外壁塗装や屋根の修理の見積書が届いたとき、「これは今期の経費(修繕費)にできるのか、それとも資産に計上して何年かに分けて減価償却しなければならないのか(資本的支出)」で手が止まった経験はないでしょうか。判断を誤ると、税務調査で「本来は資本的支出なのに全額を経費にしている」と指摘され、過去の申告を遡って修正することになりかねません。
厄介なのは、この判定に「20万円未満」「60万円未満」「取得価額の10%」「30%」という複数の数字基準が登場することです。ネット上の解説の多くはこの4つを並列に並べるだけで、実際にどの順番で当てはめるのかまでは書いていません。しかし国税庁の通達を読むと、実は当てる順番がきちんと決まっています。
この記事では、国税庁タックスアンサー No.5402・No.1379、法人税基本通達7-8節という一次情報にもとづき、「上から順に当てて、当たった時点で確定する」という判定フローを提示します。外壁塗装・屋根の葺き替え・ソフトウェア改修など12ケースの実例早見表と、自己点検チェックリストも用意しました。
📌 この記事でわかること
- 修繕費と資本的支出の分かれ目は「価値を高めるか」「使用可能期間を延ばすか」であり、請求書の科目名ではなく実質で判定すること
- 20万円未満・3年周期/60万円未満・10%以下/30%特例は並列ではなく、当てる順番が決まっていること
- 外壁塗装・屋根の葺き替え・機械の移設・ソフトウェア改修など12ケースの実例判定早見表
- 法人は「前事業年度終了の時」、個人は「前年末」の取得価額が10%基準の分母になる違い
- 資本的支出になった場合のその後の減価償却の要点
対象読者:個人事業主・フリーランス(青色申告)、法人の経理担当者・経営者/読了の目安:約12分
ぜいむたん


修繕費と資本的支出はどこで分かれるのか
固定資産(建物・機械装置・車両運搬具・器具備品・ソフトウェアなど)に修理や改良のための支出をしたとき、その支出は「修繕費」と「資本的支出」のどちらか一方に区分されます。この区分を誤ると、当期の損益や税額に直接影響するため、経理担当者にとっては避けて通れない論点です。
維持管理・原状回復のための支出=修繕費(支出時に損金・必要経費)
国税庁タックスアンサー No.5402は、固定資産の維持管理や原状回復のために要した金額を「修繕費」として、支出した時点で損金算入(個人の場合は必要経費)を認めています。壊れた部分を元の状態に戻すための費用は、基本的にここに含まれます。
価値を高める部分・使用可能期間を延ばす部分=資本的支出(資産計上して減価償却)
一方で、その修理・改良によって固定資産の使用可能期間が延びたり、価値が増加したりする場合、その延長・増加に対応する部分の金額は「資本的支出」となり、修繕費にはできません。資本的支出は資産として計上し、耐用年数にわたって減価償却していく必要があります。
名目ではなく実質で判定する
国税庁は「修繕費になるかどうかの判定は、修繕費・改良費などの名目によって判断するのではなく、その実質によって判定する」と明記しています。つまり、工事会社の見積書や請求書に「修繕費」と書かれていても、作業内容が用途変更のための改装であれば、税務上は資本的支出として扱われる可能性があるということです。
「資本的支出=経費にならない」ではない
資本的支出と判定されても、その支出が永久に経費にならないわけではありません。資産として計上したうえで、耐用年数に応じて毎年少しずつ減価償却費として経費化していくだけです。「その期に一括で経費にできるかどうか」の違いだと理解しておくと、判定の際に不要な不安を感じずに済みます。



