決算整理をしていて、固定資産台帳には載っているのに現物が見当たらない資産に手が止まったことはありませんか。「もう使っていないのは分かっているけれど、仕訳をどう切ればいいのか自信がない」という相談は、経理担当者からも個人事業主からもよく聞きます。
固定資産の除却は、直接法・間接法の違いに加えて、期中に除却した場合の月割償却の入れ方、廃棄費用とスクラップ売却の消費税区分、現物を残したまま損金にできる有姿除却など、判断のポイントが多い処理です。さらに一括償却資産や少額減価償却資産の特例を使った資産では、除却の仕訳そのものが通常と変わってきます。
この記事では、国税庁の法人税基本通達・質疑応答事例・消費税法基本通達の文言を実際に確認したうえで、ケース別の仕訳パターンと判定フロー、決算前に確認すべきチェックリストを整理しました。設例の数字は本文・早見表・FAQ・まとめで統一しているので、自社の状況に置き換えて確認してください。
📌 この記事でわかること
- 固定資産の除却の仕訳を、直接法・間接法・期中除却のケース別に早見表で確認できる
- 除却・廃棄・売却・有姿除却のどれに当たるかを1枚の判定フローで切り分けられる
- 一括償却資産を除却しても未償却分を先に損金算入できない理由が分かる
- 現物を残したまま損金にできる有姿除却の要件を、通達の文言どおりに確認できる
- 除却そのもの・廃棄費用・スクラップ売却で消費税の扱いが3つに分かれることが分かる
対象読者:個人事業主・フリーランス(青色申告)、法人の経理担当・経営者/読了の目安:約12分
ぜいむたん


固定資産の除却とは?——帳簿から落とす処理と、よく似た3つの処理との違い
固定資産の除却とは、事業で使わなくなった建物・機械・器具備品・ソフトウエアなどを帳簿から取り除く処理です。除却によって生じる損失は「固定資産除却損」として計上します。なお「除却とは何か」を一般的に定義した条文があるわけではなく、国税庁の法人税基本通達には場面ごとの取扱いが置かれています。たとえば建替えのために建物等を取り壊した場合について、法人税基本通達7-7-1は「法人がその有する建物、構築物等でまだ使用に耐えうるものを取り壊し新たにこれに代わる建物、構築物等を取得した場合(7−3−6《土地とともに取得した建物等の取壊し費等》に該当する場合を除く。)には、その取り壊した資産の取壊し直前の帳簿価額(取り壊した時における廃材等の見積額を除く。)は、その取り壊した日の属する事業年度の損金の額に算入する」と定めています。かっこ書きのとおり、土地とともに取得した建物等の取壊しはこの取扱いの対象から外れ、別の通達(7-3-6)によることになる点に注意してください。
- 除却:対価を受け取らずに事業から外す処理。帳簿価額(処分見込価額を除く)を除却損にする
- 廃棄:現物を解撤・破砕・処分する行為そのもの。除却の一形態として扱われることが多い
- 売却:対価を受け取って第三者に引き渡す処理。売却損益は除却損とは別の科目で計上する
- 減損:使用は続けるが収益性が低下した資産の帳簿価額を切り下げる処理。除却とは発生要件が異なる
除却は「対価を受け取らずに事業から外す」処理(売却との違い)
除却と売却の一番の違いは、対価を受け取るかどうかです。スクラップ業者に引き取ってもらって処分費用を払う場合は除却、下取りや売却先から代金を受け取る場合は売却として、別々の会計処理になります。混同すると、消費税の区分も帳簿価額の落とし方も誤ってしまうため、最初に切り分けておくことが大切です。固定資産を売却したときの消費税と仕訳の詳しい処理は、固定資産売却時の消費税と仕訳処理の記事で解説しています。
廃棄・減損・売却とは何が違うのか
廃棄は除却の一部として行われる物理的な処分行為であり、会計処理としては除却の一形態です。減損は使用を継続する前提で収益性の低下に応じて帳簿価額を切り下げる処理で、除却のように資産を事業の用から完全に外すわけではありません。売却は対価を得て資産を譲渡する処理で、除却損ではなく売却損益として計上します。この3つを区別できていないと、決算書の科目区分が崩れてしまいます。
