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建設仮勘定は、完成前の建物や設備にかけた支出をいったん集めておく科目で、引渡しを受けた日に建物などの本勘定へ振り替えます。消費税の仕入税額控除は、物の引渡しや役務の提供を受けた日の課税期間で行うのが原則です。ただし、建設仮勘定として経理した課税仕入れは、目的物が完成した日の課税期間にまとめて控除する方法も、消費税法基本通達11-3-6で認められています。減価償却は、完成日や振替日ではなく、事業の用に供した日から始まります。
工場や店舗、自社ビルを新築して手付金と中間金を払うたびに、科目と消費税の扱いで迷う経理担当者を想定しています。この記事では、建設仮勘定に入れる支出の判定フロー、ケース別の仕訳、本勘定への振替、消費税の控除時期、減価償却の開始時期を、国税庁の通達と法人税法施行令の条文で確認します。
📌 この記事でわかること
- 建設仮勘定の仕訳の判定フロー(建設仮勘定か、修繕費か、未成工事支出金か)
- 手付金・中間金・設計料の支払いから、本勘定振替・建設中止までのケース別の仕訳
- 建設仮勘定の消費税はいつ控除できるか(原則は引渡し・役務の提供を受けた日。完成した日の課税期間まで待てる取扱いもある)
- 建設仮勘定の減価償却はいつから始まるか(完成日ではなく、事業の用に供した日で決まる)
対象読者:自社で使う建物・設備の新設を発注している法人の経理担当者(簿記3級程度の仕訳の知識を前提とします)/読了の目安:約15分/法令・通達・タックスアンサーは2026年10月30日時点で国税庁とe-Govで確認した内容です
建設仮勘定とは|完成前の支出を一時的に集めておく有形固定資産の科目
建設仮勘定は、建物・機械装置・構築物などの有形固定資産を新しく作るとき、完成して引渡しを受けるまでの支出を一時的に集めておく貸借対照表の科目です。完成前に払った手付金や中間金、工事に直接かかった設計料をいったんここに計上し、引渡しを受けたら建物などの本勘定へ振り替えます。
最終的にどの資産になるかが決まっていても、まだ使い始められない段階の支出を置いておく箱という位置づけです。そのため、使い始めていない間は減価償却の対象になりません。逆に、本勘定へ振り替える前でも事業で使い始めていれば、償却の対象になります。
なぜ完成前は減価償却しないのか(使い始めていないから)
減価償却を始められるかどうかは、完成したか、本勘定に振り替えたかではなく、事業の用に供したかで決まります。法人税法施行令第13条は、減価償却資産の範囲を次のように定めています。
「法第二条第二十三号(定義)に規定する政令で定める資産は、棚卸資産、有価証券及び繰延資産以外の資産のうち次に掲げるもの(事業の用に供していないもの及び時の経過によりその価値の減少しないものを除く。)とする。」
「事業の用に供していないもの」は減価償却資産から除かれます。建設仮勘定に計上している間は、まだ使い始めていないのが通常なので、原則として減価償却の対象になりません。詳しくは「建設仮勘定の減価償却はいつから始まるか」の章で確認します。
建設仮勘定に積む代表的な支出(手付金・中間金・設計料・材料費)
建設仮勘定に入れるのは、契約から完成までの間に、その建設工事のために直接かかった支出です。着工前の設計料のように、工事が始まる前の支出も含みます。代表的なものは次の4つです。
建設仮勘定に積む代表的な支出
契約時に支払う着手金。工事の出来高とは無関係に、契約に基づいて支払う。
工事の進捗(出来高)に応じて、契約で定めた時期に支払う代金。
着工前の設計・調査など、その建設工事のために直接支出した費用。
発注者側が資材を直接手配し、施工者に無償支給する場合の購入費用など。
【判定フロー】その支出は建設仮勘定か、修繕費か、未成工事支出金か
判定は3段階です。新しく資産を作る支出か、自社で使う工事か、目的物は完成前か。この3つを順に確かめると、修繕費・未成工事支出金・建設仮勘定のどれになるかが決まります。
判定の分かれ目は「新しく作っているか」「誰のための工事か」
壁紙の張り替えや外壁の補修のように、原状回復や維持を目的とする工事は、建設仮勘定ではなく修繕費として当期の費用になります。新築や増築と修繕が1つの工事にまとまっているときは、金額を按分して区分します。按分の考え方は、内装工事費 按分計算|固定資産(建物・器具備品)の区分と経費処理で詳しく解説しています。
建設仮勘定と未成工事支出金の違い(自社で使う資産か、請け負った工事か)
