📌 この記事でわかること
- 金地金を売った利益は「総合課税の譲渡所得」で、年間50万円までは課税されないこと
- 保有5年以内(短期)と5年超(長期)で計算が変わり、50万円の特別控除は短期から先に差し引くこと
- よく見かける「(利益−50万円)×1/2」の式が合わないケースと、そのときいくらずれるか
- 保有期間ごとに入力すると、課税される金額と増える税額まで出る自動計算ツール
- 取得費が分からないときの考え方(土地建物の「5%」の規定は金には使えません)
- 200万円を超える売却で税務署に情報が届く仕組みと、相続でもらった金を売るときの取得費
対象読者:金地金・純金積立・金貨を売った方、売却を検討している方/読了の目安:約9分
金の価格が上がったので売った、あるいは売ろうか迷っている。そのときに気になるのが税金がいくらかかるのかです。
結論から言うと、金地金を売った利益は総合課税の譲渡所得になり、年間50万円の特別控除があります。利益が50万円までなら税金はかかりません。保有していた期間が5年を超えていれば、さらに課税対象が2分の1になります。
ただし、よく紹介されている「(利益−50万円)×1/2」という式は、短期と長期の両方を売った年には合いません。この記事では、国税庁の計算ルールどおりに順序立てて計算する方法と、そのとおりに動く計算ツールを用意しました。
ぜいむたん


金を売って利益が出たら「譲渡所得」になる
金地金は譲渡所得の対象となる資産です。国税庁も、譲渡所得の対象となる資産として「土地、借地権、建物、株式等、金地金、宝石、書画、骨とう」などを挙げています(国税庁 No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法)。
株式や土地建物の譲渡は他の所得と分けて課税されますが、金地金は総合課税です。給与や事業の所得と合算して、そこに所得税の税率がかかります。所得が多い人ほど、同じ利益でも税額は大きくなります。
いくらから税金がかかる?——50万円までは課税されない
譲渡所得には年間50万円の特別控除があります。売った金額から買ったときの金額と売却にかかった費用を引いた利益が50万円までなら、課税される金額はゼロです。
200万円で売っても、150万円で買ったものなら利益は50万円です。この場合は課税されません。逆に60万円で売っても、もらいものや大昔の購入で取得費が分からないと、利益が大きく出てしまうことがあります。判定するのは売却額ではなく利益です。
会社員は20万円以下なら確定申告が不要になることがある
給与を1か所から受けていて年末調整が済んでいる会社員で、その年の給与の金額が2,000万円以下の場合、給与と退職金以外の所得の合計が20万円以下であれば所得税の確定申告は要りません(所得税法121条1項1号)。
ただし、これは所得税の話だけです。住民税にはこの取扱いがないため、原則として市区町村への申告が必要になります。「20万円以下だから何もしなくてよい」と読むと、住民税の申告漏れになります。また副業やほかの雑所得がある方は、それらと合計して20万円を判定します。






【自動計算】金の売却でかかる税金
保有期間ごとに分けて入力してください。特別控除を短期から先に差し引き、長期を2分の1にしたうえで、増える税額の目安まで計算します。
金の売却にかかる税金 自動計算
その年に売った金地金等を、保有5年以内(短期)と5年超(長期)に分けて入力してください。50万円の特別控除を短期から先に差し引き、長期を2分の1にしたうえで、増える税額まで計算します。
保有5年以内に売ったもの(短期)
保有5年を超えてから売ったもの(長期)
税額の目安を出す場合(任意)
※ 同じ年にゴルフ会員権や書画骨とうなど他の総合課税の譲渡資産も売っている場合は、それらも合算して50万円の特別控除を計算します。このツールは金地金等だけを入れた場合の金額です。
※ 住民税は一律10%の概算です(均等割と自治体ごとの差は含みません)。所得税は速算表による概算で、他の所得控除の増減は反映していません。
※ 営利を目的として継続的に売買している場合は譲渡所得ではなく事業所得または雑所得になり、この計算は使えません。
計算のしかたを3ステップで
国税庁が示している計算式は次のとおりです(国税庁 No.3152 譲渡所得の計算のしかた(総合課税))。
譲渡所得の金額 = 譲渡価額 −(取得費 + 譲渡費用)− 50万円
短期譲渡所得の金額は全額が、長期譲渡所得の金額はその2分の1が総合課税の対象になります。
①短期と長期に分けて譲渡益を出す
所有期間が5年以内なら短期、5年を超えていれば長期です。5年ちょうどは「超えていない」ので短期になります。売った金額から、買ったときの金額(取得費)と売るためにかかった費用(譲渡費用)を引いて、それぞれの譲渡益を出します。
| 区分 | 所有期間 | 総合課税の対象 |
|---|---|---|
| 短期譲渡所得 | 5年以内 | 全額 |
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 2分の1 |
②50万円の特別控除は「短期から先に」引く
ここが間違えやすいところです。国税庁は次のように書いています。
譲渡所得の特別控除の額は、その年の長期の譲渡益と短期の譲渡益の合計額に対して50万円です。その年に短期と長期の譲渡益があるときは、先に短期の譲渡益から特別控除の50万円を差し引きます。
なお、譲渡益の合計額が50万円以下のときは、その金額までしか控除できません。 出典:国税庁 No.3152 譲渡所得の計算のしかた(総合課税)
50万円はその年の全体で1つです。何回かに分けて売っても、50万円が売却の回数だけ使えるわけではありません。そして短期と長期の両方があるときは、2分の1にならない短期のほうから先に控除を使います。
③長期は2分の1にしてから他の所得と合算する
控除後の短期譲渡所得はそのまま、長期譲渡所得は2分の1にして、給与などほかの所得と合算します。合算した課税所得に所得税の税率がかかり、これに復興特別所得税2.1%と住民税が加わります。






