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補助金の採択通知が届いて、ひと安心——。ですが経理の本番はここからです。「入金された補助金に消費税はかかるの?」「補助金で買った機械の消費税は控除していいの?」「そもそも、いつ売上に立てるの?」。申請の解説記事は無数にあるのに、入金後の会計・税務処理まで書いてある記事はほとんどありません。
結論から言えば、補助金・助成金は消費税では「不課税」です(国税庁タックスアンサーNo.6157、消費税法基本通達5-2-15)。そして多くの事業者が誤解しているのが、補助金で買った資産の仕入税額控除は、通常どおり全額できるという点です。本記事では、不課税の意味から、収益に計上する時期、圧縮記帳の仕訳と別表十三(一)、個人事業主の総収入金額不算入まで、入金後にやることを順番に解説します。
ぜいむたん


📌 この記事でわかること
- 補助金・助成金が消費税で「不課税」になる理由(対価性がない=消基通5-2-15)と、非課税・免税との違い
- 補助金で買った機械の消費税は全額控除できる——「特定収入」の調整が必要なのは国・地方公共団体や公益法人等だけ(消法60④)
- 補助金をいつ収益に計上するか:設備系は「返還不要が確定した日」、雇用調整助成金等は「事実があった事業年度に見積計上」(法基通2-1-42)
- 圧縮記帳を使った場合と使わない場合の仕訳を、500万円の設備補助金で比較(直接減額方式・積立金方式)
- 別表十三(一)の位置づけと、翌期に資産を取得する場合の特別勘定(法法43)
- 個人事業主は「総収入金額不算入」+明細書の添付が必要(所法42・43/No.2202)
- 会計ソフトの税区分設定で起こりがちな申告ミスと、決算前チェックリスト
補助金・助成金は消費税「不課税」——その根拠と意味






根拠は「対価性がないこと」(消基通5-2-15)
消費税の課税対象は「国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等」です。補助金は、何かを売った見返り(対価)として受け取るお金ではないため、そもそも課税の対象になりません。
国税庁のタックスアンサーNo.6157(課税の対象とならないもの(不課税)の具体例)は、不課税の具体例として「寄附金、祝金、見舞金、国または地方公共団体からの補助金や助成金等」を挙げ、その理由を「一般的に対価を得て行う取引ではないから」と説明しています。
さらに消費税法基本通達5-2-15(補助金、奨励金、助成金等)は、事業者が国または地方公共団体等から受ける奨励金・助成金等や、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(適正化法)第2条第1項に掲げる補助金等のように、「特定の政策目的の実現を図るための給付金は、資産の譲渡等の対価に該当しない」と定めています。
雇用調整助成金も同じく不課税(通達の注書き)
同通達の注書きは、雇用保険法の規定による雇用調整助成金などについて、休業手当や賃金・職業訓練費といった経費の支出にあたり、あらかじめ助成金による補てんを前提として所定の手続をとっていた場合であっても、資産の譲渡等の対価に該当しないとしています。「人件費の穴埋めだから売上に近いのでは」という直感に対して、通達が明確に否定している箇所です。
不課税・非課税・免税の違いを整理する
実務でこの違いが効いてくるのは、課税売上割合が95%を下回りそうな事業者です。補助金を大きく受け取っても不課税なので課税売上割合は変動しませんが、非課税売上が多い事業ではもともと割合が下がっている可能性があります。区分の詳細は【2026年最新】消費税の課税区分完全ガイド – 勘定科目100以上を徹底解説で確認してください。
最大の誤解:補助金で買った機械の消費税は控除できるのか






