車を買ったときの請求書に載っている「リサイクル料金」は、全額が費用になるわけでも、全額が車両の取得価額になるわけでもありません。5つある料金のうち4つは預託金として資産計上し、残る1つだけがその場で費用になります。
さらにやっかいなのが売却時です。国税庁は質疑応答事例で、リサイクル預託金相当額を「金銭債権の譲渡として非課税」と明示しています。同じ請求書に並ぶ未経過自動車税が課税なのに、こちらは非課税です。しかも非課税だからと安心していると、課税売上割合の計算で分母の入れ方を間違えます。本記事は、取得・売却・廃車・買替の4場面の仕訳と、この課税売上割合の扱いまでを条文で確認しながら整理します。
📌 この記事でわかること
- リサイクル料金5つのうち、預託金として資産計上するのはどれで、費用になるのはどれか
- 取得・売却・廃車・買替の4場面の仕訳早見表
- 売却時の預託金相当額が非課税になる根拠(国税庁の質疑応答事例の原文)
- 同じ請求書の未経過自動車税・自賠責保険料が課税である理由との違い
- 課税売上割合への影響を試算するツール(分母に入るのは譲渡対価の5%だけ)
- リサイクル預託金を車両の取得価額に含めてはいけない理由
リサイクル預託金とは|5つの料金のうち4つが預託金
リサイクル料金は、使用済自動車の再資源化等に関する法律(自動車リサイクル法)第73条にもとづいて資金管理法人に預けるお金です。条文は預託の対象を2つに分けて規定しています。
ぜいむたん


条文が定める預託金は「再資源化等預託金」と「情報管理預託金」
第73条第1項がシュレッダーダスト・エアバッグ類(指定回収物品)・フロン類(特定エアコンディショナー)の再資源化等料金を「再資源化等預託金」として、同条第4項が情報管理料金を「情報管理預託金」として預託するよう定め、両者を合わせて「再資源化預託金等」と呼んでいます。一方、同条第6項は資金管理法人が「再資源化預託金等の管理に関し」料金を請求できると定めており、こちらは預託ではありません。
| 料金の種類 | おおよその金額 | 会計処理 | 預託時の消費税 |
|---|---|---|---|
| シュレッダーダスト料金 | 4千円〜2万円 | 預託金(資産) | 課税対象外 |
| エアバッグ類料金 | 2千円〜6千円 | 預託金(資産) | 課税対象外 |
| フロン類料金 | 2千円 | 預託金(資産) | 課税対象外 |
| 情報管理料金 | 230円 | 預託金(資産) | 課税対象外 |
| 資金管理料金 | 380円(廃車時預託は480円) | 支払時に費用(支払手数料) | 課税仕入れ |
取得時の仕訳|車両の取得価額には入れない
新車購入時に払ったリサイクル料金のうち、預託金部分は車両運搬具ではなく別の資産として計上します。勘定科目は「リサイクル預託金」を新設するのが最も分かりやすく、科目を増やしたくない場合は投資その他の資産の「長期前払費用」で処理します。






新車を300万円で購入した場合の仕訳
車両本体300万円(税抜)、リサイクル料金12,000円(うち資金管理料金380円)、支払総額を現金で払ったケースです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 税区分 |
|---|---|---|---|---|
| 車両運搬具 | 3,000,000 | 現金預金 | 3,312,000 | 課税仕入10% |
| 仮払消費税等 | 300,035 | — | ||
| リサイクル預託金 | 11,620 | 課税対象外 | ||
| 支払手数料(資金管理料金) | 345 | 課税仕入10% |
リサイクル預託金は償却しない
「長期前払費用」で処理していると償却したくなりますが、この預託金は時の経過で価値が減るものではありません。廃車になるまで貸借対照表に残り続け、廃車のタイミングで一括して費用になります。会計事務所で決算を見ていると、長期前払費用の科目に紛れて毎期均等償却されているケースにときどき当たります。科目を分けておくとこの事故を防げます。
売却時の仕訳|預託金相当額は金銭債権の譲渡で非課税
中古車として売るとき、買主からリサイクル預託金相当額を受け取ります。この受取額の消費税の扱いについて、国税庁の質疑応答事例「中古車販売における未経過自動車税等の取扱い」がはっきり答えています。






同じ明細でも税区分が分かれる
| 明細の項目 | 消費税の扱い | 理由(国税庁の回答要旨) |
|---|---|---|
| 車両本体価格 | 課税 | 資産の譲渡 |
| 未経過分の自動車税相当額 | 課税 | 未経過期間内に継続して乗用できる中古車の購入代金の一部(基通10-1-6) |
| 未経過分の自賠責保険料相当額 | 課税 | 自動車税相当額と同様 |
| リサイクル預託金相当額 | 非課税 | 売主から買主への預託金の譲渡=金銭債権の譲渡 |
売却時の仕訳例
帳簿価額80万円の車両を、車両代100万円(税抜)+リサイクル預託金相当額11,620円で売却した場合です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 税区分 |
|---|---|---|---|---|
| 現金預金 | 1,111,620 | 車両運搬具 | 800,000 | 譲渡対価1,000,000円(簿価800,000+売却益200,000)が課税売上10% |
| 仮受消費税等 | 100,000 | |||
| 固定資産売却益 | 200,000 | |||
| リサイクル預託金 | 11,620 | 非課税売上 |
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税区分の登録ミスは、決算で気づいても戻せません
非課税売上・課税対象外の取り違えは、課税売上割合を通じて納税額に直結します。マネーフォワード クラウド会計なら取引ごとに税区分を保持したまま集計でき、期中に区分別の残高を確認できます。
マネーフォワード クラウド会計を見る →【自動計算】課税売上割合への影響|分母に入るのは5%だけ
非課税売上が増えると課税売上割合は下がります。ただし金銭債権の譲渡には特例があり、分母に入れるのは譲渡対価の5%だけです。全額を入れてしまうと割合が大きく下がり、仕入税額控除の方式判定まで狂います。






