「KSK2って聞いたことあるけど、うちみたいな個人事業主には関係ない話やろ?」——そう思っている方こそ注意が必要です。国税庁の基幹システム刷新とAIによる調査対象選定の高度化は、法人だけでなく個人事業主・フリーランスにも確実に影響します。令和6事務年度は、所得税の実地調査(特別・一般)1件あたりの追徴税額が約299万円、調査等による追徴税額の総額は1,431億円と過去最高を更新しました(出典:国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」)。本記事では、KSK2・AIによる調査対象選定の仕組み、狙われやすいパターン、税務調査の流れと加算税の税率、そして個人事業主が今からできる具体的な対策を、国税庁の公表情報をもとに解説します。
📌 この記事でわかること
対象読者:個人事業主・フリーランス/KSK2やAI税務調査が気になる方/読了の目安:約9分
- KSK2とは何か、AIによる調査対象選定の仕組みと「AI税務調査システム」という誤解の実態
- 個人事業主が狙われやすい業種・パターンと、税務署が特に注目する「異常シグナル」
- 税務調査の流れ(事前通知〜実地調査)と、無申告加算税・重加算税など加算税の税率の目安
- KSK2稼働までに個人事業主が取り組むべき具体的な対策と、「お尋ね」が来たときの対応
ぜいむたん


KSK2とは何か|国税庁のシステム刷新とAIによる調査対象選定の仕組み
KSK(国税総合管理システム)は、平成7年(1995年)から運用されてきた国税庁の基幹システムで、確定申告データの管理から税務調査の支援まで、税務行政の根幹を担ってきました。約30年が経過し老朽化が進んだことを受け、次世代システム「KSK2」への刷新が進められています。稼働時期については2026年頃とされる報道・情報がありますが、正確な稼働日や内部仕様は国税庁の公式発表を確認する必要があります。
KSK2で変わる3つのポイント






よくある誤解:「KSK2=AIが全件監視するシステム」ではない
ネット上では「KSK2でAIが全てを監視する」という情報が見られますが、これは正確とは言い切れません。国税庁の公表資料上、KSK2はあくまで基盤システムの刷新が中心であり、AI技術の搭載範囲について詳細な公式記載は限定的です。一方で、AIを活用した申告データの分析・調査対象の選定自体は、KSK2とは別の取り組みとして既に進められており、調査件数を絞りつつ非違(申告漏れ等)を効率的に把握する運用が進んでいます。実際、令和6事務年度は調査等の追徴税額の総額が1,431億円と過去最高を更新しています。






AIによる調査対象選定で見られる3つの「異常シグナル」
同業種・同規模の申告データと比較し、経費率が平均から大きく外れていないかを検出。「特殊な事情」は証明できる記録が必要です。
取引先が提出した支払調書、電子帳簿保存法で保存された取引データ、申告書の数字を突き合わせ、ズレを検出しやすくなります。
単年度だけでなく、数年間の売上・利益率・経費の推移も分析対象。「売上は増えているのに利益率だけ下がる」といった動きは説明を求められやすくなります。
一般的な税務調査対策情報・税理士事務所の実務経験に基づく整理であり、AIの内部仕様を示すものではありません。
個人事業主が狙われやすいパターン|業種・シグナル別チェック






国税庁の公表情報や税理士事務所の調査立会い経験から、個人事業主・フリーランスが特に注意すべきパターンを整理しました。
| パターン | 内容 | 特に注意したい業種・状況 |
|---|---|---|
| 支払調書と申告額のズレ | 取引先が提出した支払調書の金額と、自分の申告額が一致しない | デザイン・原稿料・講演料など報酬型の仕事全般 |
| 消費税の免税点付近の売上 | 売上が1,000万円前後で推移し、分散申告を疑われるリスク | 個人事業と法人を併用しているケースなど |
| 同業種平均と乖離した経費率 | 同業種のデータと比較して経費率が異常値と判定される | 交際費・外注費比率が高い業種 |
| 税目間の数字の矛盾 | 所得税の収入と消費税の課税売上、法人からの報酬と個人申告額のズレ | 複数の取引先・複数の収入源がある方 |
| 現金取引比率が高い | キャッシュレス決済データと売上申告の整合性が検証されやすい | 飲食・小売・建設など現金商売の比率が高い業種 |
個人事業主が特に見られやすい3つのポイント
取引先からの報酬総額と申告額が一致しているか。日次記帳での照合が有効です。
売上1,000万円前後での推移は、理由をきちんと説明できる状態にしておきましょう。
同業種平均から大きく外れる経費計上は、理由を記録しておくことが重要です。






