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読了の目安:約9分/この記事は簿記・会計の原則と国税庁の一次ソースに基づき、公認会計士試験合格者が解説しています。
【結論】経過勘定は「お金の動き」と「役務の提供」のズレを調整する4勘定
ぜいむたん


経過勘定(けいかかんじょう)とは、現金の収支と、その期に計上すべき費用・収益のタイミングのズレを調整する勘定です。発生主義会計では「お金を払った(もらった)とき」ではなく「役務の提供を受けた(行った)とき」に費用・収益を計上するため、決算でこの調整が必要になります。まずは全体像を表で押さえましょう。
| 勘定科目 | 分類 | お金の動き | 役務の提供 | B/S区分 |
|---|---|---|---|---|
| 前払費用 | 費用の繰延 | 支払済み | まだ受けていない | 流動資産 |
| 未払費用 | 費用の見越 | まだ払っていない | 受けた | 流動負債 |
| 前受収益 | 収益の繰延 | 受取済み | まだ提供していない | 流動負債 |
| 未収収益 | 収益の見越 | まだ受け取っていない | 提供した | 流動資産 |
この記事の3大ポイント
- 「前」=お金が先に動いた繰延(前払費用・前受収益)、「未」=お金がまだ動いていない見越(未払費用・未収収益)
- 経過勘定は決算整理仕訳で計上し、翌期首に再振替(洗替)で戻すのが基本セット
- 年払いの費用は「短期前払費用の特例」で当期の経費にできる場合がある(要件あり)
経過勘定とは?「見越」と「繰延」で4つに分かれる






繰延(くりのべ)=お金が先
前払費用/前受収益
当期に支払(受取)済みだが、役務の提供は翌期以降。翌期分を当期から取り除く(繰り延べる)。
見越(みこし)=役務が先
未払費用/未収収益
役務の提供は済んだが、お金はまだ。当期に発生した分を当期に計上(見越す)。
なお、経過勘定は「一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受ける(行う)」取引が前提です。商品の仕入れや備品購入といった単発の取引は、後述する前払金・未払金で処理します。
前払費用の仕訳(費用の繰延)|年払い家賃・保険料






例:3月決算法人が、X1年12月1日に12か月分(X1年12月〜X2年11月)の家賃120万円を年払い。当期分(12〜3月)は4か月=40万円、翌期分(4〜11月)は8か月=80万円です。
| 時点 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| ① 支払時(X1/12/1) | 支払家賃 1,200,000 | 普通預金 1,200,000 |
| ② 決算整理(X2/3/31) | 前払費用 800,000 | 支払家賃 800,000 |
| ③ 翌期首 再振替(X2/4/1) | 支払家賃 800,000 | 前払費用 800,000 |
これにより、当期の支払家賃は40万円だけが残り、翌期に80万円が費用化されます。1年を超える長期の前払いは「長期前払費用」(固定資産)として区分します。
未払費用の仕訳(費用の見越)|未払利息・未払給与






例:3月決算法人が、X1年10月1日に1,200万円を年利2%で借入。利息は1年後にまとめて支払う契約。当期の発生分は10月〜3月の6か月=1,200万円×2%×6/12=12万円です。
| 時点 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| ① 決算整理(X2/3/31) | 支払利息 120,000 | 未払費用 120,000 |
| ② 翌期首 再振替(X2/4/1) | 未払費用 120,000 | 支払利息 120,000 |
| ③ 利息支払時(X2/9/30) | 支払利息 240,000 | 普通預金 240,000 |
前受収益・未収収益の仕訳(収益の繰延・見越)






例:3月決算法人(賃貸側)が、X1年12月1日に12か月分の家賃120万円を前受け。当期分(12〜3月)40万円、翌期分(4〜11月)80万円。
| 時点 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| ① 受取時(X1/12/1) | 普通預金 1,200,000 | 受取家賃 1,200,000 |
| ② 決算整理(X2/3/31) | 受取家賃 800,000 | 前受収益 800,000 |
| ③ 翌期首 再振替(X2/4/1) | 前受収益 800,000 | 受取家賃 800,000 |
未収収益は、すでに提供した役務の対価をまだ受け取っていない場合に計上します(例:決算をまたぐ未収の貸付利息)。決算整理で「未収収益/受取利息」と当期の収益を見越し、翌期首に再振替します。継続サービスの売上計上時期はSaaSや継続サービスの売上はいつ計上する?前受収益の期間按分と仕訳を実例で解説、利息の仕訳は【2026年最新】受取利息の仕訳と源泉税処理の完全マニュアル|実務で困らない決定版でも詳しく解説しています。
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前払費用と前払金(前渡金)の違い
| 比較 | 前払費用 | 前払金(前渡金) |
|---|---|---|
| 対象 | 継続的な役務提供の先払い | 単発・個別取引の前払い |
| 例 | 年払い家賃・保険料・サブスク | 商品仕入の手付金・機器代の内金 |
| 決算処理 | 決算整理→翌期首に再振替が必要 | 資産受取・役務確定時に振替えるだけ |
未払費用と未払金の違い
| 比較 | 未払費用 | 未払金 |
|---|---|---|
| 対象 | 継続的な役務を受けたが代金未払い | 確定した債務(物品購入等)の未払い |
| 例 | 未払利息・未払給与・未払光熱費 | 固定資産購入代金の未払い・備品代の未払い |
| 決算処理 | 発生主義で見越計上(決算整理が必要) | 取引完了後の確定債務(決算整理は不要のことが多い) |
【節税】短期前払費用の特例で年払いを当期の経費にできる