一般の法人・個人事業主は、補助金の使途に関係なく全額控除
仕入税額控除は、課税事業者が課税仕入れを行った事実に基づいて計算されます。その支払原資が自己資金か、借入金か、補助金かは問われません。したがって、補助金で購入した機械の消費税額も、通常の設備投資と同じく控除の対象になります。
例外:「特定収入」の調整が必要なのは国・地方公共団体・公益法人等だけ
ただし、消費税法第60条第4項には「特定収入に係る仕入控除税額の調整」という規定があり、補助金などの対価性のない収入で行った課税仕入れについて、仕入控除税額から一定額を差し引く調整が求められる場合があります。
ここが最大の分かれ道です。国税庁タックスアンサーNo.6495のタイトルが示すとおり、この調整の対象は「国、地方公共団体や公共・公益法人等」です。具体的には国・地方公共団体・消費税法別表第三に掲げる法人・人格のない社団等などが対象で、一般の株式会社や合同会社、個人事業主はこの調整の対象外です。
⚠️ ネット情報で混乱しやすいポイント
「補助金をもらったら仕入税額控除を調整する必要がある」という解説を見かけることがありますが、それは公益法人・自治体向けの規定の話です。中小企業や個人事業主が読むと過剰に不安になる箇所なので、自社が別表第三に掲げる法人等に該当するかどうかで切り分けてください。判断に迷う場合は顧問税理士にご確認ください。
税理士法人での実務でも、一般法人の関与先から「補助金分は控除できないのでは」と質問を受けることはよくありますが、確認すべきはまず法人格の区分です。一般の営利法人であれば、通常どおりの控除計算で処理することになります。
補助金はいつ収益に計上するのか(法人税)






設備系の補助金:返還不要が確定した日(額の確定通知)
ものづくり補助金や省力化投資補助金のような設備投資向けの補助金は、次の流れをたどります。経理として押さえるべきは、どの段階で会計処理が発生するかです。
補助対象として採択され、交付が決定した段階。金額はまだ確定していないため、この時点では原則として会計処理は行いません。
機械等を取得し、代金を支払います。ここで課税仕入れとして通常どおり仕訳を計上します(消費税は全額控除の対象)。
実績報告を経て補助金の額が確定し、通知が届きます。収益計上と圧縮記帳の判定はこの日が基準です。通知書は日付が分かる形で保管します。
入金は未収入金の消込みです。ここで初めて収益計上すると、額の確定通知が前期であった場合に期ズレが生じます。
法人税基本通達10-2-1の注書きは、「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律第15条《補助金等の額の確定等》の規定により交付すべき補助金等の額が確定し、その旨の通知を受けた国庫補助金等は、返還を要しないことが確定した国庫補助金等に該当する」としています。圧縮記帳の適用時期を判定するうえでの重要な基準です。
同通達は、①交付の条件に違反した場合には返還しなければならないこと、②一定期間内に相当の収益が生じた場合には返還しなければならないこと、といった条件が付いていても、返還不要が確定しているかどうかの判定には関係がない旨も定めています。いわゆる収益納付の条項が付いているだけでは「未確定」にはならない、ということです。
雇用系の助成金:事実があった事業年度に見積計上(法基通2-1-42)
一方、法人税基本通達2-1-42(法令に基づき交付を受ける給付金等の帰属の時期)は、休業手当・賃金・職業訓練費等の経費を補てんするために雇用保険法等に基づき交付を受ける給付金等については、その給付の原因となった休業・就業・職業訓練等の事実があった日の属する事業年度終了の日において交付を受けるべき金額が具体的に確定していない場合であっても、その金額を見積もり、当該事業年度の益金の額に算入するとしています。
ただし同通達の注書きにより、定年の延長や高齢者・障害者の雇用など雇用の改善を図ったことにより交付を受ける奨励金等は、支給決定があった日の属する事業年度の益金に算入します。同じ「助成金」でも、経費の補てんか、雇用改善への奨励かで時期が分かれる点に注意してください。
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前提となる設例
- 3月決算の中小企業(税抜経理・課税事業者)
- 機械装置を 1,100万円(本体1,000万円+消費税100万円) で取得
- 補助金 500万円 の額の確定通知を同一事業年度中に受領
仕訳①:資産の取得と補助金の受入れ
| 場面 | 借方 | 貸方 | 消費税区分 |
|---|---|---|---|
| 機械の取得 | 機械装置 10,000,000 仮払消費税 1,000,000 | 普通預金 11,000,000 | 課税仕入れ(全額控除可) |
| 額の確定通知 | 未収入金 5,000,000 | 雑収入(国庫補助金収入) 5,000,000 | 不課税 |
| 補助金の入金 | 普通預金 5,000,000 | 未収入金 5,000,000 | 対象外 |
仕訳②:圧縮記帳(直接減額方式)
| 方式 | 仕訳 | 結果 |
|---|---|---|
| 直接減額方式 | (借)固定資産圧縮損 5,000,000 (貸)機械装置 5,000,000 | 機械の帳簿価額が500万円に。以後の減価償却は500万円ベースで計算 |
| 積立金方式 | (借)繰越利益剰余金 5,000,000 (貸)圧縮積立金 5,000,000 | 帳簿価額は1,000万円のまま。申告調整で減算し、以後取り崩して加算 |
圧縮記帳をしない場合、この期は補助金500万円がまるごと課税所得を押し上げます。圧縮記帳を適用すれば、同額の圧縮損によりその期の所得への影響は実質的に相殺されますが、機械の取得価額が下がるため翌期以降の減価償却費は少なくなります。トータルの税額が減るのではなく、課税の時期が後ろにずれる制度であることを、経営者に説明する際は明確に伝えてください。
圧縮記帳の対象にならないケース
- 固定資産の取得に充てるものではない補助金:雇用調整助成金や家賃補助のように経費を補てんする性質のものは、圧縮記帳の対象外です。収益に計上したうえで、対応する経費が損金になることで課税所得が調整されます。
- 実質的に税の減免に代えて交付された補助金:法人税基本通達10-2-4は、工場誘致条例等に基づく補助金・奨励金が実質的に税の減免に代えて交付されたものであることが明らかな場合、法人税法第42条第1項の国庫補助金等に該当しないとしています。
- 少額で全額を損金算入した資産:取得価額の全額をその期の費用にした場合、圧縮すべき帳簿価額が残りません。少額資産の判定は【2026年版】一括償却資産と少額減価償却資産の特例はどう違う?20万円未満は一括償却が得な理由もあわせてご確認ください。
別表十三(一)と、翌期に資産を取得する場合の特別勘定