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個人事業主・フリーランスに対する税務調査の多くは「任意調査」で、事前通知を原則としています(実地調査に先立ち、より簡易な「お尋ね」や書面照会が行われるケースも増えています)。反面調査(取引先への確認)や、悪質性が疑われる場合の強制調査(査察)とは性質が異なります。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 1. 簡易な接触(お尋ね) | 文書・電話で申告内容の確認が届く。実地調査より軽微な確認 |
| 2. 事前通知 | 実地調査を行う場合、原則として調査日時・場所・目的等が事前に通知される |
| 3. 実地調査 | 調査官が事業所等を訪問し、帳簿書類・証憑を確認 |
| 4. 是正の要否確認・意見聴取 | 申告漏れ等が疑われる場合、修正すべき点について説明・確認が行われる |
| 5. 修正申告 または 更正 | 納税者が自ら修正申告するか、応じない場合は税務署が更正処分を行う |
調査対象となる税目・期間、当日必要な帳簿書類を確認します。不明点はその場で質問して構いません。
電子帳簿保存法対応のデータも含め、すぐ提示できる状態に整理しておきます。
調査経験のある税理士に立会いを依頼すると、当日のやり取りの負担を軽減できます。
わからない点は「確認して後日回答する」と伝えて問題ありません。曖昧な即答は避けましょう。
指摘内容に納得できない場合は、その場で即断せず税理士に相談してから対応します。
追徴課税のペナルティ|加算税・延滞税の税率






期限内に正しく申告・納税しなかった場合、本来の税額に加えて加算税・延滞税が課されることがあります。。
| 加算税・延滞税の種類 | 税率の目安 | 主なケース |
|---|---|---|
| 無申告加算税 | 納付税額のうち50万円までは15%、50万円超300万円までは20%、300万円超の部分は30%。税務調査前に自主的に期限後申告すれば5%に軽減 | 期限内に申告しなかった場合 |
| 過少申告加算税 | 原則10%、期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分は15% | 申告した税額が本来より少なかった場合 |
| 重加算税 | 過少申告の場合35%、無申告の場合40% | 事実の仮装・隠蔽があった場合 |
| 延滞税 | 法定納期限の翌日から納付までの日数に応じて年率で計算(期間により税率が変動) | 納期限までに完納しなかった場合 |
加算税は「隠したかどうか」で重さが変わる
過少申告加算税10〜15%。悪意のない計算誤りなど。
無申告加算税15〜30%。自主的な期限後申告なら5%に軽減される場合も。
重加算税35〜40%。最も重いペナルティで、社会的信用にも影響します。
出典:国税通則法・国税庁公表情報をもとに作成(国税庁 No.2024)。
KSK2・AI調査時代に個人事業主がやるべき対策






「月末にまとめて」「年末に一気に」では、ミスや漏れが発生しやすく、申告書間の整合性も取りにくくなります。銀行口座・クレジットカードと連携して自動取込し、日次で確認・修正する習慣をつけましょう。
2024年1月から電子取引データの電子保存が義務化されています。メールやWebで受け取った請求書・領収書をPDFで保存し、取引年月日・金額・取引先で検索できる状態にしておきます。紙の領収書もスキャンして保存する習慣をつけると安心です。
過去3年分の申告書を確認し、所得税の収入と消費税の課税売上の一致、法人からの報酬と個人申告額の整合性、前年比で大きく変動した項目の理由の記録がないかをチェックします。重大な問題が見つかった場合は、自発的な修正申告で加算税が軽減されるケースもあります。
交際費は「誰と」「何の目的で」、旅費交通費は「どこに」「何のために」をメモし、自宅兼事務所の按分は計算根拠を文書化しておきます。同業種平均と乖離した経費率は説明を求められやすいためです。
個人のフリーランスにデザイン料・原稿料・士業への報酬・講演料などを支払う場合、約10%の源泉徴収が必要です(法人への支払いは不要)。過去の外注費の支払い先を遡って確認しておきましょう。
クラウド会計ソフトの選び方の目安は次のとおりです。
| ソフト名 | 特徴 | おすすめペルソナ |
|---|---|---|
| freee会計 | 操作性◎、確定申告書自動作成、スマホ対応 | 初めて会計ソフトを使う個人事業主 |
| マネーフォワード クラウド確定申告 | 多機能、複数サービス連携、レポート充実 | 副業・複数収入源がある方 |
| マネーフォワード クラウド会計 | 法人・中規模事業向け、細かい設定可 | 売上規模が大きい個人事業主・フリーランス |
| 書類 | 入手先・確認先 | 備考 |
|---|---|---|
| 確定申告書・青色申告決算書の控え(過去3年分目安) | 自分の保管分・e-Taxの受信通知 | 税目間の整合性チェックに使用 |
| 支払調書 | 取引先から送付 | 自分の記帳額と照合 |
| 請求書・領収書(電子データ含む) | クラウド会計ソフト・メール・郵送 | 電子帳簿保存法の要件で保存 |
| 銀行口座・クレジットカードの取引明細 | 金融機関のオンライン明細 | 記帳との突合に使用 |
| 外注費の源泉徴収の記録 | 自分の支払記録 | 個人への支払いは源泉徴収の要否を確認 |
「お尋ね」・実地調査が来たときの対応