どちらも完成前の工事にかかった支出を一時的に集める科目ですが、立場が違います。建設仮勘定は、自社で使う建物などを発注する側(発注者側)の科目です。未成工事支出金は、工事を請け負った建設業者が、完成前の原価を集計するための科目です。消費税の通達の書きぶりにも違いがあり、後の章で条文をそのまま確認します。
建設仮勘定と前払金の違い(有形固定資産か、流動資産の前払いか)
貸借対照表で並ぶ場所が違います。前払金は、商品の仕入れやサービスの提供を受ける前に代金を払ったときに計上する流動資産の科目です。建設仮勘定は、完成前の建設工事にかかった支出を集める有形固定資産の科目で、前払金の一部ではありません。
建設仮勘定に積むものは、出来高に応じた支払に限られません。国税庁タックスアンサーNo.6483は「工事代金の前払金または部分的に引渡しを受けた工事代金や経費(設計料、資材購入費等)の額を一旦建設仮勘定として経理し」と述べており、出来高と無関係に払う手付金も建設仮勘定に含まれます。建設仮勘定は前払費用・未払費用などの経過勘定とは別系統の科目ですが、決算をまたいで残高を点検する作業は共通します。経過勘定の整理は【2026年版】経過勘定の仕訳完全ガイド|前払費用・未払費用・前受収益・未収収益の処理と決算整理で扱っています。
建設仮勘定の処理でよくある失敗4つ
判定を誤ると、決算のたびに同じ科目で迷うだけでなく、本勘定への振替が遅れて減価償却の計上漏れにつながります。よくある失敗は次の4つです。
- 完成後も建設仮勘定に残したままにする
目的物の引渡しを受けたのに本勘定へ振り替えず、減価償却の開始が遅れます。決算のたびに残高の動きを確認します。 - 消費税の控除時期の基準を年度によって変える
ある年は引渡しのたびに控除し、別の年は完成した課税期間でまとめて控除すると、控除漏れや二重控除の原因になります。通達11-3-6に「継続適用を条件として」という文言はありませんが、社内の扱いは決めて揃えておきます。 - 設計料や地盤調査費を、払った時点で経費にしてしまう
その建設工事のために直接かかった費用なのに、支払時に一括で費用計上し、取得価額に含め忘れます。 - 1つの工事が複数の資産に分かれるのに、按分せず処理する
建物と建物附属設備が同じ工事に含まれているのに全額を建物に計上すると、償却方法や耐用年数の判定を誤ります。
【早見表】ケース別 建設仮勘定の仕訳
建設仮勘定の仕訳は、支払いのたびに借方を建設仮勘定にし、引渡しを受けたら建物などの本勘定へ振り替える形です。次の設例で確認します。
法人が自社使用の倉庫を新築する請負契約を結び、工事代金(税抜)10,000,000円(消費税率10%・消費税額1,000,000円)を手付金・中間金・完成時の残金に分けて払いました。着工前には設計料(税抜)500,000円(消費税50,000円)も払っています。建設仮勘定に積み上がる金額は、税抜で合計10,500,000円(消費税額の合計1,050,000円)です。経理は税抜経理で説明します。
この記事の金額はすべて説明のための設例で、実在の取引や法定の金額基準ではありません。自社の取引に当てはめるときは、契約書・請求書の実際の金額で確認してください。
手付金を払ったとき・中間金を払ったとき
設計料・手付金・中間金は、払った時点ではまだ工事が完成していないため、いずれも建設仮勘定に計上します。税抜経理では消費税額を「仮払消費税等」として区分しておく実務が一般的です。ただし、帳簿で仮払消費税等を区分することと、その消費税をいつ仕入税額控除できるかは別の論点です。控除の時期は後の章で説明します。
| 取引(設例) | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 設計料の支払い(税込550,000円) | 建設仮勘定 仮払消費税等 | 500,000円 50,000円 | 現金預金 | 550,000円 |
| 契約時の手付金の支払い(税込2,200,000円) | 建設仮勘定 仮払消費税等 | 2,000,000円 200,000円 | 現金預金 | 2,200,000円 |
| 中間金の支払い(税込3,300,000円) | 建設仮勘定 仮払消費税等 | 3,000,000円 300,000円 | 現金預金 | 3,300,000円 |
表の「仮払消費税等」は税抜経理での内訳の表示で、仕入税額控除をいつ行うかとは別の話です。控除の時期は、通達11-3-1の「課税仕入れを行った日」(または後述する通達11-3-6の取扱い)で判定します。
完成して引き渡しを受け、本勘定へ振り替えるとき
