「税務署から予定申告書が届いたけど、これはいくら払えばいいの?」——事業年度が始まって6か月が経つ頃、前期が黒字だった法人にはこの疑問がついて回ります。金額を間違えたり、うっかり期限を過ぎてしまったりすると、延滞税が発生することもあるため不安に感じる方も多いはずです。
この記事では、法人税の中間申告について「自社は対象になるのか」「予定申告額はどう計算するのか」「予定申告と仮決算のどちらを選べば得なのか」を、国税庁の一次情報にもとづいて整理します。数値の計算例はイメージをつかむための一例(illustrative)であり、実際の金額は前期の確定申告書(別表一)の確定法人税額と前期の月数から機械的に決まります。
📌 この記事でわかること
- 法人税の中間申告が必要になる法人の条件(対象・予定申告額10万円基準)
- 予定申告額の計算方法(前事業年度の確定法人税額÷前期の月数×6)と計算例
- 予定申告と仮決算、どちらが得かの判定基準(仮決算が使えないケースも解説)
- 中間申告書を出し忘れた場合の扱い(みなし申告と納付義務)
- 対象読者:前期が黒字だった中小企業の経理担当者・経営者/読了の目安:約7分
ぜいむたん


法人税の中間申告とは——対象になる法人・ならない法人
法人税の中間申告とは、事業年度の途中で法人税の一部を前払いする制度です。事業年度が終わってから確定申告で1年分をまとめて納めるのではなく、期中に一度概算で納付しておくことで、国の税収の平準化と納税者側の一括負担の軽減を図る仕組みになっています。
対象は事業年度が6か月を超える普通法人
中間申告の対象となるのは、事業年度が6か月を超える普通法人です。事業年度の開始の日以後6か月を経過した日から2か月以内に、中間申告書を提出・納付する必要があります。設立第1期など、そもそも最初の事業年度が6か月以下の場合は中間申告そのものが発生しません。
予定申告額が10万円以下なら中間申告は不要
次の章で計算方法を説明する「予定申告額(中間予定税額)」が10万円以下である場合、またはその金額がそもそもない場合(前期が赤字で確定法人税額が0円の場合など)は、中間申告書の提出は不要です(法人税法71条1項ただし書き)。
「前期の確定法人税額が20万円を超えていたら中間申告が必要」という目安をよく見かけますが、これは前期が12か月決算だった場合に限った言い換えにすぎません。正式な基準はあくまで「予定申告額(前期確定法人税額÷前期の月数×6)が10万円を超えるかどうか」です。前期の事業年度が12か月に満たない場合(設立初年度の翌期など)は、この「20万円」という目安の数字自体がずれるので注意してください。






予定申告額の計算方法——前事業年度の確定法人税額から算出
中間申告のうち、前年度の実績を基準とする方式(予定申告)の税額は、法人税法71条1項1号で次のように定められています。国税庁の質疑応答事例「法人税の中間(予定)税額の算出方法について」では、この計算を「第1法」として次の順序で示しています。
予定申告額 = 前事業年度の確定法人税額 ÷ 前事業年度の月数(円未満切り捨て)× 6
ポイントは計算の順序です。第1法では、まず前事業年度の確定法人税額を前事業年度の月数で割り、その時点で生じた1円未満の端数を切り捨てます。そのうえで、事業年度開始の日から6か月を経過した日の前日までの月数(通常は6)を掛けます。先に6を掛けてから割るのではなく、「先に割って端数を切り捨て、後から6を掛ける」という順序が正式なルールです。
前期が通常どおり12か月決算であった場合、この式は結果的に「前期確定法人税額÷2」と同じ金額になります。ただし、これはあくまで前期の月数が12か月だった場合の結果であり、式そのものは「前期の月数で割ってから6を掛ける」という形で覚えておく必要があります。前期が12か月に満たない事業年度(設立の翌期など)では、÷2という単純な計算では正しい金額になりません。
- 前期の確定申告書(別表一)に記載された、控除・還付前の確定法人税額のこと
- 事業年度開始の日以後6か月を経過した日の前日までに確定した金額に限られる
- 前期が赤字で確定法人税額が0円だった場合は、予定申告額も0円になる