近年の傾向として、実地調査の件数はコロナ前の水準に完全には戻っていない一方、文書や電話による簡易な問い合わせ(お尋ね)は増加していると言われています。AIで「確度が高い」と判定された相手に、まずはコストのかからない方法で確認する、という流れです。「お尋ね」が届いた場合のポイントは以下のとおりです。
- 無視・放置は厳禁(本格的な実地調査に格上げされるリスクが高まる)
- 請求された書類は期限内に提出する
- 不安な場合は税理士に相談してから回答する
- 回答内容は写し・記録を必ず保存する
- 実地調査の連絡があった場合も、まずは落ち着いて日程・持参書類を確認する
30項目の自主点検チェックリストで総点検する
上記の対策を網羅的に確認するためには、体系的なチェックリストが有効です。「どこから手をつければいいかわからない」という方向けに、KSK2対策に特化した自主点検チェックリスト(30項目)と実践テンプレートをまとめたガイドを用意しました。
よくある質問(FAQ)
- KSK2の稼働で必ず税務調査されるようになりますか?
- そのようなことはありません。KSK2はシステムの基盤刷新であり、全員が調査対象になるわけではありません。ただし、AIによる調査対象の選定精度が向上するため、申告内容に不整合がある場合は従来より発見されやすくなる可能性があります。適正な申告・記帳をしている方への影響は限定的と考えられます。
- 副業収入のある会社員にも影響しますか?
- はい、影響します。副業収入がある場合、会社から支払われた給与所得と副業収入を合算した申告が必要です。税目横断でのデータ照合が進むほど、源泉徴収票の給与額と確定申告の収入額のズレは検出されやすくなります。副業収入がある方は特に申告内容の整合性確認が重要です。
- 小規模な個人事業主でも対策が必要ですか?
- 必要です。AIによる調査対象選定の影響は規模に関係なく及ぶとされています。「小さい事業だから大丈夫」という考えはリスクがあります。基本的な帳簿の整備と電子帳簿保存法への対応から始めることをおすすめします。
- 正しく申告していれば調査対象になることはないですか?
- 正確な申告は大前提ですが、「同業種平均から大きく外れた経費率」や「電子帳簿データの保存漏れ」があると、故意でなくても確認の対象になることがあります。調査対象として選定されること自体が精神的・時間的な負担になるため、正しい申告に加えて「誤解されない帳簿管理」を心がけましょう。
- 今から対策を始めても間に合いますか?
- 十分に間に合います。特に「クラウド会計ソフトの導入」と「電子帳簿保存法への対応」は今すぐ始められる対策です。まずはこの2つから着手することをおすすめします。
まとめ|KSK2時代は「正確な記帳」と「証拠を残す習慣」が最大の対策
KSK2はシステムの基盤刷新が中心であり、稼働したからといって必ずしも税務調査が急増するわけではありません。ただし、AIによる調査対象選定の精度が上がっていくことは間違いなく、個人事業主・フリーランスも他人事ではありません。最後に要点を整理します。
支払調書とのズレ・税目間の矛盾を防ぐ最も基本的な対策です。
経費率の外れ値や源泉徴収漏れは、記録があれば説明できます。
放置は禁物。早めの相談で本格的な調査への格上げを防ぎやすくなります。



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