※本記事にはアフィリエイトリンク(A8.net経由)が含まれます。
「今年は退職金をもらったから、ふるさと納税もたくさんできるはず」「保有株を売って利益が出たから寄附上限が上がったに違いない」。そう考えて限度額を大きく見積もり、あとから住民税決定通知書を見て青ざめる相談を、実務の現場でも毎年見かけます。
ぜいむたん


本記事は、①退職金が出た年、②株式・投資信託の譲渡益や配当があった年、③自宅や実家などの不動産を売却した年。この3つの「臨時所得がある年」に絞って、ふるさと納税の上限額がどう変わる(あるいは変わらない)のかを、国税庁タックスアンサー・総務省の一次情報で確認しながら解説します。基本のふるさと納税上限額の計算そのものは【2026年版】ふるさと納税の上限額計算と活用術|年収別シミュレーション・おすすめ返礼品・注意点で解説済みのため、本記事ではその続編として、通常の年収基準の早見表だけでは判断を誤りやすい「退職所得は住民税所得割に原則算入されない」「株式譲渡益は申告の有無で扱いが変わる」といった臨時所得特有の論点に絞って掘り下げます。
📌 この記事でわかること
全体の読了目安:約9分(自動計算ツールは記事の中ほどにあります)
- 退職金が出た年、ふるさと納税の上限額が「基本的に増えない」理由(住民税の分離課税)
- 株式・投資信託の譲渡益や配当は、確定申告する・しないで上限への影響が変わること
- 不動産(自宅・実家など)の売却益は、特別控除後の金額が上限を押し上げること
- 給与所得・退職所得・株式譲渡・不動産譲渡を分けて入力し、上限額の目安を試算できる無料の自動計算ツール
- 確定申告すると国民健康保険料や配偶者控除の判定に影響する場合があること・注意すべき令和6年度以降のルール変更
ふるさと納税の上限額は「住民税所得割額」で決まる
住民税から控除される特例分(特例控除額)には上限があり、住民税所得割額の20%で頭打ちになります。この頭打ちに対応する寄附額が、いわゆる「自己負担2,000円に収まる上限額」です。20%の上限がかかるのは寄附額そのものではなく特例控除額である点に注意してください。これは国税庁タックスアンサーNo.1155「ふるさと納税(寄附金控除)」と、総務省のふるさと納税ポータルの双方で明示されている計算ルールです。








住民税所得割額そのものは「(総合課税の所得 − 各種控除)× 10%」を基本に、分離課税の所得ごとに定められた税率を掛けた金額を足し合わせて計算されます。ポイントは、この所得割額に「算入される所得」と「算入されない所得」が制度上はっきり分かれていることです。次章から、臨時所得の種類ごとに見ていきます。
給与所得・事業所得など
総合課税。基本的にそのまま所得割の課税標準に算入される。
退職所得
現年分離課税。原則として通常の所得割には算入されない(詳細は次章)。
上場株式等の譲渡益・配当
申告不要を選べば算入されない。確定申告すれば算入される(住民税率5%)。
不動産の譲渡所得
分離課税だが確定申告が必須。特別控除後の金額が所得割に算入される(住民税率5%または9%)。
退職金が出た年、ふるさと納税の上限額は増えない
退職所得は「現年分離課税」で通常の所得割と切り離される
退職金だけを理由にふるさと納税の上限額を引き上げてはいけません。国税庁タックスアンサーNo.1420「退職所得」のとおり、退職所得は原則として他の所得と分離して税額を計算します。住民税でも同様に、退職所得は「現年分離課税」として退職手当等の支払い時に他の所得と切り離して課税され、翌年課税される通常の所得割の課税標準には含まれません。実際、川西市や西宮市など各自治体の個人住民税の解説でも「退職所得に係る市民税・県民税については、給与などの他の所得と分離して課税されます」と明記されています。








