最重視する企業に適しています。機能面で最新とは言えない部分もありますが、長期間にわたって安心して使い続けられる安定感があります。
会計王 – 中小企業特化の充実機能
会計王は、中小企業のニーズに特化した豊富な機能を提供するソリンク株式会社の会計ソフトです。特に製造業や建設業など、業種特有の会計処理に強みを持っています。
- 業種別テンプレート:製造業・建設業・小売業など業種特化機能
- 豊富な帳票出力:経営分析レポートや部門別損益計算
- 固定資産管理:減価償却計算と固定資産台帳の自動作成
- 予算管理機能:予算実績対比や差異分析機能
料金:年額40,000円程度(税込)- 買い切り型も選択可能
やよいの青色申告オンライン – 個人事業主特化の高コスパ
やよいの青色申告オンラインは、個人事業主の確定申告に特化した低価格・高機能ソフトです。インボイス制度で課税事業者になった個人事業主に特におすすめです。
- 低価格設定:年額9,680円〜と個人事業主に優しい料金
- 確定申告特化:青色申告決算書・確定申告書の自動作成
- 初年度無料:最大14ヶ月間無料で利用可能
- 簡単操作:簿記知識不要の家計簿感覚入力
実務経験からの評価:個人事業主で「とりあえずインボイス対応したい」「コストを抑えたい」という方には最適です。機能は限定的ですが、必要十分な機能が揃っています。
会計ソフト | 月額料金 | 適用対象 | 特徴 |
---|---|---|---|
freee会計 | 980円〜 | 初心者・個人事業主 | 直感的操作、充実サポート |
マネーフォワード | 900円〜 | 中小企業・効率重視 | 業務統合、豊富な連携 |
弥生会計 | 2,383円〜 | 安定性重視 | 老舗ブランド、実績豊富 |
会計王 | 3,333円〜 | 業種特化企業 | 業種別機能、帳票充実 |
やよい青色申告 | 806円〜 | 個人事業主特化 | 低価格、確定申告特化 |






- Q: インボイス制度に対応していない会計ソフトを使っていても大丈夫ですか?
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A: インボイス制度に対応していない会計ソフトでは、適格請求書の要件を満たした書類の発行ができません。取引先から仕入税額控除を受けられなくなる可能性があるため、必ず対応済みのソフトに切り替えることをおすすめします。
- Q: freeeとマネーフォワードの違いは何ですか?
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A: freeeは初心者向けで直感的な操作が特徴、マネーフォワードは機能が豊富で他システムとの連携に強みがあります。会計知識がない場合はfreee、効率化を重視する場合はマネーフォワードがおすすめです。
- Q: 会計ソフトの導入にどのくらい時間がかかりますか?
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A: 基本的な初期設定は1〜2日程度で完了します。銀行口座やクレジットカードとの連携設定、勘定科目の設定、取引先情報の登録が主な作業です。過去データの移行が必要な場合は、追加で数日を要する場合があります。
- Q: 複数の会計ソフトを比較検討したいのですが、無料体験はできますか?
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A: 主要な会計ソフトは無料体験期間を提供しています。freeeは30日間、マネーフォワードは1ヶ月間、弥生は最大14ヶ月間(初年度)の無料利用が可能です。実際に使ってみて操作性や機能を確認することをおすすめします。
- Q: 税理士に相談せずに会計ソフトだけでインボイス対応できますか?
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A: 基本的な取引であれば会計ソフトだけでも対応可能です。ただし、複雑な取引や特殊な業種の場合は、年1回程度税理士に確認してもらうことをおすすめします。主要ソフトには税理士紹介サービスもあるため、必要に応じて活用してください。
インボイス対応を成功させるための実践ステップ
多数の企業のインボイス対応支援を行ってきた実務経験から、インボイス制度への対応を成功させるために最も重要なポイントをお伝えします。準備段階での適切な判断が、その後の業務効率を大きく左右します。
まず自社の適格請求書発行事業者登録番号を確認し、会計ソフトに正しく設定します。取引先からの要請に応じて課税事業者になった場合は、登録手続きも同時に進めましょう。
自社の業種・規模・ITスキルに適した会計ソフトを選定します。無料体験を活用して実際の操作感を確認し、サポート体制も含めて総合的に判断してください。
取引先の適格請求書発行事業者番号を確認し、商品・サービスごとの消費税区分を正しく設定します。軽減税率対象品目がある場合は特に注意が必要です。
実際の取引でテスト運用を行い、問題点を洗い出します。月次で処理状況を確認し、必要に応じて設定の見直しや追加機能の活用を検討してください。
まとめ:クラウド会計ソフトでインボイス制度対応を成功させよう
- 会計ソフト導入で作業効率60〜80%向上
- 初心者にはfreee、業務統合にはマネーフォワードが最適
- 無料体験期間を活用した比較検討が重要
- 早めの準備と適切なツール選択が成功の鍵
インボイス制度への対応は、早めの準備と適切なツール選択が成功の鍵となります。手作業での対応は作業負担が大きく、ミスのリスクも高いため、クラウド会計ソフトの活用を強くおすすめします。
実務経験を通じて多くの企業のインボイス対応を支援してきた結果、適切な会計ソフトを導入した企業は総じて:
- 作業時間の大幅削減:月次経理業務が平均60〜80%効率化
- ミスの大幅減少:適格請求書の要件漏れや計算ミスがほぼゼロに
- 法改正への自動対応:制度変更時の追加対応が最小限に
- 本業への集中:経理業務の効率化により事業拡大に注力可能
という成果を得ています。
小売業B社(個人事業主):マネーフォワード活用でインボイス対応を効率化、確定申告時間を18時間から3時間に短縮
今回ご紹介した5つの会計ソフトは、いずれもインボイス制度に完全対応しており、無料体験期間も設けられています。まずは実際に触ってみて、自社の業務に最も適したソフトを見つけてください。
適切な準備と早めの行動で、インボイス制度への対応を確実に成功させ、安心して事業運営に専念できる環境を構築しましょう。







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