除却損はいつの事業年度の損金になるか——除却の事実が生じた日で決まる
除却損は、除却の事実が生じた事業年度の損金になります。通常の除却であれば取り壊した日や廃棄業者に引き渡した日、有姿除却であれば使用を廃止したなどの事実が生じた日が基準になります。決算をまたいで処分が遅れると、損金算入のタイミングを誤りやすいので注意してください。






【判定フロー】その資産は除却できるか、それとも有姿除却か
はい
→ 売却として処理する(除却ではない)
いいえ
→ STEP2へ
ない(解撤・破砕・廃棄済み)
→ 通常の除却として処理する
ある(現物は残っている)
→ STEP3へ
はい
→ 有姿除却を検討する
いいえ(一時的に使っていないだけ)
→ 除却できない。減価償却を継続する
現物がもう手元にない場合
解撤・破砕・廃棄業者への引き渡しなど、現物がすでに手元にない場合は通常の除却として処理します。帳簿価額から処分見込価額(廃材の見積額など)を差し引いた金額を除却損として損金に算入します。この後の章で紹介する直接法・間接法の仕訳がそのまま当てはまるケースです。
現物は残っているが使うのをやめた場合
倉庫に置いたまま処分していない資産や、生産中止になった専用金型のように現物は残っているが今後使う予定がない資産は、有姿除却の対象になり得ます。法人税基本通達7-7-2が挙げる2つの要件に当てはまるかどうかを、後の章で詳しく確認します。
使い続けている資産は除却できない
稼働率が落ちている、一時的に使っていないだけといった資産は、除却の要件を満たしません。使用を廃止したと言えるかどうかがポイントで、単に稼働が減っているだけの資産は、通常どおり減価償却を続ける必要があります。






ケース別の仕訳——直接法・間接法と、期中除却で先に入れる減価償却
ここからは、取得価額800,000円の業務用エアコン(工具器具備品)を設例に、除却時点の減価償却累計額650,000円(当期首から除却日までの5か月分50,000円を含む)、帳簿価額150,000円、処分見込価額20,000円、除却損130,000円という数字で統一して確認します。同じ数字を使うことで、間接法・直接法のどちらで処理しても最終的な除却損の金額が一致することを確かめられます。
ケース別 除却の仕訳パターン早見表(①〜⑥の設例:取得価額80万円・除却時帳簿価額15万円・処分見込価額2万円/⑦⑧⑨は制度が異なるためそれぞれ別設例)
借方:減価償却累計額650,000/貯蔵品20,000/固定資産除却損130,000
貸方:工具器具備品800,000
注意点:処分見込価額20,000円は同じ仕訳で貯蔵品へ振り替え、残りが除却損。借方合計800,000円で貸借が一致する
借方:固定資産除却損150,000
貸方:工具器具備品150,000
注意点:直接法は資産科目の残高がそのまま帳簿価額。処分見込価額は次の仕訳で控除する
借方:減価償却費50,000
貸方:減価償却累計額50,000(間接法の場合)/工具器具備品50,000(直接法の場合)
注意点:この仕訳を先に入れてから除却の仕訳をする。順序を逆にしない。直接法は資産科目を直接減らすため、貸方が累計額ではなく資産科目になる
借方:支払手数料30,000/仮払消費税等3,000
貸方:現金預金33,000
注意点:廃棄費用は課税仕入れ。除却損とは別建てで計上する
借方:現金預金22,000
貸方:貯蔵品20,000/仮受消費税等2,000
注意点:対価を受け取った時点で課税売上になる
借方:貯蔵品20,000
貸方:固定資産除却損20,000
注意点:②でいったん全額を除却損にしたあと、処分見込価額を貯蔵品へ振り替えて控除する。①の間接法は同じ仕訳に含めているのでこの仕訳は不要
借方:固定資産除却損300,000
貸方:ソフトウエア300,000
注意点:本文の別設例(自社利用ソフトウエア・取得価額500,000円/帳簿価額300,000円)に対応。現物やデータが残っていても損金算入できるが、要件に当たる記録を残す。ソフトウエアの根拠は7-7-2の2
仕訳:除却損は計上しない(従来どおり損金算入限度額の範囲で償却を続ける)
