「社会保険料が高すぎて手取りが全然増えない…」「マイクロ法人を作ると社会保険料が安くなると聞いたけど、本当に?」——そんな悩みを持つ個人事業主・フリーランスのあなたへ。
マイクロ法人(一人会社)を設立して個人事業と「二刀流」で運営すると、国民健康保険+国民年金から社会保険(健康保険+厚生年金)へ切り替えることで、社会保険料を大幅に圧縮できます。たとえば前年の事業所得が200万円程度の個人事業主が二刀流を組めば、年間30万円前後の社会保険料(個人負担分)の圧縮につながる試算もあります(法人の社会保険料折半や維持費を含めた損益分岐は後述します)。
ただし「業種を分けなければ否認リスクがある」「将来の年金が減る」「法人維持費が年17万円前後かかる」など、注意すべきデメリットも存在します。本記事では役員報酬別の社会保険料早見表・年間シミュレーション・損益分岐ラインを数値で示し、「自分には本当にメリットがあるのか」を判断できるよう解説します。
ぜいむたん


マイクロ法人×個人事業の「二刀流」とは——なぜ社会保険料が下がるのか






個人事業主が加入する社会保険には大きな特徴があります。国民健康保険料は前年の所得に比例して増加し、所得が高くなるほど負担が重くなります。国民年金は定額ですが、2026年度は月額17,920円(年間約215,000円)と決して安くありません。
一方、法人を設立して役員になると、社会保険(健康保険+厚生年金)に加入できます。社会保険の保険料は「役員報酬(給与)の金額」に基づいて計算されます。つまり役員報酬を最低限に設定すれば、社会保険料も最低限に抑えられるのです。
- 個人事業:メインの収入(コンサル・フリーランス業など)を引き続き個人で稼ぐ
- マイクロ法人:別業種の事業を法人で行い、自分を役員として役員報酬を設定
- 法人の役員報酬が「給与収入」となり、社会保険(協会けんぽ)への加入資格が発生
- 社会保険加入により国保・国民年金を脱退→役員報酬に応じた(低額な)社会保険料へ
重要なポイントは、個人事業の収入は社会保険料の計算対象外になることです。個人事業で年間500万円稼いでいても、役員報酬が月45,000円なら社会保険料はその報酬額に基づく金額だけで済みます。これが「二刀流」が社会保険料の最適化に有効な理由です。
役員報酬はいくらに設定する?社会保険料が最安になるライン






社会保険の保険料は「標準報酬月額」という等級で決まります。役員報酬を低く設定するほど等級が下がり、保険料も安くなります。ただし、社会保険に加入するためには一定の報酬額が必要です。
社会保険料を最小化するなら、役員報酬は月額45,000円以下が一つの目安です。ただし、実際に加入できる最低ラインや等級区分は協会けんぽの料率改定で変動するため、設定時に最新の保険料額表(協会けんぽ公式サイト)を必ず確認してください。
図版①:役員報酬別 社会保険料の本人負担(マイクロ法人・協会けんぽ東京・40歳未満)
ポイント:厚生年金は標準報酬月額88,000円が下限。役員報酬をこれ未満に下げても、厚年の本人負担約8,052円/月(年約9.7万円)は必ず発生します。そのため本人負担の下限は約10,900円/月・年約13万円です。
| 役員報酬(月額) | 健保 本人(折半) | 厚年 本人(折半) | 本人負担 計/月 | 年間 | 評価 |
|---|---|---|---|---|---|
| 0円 | 社会保険に加入できない(被保険者資格なし) | ✕ | |||
| 45,000〜62,999円 | 約2,857円 | 約8,052円 | 約10,900円 | 約13.1万円 | ◯ |
| 63,000〜82,999円 | 約3,349〜3,842円 | 約8,052円 | 約11,400〜11,900円 | 約13.7〜14.3万円 | ◯ |
| 88,000〜92,999円 ◎最効率 | 約4,334円 | 約8,052円 | 約12,400円 | 約14.9万円 | ◎ |
| 98,000円 | 約4,827円 | 約8,967円 | 約13,800円 | 約16.6万円 | △ |
▼ 参考:協会けんぽ東京の保険料額表(抜粋・本人折半額)
| 等級 | 標準報酬月額 | 報酬月額 | 健保 折半(介護なし) | 厚年 折半 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 58,000 | 〜63,000 | 2,856.5 | 8,052.0※ |
| 2 | 68,000 | 63,000〜73,000 | 3,349.0 | 8,052.0※ |
| 3 | 78,000 | 73,000〜83,000 | 3,841.5 | 8,052.0※ |
| 4 | 88,000 | 83,000〜93,000 | 4,334.0 | 8,052.0 |
| 5 | 98,000 | 93,000〜101,000 | 4,826.5 | 8,967.0 |
※ 厚生年金は標準報酬月額88,000円が下限のため、報酬が88,000円未満でも折半額8,052円が発生します。金額は協会けんぽ東京・厚生年金保険料率18.3%に基づく本人折半額(40歳未満・介護保険なし)。等級区分・保険料率は毎年改定されるため、最新の協会けんぽ公式「保険料額表」を必ずご確認ください。40〜64歳は健康保険に介護保険分が上乗せされます。
役員報酬は原則として事業年度開始から3か月以内に設定し、その後は原則1年間変更できません(定期同額給与)。設立時・年度開始時に慎重に設定してください。また役員報酬を低く設定するほど将来の厚生年金受取額も少なくなります。老後設計も含めた総合的な判断が必要です。
実際いくら得する?個人事業のみ vs 二刀流 年間シミュレーション






