Xero(ジーロ)は、ニュージーランド発の世界的なクラウド会計ソフトです。外資系企業の日本子会社や、海外本社と会計をそろえたい会社を中心に日本でも使われていますが、実際に日本の会計・税務で使おうとすると「消費税やインボイスにそのまま対応していない」という壁にぶつかります。本記事では、Xeroがどんな会計ソフトかをわかりやすく整理したうえで、日本の消費税・インボイス対応の実態、マネーフォワードなど日本の会計ソフトとの違い、そして移行を検討する場合の進め方までを、外資系企業のXero会計データを日本の申告向けに整備・移行支援してきた実務経験をもとに、公認会計士試験合格者の視点で解説します。
📌 この記事でわかること
- Xero(ジーロ)とはどんな会計ソフトか──料金プラン・特徴・日本で使われる理由
- Xeroが日本の消費税・インボイスに”そのまま”は対応していない理由(税区分の手動設計・課税売上割合の落とし穴)
- Xeroとマネーフォワードの違いがひと目でわかる比較対応表
- Xeroから日本の会計ソフトへ移行するときのチェックリスト(エクスポート〜開始残高〜仕訳インポート)
- 消費税の課税方式や移行時期など、税理士に相談すべきポイント
ぜいむたん


Xero(ジーロ)とは?ニュージーランド発の世界的クラウド会計ソフト
Xero(ジーロ)は、2006年にニュージーランドで創業した Xero Limited が提供するクラウド会計ソフトです。オーストラリア・イギリス・ニュージーランドを中心に世界中の中小企業で使われており、銀行口座やクレジットカードの明細を自動で取り込み、仕訳・請求書発行・レポート作成まで行えるのが特徴です。すべてブラウザ上で動き、英語のUIで提供されます。
料金プランは、小規模向けの Early、中小向けの Growing、多通貨などフル機能の Established の3段階が基本です(価格は米ドル建てで、提供国により異なります。日本では販売パートナー経由での導入が中心です)。世界的には非常に評価の高いソフトですが、「日本の税制向けに作られたソフトではない」という点が、日本で使ううえでの最大のポイントになります。
なぜ日本でXeroを使う会社があるのか






日本国内でXeroが使われるのは、多くの場合「海外とつながっている会社」です。具体的には次のようなケースです。
- 外資系企業の日本子会社:海外本社が指定する会計基盤にそろえるため、日本法人もXeroを使う
- 海外との取引・多通貨が多い会社:輸出入・インバウンド関連など、外貨建て取引の管理にXeroの多通貨機能が便利
- 海外で会社を設立した日本人起業家:現地の会計をXeroで完結させている
いずれも「海外基準では合理的」な選択です。問題は、その会社が日本で法人税・消費税の申告をする段階になって初めて表面化します。
【核心】Xeroは日本の消費税・インボイスに”そのまま”は対応していない






ここが本記事の核心です。マネーフォワードや弥生といった日本の会計ソフトは、日本の消費税区分(税区分)が最初からプリセットされています。一方Xeroは、税率(Tax Rate)を利用者が手動で作成して各勘定科目に割り当てる設計です。外資系企業のXeroデータを日本の消費税申告向けに整備した実務経験から言うと、日本の会社がXeroで正しく消費税を集計するには、少なくとも次のような税区分を自分で用意する必要があります。
| 日本の消費税区分 | Xeroでの扱い(手動設定が必要) |
|---|---|
| 課税売上・課税仕入(10%/8%) | 10%・8%の税率を作成し、各科目のデフォルト税区分に設定 |
| インボイス経過措置(80%控除) | 「経過措置80%」用の税率を別途作成(適格請求書がない仕入用) |
| 非課税売上 | 「非課税売上」専用の税率が要る(課税売上割合の分母に効く) |
| 輸出免税売上 | 「輸出免税」専用の税率が要る(課税売上割合の分子に効く) |
| 不課税(給与・海外仕入など) | No Tax(不課税)を割り当て |
特に見落とされやすいのが課税売上割合です。Xeroの初期設定では「Tax Exempt(免税・非課税)」のような区分が非課税売上にも非課税仕入にもまとめて使われがちで、そのままだと課税売上割合の分子(課税売上+輸出免税)と分母(+非課税売上)を正しく分けられません。輸出免税売上を「輸出免税」専用区分に、非課税売上を「非課税売上」専用区分に切り分けておかないと、消費税の納税額計算がずれてしまいます。この設計は消費税の仕組みと計算方法を理解したうえで組む必要があり、Xero任せにはできません。
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- レポートがすべて英語:Balance Sheet(貸借対照表)、Profit and Loss(損益計算書)、Trial Balance(試算表)、General Ledger Detail(総勘定元帳)など。日本の勘定科目・決算書様式とは異なる
- 消費税申告書の形にならない:XeroのSales Tax Reportは海外のGST申告を想定した様式で、日本の消費税申告書はそのまま出力できない。日本の申告書は別途作成が必要
- 法人税申告は別:Xeroには日本の法人税・地方税の申告機能がなく、別のソフトや税理士側で対応する
- エクスポートにクセ:総勘定元帳のCSVは行数が多いと出力に失敗することがある。期首残高はレポートによっては含まれず、試算表や売掛・買掛のエイジングで補う必要がある
実務では、Xeroから英語データをエクスポートし、日本の消費税区分に対応づけて集計し直す——という工程が毎期発生します。監査法人・税理士法人での実務経験から見ても、この「英語データを日本の申告に翻訳する」手間が、Xeroを日本で使い続ける際の一番のコストです。
Xero と マネーフォワードの違い(比較対応表)