よく見かける計算式が合わないケース
金の売却を扱う記事の多くは、「(利益 − 50万円)× 1/2」という式を載せています。長期の売却しかない年ならこれで合います。しかし短期と長期の両方を売った年には合いません。
短期の譲渡益100万円、長期の譲渡益30万円というケースで比べます。
| よく見かける単純な式 | 国税庁のルールどおり | |
|---|---|---|
| 考え方 | (100万+30万−50万)×1/2 | 50万円を短期から先に控除 |
| 短期譲渡所得 | — | 100万−50万=50万円(全額が対象) |
| 長期譲渡所得 | — | 30万−0=30万円 →×1/2=15万円 |
| 総所得に算入される額 | 40万円 | 65万円 |
25万円ちがいます。単純な式は「50万円を引いた残り全部を半分にする」計算になっており、半分にならないはずの短期まで半分にしてしまっています。課税所得を少なく見積もることになるので、そのまま申告すると過少申告です。上の計算ツールはこの順序どおりに計算しています。
逆に、短期の譲渡益30万円・長期の譲渡益100万円というケースでは、50万円のうち30万円を短期から、残り20万円を長期から控除するため、結果は40万円で単純な式と一致します。短期の割合が大きいほど差が開きます。
取得費が分からないときはどうするか
何十年も前に買った金や、家族から受け継いだ金だと、いくらで買ったのか分からないことがあります。ここで注意したいのが「売った金額の5%を取得費にできる」という話です。
国税庁が概算取得費として5%を示しているのは土地や建物を売ったときの説明で、例示も「土地建物を3,000万円で売った場合」となっています。金地金の譲渡所得について、これと同じ規定があるわけではありません。5%を当然に使えるかのように書いている記事を見かけますが、根拠を確かめずに使うのは避けてください。
実務では、まず取得費を示す資料を探すのが原則です。次のような順で当たってみてください。
地金商の計算書、純金積立の年間取引報告書、通帳の引落し記録など。金額が特定できる資料が一番強い証拠になります。
純金積立や地金商の口座を通じて買っていれば、履歴が残っていることがあります。まず問い合わせてみてください。
後述のとおり、亡くなった方や贈与した方が買ったときの金額と時期をそのまま引き継ぎます。自分がもらった時点の価格ではありません。
資料が残っていない場合の取扱いは個別性が高い部分です。自己判断で決めず、事前に相談してから申告することをおすすめします。






200万円を超えると税務署に情報が届く
金地金等の売買を業として行う者は、譲渡の対価を支払ったときに「金地金等の譲渡の対価の支払調書」を税務署に提出することとされています(国税庁 F1-42 金地金等の譲渡の対価の支払調書、所得税法225条1項14号、所得税法施行規則90条の6)。提出期限は支払の確定した日の翌月末日です。
この支払調書には提出を省略できる限度額が定められており、国税庁の合計表の記載要領にも「支払調書の提出省略限度額以下のため支払調書の提出を省略するもの」という記載があります。実務上、この限度額は同一人への1回の支払が200万円とされており、200万円を超える売却が税務署に把握される仕組みです。
誤解しないでほしいのは、200万円以下なら申告しなくてよいという意味ではないことです。支払調書が出ないだけで、利益が50万円を超えていれば申告義務はあります。分割して売れば調書を避けられるという考え方も、申告義務そのものを消すものではありません。