計算例:前期確定法人税額240万円のケース
ここでは、前事業年度の確定法人税額が240万円、前事業年度の月数が12か月だったケースを例に、予定申告額の計算ステップを確認します。以下の数値は計算の流れを示すための一例(illustrative)であり、実際の金額は自社の前期確定申告書の確定法人税額と前期の月数から決まります。
前期の確定申告書(別表一)から確定法人税額を確認します。今回の例では240万円、前期の月数は12か月とします。
240万円 ÷ 12か月 = 20万円。この時点で1円未満の端数が生じた場合は切り捨てます(今回の例はちょうど割り切れています)。
20万円 × 6 = 120万円。これが予定申告額(中間予定税額)です。10万円を超えているため、この法人は中間申告書の提出が必要になります。
なお、前期の月数で割った際に端数が出るケースでは、例えば「208,775.5円」であれば「208,775円」として円未満を切り捨ててから6を掛けます(第1法)。ここで切り捨てるのは1円未満のわずかな端数なので、順序を取り違えても予定申告額への影響は数円程度にとどまりますが、「先に前期の月数で割って円未満を切り捨て、後から6を掛ける」という順序は正しく守りましょう。なお、こうして計算した予定申告額は、最終的に100円未満を切り捨てた金額で納付します(国税通則法119条)。






予定申告と仮決算はどっちが得?——有利判定のポイント
法人税の中間申告には、前年度実績を基準とする「予定申告」と、中間期間の業績で計算する「仮決算に基づく中間申告」の2種類があり、法人がどちらかを選択できます。
仮決算は中間期間を1事業年度とみなして計算する方式
仮決算に基づく中間申告は、事業年度開始の日から6か月間(中間期間)を1つの事業年度とみなし、その期間の所得金額・法人税額を実際に計算して申告する方式です(法人税法72条)。通常の確定申告と同じように、中間期間分の決算書・別表を作成する必要があります。
仮決算の税額が予定申告額を超えるときは選べない
ここが最も誤解されやすいポイントです。仮決算に基づく中間申告書は、仮決算で計算した法人税額が予定申告額(前年度実績を基準とする金額)を超えるときは提出できません(法人税法72条)。つまり仮決算が有効なのは、中間期の業績が前期よりも悪化し、仮決算で計算した税額の方が予定申告額より少なくなる場合に限られます。「仮決算にすれば必ず税額が減る」わけではないという点を押さえておきましょう。
仮決算は決算・別表作成の手間がかかる
仮決算を選ぶ場合、中間期間分の試算表・決算書・法人税申告書別表を一式作成する必要があり、通常の確定申告に近い事務作業が発生します。減額できる金額が小さいのに手間だけがかかる、という状況になっていないか、事前に概算で確認しておくのが実務的です。
予定申告と仮決算の比較
前期の確定法人税額をもとに機械的に計算するだけなので手間がかからない。ただし中間期の業績が悪化していても、前期実績どおりの金額を納付することになる。
中間期の実際の業績で計算するため、業績悪化時は納税額を抑えられる可能性がある。ただし決算書・別表の作成が必要で、仮決算税額が予定申告額を超えるときは選べない。
仮決算で計算した法人税額のほうが予定申告額より高い場合、仮決算による中間申告書を提出することはできません。この場合は自動的に予定申告(前年度実績基準)で申告・納付することになります。中間期の業績が前期より好調なときに「あえて仮決算で少なく見せる」といった選択はできない仕組みになっています。
予定申告額が10万円超
→ 中間申告が必要(STEP2へ)
10万円以下・前期赤字で0円
→ 中間申告は不要
中間期の業績が前期より悪化
→ 仮決算の税額を試算してみる
中間期の業績が前期並み〜好調
→ 予定申告のままでよい
仮決算税額が予定申告額を超えなければ仮決算を選択可能。超える場合は仮決算による中間申告書を提出できず、予定申告のまま納付します(法人税法72条)。






中間申告・納付の期限はいつ?
中間申告書の提出期限・納付期限は、事業年度開始の日以後6か月を経過した日から2か月以内です。予定申告・仮決算のどちらを選ぶ場合でも、この期限は共通です。
例えば3月決算法人(事業年度4月1日〜翌年3月31日)の場合、6か月を経過した日は9月30日にあたるため、中間申告書の提出・納付期限は11月30日となります。予定申告を選ぶ場合、国税庁から予定申告書の用紙が送付されるのが従来の扱いですが、前事業年度の確定申告書をe-Taxで提出した法人には用紙は送付されず、メッセージボックスに「法人税予定申告のお知らせ」が届く運用になっています。
期限を過ぎて納付すると、原則として延滞税の対象になります。仮決算を選ぶ場合は決算書・別表の作成に時間がかかるため、期限直前に着手すると間に合わなくなるおそれがあります。仮決算を検討する場合は、事業年度開始から4〜5か月目のタイミングで試算を始めるのが実務上安全です。