注意点:除却しても年間の損金算入限度額(12か月決算なら取得価額の合計額÷3)は変わらない。除却した分を上乗せして落とすことはできない
仕訳:発生しない(帳簿価額0円)
注意点:取得時に全額を損金算入済みのため、除却時に計上する除却損がない
間接法(減価償却累計額を使う書き方)
間接法では、減価償却累計額650,000円を取り崩し、取得価額800,000円との差額である帳簿価額150,000円のうち、処分見込価額20,000円を貯蔵品へ振り替え、残りの130,000円を固定資産除却損として計上します。借方は累計額650,000円+貯蔵品20,000円+除却損130,000円で合計800,000円となり、貸方の取得価額800,000円と一致します。減価償却累計額の残高がそのまま可視化されているため、除却時にいくら償却済みだったかを確認しやすいのが特徴です。
直接法(帳簿価額を直接減らす書き方)
直接法では資産科目の残高がすでに帳簿価額150,000円になっているため、いったん全額を固定資産除却損に振り替えたあと、処分見込価額20,000円を貯蔵品へ振り替えて除却損から控除します。最終的な除却損は間接法と同じ130,000円になり、表示方法が違うだけで金額は一致します。
期中に除却したときは、除却日までの減価償却を先に計上する
期中に除却した場合、除却日までの月数分の減価償却費を先に計上してから、残った帳簿価額を除却損に振り替えます。この順序を守らないと、除却損の金額が過大になったり過小になったりするため注意が必要です。減価償却の計算方法そのものについては減価償却の仕組みと計算方法の記事で詳しく解説しています。
期首から除却日までの経過月数分の減価償却費を通常どおり計上し、減価償却累計額を更新します。設例では5か月分の50,000円を計上します。
STEP1で更新した帳簿価額150,000円から処分見込価額20,000円を控除し、残額130,000円を固定資産除却損として計上します。なおSTEP1の仕訳は、間接法なら貸方が減価償却累計額50,000円、直接法なら貸方が工具器具備品50,000円になります。直接法で貸方を累計額にしてしまうと、資産科目の残高が帳簿価額と一致しなくなるので注意してください。
処分見込価額があるときは貯蔵品へ振り替え、残りを除却損にする
スクラップとして売却できる見込みがある場合は、その見積額を処分見込価額として貯蔵品に振り替え、帳簿価額から控除した残額だけを除却損にします。処分見込価額をゼロとみなして全額を除却損に計上してしまうと、その後スクラップが売れたときの処理と整合しなくなるため注意してください。
期中除却では「除却日までの減価償却費の計上」→「除却損への振替」の順序を守ってください。先に除却損だけを計上して減価償却費の計上を忘れると、当期の帳簿価額が実際より過大になったまま除却損が計算されてしまいます。
廃棄費用を支払ったとき・スクラップが売れたとき
廃棄業者に処分費用を支払った場合は、その費用を支払手数料や雑費などで計上し、除却損とは別建てにします。以下の設例の消費税額は、標準税率10%で計算しています。スクラップとして売却できた場合は、あらかじめ貯蔵品に振り替えていた処分見込価額と売却代金を対応させて処理します。消費税の扱いは後の章で詳しく整理します。






落とし穴①——一括償却資産は、除却しても未償却分を先に落とせない
取得価額が20万円未満の資産を一括償却資産として3年均等償却で処理している場合、除却したからといって未償却の帳簿価額を一度に損金算入できるわけではありません。国税庁の質疑応答事例「一括償却資産を除却した場合の取扱い」は、この点を事例付きで明確に示しています。
国税庁の質疑応答事例が示している結論
この質疑応答事例では、取得価額15万円のパソコン10台(合計150万円)を一括償却資産として処理し、事業供用の翌事業年度に3台を除却したケースを取り上げています。結論として「一括償却資産を事業の用に供した事業年度(以下「供用事業年度」といいます。)後の各事業年度において除却の事実が生じた場合であっても、その損金算入額は、あくまで一括償却資産の損金算入規定による損金算入限度額…に達するまでの金額となります」とされています。関係法令通達として、法人税法施行令第133条の2と法人税基本通達7-1-13が明示されています。