相続でもらった金を売るとき
相続や贈与で取得した資産を売ったときは、その資産を引き続き所有していたものとみなすと定められています(所得税法60条1項1号。限定承認の場合を除きます)。つまり取得費も取得の時期も、亡くなった方や贈与した方から引き継ぎます。
これは2つの意味で効いてきます。
| 引き継ぐことの意味 | |
|---|---|
| 取得費 | 相続したときの評価額ではなく、亡くなった方が買ったときの金額が取得費になります。昔に安く買ったものだと、利益が大きく出ます |
| 取得の時期 | 相続した日からではなく、亡くなった方が買った日から数えて5年超かどうかを判定します。相続直後に売っても長期になることがあります |
取得時期を引き継げるのは有利に働きます。一方で取得費が古い価格のままなので、想定より税額が大きくなることがあります。相続財産に金地金が含まれていた場合は、売る前に金額の見通しを立てておくと安全です。
譲渡所得にならないケース
ここまでは個人が資産として持っていた金を売った場合の話です。営利を目的として継続的に売買している場合は、譲渡所得ではなく事業所得または雑所得になります。
この場合は50万円の特別控除も、長期の2分の1もありません。利益がそのまま課税の対象です。年に何度も売買を繰り返している、価格差で稼ぐことを目的にしている、といった実態があるときは、区分そのものを確かめる必要があります。上の計算ツールは譲渡所得を前提にしているため、この区分に当たる方は使えません。
よくある質問(FAQ)
- 金はいくらから税金がかかりますか。
- 利益が年間50万円を超えたときです。売った金額ではなく、売った金額から買ったときの金額と売却にかかった費用を引いた利益で判定します。この50万円はその年の全体で1つで、何回かに分けて売っても回数分は使えません。同じ年にゴルフ会員権や書画骨とうなど他の総合課税の譲渡資産も売っている場合は、それらの譲渡益と合計して50万円を判定します。
- 保有5年ちょうどで売った場合は長期ですか、短期ですか。
- 短期です。長期になるのは所有期間が5年を「超えている」場合で、5年以内は短期になります(国税庁 No.3152)。5年目のうちに売るか、5年を過ぎてから売るかで課税される金額が倍ちがうことになるため、売却時期を選べる場合は取得日を確認してからにしてください。
- 短期と長期を同じ年に売りました。計算はどうなりますか。
- それぞれの譲渡益を出したうえで、50万円の特別控除を先に短期の譲渡益から差し引きます。控除しきれない分を長期の譲渡益から差し引き、残った長期譲渡所得を2分の1にして、短期譲渡所得と合計します。よく見かける「(利益の合計−50万円)×1/2」では、短期まで半分にしてしまうため課税所得を少なく計算することになります。
- 取得費が分からないときは売却額の5%を使ってよいですか。
- その5%は土地や建物を売ったときの概算取得費の説明で、金地金の譲渡所得に同じ規定があるわけではありません。まず購入時の計算書や業者の取引履歴を探してください。相続や贈与でもらったものは、前の所有者が買ったときの金額を引き継ぎます。それでも分からない場合は、自己判断で決めずに税務署または税理士に相談してから申告することをおすすめします。
- 200万円以下で売れば税務署にわかりませんか。
- 支払調書が提出されないだけで、申告義務がなくなるわけではありません。金地金等の譲渡の対価の支払調書は所得税法225条1項14号にもとづく制度で、提出省略の限度額を下回れば提出されません。ただし利益が50万円を超えていれば申告は必要です。この制度自体、金地金の譲渡所得の申告漏れが多く把握されたことを受けて設けられたものです。
- 純金積立やゴールドETFも同じ扱いですか。
- 純金積立で買った地金を現物で受け取って売却した場合は、金地金の譲渡として同じ扱いになります。一方、金価格に連動するETFや投資信託は上場株式等として扱われ、申告分離課税になるため計算方法が異なります。同じ「金」でも、何を売ったのかで課税の仕組みが変わりますので、取引報告書で商品の種類を確認してください。
まとめ:順序を守れば計算は難しくない
金の売却の税金でつまずくのは、計算式そのものより控除を引く順番です。次の順で進めてください。
5年ちょうどは短期です。相続や贈与でもらったものは、前の所有者が買った日から数えます。
売った金額 −(取得費 + 譲渡費用)。取得費は購入時の資料で確かめます。
その年で1つの控除です。譲渡益の合計が50万円以下なら、その金額までしか引けません。
この合計額が給与などほかの所得に足されます。短期は半分にしません。
給与以外の所得が20万円以下で所得税の申告が不要な場合でも、住民税は原則として市区町村への申告が必要です。



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