完成・引渡しを受けたら、残金を払ったうえで、建設仮勘定に積み上がった金額を本勘定(建物)へ振り替えます。
| 取引(設例) | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 完成・引渡し時の残金支払い(税込5,500,000円) | 建設仮勘定 仮払消費税等 | 5,000,000円 500,000円 | 現金預金 | 5,500,000円 |
| 本勘定への振替(完成・引渡日) | 建物 | 10,500,000円 | 建設仮勘定 | 10,500,000円 |
建物への振替額10,500,000円は、設計料500,000円、手付金2,000,000円、中間金3,000,000円、残金5,000,000円の合計です。税抜経理なので、消費税額(仮払消費税等)は含みません。税込経理を採用している場合は、消費税を含めた金額が取得価額になります。
金額は本文の設例(工事代金10,000,000円、設計料500,000円、税抜)。濃色=その時点で増えた支払、薄色=それ以前の累計。
設計料や地盤調査費など、工事に直接かかった費用を含めるとき
タックスアンサーNo.6483が挙げる「設計料、資材購入費等」のように、着工前に発生する費用でも、その建設工事のために直接払ったものは建設仮勘定に含めます。地盤調査費も同じ扱いです。前掲の表のとおり、設計料500,000円も他の支払いと同様に建設仮勘定へ計上し、本勘定への振替時に取得価額へ含めています。取得価額にどこまで含めるかは、次の章で法人税法施行令の条文から確認します。
建設を中止したとき
ここからは倉庫の新築とは別の設例です。別の店舗で計画していた増築工事を中止し、すでに払った設計料350,000円が返金されないことが確定した場合、建設仮勘定の350,000円を費用科目(雑損失など)へ振り替えます。
| 取引(別設例) | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 工事中止に伴う費用化 | 雑損失 | 350,000円 | 建設仮勘定 | 350,000円 |
使わなくなった資産を処理するという点では、完成済みの資産を除却する場合と考え方が重なります。除却の仕訳や有姿除却の注意点は、固定資産の除却の仕訳|有姿除却と一括償却資産の注意点【2026年版】で解説しています。
建設仮勘定から本勘定へ振り替えるタイミングと金額
本勘定への振替は、目的物の完成・引渡しを受けた日を起点に行います。振り替える金額は法人税法上の取得価額で、消費税の控除時期とは別の論点として整理します。
いくらで振り替えるか(取得価額に入るもの・入らないもの)
減価償却資産の取得価額は、法人税法施行令第54条第1項が取得のしかたごとに定めています。購入した減価償却資産は第1号、自己の建設等に係る減価償却資産は第2号です。請負契約で発注して引渡しを受けた建物をどちらで整理するかは、工事の実態(自社が資材や労務をどこまで負担したか)によって説明が分かれ得ます。ただし、どちらの号も「当該資産を事業の用に供するために直接要した費用の額」を含める点は共通で、工事代金と設計料を積み上げた金額が取得価額になるという結論は変わりません。両方の号の文言を引いて確認します。
第1号(購入した減価償却資産)
「イ 当該資産の購入の代価(引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税(関税法第二条第一項第四号の二(定義)に規定する附帯税を除く。)その他当該資産の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)
ロ 当該資産を事業の用に供するために直接要した費用の額」
第2号(自己の建設等に係る減価償却資産)
「イ 当該資産の建設等のために要した原材料費、労務費及び経費の額
ロ 当該資産を事業の用に供するために直接要した費用の額」
【法人税】本設例で取得価額10,500,000円を構成する費用
請負業者へ支払う工事代金そのものと、その工事のために直接要した設計料・地盤調査費などが該当する。前章の設例では、工事代金10,000,000円+設計料500,000円=10,500,000円がここに含まれる。
完成後、実際に使い始めるために直接必要となった費用が該当する。
1つの工事が複数の資産になるときの振り分け
