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ベースアップ評価料の仕訳と勘定科目|入金・賃金支払・法定福利費16.5%の会計処理【令和8年度】

ベースアップ評価料は「届出」と「実績報告」の情報はよく見かけるのに、入金されたお金を帳簿にどう記録するか——つまり仕訳と勘定科目の解説はほとんど出てきません。実際、施設基準や様式の書き方を扱う記事は多数ありますが、会計処理を正面から説明したものは見当たらないのが現状です。

この記事では、ベースアップ評価料の入金時・賃金支払時・決算時の3場面に分けて仕訳を整理し、消費税の区分、法定福利費16.5%概算の会計上の扱い、算定月と入金月の期ズレまでを、そのまま使える仕訳テンプレとあわせて解説します。

ぜいむたん
ベースアップ評価料が入金されたんですけど、これって普通の診療報酬と同じ科目でいいんですか?賃上げ専用のお金だから分けたほうがいいのかなって…
イザーク
ええとこ突くなあ。結論から言うたら入金は診療報酬の一部やから通常の医業収益や。でも「賃上げに使うた証明」を後で出さなあかんから、補助科目で分けとくのが実務では正解やねん。ここ、report出す段になって泣く人が多いとこや

📌 この記事でわかること

  • ベースアップ評価料の入金は「医業収益(保険診療収入)」で、独立した収益科目は立てないのが実務上の一般的な処理
  • 診療報酬であるため消費税は非課税売上——課税売上割合に影響する点まで整理
  • 賃金支払側は「給与・賞与・法定福利費」の3本立てで、補助科目で賃金改善分を分離する設計
  • 法定福利費の16.5%概算(令和6年4月26日 疑義解釈その3 ベア関連問5)は報告上の概算であり、会計は実額計上という二層構造
  • 算定月と入金月の期ズレ(未収入金)を決算でどう処理するか
  • そのままコピーして使える仕訳テンプレ+勘定科目対応表を掲載
目次

結論:ベースアップ評価料の仕訳は「収入側」と「支出側」を切り離して考える

ベースアップ評価料の会計処理でつまずく最大の原因は、「賃上げに使う義務があるお金」だから特別な科目が要るのではと考えてしまう点にあります。しかし会計上は、収入側と支出側はそれぞれ独立した取引として記録します。

収入側は診療報酬の一部なので通常の医業収益、支出側は人件費として給与・賞与・法定福利費に計上する。両者を紐づけるのは仕訳ではなく補助科目と集計表である——これが全体像です。

場面1

入金時

支払基金・国保連からの入金に含まれる。医業収益(保険診療収入)で処理し、消費税は非課税売上

場面2

賃金支払時

給与・賞与・法定福利費の3本立て。賃金改善分を補助科目で分離しておくと報告書作成が一気に楽になる。

場面3

決算時

算定月と入金月の期ズレを未収入金で調整。賃上げ促進税制の適用可否もここで検討する。

入金時の仕訳と勘定科目|独立科目は立てず医業収益に含める

ベースアップ評価料は補助金ではなく診療報酬(点数)です。初診・再診・訪問診療などに上乗せされる形で算定されるため、レセプト請求を通じて審査支払機関から他の診療報酬とまとめて入金されます。

したがって「ベースアップ評価料収入」という独立した収益科目を新設する必要はなく、通常の医業収益(保険診療収入 / 入院診療収益・外来診療収益)に含めて処理するのが実務上の一般的な取扱いと考えられます。

借方 金額 貸方 金額
普通預金 1,000,000 保険診療収入
(補助科目:ベースアップ評価料)
1,000,000

補助科目で切り出しておく理由

ポイントは補助科目(または部門・タグ)で「ベースアップ評価料」を切り出しておくことです。実績報告書では収入実績額の集計が必要になりますが、通常の診療報酬と混ざった状態だと、後から点数表とレセプトを突き合わせて再計算する羽目になります。会計事務所として実務に関わってきた経験から言うと、報告期限の直前に最も時間を取られるのがこの再集計作業です。実績報告書・中間報告書の書き方とセットで、最初から分けておく設計を強くおすすめします。

ぜいむたん
補助科目で分けるだけなら、今からでも間に合いますか?
イザーク
間に合う。期首まで遡って振り替えるんは大変やけど、今月からでも分けといたら来年の報告が全然ちゃう。会計ソフトなら補助科目1個追加するだけや。5分の作業で来年の自分を助けられるで

消費税の区分は「非課税売上」|課税売上割合への影響に注意

ベースアップ評価料は社会保険診療報酬の一部であるため、消費税は非課税です。健康保険法等に基づく療養の給付等は非課税とされており、その取扱いは国税庁の消費税法基本通達 第6節(医療の給付等関係)に整理されています。