つまり、150万円を3年均等で償却する場合の年間の損金算入限度額は150万円÷3年=50万円で、3台を除却した年度であっても、この50万円という上限は変わりません。除却した3台分を上乗せして先に損金算入することはできない、という点が実務上の落とし穴になります。
なぜそうなるのか(3年均等償却を選んだ以上、限度額は資産の状況で動かない)
一括償却資産の制度は、個々の資産ごとに減価償却をするのではなく、取得価額の合計額を3年間で均等に損金算入する仕組みです。個別の資産を除却したという事実は、この「合計額を3年で均等に落とす」という計算構造には影響を与えません。そのため、除却があっても損金算入限度額は変わらず、除却した資産の帳簿価額相当額は、残りの償却期間を通じて通常どおり損金算入されていくことになります。
20万円未満の資産をどの制度で処理したかを、除却の前に確認する
除却の仕訳を切る前に、その資産が一括償却資産として処理されているのか、通常の減価償却資産として個別に管理されているのかを固定資産台帳で確認してください。一括償却資産と少額減価償却資産の特例のどちらを使うべきかを含めた制度の違いは、一括償却資産と少額減価償却資産の特例の違いを解説した記事で整理しています。
詳しい取扱いは、国税庁の質疑応答事例「一括償却資産を除却した場合の取扱い」、条文はe-Gov法令検索 法人税法施行令で確認できます。






落とし穴②——少額減価償却資産の特例を使った資産には、落とす帳簿価額が残っていない
中小企業者等の少額減価償却資産の特例を使って、取得価額の全額を取得した事業年度に損金算入している資産は、帳簿価額がすでにゼロになっています。たとえば取得価額250,000円のノートパソコンをこの特例で全額損金算入していた場合、除却の時点で帳簿から落とす金額そのものが残っていないため、計上できる除却損はありません。
これは一括償却資産のように「限度額に達するまでの金額」という制限があるのではなく、そもそも会計上・税務上の帳簿価額がゼロであるために除却損が発生しないという結論です。備忘のために1円などの金額を固定資産台帳上に残しているケースもありますが、これは通達で定められた処理ではなく、社内の管理上の運用であることを踏まえて扱ってください。
一括償却資産と少額減価償却資産の特例は、どちらも取得価額の小さい資産に関わる制度ですが、除却時の扱いはまったく異なります。一括償却資産の対象は取得価額20万円未満で、この基準は変わっていません。一方、中小企業者等の少額減価償却資産の特例の取得価額基準は令和8年度税制改正で引き上げられており、国税庁「令和8年度 法人税関係法令の改正の概要」によれば、令和8年4月1日以後に取得等をする資産は40万円未満、それより前に取得等をした資産は従来どおり30万円未満が対象です(あわせて適用期限が3年延長され、対象となる法人から常時使用する従業員数が400人を超える法人が除外されました。取得価額の合計額の上限は引き続き年300万円です)。いま除却しようとしている資産がいつ取得されたものかによって基準が変わるため、固定資産台帳でどちらの制度をどの基準で適用しているかを必ず確認してから、除却の仕訳を検討してください。






有姿除却——現物を残したまま除却損を計上できる場合
有姿除却とは、現物を解撤・破砕・廃棄していなくても、一定の要件に当てはまれば帳簿価額から処分見込価額を控除した金額を除却損として損金算入できる処理です。法人税基本通達7-7-2に定められています。
通達が挙げている2つのケース
通達7-7-2は、次の2つのいずれかに当てはまる固定資産について、有姿除却を認めています。1つ目は「その使用を廃止し、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないと認められる固定資産」、2つ目は「特定の製品の生産のために専用されていた金型等で、当該製品の生産を中止したことにより将来使用される可能性のほとんどないことがその後の状況等からみて明らかなもの」です。