以下は40歳未満・扶養なし・東京都在住のケースを前提に試算したシミュレーションです。国民健康保険料は前年所得をもとに計算される仕組みで、所得が高いほど保険料も増加します。
図版②:「個人事業のみ」vs「二刀流」 年間社会保険料比較(40歳未満・扶養なし・試算)
| 前年所得 | 国保+国民年金 (個人事業のみ) |
社会保険本人負担 (二刀流・役員報酬45千円) |
個人負担の年間削減額 |
|---|---|---|---|
| 150万円 | 約391,000円 | 約131,000円 | 約260,000円 |
| 200万円 | 約442,000円 | 約131,000円 | 約311,000円 |
| 300万円 | 約545,000円 | 約131,000円 | 約414,000円 |
| 500万円 | 約751,000円 | 約131,000円 | 約620,000円 |
※ 国保は東京特別区・令和8年度料率(大田区:医療分 均等割47,600円+所得割7.51%、支援分 均等割17,600円+所得割2.80%)で試算。国民年金は月額17,920円×12=約215,000円。二刀流は社会保険本人負担分のみ(法人折半分は法人コスト)。個人負担削減額は「国保+国民年金」と「社保本人負担」の差額。法人の社保折半負担・法人維持費は含まず別途考慮が必要。住所地・加入組合・扶養家族の有無で大きく変動します。必ずご自身の条件で試算してください。
上の表の「個人負担削減額」は、個人事業主が自分で払う社会保険料がどれだけ減るかを示しています。ただし法人も社会保険料の半額(約131,000円/年)を負担するため、それも法人のコストとして計上されます。純粋な手取りへの影響は「削減額 − 法人折半分 − 法人維持費」で判断する必要があります。
また配偶者を扶養に入れられるケースでは、配偶者の国保料がゼロになるため削減効果がさらに大きくなります。配偶者が国保に加入していた場合、その保険料ぶんも丸ごと節約できるのが二刀流の大きな強みです。
住所地の市区町村HPまたは国保の計算シミュレーターで、前年所得をもとに現在の国民健康保険料(年額)を確認します。国民年金(年額約215,000円)と合算した合計額がスタートラインです。
協会けんぽの保険料額表で役員報酬月45,000円の場合の本人負担額を確認します(都道府県別に料率が異なります)。年間の本人負担額を計算します。
「国保+国民年金」−「社保本人負担」で削減額を計算し、法人折半分(約13万円)+法人維持費(約17万円)の合計(約30万円)と比べます。削減額が法人コスト合計を上回れば二刀流にメリットが出ます。
損益分岐はどこ?法人維持費と削減額の比較