- 修繕費=維持管理・原状回復のための支出。支出した年度に全額経費
- 資本的支出=使用可能期間を延ばす・価値を増加させる支出。資産計上して減価償却
- 判定は請求書の科目名ではなく、作業内容の実質で行う
判定フロー|4つの基準(STEP1〜4)を上から順に当てる
修繕費か資本的支出かを判定する際によく登場する「20万円」「60万円」「10%」「30%」という数字は、実は並列の選択肢ではありません。国税庁タックスアンサー No.5402には「上記の一つの修理、改修などの金額が20万円未満の場合またはおおむね3年以内の期間を周期として行われることが明らかな修理、改修などである場合の費用および上記1の適用のある支出額については、それぞれの取扱いが優先して適用されます」と明記されており、少額・周期基準・形式基準が30%特例よりも優先することが読み取れます。
なぜ順番が重要なのか
順番を無視して「30%特例が使えるかどうか」から考えてしまうと、本来20万円未満や60万円未満で全額修繕費にできたはずの支出まで、わざわざ30%だけ修繕費・70%を資本的支出に区分してしまうミスが起こります。逆に、避難階段の取付けのような「見るからに資本的支出」の工事だからと反射的に資産計上してしまい、20万円未満なら修繕費にできたはずの支出を取りこぼすミスも起こります。順番通りに当てはめることが、両方のミスを防ぐ鍵になります。
STEP1 20万円未満、またはおおむね3年以内の周期なら全額修繕費
最初に見るのは金額と周期です。「一つの修理・改良などの金額が20万円未満」または「おおむね3年以内の期間を周期として行われることが既往の実績その他の事情から明らかな修理・改良」であれば、その支出額を全額修繕費として損金経理できます(法基通7-8-3)。この取扱いは条文上「7-8-1にかかわらず」と書かれており、次のSTEP2で見る「明らかに資本的支出になる3類型」に当たる工事であっても、20万円未満または3年周期であれば修繕費にできます。だからこそ最初に確認します。
STEP2 明らかに資本的支出になる3類型
STEP1で決まらなかった場合に見るのが、法人税基本通達7-8-1が挙げる3類型です。①建物の避難階段の取付けなど、物理的に付け加えた部分の金額、②用途変更のための模様替えなど、改造や改装に直接要した金額、③機械の部分品を特に品質や性能の高いものに取り替えた場合で、通常の取替えの金額を超える部分の金額。ここに当たると判断できる支出は、資本的支出として確定します。
STEP3 区分が明らかでないとき|60万円未満、または前期末取得価額のおおむね10%以下なら全額修繕費
STEP1・STEP2のいずれでも決まらず、資本的支出か修繕費か明らかでない金額がある場合、形式基準(法基通7-8-4)を見ます。その支出額が60万円未満のとき、またはその固定資産の前事業年度終了の時における取得価額のおおむね10%相当額以下のときは、修繕費とすることができます。
STEP4 それでも決まらないとき|30%と10%のいずれか少ない金額を修繕費
STEP1(20万円未満・3年周期)にもSTEP3(60万円未満・10%以下)にも当たらず、STEP2の3類型にも当てはまらないため区分が決まらない。この場合に初めて使えるのが、区分の特例(法基通7-8-5)です。法人が継続してその支出額の30%相当額と、前期末取得価額の10%相当額のいずれか少ない金額を修繕費とし、残額を資本的支出としているときは、その処理が認められます。「継続して」いることが条件なので、都合のいい年だけ使う・使わないという運用はできません。