別表十三(一)の添付
法人が国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮記帳(法人税法第42条)の適用を受ける場合、確定申告書に別表十三(一)「国庫補助金等、工事負担金及び賦課金で取得した固定資産等の圧縮額等の損金算入に関する明細書」を添付します。損金経理(または剰余金の処分による積立金の計上)と明細書の添付が要件であり、どちらかが欠けると適用を受けられません。決算・申告のスケジュールに組み込んでおくべき作業です。
交付は今期・取得は翌期になる場合(法法43の特別勘定)
補助金の交付を受けた事業年度末までに、対象資産の取得または改良が完了していないケースは珍しくありません。この場合、法人税法第43条により、取得等に充てる予定の補助金相当額を「特別勘定」として経理し、損金の額に算入することができます。そして翌期以降に実際に資産を取得したときに特別勘定を取り崩し、圧縮記帳を行います。
設備の納期が長引いている、工事が期をまたぐ——といった場面ではこの規定の検討が必要です。決算間際に慌てないよう、交付決定を受けた段階で「今期中に取得できるか」を確認しておくことをおすすめします。
個人事業主の場合:総収入金額不算入と明細書(所法42・43)






国税庁のタックスアンサーNo.2202(国庫補助金等を受け取ったとき)によれば、固定資産の取得や改良に充てるために国または地方公共団体の補助金等の交付を受け、その交付の目的に適合した固定資産の取得や改良をしたときは、確定申告書に一定の事項を記載することを条件として、固定資産の取得等に充てた部分に相当する金額を総収入金額に算入しないこととされています(所法42、43)。
この取扱いを受けた場合、その固定資産の取得費は、実際に要した金額から総収入金額に算入されなかった補助金の額を控除した残額となり、減価償却費の計算もこの取得費を基礎に行います。手続としては「国庫補助金等の総収入金額不算入に関する明細書」を添付した確定申告書を、所轄税務署長に提出します。
なお、固定資産の取得に充てるものではない補助金(販路開拓のための広告費や委託費に充てたものなど)は、この規定の対象外です。事業所得の総収入金額に算入したうえで、対応する経費が必要経費になる、という通常の処理になります。
決算前チェックリスト:補助金まわりでやりがちな5つのミス