マイクロ法人を維持するためには、次のようなコストが毎年発生します。赤字でも利益ゼロでも発生するコストがあるため、事前の試算が重要です。
- 法人住民税均等割:最低約70,000円/年(赤字・利益ゼロでも発生。法人の所在地・資本金額で変わる)
- 法人税申告費用(税理士依頼):50,000〜150,000円/年(自力申告なら削減可能だが複雑)
- 法人の記帳・会計ソフト代:12,000〜30,000円/年
- 登記・各種手続き:不定期(役員変更登記など)
- 合計目安:年間150,000〜250,000円前後(おおむね17万円前後が一般的な試算の目安)
図版③:所得帯別「社保削減額(個人負担分)− 法人コスト合計」の損益分岐(40歳未満・扶養なし・試算)
| 前年所得 | 個人削減額 | 法人コスト (折半約13万+維持約17万) |
差引 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| 150万円 | 約26万円 | 約30万円 | ▲約4万円 | 不利 |
| 200万円 | 約31万円 | 約30万円 | +約1万円 | 損益分岐点 |
| 300万円 | 約41万円 | 約30万円 | +約11万円 | 有利 |
| 500万円 | 約62万円 | 約30万円 | +約32万円 | 大幅有利 |
※ 法人コスト=法人の社保折半(約13万円)+法人維持費(約17万円)の合計約30万円で試算。社保本人負担は役員報酬45,000円・年約13万円(厚年下限含む)。国保は東京特別区・令和8年度料率(大田区)で試算。配偶者扶養中の場合や国保料が高い地域では削減額が大きくなりより有利。住所地・加入組合・個人の所得状況により大きく異なります。数値はあくまでも目安です。
上の試算から、扶養なしの場合は「前年所得200万円」前後が損益分岐点の目安です(200万円ではほぼトントン、300万円以上で明確に有利。国保料が高い地域や配偶者扶養があるケースではさらに有利になります)。所得が上がるほど国保料も増えるため、二刀流の節約効果は所得が高いほど大きくなります。
一方、配偶者を扶養に入れられるケースでは配偶者の国保料もゼロになるため削減額が一気に膨らみ、所得150万円台でも損益分岐を超えるケースがあります。ご自身の家族構成と所得を合わせて試算することが重要です。
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見落とすと危険——二刀流の必須条件とデメリット






二刀流の社会保険最適化は合法的な節税・節約手法ですが、いくつかの必須条件と重大なデメリットがあります。事前に全て把握したうえで判断してください。
法人と個人事業で同じ業種・同じ取引先を使う場合、「個人で得るべき所得を法人に付け替えて社会保険料を圧縮している」とみなされ、税務調査で否認されるリスクがあります。例えば個人事業でITコンサルをしているなら、法人は不動産賃貸や別のサービス業にするなど、事業内容を明確に分ける必要があります。また法人には実際の事業実態・勤務実態が必要であり、形だけの法人は認められません。
二刀流の主なデメリット・注意点チェックリスト
役員報酬を低く設定するほど厚生年金の標準報酬が下がり、将来受け取る老齢厚生年金が少なくなります。国民年金より厚生年金のほうが受給額が多い仕組みですが、報酬を低く抑えるとその恩恵が小さくなります。老後の収入設計を合わせて考える必要があります。
赤字でも法人住民税均等割(最低約7万円/年)が発生。決算申告・法人の記帳管理が必要で、個人事業だけのときより手間と費用が増えます。自力申告は複雑なため税理士費用も必要になるケースが多いです。
マイクロ法人を使った社会保険料最適化は合法ですが、税務・社会保険当局が問題視し制度改正が行われる可能性があります。また社会保険の形式加入(実態なし)は年金事務所の調査対象になりえます。
役員報酬を低く抑えると「給与収入」が少なくなり、住宅ローン審査や金融機関の融資審査で不利になる場合があります。大きな借入れを予定している場合は事前に金融機関に確認してください。






業種の分け方については、本来の事業内容・スキル・資産を活かしながら法人で別事業を立ち上げる設計が求められます。「とりあえず形だけ別事業」では実態がないとみなされるリスクがあるため、法人として実際に売上が発生する事業を選ぶことが重要です。
二刀流 業種の組み合わせ例(参考)
個人事業:システム開発・Webデザイン
→ クライアント向けの受託開発を個人で
法人:デジタル教材・テンプレート販売
→ BASEやBOOTH等を通じた物販・コンテンツ
同一業種・同一取引先への売上付け替えは否認リスク。税理士に相談のうえ設計してください。
よくある失敗・ミス——二刀流で損するパターン3選