当たる
→ 全額修繕費で確定(判定終了・7-8-1にかかわらず適用可)
当たらない
→ STEP2へ進む
当たる
→ 資本的支出で確定(判定終了)
当たらない
→ STEP3へ進む
当たる
→ 全額修繕費で確定(判定終了)
当たらない
→ STEP4へ進む
支出額×30%と前期末取得価額×10%のいずれか少ない金額を修繕費、残額を資本的支出とする。
STEP1(20万円未満・3年周期)またはSTEP3(60万円未満・10%以下)が当たる支出については、STEP4の30%特例は使えません。国税庁の解説でも「それぞれの取扱いが優先して適用される」と明記されています。当たる基準を先に確定させてから、次のステップに進むことが重要です。
数字で確かめる|形式基準の当てはめ例
判定フローだけではイメージがつかみにくいので、実際の金額で当てはめてみます。取得価額2,000万円の建物を例に、支出額が異なる2つのケースを比較してみましょう。
例1 取得価額2,000万円の建物に外壁工事550万円(塗り替えと改良が混在し区分が明らかでない場合)
まず前提を確認します。法基通7-8-4(STEP3)も7-8-5(STEP4)も、「一の修理、改良等のために要した費用の額のうちに資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでない金額がある場合」に使える取扱いです。ここでは、既存と同等の塗料での塗り替えと、外壁の耐久性を高める改良が同じ工事に混在していて、請求書からはどこまでが原状回復でどこからが価値の増加なのか切り分けられない、というケースを想定しています。なお、単純な塗り替えだけで改良が混ざっていないのであれば(実例早見表の(1)がこのケースです)、そもそも区分が明らかなので本例のような按分は行わず、全額が修繕費です。
そのうえで金額を当てはめます。10%基準の金額は2,000万円×10%=200万円です。支出額550万円は60万円未満でもなく、200万円以下でもないため、STEP3の形式基準は使えません。STEP4の区分の特例に進みます。
前期末取得価額2,000万円×10%=200万円。支出額550万円はこれを超えるため、60万円未満・10%以下のどちらにも当たらず、STEP3の形式基準は使えません。
支出額の30%=550万円×30%=165万円。前期末取得価額の10%=200万円。両者を比較すると、165万円のほうが少ない金額になります。
いずれか少ない金額である165万円を修繕費とし、残額の385万円(550万円-165万円)を資本的支出として資産計上・減価償却します。
例2 取得価額2,000万円の建物に修理150万円
例1と同じく、修繕費か資本的支出かが明らかでない金額を含む工事だとします。10%基準の金額は200万円です。支出額150万円は60万円以上ではありますが、200万円以下であるため「前期末取得価額のおおむね10%以下」に当たり、STEP3の形式基準がそのまま使えます。したがって全額を修繕費として処理できます。「60万円未満」と「10%以下」はOR条件であることに注意してください。
10%基準の分母は法人=前事業年度終了の時/個人=前年末の取得価額
ここで法人と個人事業主の違いに注意が必要です。国税庁タックスアンサー No.5402(法人税)では「前事業年度終了の時における取得価額」、No.1379(所得税・個人の不動産所得・事業所得)では「前年末の取得価額」が10%基準の分母になります。呼び方は違いますが、いずれも直前の決算期末・年末時点での取得価額(過去の資本的支出を含めた金額)を指します。
例1と例2の判定結果比較
10%基準(200万円)を超えるためSTEP4の区分特例を適用。修繕費165万円/資本的支出385万円。単純な塗り替えのみなら按分せず全額修繕費。
10%基準(200万円)以下のためSTEP3で確定。全額修繕費150万円。



実例12ケース 判定早見表
ここまでの判定フローを、実務でよく出てくる12の具体例に当てはめてみます。外壁塗装や屋根の葺き替えのように「同じ工事でも一部だけ資本的支出になる」ケースもあるため、それぞれの根拠と実務上の注意点もあわせて確認してください。