- 使用を廃止し、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないと認められる固定資産
- 特定の製品の生産のために専用されていた金型等で、その製品の生産中止により将来使用される可能性がほとんどないことが明らかなもの
帳簿価額から処分見込価額を差し引く
有姿除却の場合も、通常の除却と同じく帳簿価額から処分見込価額を控除した金額が除却損になります。処分見込価額がない場合は帳簿価額の全額が除却損です。設例では、自社利用のソフトウエア(取得価額500,000円、期首帳簿価額300,000円)を業務システムの入れ替えにより使用しなくなった場合、処分見込価額がなければ帳簿価額300,000円の全額を除却損として計上します(ソフトウエアの場合の根拠は7-7-2の2です)。
ソフトウエアの場合(物理的な除却がなくても損金にできる事実とは)
ソフトウエアについては、法人税基本通達7-7-2の2が別途定めています。物理的な除却・廃棄・消滅がなくても、自社利用のソフトウエアでデータ処理の対象業務が廃止された、またはハードウエアやオペレーティングシステムの変更によって他のソフトウエアを利用することになり従来のソフトウエアを利用しなくなったことが明らかな場合には、帳簿価額(処分見込価額があれば控除した残額)をその事実が生じた日の属する事業年度の損金に算入できます。複写販売用の原本ソフトウエアについても、新製品の出現やバージョンアップにより今後販売しないことが社内りん議書や販売流通業者への通知文書等で明らかな場合が挙げられています。
通達には必要書類の列挙がない——後から説明できる記録の残し方
通達7-7-2が求めているのは「使用を廃止し、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないこと」などの事実に当てはまるかどうかであり、この通達自体には提出すべき書類の列挙はありません。一方、ソフトウエアを対象とする7-7-2の2は、複写販売用の原本について「社内りん議書、販売流通業者への通知文書等で明らかな場合」と具体的な文書を例示しています。そのため「この書類さえあれば必ず認められる」と言い切ることはできませんが、後から使用を廃止した経緯や再使用しない理由を説明できる記録を残しておくことは、実務上の備えとして有効です。
いつ、どの資産の使用をやめると決めたのか、稟議書や議事録、社内メールなど日付が分かる形で残します。
生産中止、業務廃止、システム入れ替えなど、通常の方法で事業の用に供する可能性がないと判断した理由を具体的に書き残します。
処分見込価額がある場合は、その見積りの根拠(過去の売却実績や業者の見積書など)を残しておくと、除却損の金額を後から説明しやすくなります。
通達の原文は、国税庁の法人税基本通達 第7節第1款「除却損失等の損金算入」で確認できます。






除却の消費税——除却そのもの・廃棄費用・スクラップ売却で3つに分かれる
除却に関する消費税は、除却そのもの・廃棄費用・スクラップ売却代金の3つの場面で、それぞれ異なる扱いになります。この区分を混同すると、消費税の申告で誤りが生じやすいので注意してください。
除却・廃棄そのものは資産の譲渡等に該当しない
消費税法基本通達5-2-13は「棚卸資産又は棚卸資産以外の資産で事業の用に供していた若しくは供すべき資産について廃棄をし、又は盗難若しくは滅失があった場合のこれらの廃棄、盗難又は滅失は、資産の譲渡等に該当しないことに留意する」と定めています。つまり除却・廃棄そのものには対価が発生しないため、課税対象外(不課税)となり、除却損に消費税は関係しません。
廃棄費用は課税仕入れ
廃棄業者に処分を依頼して支払う費用は、役務の提供を受けたことに対する対価なので課税仕入れになります。設例では、廃棄費用の税込33,000円(本体30,000円・消費税3,000円)を支払手数料などの科目で計上し、仮払消費税等を区分しておきます。
スクラップや下取りで対価を受け取ったら、それは売却(課税売上)
