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読了の目安:約9分/この記事は厚生労働省・国税庁の一次ソースに基づき、公認会計士試験合格者が解説しています。金額は本記事執筆時点(2026年6月)の報道・解説に基づくため、最新の確定額は厚生労働省の告示・ご加入の医療保険者でご確認ください。
【結論】2026年8月から高額療養費の自己負担上限が引き上げられる
ぜいむたん


2026年5月29日に成立した「健康保険法等の一部を改正する法律」により、高額療養費制度の自己負担上限額が2026年8月から引き上げられます(厚生労働省)。全国民に関わるYMYLの大きな改正なので、まず要点を押さえましょう。
この記事の3大ポイント
- 2026年8月から月額の自己負担上限が引き上げ(所得が高い区分ほど増額幅が大きい設計)。多数回該当(4回目以降)は据え置き
- 年間上限が新設。月の上限に届かない長期療養でも、年間合計が上限に達すればそれ以上の負担なし
- 2027年8月には所得区分が5区分→12〜13区分に細分化される第2段階がある
そもそも高額療養費制度とは?






高額療養費制度は、同じ月(1日〜末日)の医療費の窓口負担が自己負担限度額を超えた場合、超えた分が払い戻される公的医療保険の制度です。覚えておきたい3つの仕組みがあります。
覚えておきたい3つの仕組み(現物給付・多数回該当・世帯合算)
- 現物給付(窓口負担の軽減):マイナ保険証(または限度額適用認定証)を提示すれば、窓口での支払いが最初から限度額までで済みます。後から申請して払い戻す手間が省けます。
- 多数回該当:直近12か月以内に3回以上高額療養費に該当すると、4回目以降は月額上限がさらに下がります。
- 世帯合算:同じ世帯・同じ医療保険の家族の負担を合算できます(70歳未満は1件21,000円以上が対象)。
【早見表】2026年8月改正:年収別の自己負担上限はいくら増える?






70歳未満の月額自己負担上限(区分ア〜オ)
| 所得区分(年収目安・70歳未満) | 現行(〜2026年7月) | 2026年8月〜 | 増額 |
|---|---|---|---|
| ア:約1,160万円以上 | 252,600円+(医療費−842,000)×1% | 270,300円+(医療費−901,000)×1% | +17,700円 |
| イ:約770〜1,160万円 | 167,400円+(医療費−558,000)×1% | 179,100円+(医療費−597,000)×1% | +11,700円 |
| ウ:約370〜770万円 | 80,100円+(医療費−267,000)×1% | 85,800円+(医療費−286,000)×1% | +5,700円 |
| エ:〜約370万円 | 57,600円(定額) | 61,500円(定額) | +3,900円 |
| オ:住民税非課税 | 35,400円(定額) | 36,900円(定額) | +1,500円 |
このように、引き上げ幅は所得の高い区分ほど大きく、住民税非課税世帯は年金改定率と同程度に抑えられています。なお、治療が長引いて多数回該当(4回目以降)になった場合の上限は、2026年8月時点では全区分で据え置きです(区分ア140,100円・イ93,000円・ウエ44,400円・オ24,600円)。
【新設】年間上限とは?長期療養者の負担を抑える仕組み






年間上限は、月ごとの限度額に達しない月が続いても、1年間(8月〜翌7月)の自己負担の合計が所得区分ごとの上限に達したら、それ以降は負担が発生しない仕組みです。慢性疾患などで毎月そこそこの医療費がかかる人の負担を抑える狙いがあります。
所得区分別の年間上限額
| 所得区分(70歳未満) | 年間上限額(2026年8月〜) |
|---|---|
| ア:約1,160万円以上 | 約168万円 |
| イ:約770〜1,160万円 | 約111万円 |
| ウ:約370〜770万円 | 約53万円 |
| エ:〜約370万円 | (厚生労働省の告示で要確認) |
| オ:住民税非課税 | (要確認) |
年間上限の正確な適用要件(年に何回限度額に達している必要があるか等)は施行に向けた政令・告示で定まるため、詳細は厚生労働省の最新情報を確認してください。
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2027年8月からの第2段階では、現在の所得区分(住民税非課税を除く)を5区分から12〜13区分に細分化し、所得に応じてよりきめ細かく上限を設定する方向です。一方で、年収200万円未満の課税世帯の多数回該当は44,400円から34,500円へ引き下げられる予定で、低所得層への配慮も組み込まれています。細分化後の各区分の具体的な金額は政令で確定するため、現時点の数値は審議段階の参考値である点に注意してください。
なぜ引き上げに?二転三転した改正の経緯






厚生労働省が全所得区分・全年代で自己負担限度額を段階的に引き上げる案を提示。2025年8月からの実施を予定していた。
患者団体や世論の反発を受け、当時の石破首相が決定プロセスへの反省を示し、当初案を全凍結すると表明した。
患者団体も参加する専門委員会で計9回の審議を行い、2025年12月25日に引き上げ幅を縮小・年間上限を新設・段階実施とするとりまとめを公表。
健康保険法等の一部を改正する法律が成立。2026年8月(第1段階)・2027年8月(第2段階)の施行が確定した。
つまり、当初の大幅引き上げ案はそのまま実施されたわけではなく、反発を受けて引き上げ幅を縮小し、多数回該当を据え置き、年間上限を新設した修正版が成立しています。「最初に報道された大幅増額の数字」と「実際に決まった金額」は異なる点に注意しましょう。
【税金で取り戻す】高額療養費と医療費控除の関係