- 雑収入の税区分を「課税売上」にしたまま登録している:会計ソフトの雑収入は初期設定で課税売上になっていることがあります。補助金は不課税です。決算前に必ず確認してください。
- 入金日に収益計上している:設備系は額の確定通知の日、雇用系は事実があった事業年度が原則です。入金日基準で処理していると期ズレになります。
- 補助金相当分の仕入税額控除を自分で減らしてしまう:一般の法人・個人事業主に特定収入の調整は適用されません。控除できる税額を自ら放棄しないでください。
- 別表十三(一)を付け忘れる:圧縮記帳は損金経理と明細書の添付がセットです。仕訳だけ切って明細書が抜けている例は実際にあります。
- 圧縮記帳を「節税」と説明してしまう:課税の繰延べであり、減価償却費の減少により後年度に戻ってきます。資金繰りの説明として使うのが正確です。
よくある質問(FAQ)
- 補助金に消費税はかかりますか?
-
かかりません。国税庁タックスアンサーNo.6157は、国または地方公共団体からの補助金や助成金等を「一般的に対価を得て行う取引ではない」として不課税の具体例に挙げています。消費税法基本通達5-2-15も、特定の政策目的の実現を図るための給付金は資産の譲渡等の対価に該当しないと定めています。なお法人税・所得税では収益(収入)となる点に注意してください。
- 補助金で購入した機械の消費税は、仕入税額控除できますか?
-
一般の法人・個人事業主であれば、通常どおり全額控除できます。仕入税額控除は課税仕入れを行った事実に基づくもので、支払原資は問われません。特定収入に係る仕入控除税額の調整(消費税法第60条第4項)は、国税庁タックスアンサーNo.6495のとおり国・地方公共団体や公共・公益法人等が対象であり、一般の営利法人・個人事業主には適用されません。
- 交付決定と入金の期がずれる場合、いつ収益に計上しますか?
-
設備系の補助金は、原則として返還を要しないことが確定した日で判断します。法人税基本通達10-2-1の注書きは、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律第15条により額が確定し、その旨の通知を受けたものは返還不要が確定した国庫補助金等に該当するとしています。雇用調整助成金等については法人税基本通達2-1-42により、事実があった事業年度に金額を見積もって益金に算入します。
- 圧縮記帳をすれば税金は安くなりますか?
-
その年度の課税所得は圧縮されますが、資産の帳簿価額が下がるため翌期以降の減価償却費が減少します。したがって節税ではなく課税の繰延べと理解するのが正確です。設備投資直後の資金繰りを守る効果がある一方、長期的な税負担が消えるわけではありません。
- 個人事業主でも圧縮記帳のような処理はできますか?
-
所得税では「国庫補助金等の総収入金額不算入」(所得税法42条・43条)として同趣旨の取扱いがあります。固定資産の取得や改良に充てた部分が対象で、「国庫補助金等の総収入金額不算入に関する明細書」を添付した確定申告書の提出が条件です。この取扱いを受けた資産の取得費は補助金相当額を控除した残額となり、減価償却費もそれを基礎に計算します。
まとめ:補助金が入金されたら、この順番で処理する
固定資産の取得に充てるものか、経費を補てんするものかを確認します。圧縮記帳(総収入金額不算入)が使えるのは前者だけです。
設備系は額の確定通知の日、雇用系は事実があった事業年度。入金日ではありません。通知書は日付が分かる形で保管します。
雑収入(国庫補助金収入)の税区分を確認します。同時に、補助金で買った資産の課税仕入れは全額控除で問題ないことも確認します。
直接減額方式か積立金方式かを決めて損金経理し、法人は別表十三(一)、個人は総収入金額不算入の明細書を申告書に添付します。
期末までに資産の取得等が完了していない場合は、法人税法第43条の特別勘定の適用を検討します。決算前に納期を確認しておきます。
補助金は「取ること」がゴールになりがちですが、税務では入金後の処理で差がつきます。消費税は不課税、法人税・所得税では収益——この二段構えを押さえておけば、大きな取り違えは起きません。



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