実例12ケース 判定早見表
判定:周期的な塗り替え部分は修繕費。同時に断熱材を新設した部分は資本的支出。
根拠:No.5402/7-8-3。注意:一つの見積書でも工事内容を分けて区分する。
判定:同等品への葺き替えは修繕費。耐久性の高い材質へ変更し価値が増す部分は資本的支出。
根拠:No.5402。注意:材質変更の有無を見積書の仕様欄で確認する。
判定:修繕費。
根拠:No.5402(維持管理)。注意:型番を上げて機能を追加した場合は再検討する。
判定:通常の取替金額を超える部分が資本的支出。
根拠:法基通7-8-1(3)。注意:通常の取替相当額との差額を見積書から切り出す。
判定:資本的支出。
根拠:法基通7-8-1(1)。注意:物理的な付加は原則として資本的支出。ただし20万円未満なら7-8-3が優先し修繕費にできる。
判定:資本的支出。
根拠:法基通7-8-1(2)。注意:賃借物件の内装工事でも同じ考え方が適用される。
判定:修繕費。
根拠:法基通7-8-2(2)。注意:同項は「7-3-12《集中生産を行う等のための機械装置の移設費》の本文の適用のある移設」を除いている。工場再編・生産集約に伴う移設は本項の対象外で、移設費は機械装置の取得価額に算入する。移設に伴う性能向上部分があれば別途区分する。
判定:旧資材の70%以上を再使用し、従前と同一の規模・構造で再建築する場合は修繕費。
根拠:法基通7-8-2(1)。注意:規模・構造を変更すると資本的支出になりうる。
判定:修繕費。
根拠:法基通7-8-6の2。注意:作業報告書に修正内容を残しておく。
判定:資本的支出。
根拠:法基通7-8-6の2。注意:バグ修正と同時発注の場合は作業内容ごとに切り分ける。
判定:修繕費。
根拠:No.5402(災害特例)。注意:復旧に代えた新規取得は対象外。
判定:通常の例により判定(全額修繕費にはならない)。
根拠:法基通7-8-9。注意:耐用年数を過ぎていても判定基準は変わらない。
ソフトウェアの改修はどう分けるか
クラウド会計ソフトや自社システムのソフトウェア改修についても、修繕費か資本的支出かの区分が必要です。法人税基本通達7-8-6の2は、建物や機械とは別の観点で、作業内容に着目した区分基準を定めています。
プログラムの機能上の障害の除去・現状の効用の維持=修繕費
ソフトウェアの修正等が、プログラムの機能上の障害の除去や、現状の効用の維持に該当するときは、その修正等に要した費用は修繕費に該当します。バグの修正や、動作環境の変化に対応するための小規模な調整は、基本的にここに含まれます。
新たな機能の追加・機能の向上=資本的支出
一方、修正等が新たな機能の追加や機能の向上に該当するときは、その修正等に要した費用は資本的支出に該当します。従来できなかった処理を新しくできるようにする改修は、こちら側に区分されます。
判断に迷いやすい「バージョンアップ」の扱い
「バージョンアップ」という名称だけでは判定できません。実際の作業内容が不具合修正や現状維持なのか、新機能の追加なのかで区分が変わるためです。開発会社との契約書や作業報告書に、修正内容を具体的に記載してもらい、金額を機能別に分けてもらうことが、あとから税務調査で説明する際の助けになります。






- 機能上の障害の除去・現状の効用の維持=修繕費
- 新たな機能の追加・機能の向上=資本的支出
- 作業内容が混在する場合は、金額を機能別に分けてもらう
災害で被害を受けた資産の特例
台風や地震などの災害で固定資産が被害を受けた場合には、通常の判定に加えて特別な取扱いが認められています(評価損を計上した資産を除く)。復旧のスピードが求められる場面だからこそ、あらかじめ処理方法を知っておくと安心です。
原状回復のための支出は修繕費
被災資産について、その原状を回復するために支出した金額は修繕費として処理します。壊れる前の状態に戻すための費用であれば、通常の修繕費と同じ考え方です。
被災前の効用を維持するための補強工事・排水・土砂崩れ防止は修繕費経理が認められる
被災前の効用を維持するために行う補強工事や、排水・土砂崩れの防止などのために支出した金額についても、修繕費として経理を行っている場合は、その処理が認められます。賃借している資産について補修義務がない場合でも、原状回復のための補修費用を修繕費として経理したときは、その処理が認められます。
区分が明らかでない部分は30%を修繕費とする経理が認められる
被災資産について支出した金額のうち、修繕費か資本的支出か明らかでないものがある場合、その金額の30%相当額を修繕費とし、残額を資本的支出とする経理を行っているときは、その処理が認められます。通常の30%特例(法基通7-8-5)とは異なる、災害特有の取扱いであることに注意してください。
復旧に代えて新規に資産を取得した場合・貯水池や避難緑地を新設した場合は修繕費にできない
被災資産の復旧に代えて新規に資産を取得したり、災害の発生を契機として貯水池や避難緑地などを新たに設置したりする場合は、新たな資産の取得となるため、修繕費としての処理は認められません。「災害だから全部修繕費」と早合点しないよう注意が必要です。