スクラップとして買い取ってもらった場合や下取りに出した場合は、対価を受け取っているため課税売上になります。設例では、処分見込価額として貯蔵品に振り替えていた20,000円を、税込22,000円(消費税2,000円)で売却した処理になります。除却そのものは不課税、廃棄費用は課税仕入れ、スクラップ売却は課税売上と、3つの区分をそれぞれ独立して考えることが大切です。
条文は、国税庁の消費税法基本通達 第5章第2節で確認できます。






【チェックリスト】決算前に確認する除却まわりの7項目
- 固定資産台帳に載っているが、現物が見当たらない資産はないか
- 今期中に使用を廃止した資産の「廃止した日」が事業年度末までに収まっているか
- 期中除却の資産について、除却日までの減価償却を計上したか
- 処分見込価額がある資産を、価額ゼロとして全額除却損にしていないか
- 有姿除却をした資産について、使用を廃止した経緯と再使用しない理由を後から説明できる記録が残っているか
- 廃棄費用とスクラップ売却代金の消費税区分を、除却そのものと混同していないか
- 除却した資産を償却資産申告(固定資産税)の減少分として反映したか
償却資産申告(固定資産税)の減少分に反映したか
固定資産税の対象になる償却資産を除却した場合は、翌年の償却資産申告で減少資産として反映する必要があります。申告先や様式は市区町村ごとに異なるため、所在地の自治体の案内を必ず確認してください。償却資産税の申告全般については償却資産税の申告ガイドにまとめています。
よくある質問(FAQ)
- 除却した資産の固定資産台帳は削除してよいですか?
-
削除するのではなく、除却の履歴として台帳上に残しておくことをおすすめします。除却日・除却理由・除却損の金額を記録として残しておくと、税務調査の際に処理の経緯を説明しやすくなります。台帳から行自体を消してしまうと、なぜ資産が無くなったのかを後から追いにくくなります。
- 帳簿価額1円の資産を除却したら、除却損はいくらですか?
-
備忘価額として1円を残している資産を除却する場合、処分見込価額がなければ除却損は1円になります。処分見込価額がある場合は、1円からその見込価額を控除した金額が除却損です。金額が小さくても、除却の事実が生じた事業年度に計上する点は他の資産と変わりません。
- 有姿除却をした資産を、あとで使い始めたらどうなりますか?
-
有姿除却は「今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないこと」を前提に損金算入する処理のため、その前提が崩れて再び使用することになった場合の取扱いは慎重な検討が必要です。再取得や資産計上の扱いを含めて、個別の事情に応じて税理士に確認することをおすすめします。
- 除却の日付は、廃棄業者に引き渡した日ですか、使用をやめた日ですか?
-
通常の除却では、解撤・破砕・廃棄をした日や廃棄業者に引き渡した日を除却の日とするのが一般的です。一方で有姿除却の場合は、現物の処分を待たずに「使用を廃止した」などの事実が生じた日の属する事業年度で損金算入できます。どちらに当たるかで計上する事業年度が変わるため、事実関係を確認してから日付を決めてください。
固定資産の除却の仕訳まとめ:判定フローと早見表で処理を止めない






現物が手元にあるか、対価を受け取ったか、使用を廃止し今後事業の用に供する可能性がないかの3つの分岐で切り分けます。
期中除却では、除却日までの減価償却費を先に計上してから除却損を計上する順序を守ります。
一括償却資産は除却しても損金算入限度額が変わらず、少額減価償却資産の特例を使った資産は帳簿価額がゼロで除却損が発生しません。
通達7-7-2の2つの要件のいずれかに当たるかを確認し、使用廃止の経緯や理由を後から説明できる記録を残します。
除却そのものは不課税、廃棄費用は課税仕入れ、スクラップ売却は課税売上と区分し、決算前チェックリストの7項目で最終確認します。



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