中間申告書を出さなかったら——みなし申告と納付の要否
中間申告書を提出すべき法人が、その提出期限までに提出しなかった場合は、その提出期限に前年度実績を基準とする中間申告(予定申告)があったものとみなされます(法人税法73条・みなし申告)。
ここで注意したいのは、「みなされる」というのは「申告書を出さなくてもよい」という意味ではないという点です。予定申告額そのものの納付義務は残ったままであり、実際に納付が遅れれば延滞税が発生する可能性があります。「申告不要」と「納付不要」を混同しないようにしましょう。
みなし申告が適用されるのは、あくまで予定申告(前年度実績基準)の金額です。仮決算を検討していたのに期限に間に合わず提出できなかった場合でも、みなし申告によって自動的に予定申告額での納付義務が生じます。仮決算を選ぶ予定であれば、期限に確実に間に合うよう早めに準備しておく必要があります。






地方法人税・住民税・事業税の中間申告も連動する
法人税の中間申告義務がある法人は、原則として地方法人税に加え、法人住民税(都道府県民税・市町村民税)や法人事業税(特別法人事業税を含む)についても中間申告が必要になります。これらの税は、法人税の中間申告と同じタイミングで申告・納付するのが一般的な流れです(地方法人税は国税、法人住民税・法人事業税は地方税という区分になります)。
ただし、地方税の税率・具体的な計算方法・申告様式は自治体や事業年度によって異なるため、この記事では一般的な連動の仕組みにとどめて説明します。法人住民税の均等割については別記事で対象・計算方法を詳しく解説していますので、あわせて確認してください。
なお、消費税にも中間納付の制度がありますが、対象となる基準や納付回数の考え方は法人税の中間申告とは別の仕組みです。消費税の中間納付についてはこちらの記事で詳しく解説しています。






よくある誤解・注意点
ここまでの内容を踏まえ、法人税の中間申告で特に誤解されやすいポイントを整理します。
- 「仮決算にすれば必ず税額が減る」は誤り
仮決算で計算した法人税額が予定申告額を超えるときは、仮決算による中間申告書を提出できません(法人税法72条)。中間期の業績が前期より悪化しているケース以外では有効な選択肢になりません。 - 「みなし申告」は納付不要という意味ではない
期限までに中間申告書を出さなくても予定申告があったものとみなされますが(法人税法73条)、予定申告額の納付義務は残り、遅れれば延滞税が生じ得ます。 - 「前期確定法人税額20万円超」は12か月決算限定の目安
正式な基準は「予定申告額(前期確定法人税額÷前期の月数×6)が10万円を超えるかどうか」です。前期の月数が12か月でない場合、20万円という目安はそのまま使えません。 - 前期が赤字で確定法人税額が0円なら中間申告は不要
予定申告額の計算上、前期の確定法人税額が0円であれば予定申告額も0円になるため、中間申告書の提出義務は生じません。 - 期限は「事業年度開始6か月経過日から2か月以内」
予定申告・仮決算のどちらを選んでも期限は共通です。仮決算は決算書・別表の作成が必要な分、早めの準備が欠かせません。
よくある質問(FAQ)
- 法人税の中間申告はいくらから必要ですか?
-
予定申告額(前事業年度の確定法人税額を前期の月数で割り、6を掛けて計算した金額)が10万円を超える場合に中間申告が必要です。10万円以下の場合や、前期が赤字で確定法人税額がない場合は、中間申告書の提出は不要です(法人税法71条1項ただし書き)。
- 予定申告と仮決算はどちらが得ですか?
-
中間期(事業年度開始から6か月間)の業績が前期より悪化している場合は、仮決算に基づく中間申告を選ぶことで、納付額を予定申告額より抑えられることがあります。ただし、仮決算で計算した法人税額が予定申告額を超えるときは仮決算による中間申告書を提出できません(法人税法72条)。また仮決算には中間決算書・別表の作成という事務負担もかかるため、減額幅が事務負担に見合うかどうかで判断するのが実務的です。
- 中間申告書を出し忘れたらどうなりますか?
-
提出期限までに中間申告書を提出しなかった場合、その提出期限に前年度実績を基準とする予定申告があったものとみなされます(法人税法73条)。ただし、これは「申告書を出さなくてよい」という意味ではなく、予定申告額の納付義務そのものは残ります。納付が遅れると延滞税が発生する可能性があるため注意が必要です。
法人税の中間申告まとめ:対象判定から計算・有利判定まで






事業年度が6か月を超える普通法人かどうかを確認します。設立初年度で最初の事業年度が6か月以下の場合は、中間申告は発生しません。
前事業年度の確定法人税額を前期の月数で割り(円未満切り捨て)、6を掛けます。この金額が10万円を超えるかどうかで申告要否が決まります。
中間期の業績が前期より悪化していれば仮決算を検討します。ただし仮決算税額が予定申告額を超える場合は仮決算を選べません。
事業年度開始の日以後6か月を経過した日から2か月以内に、法人税とあわせて地方税の中間申告・納付も行います。
期限までに申告しなくても予定申告があったものとみなされますが(法人税法73条)、納付義務は残るため放置しないようにします。



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