災害特例の30%は、通常の区分の特例(法基通7-8-5)とは根拠・適用条件が異なる別の取扱いです。混同して両方を同時に使おうとするミスに注意してください。
資本的支出になったあとの減価償却(要点のみ)
資本的支出と判定されたあと、実際にどう償却していくのかも簡単に触れておきます。詳しい計算方法は既存の関連記事に譲り、ここでは国税庁タックスアンサー No.5405の要点だけを押さえます。
- 原則
資本的支出は、その支出金額を固有の取得価額として、既存の減価償却資産(旧減価償却資産)と種類・耐用年数を同じくする新たな減価償却資産(追加償却資産)を取得したものとして、その種類と耐用年数に応じて償却します。 - 旧資産(平成19年3月31日以前取得)への例外
旧減価償却資産の取得価額に資本的支出を加算して償却する方法も認められていますが、一度この方法を選んだら翌事業年度以後に原則法へ戻すことはできません。 - 定率法適用資産への特例
平成24年4月1日以後取得の定率法適用資産については、資本的支出をした事業年度の翌事業年度開始の時に、旧資産と追加償却資産の帳簿価額の合計を取得価額とする一の資産を新たに取得したものとすることができます。ただし、平成19年4月1日から平成24年3月31日までに取得した旧資産(250%定率法)への資本的支出(200%定率法)は償却率が異なるため、この特例は使えません。
資本的支出後にどう償却するかの詳細な取扱い(旧資産との合算の可否・定率法での翌期首合算など)は、国税庁タックスアンサー No.5405「資本的支出後の減価償却資産の償却方法等」にまとまっています。減価償却そのものの計算方法(定額法・定率法・耐用年数の考え方)は、当ブログの次の記事も参考にしてください。



判定を間違えないための自己点検チェックリスト
ここまでの内容を、実際に見積書や請求書を前にしたときにその場で使えるチェックリストにまとめました。工事や改修の内容が確定したら、次の項目を一つずつ確認してください。