高額療養費で払い戻された金額は、確定申告の医療費控除では「保険金などで補てんされる金額」として、その給付の目的となった医療費から差し引きます(国税庁 No.1120)。差し引いて残った自己負担額が、医療費控除の対象です。なお、差し引きは「その給付目的となった医療費」からのみ行い、引ききれない分を他の医療費から差し引く必要はありません。
医療費控除額の計算式(高額療養費を差し引く)
医療費控除額(所得200万円以上の場合)
(年間の医療費 − 高額療養費・保険金などの補てん額)− 10万円
※総所得金額等が200万円未満の人は「10万円」の代わりに「総所得金額等×5%」。控除上限は200万円。
「高額療養費をもらったから医療費控除は使えない」というのは誤解です。高額療養費で補てんされなかった自己負担分が年間で一定額を超えれば、医療費控除の対象になります。医療費控除の対象範囲や申告手順は【2026年版】医療費控除の確定申告ガイド|対象となる医療費・計算方法・セルフメディケーション税制を解説、医療費が20万円前後ならどちらが得かは【2026年版】セルフメディケーション税制vs医療費控除の選択ガイドで詳しく解説しています。
がん治療など長期・高額医療への備え方






公的制度を組み合わせて守る3つの柱
① 窓口負担を抑える
マイナ保険証(または限度額適用認定証)で、窓口の支払いを最初から限度額までに。一時的な立替えを避けられます。
② 長期療養は上限が下がる
多数回該当(4回目以降の引き下げ)と新設の年間上限で、治療が長引くほど負担の伸びは抑えられます。
③ 税金で取り戻す
高額療養費で戻らなかった自己負担は、確定申告の医療費控除で所得税・住民税の軽減につなげます。
公的制度でカバーしきれない差額ベッド代や先進医療費、療養中の生活費などに備えて、民間の医療保険・がん保険を検討する選択肢もあります。ただし必要性は収入・貯蓄・家族構成によって異なるため、過不足のない範囲で検討しましょう(特定の保険商品をおすすめするものではありません)。受け取った保険給付金も、医療費控除では補てん額として差し引きます。
よくある質問(FAQ)
- 高額療養費の引き上げは2026年8月で全部終わりですか?
- いいえ。改正は2段階です。2026年8月の第1段階で月額上限の引き上げと年間上限の新設が行われ、2027年8月の第2段階で所得区分が5区分から12〜13区分に細分化されます。第2段階の具体的な金額は政令で確定するため、最新情報を確認してください。
- 当初の大幅な引き上げ案はどうなったのですか?
- 2025年に提示された当初案は反発を受けて全凍結され、その後に患者団体も参加する専門委員会で練り直されました。最終的に成立したのは引き上げ幅を縮小し、多数回該当を据え置き、年間上限を新設した修正版です。最初に報道された大幅増額の数字とは異なります。
- 治療が長引くと負担はどうなりますか?
- 直近12か月で3回以上高額療養費に該当すると、4回目以降は月額上限が下がる「多数回該当」が適用されます。多数回該当の金額は2026年8月時点では据え置きです。加えて2026年8月から年間上限が新設され、長期療養者の負担の伸びが抑えられます。
- 高額療養費をもらっても医療費控除は使えますか?
- 使えます。ただし高額療養費で払い戻された金額は、その対象となった医療費から差し引きます(国税庁No.1120)。差し引いて残った自己負担が年間で一定額を超えれば、医療費控除の対象になります。「高額療養費をもらったから申告できない」というのは誤解です。
- 窓口でいったん全額払わずに済む方法はありますか?
- マイナ保険証または限度額適用認定証を医療機関の窓口で提示すれば、その月の支払いが最初から自己負担限度額までになります。高額な入院・手術が事前に分かっている場合は、特に有効です。
まとめ
月額の自己負担上限が所得区分ごとに引き上げ。高所得ほど増額幅が大きく、多数回該当は据え置き。
月の上限に届かない長期療養でも、年間合計が上限に達すればそれ以上の負担なし。
高額療養費で戻らなかった自己負担は、確定申告の医療費控除で所得税・住民税の軽減につなげる。
マイナ保険証で窓口負担を抑え、多数回該当・年間上限・医療費控除を組み合わせる。
2026年8月からの高額療養費の見直しは、当初案より縮小されたとはいえ、月額・年間ともに自己負担が増える改正です。一方で、年間上限の新設や多数回該当の据え置きなど長期療養者への配慮も入りました。負担増に備えるには、公的制度(高額療養費・年間上限・多数回該当)に加えて、確定申告の医療費控除で取り戻す視点が大切です。個別の取扱いは、ご加入の医療保険者や税理士等の専門家にご確認ください。



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