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決算のたびに手が止まるのが前払費用の処理です。10月に払った1年分の火災保険料、12月に払った翌年分の家賃、年額のサーバー代……。支払った金額のうち、どこまでが当期の費用でどこからが翌期なのかを1件ずつ計算していくと、意外に時間を取られます。
しかも前払費用には「短期前払費用」に当てはまれば期間按分せず支払時に全額を費用にできるという例外があり、按分すべきものと按分しなくてよいものが混ざります。この記事では、その判定と計算をまとめて片づけられるツールとExcel管理表を用意しました。
ぜいむたん


📌 この記事でわかること
- 支払額と契約期間を入れるだけで当期の費用と前払費用に振り分ける自動計算ツール(短期前払費用の判定つき)
- 契約を一覧で管理して年間の残高を集計できるExcel管理表(登録不要でダウンロード可)
- 短期前払費用として支払時に全額費用にできる要件(所得税基本通達37-30の2・法人税基本通達2-2-14)
- 借入金の支払利息が短期前払費用から除かれる理由
- 決算整理仕訳の書き方と、翌期首の再振替仕訳を忘れないための管理方法
前払費用とは?決算整理で当期と翌期に分ける理由
前払費用とは、継続的にサービスを受ける契約でお金を先に払ったものの、決算日時点でまだ提供を受けていない部分をいいます。家賃・保険料・サーバー代・保守契約などが典型です。
お金を払った時点ではまだサービスを受けていないので、その分は当期の費用になりません。決算整理でいったん資産(前払費用)に振り替えて、翌期に費用として戻します。
前払費用と前払金(前渡金)は別のもの
混同されやすいのですが、前払費用は継続的な役務の提供に対する前払いです。商品の仕入代金を先に払った場合は前払金(前渡金)で、こちらは期間按分の対象になりません。ここを取り違えると按分の必要がないものまで割ってしまいます。






【自動計算】前払費用の期間按分と短期前払費用の判定
支払額と契約期間、決算日を入力すると、当期の費用と前払費用に振り分けます。あわせて短期前払費用の要件に当てはまるかも判定します。入力した内容が送信されることはありません。
前払費用 自動計算ツール
当期の費用と前払費用に振り分ける
| 支払日から終了日までの日数 | |
|---|---|
| 契約期間(総月数) | |
| うち当期に属する月数 | |
| 端数処理前の当期費用 | |
| 当期の費用(円未満切捨て) | |
| 前払費用(資産に振替) |
月割は開始月と終了月をそれぞれ1か月として数える簡便法です。判定は所得税基本通達37-30の2・法人税基本通達2-2-14にもとづく目安で、個別の取扱いは税理士等にご確認ください。入力内容は送信されません。
計算例:10月に払った1年分の火災保険料12万円
2026年10月1日から2027年9月30日までの火災保険料12万円を、12月31日決算の事業者が支払ったケースです。契約期間は12か月、そのうち当期に属するのは10月・11月・12月の3か月なので、当期の費用は30,000円、前払費用として資産に振り替えるのは90,000円になります。
前払費用の管理表Excelを配布します
上のツールは1件ずつ確認するためのものです。契約が5件、10件と増えてくると一覧で残高を管理したくなるので、Excelの管理表も用意しました。






決算整理仕訳の書き方|経過勘定4種の処理
前払費用は経過勘定と呼ばれる4種類のうちの1つです。決算整理では次のように処理します。
| 勘定科目 | 状況 | 貸借対照表 | 決算整理仕訳 |
|---|---|---|---|
| 前払費用 | 払ったが、まだ受けていない | 資産 | (借)前払費用 /(貸)支払保険料など |
| 未払費用 | 受けたが、まだ払っていない | 負債 | (借)支払家賃など /(貸)未払費用 |
| 前受収益 | もらったが、まだ提供していない | 負債 | (借)受取家賃など /(貸)前受収益 |
| 未収収益 | 提供したが、まだもらっていない | 資産 | (借)未収収益 /(貸)受取利息など |
先ほどの火災保険料の例なら、決算整理で「(借)前払費用 90,000 /(貸)支払保険料 90,000」と入れます。4種類それぞれの詳しい処理は【2026年版】経過勘定の仕訳完全ガイド|前払費用・未払費用・前受収益・未収収益の処理と決算整理で解説しています。






