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「インボイス制度が始まってから、出張のたびに従業員に領収書やレシートを全部集めてもらうのが大変…」「2割特例が終わって本則課税になったら、日当の消費税はどう処理すればいいの?」——そんな悩みを抱える一人社長・マイクロ法人経営者・経理担当者の方へ。
実は、従業員や役員に支給する出張旅費・宿泊費・日当のうち「通常必要と認められる部分」は、インボイス(適格請求書)の保存がなくても、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる「出張旅費等特例」の対象です。出張旅費規程を整えて日当を適正に設計すれば、所得税の非課税メリットも受けながら、消費税の事務負担も抑えられます。本記事では国税庁の一次情報をもとに、特例の仕組み・帳簿の書き方・独自試算・注意点を解説します。
ぜいむたん


この記事でわかること
- インボイス(適格請求書)が無くても帳簿のみの保存で仕入税額控除できる「出張旅費等特例」の仕組み
- 対象になる「通常必要と認められる部分」の判定と帳簿の書き方
- 出張旅費規程・日当で節税する方法と否認リスクの注意点
こんな方向け:一人社長・従業員に出張旅費を支給する個人事業主・経理担当 / 読了の目安:約8分
出張旅費 特例とは?インボイスがなくても仕入税額控除できる仕組み






2023年10月にインボイス制度が始まってから、多くの経理担当者が「出張の領収書は全部インボイス対応のものを集めなければいけないのか」と不安になりました。しかし国税庁のタックスアンサーNo.6459「出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当などの取扱い」では、従業員等に出張のために支給する出張旅費・宿泊費・日当のうち、その旅行について通常必要であると認められる部分の金額は課税仕入れに該当し、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められると明記されています。根拠は消費税法30条7項ただし書および同法施行令49条に基づく「出張旅費等特例」です。
つまり、社員が出張先で受け取った領収書やレシートが適格請求書(インボイス)でなくても、会社側は帳簿に必要事項を記載して保存しておけば、その出張旅費に含まれる消費税分をきちんと仕入税額控除できるということです。これはインボイス2割特例が終了し本則課税に戻る事業者にとって、事務負担を抑えられる重要な特例です。
出張旅費等特例のポイント整理
出張旅費等特例|押さえておきたい3つのポイント
出張旅費・宿泊費・日当のうち通常必要と認められる部分は、適格請求書の保存がなくても帳簿のみで仕入税額控除ができます。
社内規程の有無や、概算払い・実費精算のどちらであっても、通常必要と認められる部分であれば特例の対象になります。
海外出張・海外転勤のための旅費等は、原則として課税仕入れにならず特例の対象外となります。
対象になる「通常必要と認められる部分」の判定基準(非課税範囲との関係)






所得税の世界では、出張旅費や日当のうち「その旅行について通常必要であると認められる」部分は、所得税基本通達9-3《非課税とされる旅費の範囲》の考え方に基づき、受け取る役員・従業員側で非課税とされています。消費税の出張旅費等特例における「通常必要と認められる部分」の判定も、この非課税とされる旅費の範囲の考え方に沿って行われます。
国税庁の法令解釈通達(消費税法基本通達11-2関係)でも、使用人等に支給する旅費のうち通常必要と認められる範囲内のものは給与として課税されない旨が整理されており、消費税・所得税の両面で「通常必要な範囲かどうか」が判定の軸になっていることがわかります。逆にいえば、社会通念上明らかに過大な金額を「日当」として支給した場合、その超過部分は通常必要な範囲を超えるとみなされ、仕入税額控除・所得税非課税のいずれの面でも否認されるリスクがある点には注意が必要です。
帳簿のみ保存で仕入税額控除する具体的な書き方(帳簿記載事項)