| 比較項目 | Xero | マネーフォワード クラウド会計 |
|---|---|---|
| 言語・UI | 英語 | 日本語 |
| 消費税区分 | 手動で作成・設定が必要 | 日本の区分を標準プリセット |
| インボイス/経過措置 | 手動対応(専用税率を自作) | 標準対応 |
| 電子帳簿保存法 | 日本の電帳法要件は想定外 | 対応 |
| 消費税申告書の出力 | 日本様式は不可(別途作成) | 消費税申告に対応 |
| 銀行・カード連携 | 海外金融機関に強い | 日本の銀行・カードを幅広く網羅 |
| 多通貨 | 強い(上位プラン) | 機能は限定的 |
| 日本語サポート | 限定的(パートナー経由) | 日本語サポートあり |
まとめると、海外連結や多通貨が主役ならXero、日本の申告と日々の記帳が主役なら日本の会計ソフトという住み分けになります。日本での申告実務が中心の会社は、日本仕様が標準で入っているソフトのほうが、毎期の手間とミスのリスクを大きく減らせます。
Xeroから日本の会計ソフトへ移行するときのチェックリスト






マネーフォワードは他社ソフトからの移行機能を持っていますが、Xeroは直接の移行対象ソフトには含まれていません(MF公式サポート)。そのため、勘定科目・開始残高・仕訳をCSVで整えて手動インポートするのが基本です。手順は次の通りです。
| STEP | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 移行時期を決める | 新会計年度の期首が理想。期中移行は残高と当期取引の二重管理が発生 |
| 2 | Xeroからエクスポート | 勘定科目一覧・試算表・総勘定元帳・仕訳・取引先別残高(売掛/買掛エイジング=期首基準) |
| 3 | 勘定科目をマッピング | Xeroの英語科目 → 日本の勘定科目へ対応表を作る |
| 4 | 消費税区分をマッピング | 課税10/8・経過措置80%・非課税・不課税・輸出免税を日本の税区分に対応づけ |
| 5 | 開始残高をインポート | MFの「各種設定>開始残高」へCSVで登録(期首残高) |
| 6 | 仕訳データをインポート | MFのサンプル書式に整えて「仕訳帳」からインポート(Xeroは手動CSV) |
| 7 | マスタ・連携を再設定 | 取引先・銀行/カード連携・請求書・インボイス登録番号を設定し直す |
| 8 | 試算表で検算 | 移行後のTBがXeroの数値と一致するか突合する |
実際に外資系企業のXeroデータを移行支援した経験からいうと、いちばん時間がかかるのは STEP3・4 の勘定科目と消費税区分のマッピングです。ここを丁寧に作っておくと、以降の記帳と申告が一気に楽になります。
判断に迷ったら税理士に相談を






Xeroを使っている会社は、外貨取引・輸出免税・非課税売上などが絡むことが多く、消費税の扱いは個社ごとに判断が分かれます。特に次の点は、移行前に税理士へ相談しておくと安心です。
- 消費税の課税方式(本則課税か簡易課税か)と課税売上割合の計算
- 輸出免税・非課税売上の区分(課税売上割合の分子・分母の切り分け)
- インボイス経過措置の処理・適格請求書の管理方法
- 期中で移行してよいか、期首まで待つべきか
- 外貨建て取引の換算方法
顧問税理士がいない場合や、外資系・多通貨に慣れた税理士を探したい場合は、複数の税理士を無料で比較できるサービスを使うと、条件に合う相談先を効率よく見つけられます。
よくある質問(FAQ)
- Xeroは日本語に対応していますか?
- XeroのUIやレポートは基本的に英語です。日本語での利用や日本の勘定科目・決算書様式を前提とするなら、マネーフォワードなど日本の会計ソフトのほうが向いています。
- Xeroで日本の消費税申告はできますか?
- Xero単体で日本の消費税申告書をそのまま出力することはできません。税区分を手動で設計して集計し、日本の申告書は別途作成する必要があります。課税売上割合の分子・分母を正しく分ける税区分の設計も必要です。
- Xeroはインボイス制度・経過措置に対応していますか?
- 日本のインボイス制度や仕入税額控除の経過措置(80%控除など)は標準機能ではないため、専用の税率を自分で作成して割り当てる必要があります。日本の会計ソフトは標準で対応しています。
- Xeroからマネーフォワードへは簡単に移行できますか?
- いいえ。Xeroはマネーフォワードの直接移行対象ソフトに含まれていないため、勘定科目・開始残高・仕訳をCSVで整えて手動インポートするのが基本です。移行時期は新会計年度の期首がおすすめです。
まとめ
NZ発のクラウド会計ソフト。英語UI・多通貨に強く、海外連結や外資系子会社で使われる。
課税/非課税/不課税/輸出免税/経過措置80%の税区分を自分で作る必要がある。課税売上割合の分子・分母の切り分けが要注意。
日本語・消費税区分・インボイス・電帳法・国内銀行連携が標準。毎期の手間とミスを減らせる。
エクスポート→勘定科目/税区分マッピング→開始残高→仕訳インポート。消費税の判断は税理士に相談。



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