翌期首の再振替仕訳を忘れない
決算で資産に振り替えた前払費用は、翌期首に逆の仕訳(再振替)で費用に戻します。「(借)支払保険料 90,000 /(貸)前払費用 90,000」です。監査法人・税理士法人で多くの中小企業の決算に関わった経験から言うと、前払費用の残高が実態より膨らんでいる会社は、ほぼ例外なくこの再振替が漏れています。
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ここまでが原則ですが、例外があります。個人事業主については所得税基本通達37-30の2(短期の前払費用)が、次のように定めています。
前払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうちその年12月31日においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。以下この項において同じ。)の額はその年分の必要経費に算入されないのであるが、その者が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する年分の必要経費に算入しているときは、これを認める。
国税庁「所得税基本通達37-30の2」
法人も同じ考え方で、法人税基本通達2-2-14とタックスアンサーNo.5380「短期前払費用として損金算入ができる場合」に定めがあります。要件は次の3つです。
要件①
支払日から1年以内の役務
「支払った日から1年以内に提供を受ける役務」であること。契約期間が1年でも、支払日が早すぎて終了日まで1年を超えると外れます。
要件②
継続して同じ処理をする
毎期継続して支払時に費用計上していること。利益が出た年だけ使う、といった使い分けはできません。
要件③
収益対応が必要なものは除く
借入金の支払利息のように、収益の計上と対応させる必要があるものは1年以内でも対象外です。
「1年以内」は契約期間ではなく支払日から数える
要件①でつまずきやすいのがここです。通達の文言は「その支払った日から1年以内に提供を受ける役務」なので、起点は契約の開始日ではなく支払日です。たとえば12月1日に支払って翌年11月30日までのサービスなら支払日から364日で要件を満たしますが、同じ12月1日払いで翌年12月31日までの契約だと395日となり、1年以内に収まりません。






短期前払費用で否認されやすいパターン
パターン1
利益の出た年だけ適用する
継続適用が要件なので、その年だけ支払時費用にする処理は認められません。一度始めたら翌期以降も同じ処理を続けます。
パターン2
未払のまま費用にする
通達は「支払った場合」を前提にしています。決算日までに実際の支払いが済んでいなければ適用できません。
パターン3
借入金の支払利息に使う
収益と対応させる必要があるものは要件③で明示的に除かれています。1年分前払いしても支払時費用にはできません。
決算前に確認するチェックリスト
- □ 年払い・前払いの契約をすべて洗い出した(保険・家賃・サーバー・保守・会費)
- □ 契約ごとに支払日と役務の終了日を確認し、支払日から1年以内かを判定した
- □ 短期前払費用として処理するものは、前期も同じ処理だったかを確認した
- □ 期間按分するものは月数を数え、当期費用と前払費用に振り分けた
- □ 前期末に計上した前払費用の再振替仕訳が期首に入っているか確認した
- □ 1年を超える契約は長期前払費用として区分した
よくある質問(FAQ)
- 短期前払費用の「1年以内」はいつから数えますか?
-
支払った日から数えます。所得税基本通達37-30の2および法人税基本通達2-2-14の文言は「その支払った日から1年以内に提供を受ける役務」であり、契約の開始日ではありません。12月1日に支払って翌年11月30日までの契約なら364日で要件を満たしますが、同じ支払日で翌年12月31日までの契約は395日となり要件を満たしません。
- 今年だけ短期前払費用として処理してもよいですか?
-
できません。通達は「継続してその支払った日の属する年分(事業年度)の必要経費(損金)に算入しているとき」を要件としています。利益が出た年だけ支払時に費用計上し、翌年は期間按分するといった使い分けは認められません。一度適用したら同じ処理を継続します。
- 借入金の利息を1年分前払いした場合はどうなりますか?
-
短期前払費用の対象外です。タックスアンサーNo.5380では、借入金に係る支払利子のように収益の計上と対応させる必要があるものは、1年以内であっても支払時の損金にはできないとされています。期間に応じて按分し、前払費用として資産計上します。
- 前払費用と長期前払費用はどう区別しますか?
-
決算日の翌日から1年以内に費用となる部分が前払費用(流動資産)、1年を超える部分が長期前払費用(固定資産)です。2年契約の保守料のように期間が長い契約は、貸借対照表上でこの2つに分けて表示します。配布しているExcel管理表では、契約ごとの当期費用と前払費用を集計できます。
まとめ|前払費用は「按分するもの」と「しないもの」に分ける
保険料・家賃・サーバー代・保守契約・会費など、お金を先に払っている契約をすべて一覧にします。Excel管理表の1行が1契約です。
支払日から1年以内か、継続適用しているか、借入金利息などでないか。3つとも満たせば期間按分は不要で、支払時に全額を費用にできます。
要件を満たさないものは月数で按分し、翌期以降の分を前払費用へ振り替えます。円未満は切捨てで統一します。
資産に振り替えた前払費用を期首に費用へ戻します。ここが漏れると残高が実態より膨らみ続けます。
短期前払費用は節税策として紹介されがちですが、実態は「継続して同じ処理を続けること」が条件の会計処理です。一度使い始めたら翌期以降も続く前提で、契約の支払時期から設計しておくと迷いません。



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