税理士法人での実務では、退職金を受け取った年にふるさと納税をいつも通りの年収基準で多めに設定し、翌年の住民税決定通知書で所得割額が想定より小さく、控除しきれない超過分が発生していた。という相談を何度も受けてきました。退職金は手取りが大きく増えるため「今年は寄附枠も広がる」と直感的に考えやすいのですが、制度上は切り離されているという点をまず押さえておく必要があります。
なお、退職所得の確定申告が必要になるケース(「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合など)自体は別の論点です。退職所得の申告要否については【2026年版】退職所得の確定申告が必要な3つのケース|公認会計士が図解で解説で詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。
株式・投資信託の譲渡益や配当がある年の上限額
申告不要を選ぶか、確定申告するかで結論が変わる
上場株式等の譲渡益は、国税庁タックスアンサーNo.1463「株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」のとおり、他の所得と区分して税額を計算する申告分離課税です。ここが退職所得と大きく違う点で、確定申告するかどうかによって、ふるさと納税の上限額への影響が変わります。






整理すると次のとおりです。
- 源泉徴収ありの特定口座+申告不要を選択:譲渡益・配当は住民税の所得割に算入されない=ふるさと納税の上限額を押し上げない
- 確定申告した場合:譲渡益・配当(申告分離課税分)は住民税率5%で所得割に算入される=上限額が増える方向に働く
- NISA口座内の譲渡益・配当:非課税のため、そもそも所得割の計算に登場しない
ただし、令和6年度(令和5年分)以降は所得税と住民税で異なる課税方式を選ぶことができなくなりました。東京都北区の解説にもあるとおり「令和6年度より上場株式等の配当所得等及び譲渡所得等について所得税と異なる課税方式を選択することが出来なくなりました」というルール変更があり、「所得税は申告不要、住民税だけ申告不要で節税上手に使い分ける」といった以前の手法は使えなくなっています。確定申告して所得税で還付を受けたい場合、その株式譲渡益・配当は自動的に住民税の所得割にも算入される、という前提で上限額を見積もる必要があります。
不動産(自宅・実家など)を売却した年の上限額
居住用財産の3,000万円特別控除を先に確認する
不動産の譲渡所得は、株式のような「申告不要」の選択肢がなく、原則として確定申告が必要な分離課税所得です。所有期間5年超なら長期譲渡所得(住民税率5%)、5年以下なら短期譲渡所得(住民税率9%)として、特別控除後の譲渡所得金額がそのまま住民税所得割の課税標準に算入されます。なお、居住用財産で所有期間が10年を超える場合は軽減税率の特例があり、課税長期譲渡所得のうち6,000万円以下の部分は住民税率が4%になります。3,000万円特別控除を差し引いてもなお譲渡益が残る自宅の売却では、この区分かどうかで所得割額が変わるため、下のツールでも選択できるようにしています。






