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決算前に「未使用の収入印紙と切手を数えてください」と言われる理由は、買った時点で費用にしたものが、期末にまだ残っているからです。残っている分は貯蔵品という資産に振り替えます。
ただし、何でもかんでも振り替えるわけではありません。法人税基本通達2-2-15は、3つの要件を満たす消耗品なら買った期の費用のままでよいと認めています。さらに消費税では、令和5年の通達改正で切手の購入時課税仕入れの特例が限定されたことがあまり知られていません。本記事は、振り替える・振り替えないの判定と、期末・期首の仕訳をまとめて片付けるための記事です。
📌 この記事でわかること
- 貯蔵品に振り替えるかどうかを分ける、法人税基本通達2-2-15の3要件
- 未使用額を入れると決算整理仕訳と翌期首の再振替仕訳を生成するツール
- 収入印紙・郵便切手・事務用消耗品で扱いが違う理由
- 令和5年の改正で、切手を購入時に課税仕入れにできる範囲が狭まったこと
- 金券ショップで買った印紙・切手が課税仕入れになる理由(場所要件)
- 期末棚卸で数えるべきものと、数えなくてよいもののチェックリスト
貯蔵品とは|買った時に費用にしたものの、使い残し
貯蔵品は、購入時にいったん費用処理したもののうち、期末に未使用で残っている分を資産に戻すための勘定です。収入印紙なら租税公課、郵便切手なら通信費、事務用品なら消耗品費として処理したものを、期末に貯蔵品へ振り替えます。
ぜいむたん


原則は「消費した日」に費用
法人税基本通達2-2-15(消耗品費等)は、冒頭で「消耗品その他これに準ずる棚卸資産の取得に要した費用の額は、当該棚卸資産を消費した日の属する事業年度の損金の額に算入するのであるが」と原則を示し、そのうえで後段に例外を置いています。原則は買った日ではなく、使った日です。
振り替えなくてよい3要件|通達2-2-15の例外
原則どおりだと、ボールペン1本まで数えることになります。そこで同じ通達の後段が例外を置いています。






| 要件 | 意味 | 満たさない例 |
|---|---|---|
| ① 各事業年度ごとにおおむね一定数量を取得 | 毎期だいたい同じ量を買っている | 今期だけ大量にまとめ買いした |
| ② 経常的に消費する | 日常業務で常に使い続けている | 特定のイベント用に作った印刷物 |
| ③ 継続して取得時に損金算入している | 処理方法を毎期変えていない | 利益の出た期だけ貯蔵品に上げる |
収入印紙と切手は通達の列挙に入っていない
注意したいのは、2-2-15が挙げているのが「事務用消耗品、作業用消耗品、包装材料、広告宣伝用印刷物、見本品」であって、収入印紙や郵便切手は列挙されていない点です。「その他これらに準ずる棚卸資産」に含めて同様に扱う整理もありますが、印紙や切手は換金性が高く、税務調査でも残高を確認されやすい資産です。
税理士法人で決算を担当していたときは、金額が数万円を超える場合は印紙・切手だけは実残を数えて貯蔵品に上げる、という運用にしていました。通達の解釈として断定できる話ではないため、自社の金額的重要性を踏まえて顧問税理士と方針を決めておくのが安全です。
【自動生成】決算整理仕訳と再振替仕訳をつくる
期末の未使用額を入れると、3要件の判定と、期末・期首それぞれの仕訳を組み立てます。
再振替をしない方法もある
翌期首に逆仕訳を切らず、実際に印紙を使ったつど貯蔵品を取り崩す方法もあります。期末残高はどちらでも同じですが、再振替方式は期中の帳簿が単純になり、取崩方式は貯蔵品残高が常に実残と一致するという違いがあります。印紙の管理簿を作っている会社なら取崩方式のほうが照合が楽です。
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決算整理仕訳を毎年ゼロから思い出していませんか
貯蔵品の振替・再振替は毎期同じ形の仕訳です。マネーフォワード クラウド会計なら仕訳を登録しておいて呼び出せるので、決算整理のたびに科目と向きを確認し直す手間が減ります。
マネーフォワード クラウド会計を見る →消費税は別ルール|令和5年改正で切手の特例が狭まった
貯蔵品の振替は法人税(所得計算)の話で、消費税はまったく別の時点で動きます。ここを一緒にすると必ず混乱します。