1つの工事契約に、建物本体と建物附属設備(電気・給排水設備など)の両方が含まれることがあります。この場合は、それぞれの工事原価に応じて按分します。設例の工事代金の内訳が建物本体8,000,000円・建物附属設備2,000,000円だったとすると、設計料500,000円は工事代金の比率(8対2)で次のように按分できます。
金額は本文の設例(建物本体8,000,000円・建物附属設備2,000,000円・設計料500,000円)。棒の長さは金額に比例。
| 資産区分(設例) | 工事代金 | 設計料の按分額 | 取得価額 |
|---|---|---|---|
| 建物 | 8,000,000円 | 400,000円 | 8,400,000円 |
| 建物附属設備 | 2,000,000円 | 100,000円 | 2,100,000円 |
| 合計 | 10,000,000円 | 500,000円 | 10,500,000円 |
| 取引(設例) | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 本勘定への振替(資産区分あり) | 建物 建物附属設備 | 8,400,000円 2,100,000円 | 建設仮勘定 | 10,500,000円 |
建物と建物附属設備は耐用年数が異なるため、按分を怠ると減価償却費の計算そのものを誤ります。工事請負契約書や見積書の内訳明細で、資産区分ごとの金額を確認してください。
振替までの手順は次の3ステップです。
工事請負契約書や引渡確認書に記載された完成日・引渡日を確認します。本勘定振替と消費税の控除時期の起点になります。
建設仮勘定に計上した金額(工事代金・設計料・地盤調査費など)を合計し、資産区分ごとに按分が必要かを確認します。
建設仮勘定を貸方、建物・建物附属設備などを借方にして振替仕訳を入力し、償却方法・耐用年数を資産ごとに登録します。
建設仮勘定の消費税はいつ控除できるか|完成した日の課税期間まで待てる
原則は、課税仕入れを行った日の属する課税期間で控除します。ただし、建設仮勘定として経理した課税仕入れは、目的物が完成した日の課税期間にまとめて控除してもよいとされています。根拠は消費税法基本通達11-3-6です。ここからは法人税ではなく消費税の話なので、前章までの取得価額とは分けて読んでください。
原則は課税仕入れをした日(通達11-3-6の前段)
消費税法基本通達11-3-6は、次のように定めています。
「事業者が、建設工事等に係る目的物の完成前に行った当該建設工事等のための課税仕入れ等の金額について建設仮勘定として経理した場合においても、当該課税仕入れ等については、その課税仕入れ等をした日の属する課税期間において法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》の規定が適用されるのであるが、当該建設仮勘定として経理した課税仕入れ等につき、当該目的物の完成した日の属する課税期間における課税仕入れ等としているときは、これを認める。」
原則は、「課税仕入れを行った日」の属する課税期間ごとに、その都度仕入税額控除を行います。「課税仕入れを行った日」は「代金を支払った日」ではありません。消費税法基本通達11-3-1は、課税仕入れを行った日を、資産の譲受け若しくは借受けをした日又は役務の提供を受けた日と定めています。タックスアンサーNo.6483も、建設仮勘定について「原則として物の引渡しや役務の提供があった日の課税期間において課税仕入れに対する税額の控除を行う」旨を示しています。
設例でいえば、設計料の消費税50,000円は設計という役務の提供を受けた日、資材の購入費なら資材の引渡しを受けた日が基準です。出来高と無関係に契約に基づいて払う手付金は、払った時点でまだ引渡しも役務の提供も受けていないため、その時点では課税仕入れに該当しません。中間金は、部分的な引渡しを受けているかどうかで判断が分かれます。設例の請負契約は完成時に一括で引き渡すため、手付金・中間金の消費税も引渡しを受けた日の課税期間で控除します。
建設仮勘定として経理した場合は完成した日でもよい(通達11-3-6の後段)
通達の後段は、建設仮勘定として経理した課税仕入れを、目的物が完成した日の課税期間の課税仕入れとしているときは、それも認めるとしています。設例の消費税額は、設計料50,000円、手付金200,000円、中間金300,000円、残金500,000円で合計1,050,000円です。この1,050,000円を、完成・引渡しを受けた課税期間でまとめて仕入税額控除の対象にできます。
金額は本文の設例(税抜の支払額に対する消費税額)。消費税は設例の請負契約で引渡しが完成時の1回として作図。