※広告(アフィリエイトリンクを含みます)
確定申告書の作成、手入力の転記ミスが不安な方へ
「マネーフォワード クラウド確定申告」なら、銀行口座やクレジットカードの明細を自動取得し、株式譲渡損益や医療費控除・ふるさと納税の寄附金控除もまとめて反映して申告書を作成できます。初めての確定申告でも操作画面に沿って入力するだけで完了します。
マネーフォワード クラウド確定申告を見る →自分が住んでいた家屋・敷地を売却した場合は、国税庁タックスアンサーNo.3302「マイホームを売ったときの特例」の居住用財産の3,000万円特別控除の対象になることがあります。控除後の譲渡所得がゼロになれば、その年の住民税所得割への影響もゼロになるため、まず特例の適用可否を確認してから上限額を試算することが重要です。なお、この特例は親子・夫婦など特別な関係にある人への売却は対象外、前年・前々年に同特例等を使っていないことなど要件があるため、詳細な適用判定は税理士への確認をおすすめします。
不動産の譲渡所得と住宅ローン控除を同じ年に併用する場合は控除の重なりに注意が必要な論点もありますが、本記事では深入りせず、別記事に譲ります。
【自動計算ツール】臨時所得ありのふるさと納税上限額シミュレーター
ここまでの内容を踏まえ、給与所得・退職所得・株式譲渡益(申告する場合のみ算入)・不動産譲渡所得(特別控除後)を分けて入力し、「住民税所得割額に算入されるもの/されないもの」を明示したうえで、ふるさと納税の上限額の目安を試算できるツールを用意しました。退職金の欄に金額を入れても上限額が変わらないことを、実際に数字で確認してみてください。
シミュレーターの使い方
給与収入と家族構成を入力する
額面の給与収入、配偶者控除の対象配偶者の有無、扶養親族の人数を入力します。
退職金・勤続年数を入力する
退職金がない場合は0のままで構いません。退職所得は自動的に上限計算から除外されます。
株式譲渡益・不動産譲渡所得と申告方針を入力する
株式等は確定申告するかどうかを選択し、不動産は特別控除後の金額と所有期間区分を入力します。
「上限額を計算する」を押して結果を確認する
所得割への算入状況の内訳と、寄附の上限額の目安が表示されます。
臨時所得ありのふるさと納税 上限額シミュレーター
※本ツールは給与所得者を前提にした簡易試算です。社会保険料控除は給与収入の15%、基礎控除・扶養控除は住民税の一般的な控除額で概算しており、個人の控除状況(生命保険料控除・医療費控除・iDeCo等)は反映していません。住宅ローン控除がある場合は上限額がさらに変動します。所得税の税率は課税所得金額から速算表で概算しており、所得税の課税所得は基礎控除48万円・配偶者控除38万円ベースで計算されるため、税率の境目付近では実際の限界税率と一致しない場合があります。実際の上限額は住民税決定通知書・確定申告の内容に基づき税理士・自治体窓口でご確認ください。
確定申告するかどうかで変わる、その他の注意点
株式譲渡益や配当を確定申告してふるさと納税の上限額を増やす場合、上限額だけを見て判断するのは危険です。所得を確定申告に反映させると、住民税の所得割だけでなく、それ以外の判定にも影響が及ぶことがあります。






- 国民健康保険料:加入者の場合、確定申告で合計所得金額が増えると保険料の算定基礎が上がることがあります
- 配偶者控除・扶養控除の判定:配偶者や扶養親族が株式譲渡益等を確定申告すると、合計所得金額が扶養の判定基準を超えてしまう場合があります
- 令和6年度以降のルール変更:前述のとおり、上場株式等の配当所得等・譲渡所得等は所得税と住民税で異なる課税方式を選べなくなっているため、「所得税だけ申告して住民税は申告不要」という細かい使い分けはできません
会計ソフトで確定申告書を作成する場合も、株式等の譲渡損益や配当の入力箇所を誤ると、意図せず合計所得金額が変わってしまうことがあります。freeeやマネーフォワードなどの会計ソフトは特定口座年間取引報告書のデータ連携に対応しているものもあるため、申告書作成時に反映漏れがないか確認しておくと安心です。
退職金・譲渡所得がある年によくある失敗
上限額を見誤りやすい3つのパターン
臨時所得がある年は、いつもの年収基準の感覚で寄附額を決めると失敗しやすくなります。実務でよく見かける失敗パターンを3つ挙げます。