見落とされがちなのが課税売上割合への影響です。ベースアップ評価料の算定によって非課税売上が増えると、分母(総売上)が増えて課税売上割合が下がる方向に働きます。自由診療や健診・予防接種・文書料といった課税売上がある医療機関では、仕入税額控除の計算に影響しうる点を押さえておく必要があります。

収入の種類 消費税区分 課税売上割合での位置
ベースアップ評価料非課税分母のみ(分子に入らない)
保険診療収入(通常)非課税分母のみ
自由診療・健診・予防接種課税分母・分子の両方
文書料(診断書等)課税分母・分子の両方

なお、これは補助金・助成金とは扱いが異なります。補助金は「対価性がない」ため不課税であり、課税売上割合の計算に一切登場しません。混同しやすいところなので、補助金・助成金の消費税と仕訳もあわせて確認しておくと整理しやすくなります。

ぜいむたん
非課税と不課税って、どっちも消費税がかからないなら同じじゃないんですか?
イザーク
それがちゃうねん。非課税は課税売上割合の分母に入る/不課税は分母にも入らへん。ここを間違うと課税売上割合がズレて、仕入税額控除の金額まで狂うで。地味やけど効いてくるとこや

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賃金支払時の仕訳|給与・賞与・法定福利費の3本立てで分離する

賃金改善として支払う側は、基本給等の引上げ分・それに連動する賞与や時間外手当の増加分・法定福利費の事業主負担増加分という3要素で構成されます。会計上はそれぞれ通常の人件費科目で処理し、補助科目で「賃金改善分」を切り出します。

構成要素 勘定科目 推奨する補助科目
基本給・毎月決まって支払う手当の引上げ分給料手当ベア分
ベアに連動する賞与の増加分賞与ベア連動分
ベアに連動する時間外手当の増加分給料手当ベア連動分
社会保険料等の事業主負担増加分法定福利費ベア連動分

給与支給時の仕訳例

給与支給時の仕訳そのものは通常どおりです。総額で給料手当を計上し、預り金(源泉所得税・社会保険料個人負担分)を控除して差引支給額を支払います。ベースアップ評価料があるからといって仕訳のかたちが変わるわけではありません。

借方 金額 貸方 金額
給料手当
(補助:ベア分)
300,000預り金(源泉所得税)8,000
預り金(社会保険料)45,000
普通預金247,000
法定福利費
(補助:ベア連動分)
45,000未払金(社会保険料)45,000
ぜいむたん
補助科目を「ベア分」と「それ以外」に分けると、給与計算のたびに手間が増えませんか?
イザーク
最初の設計だけやで。給与ソフトでベア分の手当を独立させとくんが一番ラク。「基本給」に混ぜ込むと、後から誰のいくらがベア分か分からんようになる。ここは最初にひと手間かけといたほうが絶対得や

法定福利費16.5%概算の正体|報告上の概算と会計上の実額は別物

ベースアップ評価料の実務でとりわけ混乱が多いのが法定福利費の16.5%です。これは実績報告における概算計算のルールであって、会計帳簿に16.5%を計上するという意味ではありません。

根拠は令和6年4月26日の疑義解釈資料(その3)ベア関連 問5で、法定福利費が必要な対象職員のベースアップ額の最大16.5%を賃金改善実績に含めることができるとされています(東京保険医協会「ベースアップ評価料の報告について」にて整理・確認)。令和8年度についても令和8年5月8日の疑義解釈資料(その5)令和8年7月30日の同(その11)が公表されており、報告前には最新版の確認が欠かせません。

帳簿(会計)

実額で計上する

実際に納付した社会保険料の事業主負担額を法定福利費に計上。16.5%という率は使わない。

実績報告

概算16.5%が使える

ベースアップ額 × 0.165 を賃金改善実績に含算可。合理的な方法による概算として認められる枠組み。

帳簿と報告書で数字が合わないのは正常

この二層構造を理解しておかないと、「帳簿の法定福利費と報告書の金額が合わない」という不一致に見えてしまいます。両者は目的が違う別の数字であり、一致しないのが正常です。具体的な計算の当てはめは令和8年度版の計算シートで確認できます。

ぜいむたん
じゃあ帳簿は帳簿、報告は報告で、それぞれ別に作るってことですか?
イザーク
そういうこと。ただし元データは同じ補助科目から取るようにしとくんや。そうすれば「実額はいくら、概算に置き換えるといくら」を1枚の集計表で説明できる。監査でも調査でも、この説明ができる医院は強いで