短期前払費用の特例は、本来なら繰り延べる前払費用でも、一定の要件を満たせば支払った全額をその事業年度の損金(経費)にできる制度です(国税庁 No.5380・法人税基本通達2-2-14)。主な要件は次のとおりです。
短期前払費用の特例の主な要件
- 前払費用であること(一定の契約に基づく継続的な役務の対価。単発の前払金は対象外)
- 支払日から1年以内に提供を受ける役務であること(1年超は対象外)
- 継続して支払った日の属する事業年度の損金に算入していること(年によって変えない)
- 実務上は、毎月おおむね等質・等量の役務であることが前提とされます(月により内容が大きく異なるものは対象外)
適用できる費用・できない費用
たとえば事務所の年払い家賃やシステムの年間利用料は適用できる一方、借入金を預金・有価証券などで運用する場合の支払利息は、収益と対応させる必要があるため特例の対象外です(通達の注書きで明示)。また、収益と対応関係がある社宅家賃や、月によって業務が異なる顧問料も、実務上は適用が難しいとされています。「利益が出たから今期だけ年払い」といった単発的な適用は継続適用の要件を満たさず否認されるリスクがあるため注意してください。要件や適用範囲の詳細は【保存版】短期前払費用とは?計上方法や消費税を解説で深掘りしています。
経過勘定の消費税の扱い






消費税の課税仕入れの時期は、原則として資産の引渡しや役務の提供があったときです(国税庁 No.6165)。したがって通常の前払費用(繰延処理)は、役務提供を受けた各課税期間で仕入税額控除します。一方、短期前払費用の特例を適用して支払時に損金算入した費用は、その支払った課税期間の課税仕入れとして一括控除できます。
非課税取引は仕入税額控除の対象外
なお、経過勘定でも対象が非課税取引なら、そもそも仕入税額控除の対象になりません。代表例として、土地の地代・利子・保険料は非課税、事業用建物の家賃やSaaS利用料は課税です(居住用住宅の家賃は非課税)。消費税区分の判定は【2026年最新】消費税の課税区分完全ガイド – 勘定科目100以上を徹底解説も参考にしてください。
決算整理でよくあるミスと対策






決算前に、次のチェックリストの手順で経過勘定の処理を点検しておくと安心です。特に多い3つのミスを押さえましょう。
ミス①
再振替(洗替)の忘れ
決算で立てた経過勘定を翌期首に戻さないと、費用・収益が二重計上または計上漏れになります。会計ソフトの自動再振替を活用しましょう。
ミス②
前払金との混同
年払い家賃・保険料を前払金で処理してしまう例。継続的役務は前払費用、単発の前払いは前払金です。
ミス③
短期前払費用の濫用
「今期だけ年払い」など利益操作目的の適用は継続適用要件を満たさず否認リスク。一度適用したら継続が必要です。
決算整理の全体像は【2026年版】個人事業主の決算準備ガイド|12月にやるべき経理作業と節税対策、減価償却など他の決算整理は【2026年版】減価償却の仕組みと計算方法|個人事業主・法人の節税に活用する完全ガイドもあわせてご覧ください。なお、個別の会計・税務処理の判断は税理士にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
- 経過勘定の「再振替(洗替)」は必ず必要ですか?
- 翌期首の再振替は、決算で計上した経過勘定を元の費用・収益の勘定に戻す処理です。これを行わないと、翌期に費用・収益が二重計上になったり計上漏れになったりします。会計ソフトでは自動で再振替する機能があるため、活用すると漏れを防げます。
- 前払費用と前払金(前渡金)はどう使い分けますか?
- 家賃・保険料・サブスクのように「一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受ける」取引の先払いは前払費用です。一方、商品仕入れの手付金や機器代の内金など、単発・個別の取引の前払いは前払金(前渡金)を使います。
- 短期前払費用の特例はどんな費用でも使えますか?
- 使えません。支払日から1年以内に提供を受ける継続的役務で、継続して支払時に損金算入していることが要件です。借入金を運用する場合の支払利息のように収益と対応させる必要があるものは対象外で、「今期だけ年払い」のような単発適用も否認リスクがあります。
- 経過勘定の消費税はいつ控除しますか?
- 原則は役務の提供を受けた課税期間で仕入税額控除します。ただし短期前払費用の特例を適用して支払時に損金算入した場合は、支払った課税期間に一括で控除できます。地代・利息・保険料など非課税取引はそもそも控除の対象になりません。
- 未払費用と未払金はどちらを使えばよいですか?
- 継続的に役務の提供を受けている費用(未払利息・未払給与・未払光熱費など)で代金が未払いのものは未払費用です。物品購入や固定資産取得など、取引が完了して金額が確定している債務の未払いは未払金を使います。
まとめ
「前(お金が先=繰延)/未(役務が先=見越)」×「費用/収益」で前払費用・未払費用・前受収益・未収収益に分かれる。
決算で経過勘定を計上し、翌期首に再振替(洗替)で戻す。再振替忘れが最多のミス。
継続的役務は経過勘定、単発取引・確定債務は前払金・未払金で処理する。
年払いを当期の経費にできるが、1年以内・継続適用などの要件あり。濫用は否認リスク。
経過勘定は「お金の動き」と「役務の提供」のズレを期間配分で正すための4勘定です。決算整理と翌期首の再振替をセットで行い、前払金・未払金との混同を避けるのが実務の基本。年払い費用は短期前払費用の特例で当期の経費にできる場合もありますが、要件を満たすか必ず確認しましょう。個別の判断は税理士にご相談ください。



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