出張旅費等特例を使う場合、帳簿には消費税法上の通常の記載事項(課税仕入れの相手方の氏名・年月日・内容・金額)に加えて、「帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる仕入れである旨」を記載する必要があります。具体的には「出張旅費」「宿泊費」「日当」といった文言を摘要欄などに記載する方法が、国税庁の質疑応答事例「出張旅費、宿泊費、日当等」で示されています。
帳簿記載の3ステップ
課税仕入れの相手方(支給先の従業員等)の氏名、支給年月日、出張の内容(出張先・目的)、支給金額を帳簿に記載します。
「出張旅費」「宿泊費」「日当」など、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる仕入れである旨がわかる文言を摘要欄に記載します。
出張旅費規程や旅費精算書と帳簿を紐づけて保存しておくと、通常必要と認められる範囲であることの説明資料として税務調査時にも役立ちます。
出張旅費規程と日当で節税できる仕組みと注意点






出張旅費規程を作成し、役員・従業員に日当を支給する仕組みを整えると、通常必要と認められる範囲内であれば受け取る側は所得税が非課税、支給する法人側は全額を損金に算入できます。さらに消費税面でも、出張旅費等特例により帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められるため、規程を整備すること自体が所得税・消費税の両面でメリットのある実務対応になります。
ただし、社会通念上明らかに過大な日当を設定すると、通常必要と認められる範囲を超える部分について否認されるリスクがあります。「日当を高く設定すればするほど得」という単純な話ではなく、役職や出張の実態に見合った金額かどうかが重要です。断定的に「これなら絶対大丈夫」と言い切れる金額基準は法令上定められていないため、規程を作成する際は自社の実態に即した水準に設計し、必要に応じて税理士に確認することをおすすめします。
出張旅費規程・日当のメリットと注意点
通常必要と認められる範囲内の日当は、役員・従業員側で所得税が課税されません。
法人側は日当を全額損金算入でき、消費税も帳簿のみ保存で仕入税額控除ができます。
通常必要な範囲を明らかに超える金額は、所得税・消費税の両面で否認されるリスクがあります。
出張旅費規程を整備し、支給基準を明文化しておくことが実務上の説明資料になります。
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ここでは、月4回・1回2泊3日の出張を行う一人社長を例に、出張旅費規程に基づく日当(規程例として役員日当1日あたり5,000円を想定)でシミュレーションします。数値は特定の企業の実額ではなく、一般的な中小企業の規程水準を参考にした規程例に基づく試算であり、断定的な金額基準を示すものではありません。
年間シミュレーション:日当・宿泊費の仕入税額控除額
| 項目 | 試算内容 |
|---|---|
| 日当(規程例) | 1日あたり5,000円 |
| 1回あたり出張日数 | 2泊3日(3日分) |
| 1回あたり日当額 | 15,000円 |
| 年間出張回数 | 月4回×12か月=48回 |
| 年間日当総額 | 720,000円 |
| 仕入税額控除額の目安(10/110) | 約65,455円 |
※ 日当額は規程例として一般的な水準を仮定した独自試算です。実際の仕入税額控除額は各社の規程・出張実績・軽減税率対象品目の有無等により異なります。断定的な金額を保証するものではありません。
この試算のとおり、宿泊費実費に加えて日当を規程どおりに支給するだけでも、年間で数万円規模の仕入税額控除が発生し得ます。インボイスを個別に集める手間をかけずに、帳簿記載だけでこの控除を確保できる点が出張旅費等特例のメリットです。
事務負担の観点でも、インボイスを全部集める場合と出張旅費等特例(帳簿のみ)を使う場合では、必要な保存書類・確認の手間が大きく異なります。
比較表:インボイス収集 vs 出張旅費等特例(帳簿のみ)
| 比較項目 | インボイスを全部集める場合 | 出張旅費等特例(帳簿のみ) |
|---|---|---|
| 必要な証憑 | 適格請求書(インボイス)を個別に収集 | 帳簿への記載のみ(インボイス保存不要) |
| 出張者への依頼 | 全ての領収書がインボイス対応か確認依頼が必要 | 日当・出張旅費規程に沿った申請のみ |
| 経理処理 | インボイス番号・登録事業者かの確認作業が発生 | 帳簿に特例対象である旨を記載するのみ |
間違えやすいポイント(海外出張・実費精算・個人事業主本人の旅費)