- 失敗①:退職金込みの「手取り増」の感覚でふるさと納税の枠を増やしてしまう――退職所得は所得割に算入されないため、通常年と同じ給与所得だけを基準に上限額を見積もる必要があります。
- 失敗②:株式譲渡益を確定申告するかどうかを決める前に寄附してしまう――申告方式によって上限額が変わるため、寄附前に申告するかどうかの方針を固めておくべきです。年末ギリギリに申告方式を変更すると上限額の見積もりがずれます。
- 失敗③:不動産の特別控除の適用可否を確認せずに、譲渡益全額を上限計算に入れてしまう――居住用財産の3,000万円特別控除が使えるかどうかで、住民税所得割への影響は大きく変わります。控除適用後の金額で試算しましょう。
いずれも共通するのは、「所得割額の20%」という上限の根拠になる数字を、正しい所得の範囲で計算できているかという点です。臨時所得がある年は、寄附を実行する前に一度、上記のシミュレーターや税理士への確認で試算しておくことをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
- 退職金をもらった年は、ふるさと納税をしない方がいいのでしょうか?
- 退職金の有無だけで判断する必要はありません。退職所得は住民税の所得割に算入されないため上限額は増えませんが、その年の給与所得等が通常どおりあれば、通常の年と同じ考え方で上限額まで寄附することは可能です。上限額を「退職金込みで多めに」見積もらないことが重要です。
- 株式の売却益を確定申告すると、ふるさと納税の上限額は必ず増えますか?
- 確定申告して譲渡益・配当が住民税所得割に算入されれば、上限額は増える方向に働きます。ただし合計所得金額が増えることで、国民健康保険料や配偶者控除の判定など他の制度に影響する場合があるため、上限額の増加分だけで判断せず総合的に検討することをおすすめします。
- 実家を売却して3,000万円特別控除を使った場合、ふるさと納税の上限額への影響はありますか?
- 特別控除によって譲渡所得がゼロになれば、住民税所得割への影響もゼロになり、上限額は通常の給与所得等のみで計算した金額と変わりません。控除後に譲渡所得が残る場合は、その金額(長期なら住民税率5%、短期なら9%)が所得割に算入され、上限額を押し上げます。
- NISA口座内で得た利益は、ふるさと納税の上限額の計算に影響しますか?
- NISA口座内で得た譲渡益・配当は非課税のため、住民税の所得割にも所得税にも算入されません。したがってふるさと納税の上限額の計算には影響しません。
- ワンストップ特例を使う場合と確定申告する場合で、上限額の考え方は変わりますか?
- 上限額そのもの(住民税所得割額の20%)の考え方自体は変わりません。ただし、株式譲渡益等をもともと確定申告する必要がある年は、ワンストップ特例は利用できず確定申告でふるさと納税の寄附金控除も申告することになります。ワンストップ特例と確定申告の使い分けはふるさと納税の確定申告のやり方【ワンストップ特例との違いも解説】2026年版で詳しく解説しています。
まとめ:臨時所得がある年こそ、上限額は試算してから寄附する
退職金・株式譲渡益・不動産売却益は、それぞれ住民税所得割への算入のされ方がまったく異なります。まとめると次の手順で確認するのが安全です。
今年発生した臨時所得を種類ごとに分ける
退職金・株式等の譲渡益や配当・不動産の譲渡益をそれぞれ金額で把握します。
退職所得は上限計算から除外する
現年分離課税のため、通常は住民税所得割に算入されません。除外して考えます。
株式譲渡益・配当は申告方針を先に決める
申告不要のままか、確定申告するかで所得割への算入有無が変わります。国保料や配偶者控除への影響も合わせて確認します。
不動産譲渡所得は特別控除適用後の金額で見る
居住用財産の3,000万円特別控除等が使えるか確認し、控除後の金額を所得割に算入して試算します。
本記事のシミュレーターで上限額の目安を試算し、余裕を持った金額で寄附する
上限ギリギリまで寄附すると、控除しきれない超過分が自己負担になるため、目安額の9割程度に抑えるのが安全です。



あわせて読みたい
イザークコンサルティング
記事執筆代行・Web/LP制作
公認会計士試験合格者が、専門性とSEOを両立した記事制作と、WordPress×SWELLのWeb/LP制作までワンストップで対応します。
▶ 記事執筆代行を見る
▶ Web・LP制作を見る


コメント