算定月と入金月の期ズレ|決算をまたぐときの未収入金の考え方

診療報酬は、算定した月の約2か月後に入金されます。3月算定分は5月入金というように、決算期をまたぐ期ズレが必ず発生します。ベースアップ評価料も診療報酬の一部なので、この期ズレの影響を受けます。

決算時の未収入金の立て方

発生主義で処理するなら、決算時点で未入金の診療報酬は未収入金(医業未収金)として資産計上し、対応する収益を当期に計上します。ベースアップ評価料だけを別扱いにする理由はなく、通常の診療報酬と同じ処理に含めるのが一般的です。

タイミング 仕訳
決算日(3月算定分が未入金)医業未収金 / 保険診療収入(補助:ベースアップ評価料)
翌期5月(入金時)普通預金 / 医業未収金

注意したいのは、実績報告は「賃金改善の実績」を年度単位で見るのに対し、会計の収益認識は決算期に紐づくという点です。年度と事業年度が一致しない医療機関では、両者の期間がずれます。期間の切り方が違うことを前提に、集計表を分けて持っておくと混乱しません。経過勘定まわりの基本的な考え方は経過勘定の仕訳完全ガイドで整理しています。

ぜいむたん
年度と決算期がずれてると、どっちの数字で説明すればいいのか分からなくなりそうです…
イザーク
せやから集計表を2本持つんや。会計用(事業年度ベース)と報告用(年度ベース)。同じ補助科目から月次で拾えば、どっちの期間でも切り出せる。月次で溜めとくのが結局いちばん速いねん

そのまま使える仕訳テンプレと勘定科目対応表

ここまでの内容を、実務でそのまま参照できる形にまとめます。会計ソフトの補助科目設定と、月次で埋める集計表の2点セットです。

場面 借方 貸方 消費税区分
診療報酬入金普通預金保険診療収入(補助:ベースアップ評価料)非課税売上
給与支給(ベア分)給料手当(補助:ベア分)預り金/普通預金対象外
賞与支給(ベア連動分)賞与(補助:ベア連動分)預り金/普通預金対象外
社会保険料(事業主負担)法定福利費(補助:ベア連動分)未払金/普通預金対象外
決算(未入金分)医業未収金保険診療収入(補助:ベースアップ評価料)非課税売上

月次で埋める集計表(5列)

月次で埋める集計表は、次の5列だけで足ります。表計算ソフトにこのままコピーして使ってください。

①評価料の収入額 ②ベア分の給与・賞与 ③法定福利費(実額) ④報告用概算(②×16.5%)
4月
5月
年計

①と(②+④)を比べて、②+④が①を上回っていれば「収入を賃金改善に充てた」と説明できます。この1枚があるかないかで、実績報告の作業時間は大きく変わります。

ぜいむたん
④の概算を足していいなら、実額の③はなんのために取るんですか?
イザーク
③は帳簿と一致させるためや。報告は④で通っても、決算書の法定福利費は③やからな。両方持っとけば「帳簿ではこう、報告ではこう」と1枚で説明できる。数字の出どころを聞かれて詰まるんが一番あかんパターンやで

賃上げ促進税制との関係|二重取りではないが要件は別途確認

ベースアップ評価料で原資を確保しつつ、賃上げ促進税制の税額控除も受けられるのか——これはよく受ける質問です。両制度は目的も所管も異なる別制度であり、ベースアップ評価料を算定していることが直ちに賃上げ促進税制の適用を妨げるものではないと考えられます。

ただし賃上げ促進税制には、給与等支給額の増加割合や雇用者給与等支給額の範囲など固有の要件があります。また、そもそも税額控除は法人税・所得税の話であり、個人開業医と医療法人でも判断が変わります。税理士法人での実務経験から申し上げると、この論点は「制度の併用可否」よりも「自院が要件を満たすか」の個別判定に時間がかかる領域です。適用の可否は必ず顧問税理士に個別にご確認ください

ベースアップ評価料

診療報酬(収入を増やす)

所管は厚生労働省。届出と実績報告が必要。会計上は医業収益。

賃上げ促進税制

税額控除(税金を減らす)

所管は財務省・国税庁。申告書で適用。会計上は税金費用の減少。

ぜいむたん
同じ「賃上げ」なのに、窓口も書類も全然違うんですね。
イザーク
そこがややこしいとこや。片方は収入を増やす制度、もう片方は税金を減らす制度。集計する数字も期間もちゃう。せやから最初に補助科目で分けとけって話に戻るわけやな