なお、タックスアンサーNo.6483は、この取扱いを「工事の目的物のすべての引渡しを受けた日の属する課税期間における課税仕入れとして処理する方法も認められます」と説明しており、通達の「完成した日」とは表現が異なります。完成と全部の引渡しの時期がずれる工事では、社内でどちらを基準にするかを先に決めておきます。
通達11-3-6に「継続適用を条件として」という記載はありません。ただし、年度によって基準を変えると控除漏れや二重控除の原因になるので、どちらを選ぶ場合も扱いを揃え、実際の処理は顧問税理士に確認してください。
完成した日の課税期間でまとめて控除する場合でも、それぞれの支払いに係る適格請求書などの保存は必要です(国税庁タックスアンサーNo.6496 仕入税額控除をするための帳簿及び請求書等の保存)。控除の時期を後ろへ倒せるだけで、保存すべき書類が減るわけではありません。
未成工事支出金は条件の書きぶりが違う(通達11-3-5との比較)
建設業者側が使う未成工事支出金については、消費税法基本通達11-3-5が次のように定めています。
「事業者が、建設工事等に係る目的物の完成前に行った当該建設工事等のための課税仕入れ等の金額について未成工事支出金として経理した場合においても、当該課税仕入れ等については、その課税仕入れ等をした日の属する課税期間において法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》の規定が適用されるのであるが、当該未成工事支出金として経理した課税仕入れ等につき、当該目的物の引渡しをした日の属する課税期間における課税仕入れ等としているときは、継続適用を条件として、これを認める。」
2つの通達を並べると、未成工事支出金は「引渡しをした日」と「継続適用を条件として」という書きぶりで、建設仮勘定は「完成した日」で継続適用の文言がない、という違いがあります。条文の書きぶりの違いであり、どちらが有利・不利という評価はしません。未成工事支出金は施工者側の科目で、本記事のテーマである発注者側の建設仮勘定とは立場が異なります。
勘定科目ごとの消費税の課税区分は、消費税の課税区分一覧|勘定科目100科目の早見表・判定ツールで確認できます。完成した資産を将来売却するときの消費税は仕入れ側とは別の論点なので、【2026年最新】固定資産売却時の消費税と仕訳処理をご覧ください。
建設仮勘定の減価償却はいつから始まるか|完成日ではなく事業の用に供した日
減価償却は、完成日でも本勘定への振替日でもなく、事業の用に供した日から始まります。これは法人税の論点で、前章の消費税の控除時期とは別に考えます。
本勘定へ振り替えても使っていなければ償却できない
施行令第13条は、減価償却資産の範囲から「事業の用に供していないもの」を除いています。建設仮勘定から本勘定(建物)へ振り替えても、実際に使い始めていなければ、減価償却費は計上できません。たとえば決算月に引渡しを受けたものの、内装工事や什器の搬入が終わらず、翌期から営業を始める場合は、事業供用日は翌期になります。
建設仮勘定に残したままでも使い始めていれば償却の対象になる
逆に、工事の一部(たとえば建物附属設備の一部)が先に完成し、本勘定への振替が済んでいなくても、実際に事業で使い始めていれば、その部分は事業の用に供したものとして償却の対象になり得ます。振替仕訳が未処理のまま決算を迎えないよう、完成・引渡し・使用開始の3つの日付を、引渡確認書や使用開始の社内記録などの書類で別々に管理してください。
日付の位置は説明のための配置。本文の記載(決算月に引渡し・翌期から営業/一部が先に完成して使用)に対応。
新築した建物には、法人税・消費税のほかに固定資産税(家屋の評価や償却資産の申告)の論点もあります。償却資産の申告の仕組みは償却資産申告書の書き方と記入例|課税対象の判定ツール【令和9年度】で解説しています。申告の要否は自己判断せず、所管の市区町村窓口か顧問税理士に確認してください。
本勘定へ振り替えたあとの償却方法(定額法・定率法)
償却方法は、資産によって選べるものと選べないものがあります。建物・建物附属設備・構築物は、平成28年4月1日以後に取得したものは定額法のみで、定率法は選べません(法人税法施行令第48条の2第1項第1号)。平成28年3月31日以前に取得した建物以外の資産には、定率法の選択が残っています。設例の倉庫(建物)と建物附属設備は、いずれも定額法です。一方、機械装置・工具器具備品などの同項第2号の資産は、定額法と定率法を選べ、どちらを選ぶかで初年度の償却費が大きく変わります。10年分の比較は減価償却は定額法と定率法どっちが得?10年分の早見表で比較【2026年版】にまとめています。