出張旅費等特例には、実務でつまずきやすいポイントがいくつかあります。あらかじめ押さえておきましょう。
間違えやすい3つのポイント
出張旅費等特例|間違えやすいポイント
海外出張・海外転勤のための旅費等は原則として課税仕入れにならず、特例の対象になりません。
概算払いか実費精算かの支払方法の違いは特例の適用に影響しません。
出張旅費等特例は従業員等への「支給」が前提の制度です。個人事業主本人の出張費用は、この特例ではなく通常の課税仕入れ(原則インボイスが必要)として処理します。
日当の「範囲」を規程で明確にし、範囲内の経費は二重計上しない






日当(出張手当)は、出張に伴う食事代や現地での諸雑費を、実費精算ではなく概算で包括的に支給する趣旨のものです。そのため、まず出張旅費規程で「日当が何をカバーするのか(範囲)」を明確に定義しておく必要があります。
そのうえで、規程で日当の対象範囲に含めた経費を、別途実費でも計上すると「二重計上」になります。たとえば規程で日当が現地の食事代まで含むと定めているなら、その食事代を日当とは別にもう一度経費計上することはできません。二重計上が税務調査で判明した場合、日当部分が役員賞与と認定されて否認される、過少申告加算税や延滞税が生じる、といったリスクがあります。
一方で、日当の対象範囲に含めていない実費——たとえば宿泊費や交通費など、規程で「日当とは別に実費を支給する」と定めた費用——は、日当と別建てで計上できます。また、取引先との接待や打合せを伴う飲食は、出張者本人の食事とは性質が異なるため、原則として「交際費」「会議費」として別枠で処理します。ポイントは、日当の範囲を規程で曖昧にしないことです。範囲が不明確なまま日当と実費の両方を計上すると、税務調査で二重計上を指摘されるリスクが高まります。
日当と現地経費|計上できる・できないの整理
規程で日当に含めた経費(例:現地の食事代)を、日当とは別に実費でも計上すること。日当と重複するため認められません。
日当の対象外と規程で定めた実費(宿泊費・交通費など)。日当とは別に実費精算できます。
取引先との接待=交際費、会議を伴う飲食=会議費。出張者本人の食事とは別枠で処理します。
よくある質問(FAQ)
- 出張旅費等特例を使うのにインボイス(適格請求書)は必要ですか?
-
不要です。従業員等に支給する出張旅費・宿泊費・日当のうち、その旅行について通常必要と認められる部分は、インボイス(適格請求書)の保存がなくても、一定事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。根拠は国税庁タックスアンサーNo.6459に示されています。ただし帳簿には通常の記載事項に加えて「帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる仕入れである旨」を記載する必要があります。
- 出張旅費規程がなくても特例は使えますか?
-
社内規程の有無にかかわらず、通常必要と認められる部分であれば特例の対象になります。ただし、規程がない場合は「通常必要と認められる範囲かどうか」の判断基準が曖昧になりやすく、税務調査の際に説明が難しくなるリスクがあります。実務上は出張旅費規程を整備し、支給基準を明文化しておくことをおすすめします。
- 海外出張の旅費も仕入税額控除の対象になりますか?
-
原則として対象外です。国税庁の整理では、海外への出張または転勤のために支給した出張旅費、宿泊費、日当は原則として課税仕入れになりません。国内出張の出張旅費等特例とは扱いが異なる点に注意してください。
まとめ|出張旅費規程を整えてインボイス不要の仕入税額控除を確保する
規程がない場合は整備を検討し、ある場合は日当水準が通常必要と認められる範囲に収まっているか見直します。
「出張旅費」「宿泊費」「日当」など特例対象である旨を摘要欄に記載するルールを経理担当者間で統一します。
海外出張の旅費や、個人事業主本人の出張費用は特例の対象外となるため、通常の課税仕入れとして区別して処理します。
出張旅費規程を整え、日当・宿泊費の帳簿記載を統一しておけば、インボイス2割特例が終了して本則課税に移行しても、出張関連の消費税処理で慌てることはありません。本記事の試算はあくまで規程例に基づくものであり、実際の日当水準・帳簿の書き方は自社の実態や顧問税理士の助言に沿って設計してください。



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