原則は「引換給付を受けた時」が課税仕入れ
消費税法基本通達11-3-7は、郵便切手類や物品切手等は「購入時においては課税仕入れには該当せず、役務又は物品の引換給付を受けた時に当該引換給付を受けた事業者の課税仕入れとなる」と定めています。切手は購入時点では非課税だからです。
そのうえで同通達はただし書きで継続適用の特例を認めています。この特例は「自ら引換給付を受けるもの」に限られ、継続適用が条件です。さらに令和5年課消2-9による改正で、その適用範囲が「郵便の役務及び貨物の運送に係る課税仕入れに該当する場合」などに限定されました。インボイス制度で適格請求書の交付が著しく困難な取引に絞られた形です。
金券ショップで買うと課税仕入れになる
切手や印紙が非課税になるのは、買う場所が決まっているからです。消費税法別表第二第4号イは、非課税となる譲渡を「日本郵便株式会社が行う郵便切手類の譲渡」「簡易郵便局や郵便切手類販売所における郵便切手類の譲渡」「印紙の売渡し場所における印紙の譲渡」と限定しています。
つまり金券ショップでの購入はこの場所要件を満たさないため、非課税の対象外=課税仕入れになります。印紙を額面より安く買えるからと金券ショップを使っている会社は、仕入税額控除の処理が郵便局で買った分と変わる点に注意が必要です。
| 買ったもの/買った場所 | 購入時の消費税 | 使用時の消費税 |
|---|---|---|
| 郵便局・郵便切手類販売所の郵便切手 | 非課税仕入れ | 引換給付時に課税仕入れ(郵便の役務等は継続適用で購入時も可) |
| 金券ショップの郵便切手 | 課税仕入れ | —(購入時に処理済み) |
| 郵便局・法務局等の売渡し場所の収入印紙 | 非課税仕入れ | 印紙税の納付のため課税仕入れにならない |
| 金券ショップの収入印紙 | 課税仕入れ | —(購入時に処理済み) |
| 商品券・ビール券などの物品切手等 (購入場所を問わない) | 非課税仕入れ | 引換給付を受けた時に課税仕入れ |






期末棚卸のチェックリスト|数えるもの・数えないもの
決算前に何を数えるかが決まっていないと、毎年担当者が変わるたびに範囲が揺れます。






200円・400円・1万円と額面が混ざるので、枚数×額面で集計します。印紙管理簿があれば残高と突き合わせます。
レターパックやはがきも郵便に関する料金を表す証票なので、未使用分は同じ扱いです。
贈答用に買って未使用のものは貯蔵品です。交際費として処理済みでも、渡していなければ残っています。
毎期おおむね一定量・経常的に消費・継続適用の3つを満たすなら数えなくて構いません。今期だけまとめ買いした分は対象です。
前期末残高が翌期首に再振替されているか、二重計上になっていないかを確認します。
よくある失敗は再振替の漏れによる二重計上
期末に貯蔵品へ振り替えたのに、翌期首の再振替を忘れると、貯蔵品残高が毎年積み上がっていきます。会計事務所で引き継いだ会社の試算表で、貯蔵品が10年分たまって100万円近くになっていたことがありました。前期末残高と当期末残高がどちらも同じ金額で載っているときは、再振替漏れを疑ってください。
よくある質問(FAQ)
- 個人事業主でも貯蔵品への振替は必要ですか?
-
必要です。所得税には所得税基本通達37-30の3(消耗品費等)という直接の根拠があり、法人税基本通達2-2-15とほぼ同じ内容です。原則は「消費した日の属する年分の必要経費に算入するのであるが」とされ、事務用消耗品などで「各年ごとにおおむね一定数量を取得し、かつ、経常的に消費するもの」を継続して取得時の必要経費に算入している場合はこれを認める、という構造です。法人税側の「各事業年度ごとに」が「各年ごとに」に変わるだけで、3要件の考え方は同じです。未使用の印紙・切手が多額に残る場合に貯蔵品として処理する点も変わりません。
- 金額が少なければ振り替えなくてもよいですか?
-
通達2-2-15は金額基準を置いていないため、「いくらまでなら不要」と言い切ることはできません。実務上は金額的重要性を踏まえて社内の基準を決め、毎期同じ基準で運用することになります。重要なのは基準の高さよりも、期によって取扱いを変えないことです。個別の判断は顧問税理士にご確認ください。
- 貯蔵品は棚卸資産として棚卸表に載せる必要がありますか?
-
貯蔵品は棚卸資産に含まれるため、期末の棚卸表に記載します。青色申告法人は帳簿書類の保存義務があり、棚卸表もその対象です。数量と単価がはっきりしている印紙・切手は、額面ごとの枚数を残しておくと後から検証しやすくなります。
- 使いかけの印刷物やパンフレットも貯蔵品ですか?
-
通達2-2-15は広告宣伝用印刷物を列挙しているため、毎期おおむね一定量を作って経常的に配っているものであれば、継続適用を条件に取得時の損金で構いません。一方、特定のイベントのために一度だけ大量に作ったものは「経常的に消費するもの」に当たらないと考えられ、未使用分は貯蔵品として扱うのが原則です。
まとめ|決算前にやる3つの手順
貯蔵品は金額が小さいわりに、放っておくと残高がおかしくなりやすい勘定です。判定の基準と再振替のルールを決めてしまえば、毎期の作業は30分で終わります。
収入印紙・切手・はがき・レターパック・商品券。事務用消耗品は通達2-2-15の3要件で判定します。
期首の逆仕訳を同時に登録しておけば、再振替漏れによる二重計上を防げます。
切手の購入時課税仕入れの特例は令和5年改正で範囲が限定されました。金券ショップで買った分は課税仕入れです。



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