【チェックリスト】決算前に確認したい建設仮勘定まわり7項目
決算をまたいで建設仮勘定を計上しているときは、次の7項目を確認すると、振替漏れや消費税の処理ミスを防ぎやすくなります。
- 完成・引渡しを受けた工事が、本勘定(建物等)へ振り替えられているか
- 消費税の仕入税額控除を「引渡しや役務の提供を受けた課税期間」と「完成した課税期間」のどちらで処理したか、社内の基準が整理されているか
- 設計料・地盤調査費など、取得価額に含めるべき費用が漏れていないか
- 1つの工事で複数の資産(建物・建物附属設備等)に分かれる場合、金額が適切に按分されているか
- 事業の用に供した日を、引渡確認書や使用開始の記録など書類で確認できるか
- 中止・中断した工事がないか、あれば費用化の要否を検討したか
- 何年も残高が動いていない建設仮勘定がないか
何年も動いていない建設仮勘定の見方
決算書を数期分並べて、建設仮勘定の残高が数年間まったく動いていなければ、工事が実際に続いているかを確かめます。事実上止まっている工事であれば、前掲の設例のように費用化が必要かどうかを、施工業者への進捗確認や社内稟議の記録とあわせて見直します。判断に迷うときは、自己判断で処理を確定せず、顧問税理士に相談してください。
よくある質問(FAQ)
- 建設仮勘定と未成工事支出金はどう違うのですか?
-
建設仮勘定は、自社で使う建物などを発注する側(発注者側)が、完成前の支出を一時的に集める科目です。未成工事支出金は、工事を請け負った建設業者側(施工者側)が、完成前の原価を集計する科目で、立場が異なります。消費税の仕入税額控除の時期についても、消費税法基本通達11-3-6(建設仮勘定)と11-3-5(未成工事支出金)で書きぶりが異なるため、自社がどちらの立場かをまず確認してください。
- 建設仮勘定に計上した支出の消費税は、いつの課税期間で控除すればいいですか?
-
原則は「課税仕入れを行った日」の属する課税期間です。これは代金を支払った日ではなく、消費税法基本通達11-3-1により、資産の譲受け若しくは借受けをした日又は役務の提供を受けた日を指します。したがって、出来高とは無関係に払う手付金は、払った時点では課税仕入れに該当しません。ただし、消費税法基本通達11-3-6により、建設仮勘定として経理した課税仕入れ等を、目的物が完成した日の属する課税期間の課税仕入れ等としているときは、それも認められます。実際の処理は顧問税理士に確認してください。
- 建設仮勘定から本勘定へ振り替えたら、すぐに減価償却を始められますか?
-
振り替えただけでは始められません。法人税法施行令第13条は、減価償却資産の範囲から「事業の用に供していないもの」を除いています。実際にその資産を使い始めた日(事業供用日)から減価償却を開始します。完成日や振替日と事業供用日がずれる場合は、日付を別々に書類で管理してください。
- 工事を中止した場合、建設仮勘定はどう処理しますか?
-
返金されないことが確定した支出は、建設仮勘定から雑損失などの費用科目へ振り替えることを検討します。ただし、工事が本当に中止・断念されたのか、一時的に止まっているだけなのかで判断が変わります。中止に至った経緯を社内稟議や施工業者とのやり取りの記録として残し、顧問税理士に相談したうえで処理してください。
まとめ|建設仮勘定の判定・振替・消費税・償却を決算前に確かめる
建設仮勘定は、自社で使う建物などの完成前の支出を集める科目です。引渡しを受けたら本勘定へ振り替え、消費税は引渡し・役務の提供を受けた課税期間(または完成した日の課税期間)で控除し、減価償却は事業の用に供した日から始めます。流れは次の5ステップです。
新しく作る支出か、自社使用か請負工事か、完成前か完成後かの3段階で、建設仮勘定・修繕費・未成工事支出金のどれかを判定します。
支払いのたびに建設仮勘定(借方)と現金預金など(貸方)で仕訳し、税抜経理では消費税額を仮払消費税等として区分します。
取得価額を集計し、複数の資産に分かれる場合は按分したうえで、建物・建物附属設備などへ振り替えます。
引渡しや役務の提供を受けた課税期間で控除するか、完成した日の課税期間でまとめて控除するか、通達11-3-6を踏まえて社内の扱いを決めます。
完成日や振替日ではなく、実際に使い始めた日を基準に償却を始め、決算前にチェックリストで確認します。
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