根拠は消費税法施行令48条5項
消費税法施行令第48条第5項は、金銭債権の譲渡をした場合、課税売上割合の分母に入れる「資産の譲渡等の対価の額」は「当該有価証券等又は金銭債権の譲渡の対価の額の百分の五に相当する金額」とすると定めています。リサイクル預託金は同令第9条第1項第4号の「貸付金、預金、売掛金その他の金銭債権」に当たるため、この5%の特例が働きます。
なお同項には「資産の譲渡等を行つた者が当該資産の譲渡等の対価として取得したものを除く」という括弧書きがあります。これは売掛金や受取手形のように自社の売上から生じた債権を指すもので、これらは同条第2項第2号により分母から丸ごと除かれます(5%算入ですらありません)。自分が車を買ったときに預託したリサイクル預託金は自社の売上から生じた債権ではないため、この除外に当たらず5%の特例が働きます。
廃車時の仕訳|ここで初めて課税仕入れになる
使用済自動車として引取業者に引き渡すと、預託金はリサイクルの費用に充てられます。この時点で預託金が役務の提供の対価に変わるため、課税仕入れとして処理します。取得から廃車まで10年かかるなら、10年後にようやく費用になる勘定です。






廃車時の仕訳例
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 税区分 |
|---|---|---|---|---|
| 雑費(リサイクル費用) | 10,564 | リサイクル預託金 | 11,620 | 課税仕入10% |
| 仮払消費税等 | 1,056 | — |
場面別の仕訳早見表と決算前チェックリスト
買替(下取り)のときは2つの取引に分ける
下取りは「旧車の売却」と「新車の購入」が同じ請求書に載っているだけです。旧車のリサイクル預託金は売却として取り崩し、新車のリサイクル料金は新たに預託金として計上します。相殺後の差額だけで1本の仕訳を切ると、非課税売上と課税仕入れの両方が帳簿から消えます。
売却・廃車した車両の預託金が残っていないか、車両運搬具の増減と対応させて確認します。
紛れていると毎期均等償却されている場合があります。償却されていたら取り消して残高を戻します。
課税対象外で登録していると、課税売上割合の分母に5%分が反映されません。
本記事のシミュレーターで、95%を下回らないかを確認します。
よくある質問(FAQ)
- 中古車を買ったときに払ったリサイクル預託金相当額は、課税仕入れになりますか?
-
なりません。売主側が非課税売上として扱う裏返しで、買主側も非課税仕入れとして処理します。国税庁の質疑応答事例が「売主から買主への預託金の譲渡」と整理しているとおり、預託金という金銭債権を買い取った形になるためです。会計上も費用ではなく、リサイクル預託金という資産の取得として計上します。
- リサイクル預託金を車両の取得価額に含めてしまいました。修正が必要ですか?
-
含めると減価償却を通じて費用化され、本来は廃車時まで費用にならない金額が前倒しで損金になります。金額が1万円前後と少額であるため実務上の影響は限定的ですが、正しくは預託金として区分します。過年度分の取扱いについては、金額的重要性を踏まえて顧問税理士にご相談ください。
- 中古車として輸出した場合、リサイクル預託金はどうなりますか?
-
環境省の解説によれば、リサイクル料金が預託されている自動車を中古車として輸出した場合など、預託しておく必要がなくなったときには、リサイクル料金が返還される仕組みがあります。返還を受けたときは預託金を取り崩し、入金額との差額を処理します。手続きの詳細は資金管理法人である自動車リサイクル促進センターにご確認ください。
- 資金管理料金も買主に請求できますか?
-
東京都環境局の解説は、中古車売買の際に元の所有者が次の所有者に請求できるのはリサイクル預託金に相当する金額であり、資金管理料金部分は請求できないとしています。資金管理料金は預託ではなく管理の手数料として支払済みのものだからです。
まとめ|押さえるのは3つの手順だけ
リサイクル預託金は金額こそ1万円前後ですが、資産・非課税売上・課税仕入れと状態が変わっていく珍しい勘定です。逆に言えば、次の3点さえ押さえれば迷いません。
自動車リサイクル法73条が預託の対象を定めています。車両の取得価額には含めません。
国税庁の質疑応答事例が金銭債権の譲渡と明示しています。隣の行の自動車税とは扱いが逆です。
消費税法施行令48条5項。全額を入れると割合が大きく下がり、控除方式の判定が変わります。



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