よくある誤り3選|報告直前に発覚しがちな処理ミス

実務でよく見かける誤りを整理します。いずれも早い段階で気づけば軽微ですが、報告期限の直前だと修正に時間がかかります。

誤り①:雑収入で処理

補助金と混同して雑収入に計上。診療報酬なので医業収益が原則。消費税区分も不課税ではなく非課税。

誤り②:帳簿に16.5%を計上

概算率を法定福利費として仕訳してしまう。16.5%は報告上の概算で、帳簿は実額。

誤り③:補助科目なしで運用

通常の診療報酬・給与と混在。報告時にレセプトと給与台帳から再集計が必要になり工数が跳ね上がる。

ぜいむたん
①の「雑収入で処理」って、そんなに問題になりますか?金額は同じですよね。
イザーク
利益は同じでも消費税の区分が変わるのが問題や。不課税にしてもうたら課税売上割合の分母から抜けて、仕入税額控除の金額がズレる。しかも医業収益がその分小さく見えるから、経営指標の比較もおかしなる。金額同じやからええ、では済まへんねん

会計ソフト比較

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よくある質問(FAQ)

ベースアップ評価料専用の収益科目を作ったほうがいいですか?

独立した勘定科目を新設するより、既存の医業収益(保険診療収入)に補助科目を設ける方法が一般的です。財務諸表の科目体系を崩さずに集計だけ切り出せるためです。医療法人会計基準の適用対象となる法人では、科目体系の変更は影響が大きいため特に注意してください。

帳簿の法定福利費と実績報告書の金額が一致しません。誤りでしょうか?

一致しないのが通常です。帳簿は実際に発生した社会保険料の事業主負担を実額で計上するのに対し、実績報告ではベースアップ額の最大16.5%という概算による含算が認められています(令和6年4月26日 疑義解釈その3 ベア関連 問5)。目的の異なる別の数字であるため、両者を無理に一致させる必要はありません。

ベースアップ評価料は課税売上割合に影響しますか?

影響します。社会保険診療報酬は消費税が非課税であるため、算定額が増えると非課税売上が増加し、課税売上割合が下がる方向に働きます。自由診療・健診・予防接種・文書料などの課税売上がある医療機関では、仕入税額控除の計算への影響を確認しておくことをおすすめします。

賃金改善分を賞与でまとめて支給した場合、仕訳は変わりますか?

仕訳の形は通常の賞与と同じで、勘定科目は「賞与」です。ただし補助科目でベア連動分を分離しておくことをおすすめします。なお、賞与での支給が賃金改善として認められるかは制度側の要件の問題であり、会計処理とは別に厚生労働省の疑義解釈資料で最新の取扱いを確認してください。

個人開業医と医療法人で会計処理は変わりますか?

仕訳の基本構造(医業収益で受け、人件費で支出する)は共通です。ただし適用される会計基準や決算期、賃上げ促進税制の適用関係が異なります。医療法人会計基準の対象となる法人では科目体系にも制約があるため、個別の適用は税理士等の専門家にご確認ください。

まとめ:4ステップで会計処理の型を作る

STEP1
補助科目を4つ作る

保険診療収入に「ベースアップ評価料」、給料手当・賞与・法定福利費に「ベア分/ベア連動分」を追加する。作業は5分で終わります。

STEP2
消費税区分を非課税売上に設定

診療報酬なので非課税売上。不課税(補助金)と取り違えないこと。課税売上割合への影響もあわせて確認します。

STEP3
月次で集計表の5列を埋める

収入額・ベア分の給与賞与・法定福利費の実額・概算16.5%を毎月記録。年度末にまとめてやろうとすると必ず破綻します。

STEP4
決算で未収入金と税制適用を確認

期ズレ分を医業未収金で調整し、賃上げ促進税制の適用可否を顧問税理士と検討します。

ベースアップ評価料の会計処理は、特別な仕訳を覚えることではなく「後から説明できる形で分けておく」設計がすべてです。補助科目を4つ作るだけで、毎年の実績報告の負担は確実に軽くなります。

イザーク
今日の授業は終わり!また来てや!!

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この記事を書いた人

イザーク|公認会計士試験合格者

税務・会計の実務に精通し、国税庁・厚生労働省などの一次ソースに基づいて解説します。医療機関の月次・決算業務では、診療報酬の期ズレ処理と補助科目設計が実務上の分かれ目になる場面を数多く見てきました。詳しい経歴はプロフィール公認会計士試験受験記をご覧ください。

監修:イザークコンサルティング株式会社(公認会計士試験合格者在籍)
本記事は執筆時点の情報提供を目的としたものです。ベースアップ評価料の算定要件・報告内容は疑義解釈資料の更新により変わることがあります。個別の会計処理・税務判断は税理士等の専門家にご確認ください。
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