- 請求書の科目名ではなく、作業内容の明細で判定したか
- 一つの計画に基づく修理・改良などを、金額だけを理由に分割していないか(複数事業年度にわたる場合は各事業年度ごとの金額で判定する)
- 10%基準の分母(前期末取得価額・前年末取得価額)に、過去の資本的支出を含めているか
- 30%特例(区分の特例)を使うなら、継続して適用しているか
- 耐用年数を経過した資産についても、通常の例により判定したか(全額修繕費にしていないか)
- 根拠資料(見積書・作業報告書・写真)を保存したか
よくある間違い
修繕費と資本的支出の判定でよく見られる間違いを4つまとめました。いずれも「基準の一部だけを覚えて、条件を確認せずに当てはめてしまう」ことが原因です。
- 「20万円未満なら何でも修繕費」と考えてしまう
20万円未満の基準は、あくまで「一つの修理・改良等」の単位で判定します。同じ工事を意図的に複数の請求書に分けて20万円未満に見せても、実質は一つの修理・改良として判定されます。 - 「60万円未満なら必ず修繕費」と考えてしまう
60万円未満・10%以下の形式基準は、明らかに資本的支出である支出(避難階段の取付けなど3類型)には使えません。金額が小さくても、内容が明らかに資本的支出であれば形式基準は適用されません。 - 30%特例を単年度だけ都合よく使う
区分の特例は「継続して」適用することが条件です。ある年だけ都合よく使い、別の年は使わないという運用は認められません。 - 耐用年数が過ぎた資産の大規模改修を全額修繕費にする
「もう耐用年数を過ぎているから全部経費でいいはず」という考え方は誤りです。法基通7-8-9は、耐用年数を経過した資産についても、資本的支出と修繕費の区分は通常の例により判定するとしています。
よくある質問(FAQ)
- 一つの工事を複数の請求書に分けたら20万円未満の判定はどうなりますか?
-
請求書を分けても判定は変わりません。20万円未満・3年周期の基準は「一つの修理・改良等」の単位で見るため、実質的に一つの工事計画であれば、請求書の分け方にかかわらず合計額で判定されます。工事内容と契約の実態を基準に判断してください。
- 前期末取得価額の10%というのは、購入時の金額ですか、帳簿価額ですか?
-
取得価額であり、帳簿価額(取得価額から減価償却累計額を差し引いた金額)ではありません。過去に資本的支出があった場合は、それも含めた取得価額が基準になります。前事業年度終了の時点(個人の場合は前年末)の取得価額を確認してください。
- 個人事業主でも同じ基準ですか?
-
基本的な考え方(実質判定・20万円未満・3年周期・60万円未満・10%以下・30%特例)は法人・個人で共通です。ただし、10%基準の分母について、法人は「前事業年度終了の時における取得価額」、個人(不動産所得・事業所得)は「前年末の取得価額」という呼び方の違いがあります(国税庁タックスアンサー No.5402・No.1379)。
- 賃借している事務所の内装工事はどちらになりますか?
-
賃借資産であっても、判定の考え方自体は自己所有資産と同じです。用途変更のための模様替えや改造・改装に直接要した金額は資本的支出、通常の維持管理や原状回復のための金額は修繕費になります。賃貸借契約上の原状回復義務の有無とは別に、作業内容で判定する点に注意してください。
- 修繕費として処理したものが税務調査で資本的支出と指摘されたらどうなりますか?
-
指摘された部分を資本的支出として資産計上し直し、過去にさかのぼって減価償却費を再計算のうえ、修正申告・過少申告加算税や延滞税が発生する可能性があります。見積書や作業報告書などの根拠資料を保存し、判定の理由を説明できる状態にしておくことが、指摘リスクを下げる最も実務的な対策です。
修繕費と資本的支出の判定フローまとめ:4基準を上から順に当て、根拠を残す



当たれば全額修繕費で確定します。この取扱いは通達上「7-8-1にかかわらず」適用できるため、次のSTEP2の3類型より先に確認します。
避難階段の取付けなど物理的な付加、用途変更のための模様替え、高性能部品への取替えの通常超過部分に当たる場合は資本的支出で確定します。
いずれかに当たれば全額修繕費で確定します。法人は前事業年度終了の時、個人は前年末の取得価額が基準になります。
支出額の30%と前期末取得価額の10%のいずれか少ない金額を修繕費、残額を資本的支出とします。この処理は継続して適用することが条件です。
見積書・作業報告書・写真などの根拠を保存し、自己点検チェックリストで判定に漏れがないかを再確認しておきましょう。



修繕費・資本的支出の区分が決まったあとは、固定資産台帳の管理機能や自動登録の使いやすさで会計ソフトを選ぶと、月次の入力が楽になります。
あわせて読みたい
イザークコンサルティング
記事執筆代行・Web/LP制作
公認会計士試験合格者が、専門性とSEOを両立した記事制作と、WordPress×SWELLのWeb/LP制作までワンストップで対応します。
▶ 記事執筆代行を見る
▶ Web・LP制作を見る
参考:国税庁タックスアンサーNo.5402「修繕費とならないものの判定」(法人税)/No.1379「修繕費とならないものの判定」(所得税)/法人税基本通達 第7章第8節「資本的支出と修繕費」/No.5405「資本的支出後の減価償却資産の償却方法等」


コメント