最も多い失敗です。「個人でも法人でも同じコンサル業務をやった」「同じクライアントから法人名義でも個人名義でも請求した」というケースは、所得の付け替えとみなされて税務調査で否認されるリスクがあります。二刀流を始める前に業種・取引の切り分けを明確にし、記録を残してください。
「社会保険料が安くなる」と聞いて焦って設立したが、事業所得が低く削減額が法人維持費を下回るケースです。前年所得が150万円台以下(扶養なし)では損益分岐に届かないケースが多くあります。まず自分の所得と国保料を正確に試算してから判断することが重要です。
「とにかく保険料を安くしたい」と役員報酬をゼロや極端に低くした結果、社会保険の被保険者資格を取得できなかったというケースがあります。社会保険加入には一定の報酬額が必要です。協会けんぽや年金事務所に事前確認のうえ、加入できる最低限の報酬額を設定してください。
まとめ——二刀流を検討する前にやるべき3ステップ






マイクロ法人×個人事業の二刀流は、正しく設計すれば年間数十万円の社会保険料を節約できる強力な手法です。ただし「業種を分ける」必須条件・法人維持費との損益分岐・将来の年金減少というデメリットを十分理解したうえで取り組む必要があります。
マイクロ法人二刀流まとめ:3ステップで判断しよう
前年の事業所得と扶養の有無を確認し、「社保削減額(個人負担分)− 法人折半分 − 法人維持費(約17万円)」がプラスになるかを計算。目安は扶養なしで所得200万円前後〜。削減額が維持費を上回ることを確認してから設立を検討してください。
個人事業とは明確に異なる業種を法人で行えるか検討します。同一業種での所得分散は否認リスクがあるため必須の条件です。「実態のある別事業」を法人で立ち上げられるかどうかを専門家と一緒に設計してください。
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よくある質問(FAQ)
- マイクロ法人の二刀流は、所得がいくらからやる価値がありますか?
-
目安は40歳未満・扶養なしで「前年の事業所得が200万円程度から」です。厚生年金は標準報酬月額88,000円が下限のため、役員報酬を下げても社会保険料の本人負担・法人折半はそれぞれ年約13万円発生します。前年所得200万円で個人負担削減額が約31万円になり、法人折半分(約13万円)+法人維持費(均等割7万円+税理士報酬等で約17万円前後)の合計約30万円とほぼ均衡し、300万円以上で明確に上回ります。配偶者を扶養に入れられる場合や国保料が高い地域ではより低い所得でも有利になります。逆に所得が低く削減額が法人コストを下回る場合は、二刀流のメリットは出ません。ご自身の所得と国保料の実額で試算することが重要です。
- 役員報酬はいくらに設定すればいいですか?0円でもいいですか?
-
社会保険料と所得税を最小化するなら、役員報酬は月額45,000円以下が一つの目安です。ただし役員報酬0円だと社会保険に加入できないため、二刀流の目的(国保・国民年金から社保への切り替え)を達成できません。社会保険に加入できる範囲で、かつ保険料が最安等級に収まる金額(月額11,411円〜45,000円程度)に設定するのが一般的です。金額は等級区分の改定で変わるため、設定時に最新の協会けんぽ保険料額表を必ず確認してください。また役員報酬は原則として事業年度開始から3か月以内に決定し、年途中の変更は原則できない点にも注意が必要です。
- 法人と個人事業で同じ仕事をしてはいけないのですか?
-
はい、法人と個人事業は「業種(事業内容)を分ける」ことが必須です。同じ業種にすると、本来は個人で得るべき所得を法人に付け替えて社会保険料を圧縮しているとみなされ、税務調査で否認されるリスクがあります。例えば個人事業でコンサルティングをしているなら、法人は不動産賃貸や別事業にするといった切り分けが必要です。また法人には実際の事業実態・勤務実態が求められ、形だけの法人はリスクが高い点にも注意してください。業種の切り分けは専門家(税理士)と相談しながら設計することを強くおすすめします。
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