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年末調整で還付が出ると、その分を従業員に払って終わりではありません。会社が納める源泉所得税から差し引くという精算をして、納付書にもその金額を書きます。令和8年分は基礎控除と給与所得控除の引上げで還付が大きくなるため、12月分の納付額から引ききれない会社が例年より多く出ます。
この記事では、超過税額をいくら充当できるか・いくら翌月へ繰り越すかを計算するツールと、預り金の仕訳、そして令和8年9月24日に予定されている納付書の様式変更までまとめます。
ぜいむたん


📌 この記事でわかること全体読了 約12分
- 納付書の「年末調整による超過税額」欄に書く金額の決め方
- 12月分の徴収税額に超過税額をいくら充当でき、いくら繰り越すかを計算するツール
- 2か月を経過しても還付しきれない見込みのときに使う還付請求書
- 納付書のどの欄に還付税額を書くかの記入例(図解)
- 12月給与の仕訳と、還付する人・追加徴収する人が両方いるときの預り金の両建て/相殺
- 令和8年9月24日に予定されている納付書の様式変更(お問い合わせ番号13桁・A4単票式)
超過税額は「納付額から差し引く」で精算する
国税庁は令和8年度税制改正のQ&Aで、毎月の徴収税額の合計額が年調年税額より多いときの差額(過納額)について、年末調整を行った月分(通常は12月分、納期の特例の承認を受けている場合は7月から12月分)として納付する徴収税額から差し引いて、過納となった人に還付すると整理しています。
そして、年末調整を行った月分の徴収税額だけでは還付しきれないときは、その後に納付する徴収税額から差し引いて順次還付するとされています。つまり納付書の記載は次の順序で決まります。
納付書に書く金額の決まり方
| 欄 | 書く金額 |
|---|---|
| 俸給・給料等/賞与/税理士等の報酬 | その月に支払った金額と、そこから徴収した税額 |
| 年末調整による超過税額 | その月の徴収税額に対して実際に充当した金額(徴収税額を超える金額は書かない) |
| 本税 | 徴収税額の合計から超過税額を差し引いた金額。マイナスになる場合は0 |
| 合計額 | 本税と同額(加算税等がなければ)。0円でも納付書は提出する |
ポイントは、超過税額の欄にその月の徴収税額を超える金額は書かないことです。引ききれなかった残りは翌月分の納付書で改めて充当します。ここを取り違えて過納額の全額を書いてしまうと、納付書の計算が合わなくなります。


| 番号 | 納付書の欄 | 書く金額(設例) |
|---|---|---|
| ① | 俸給・給料等(01)の支給額と税額 その月に支払った給与総額と、そこから徴収した源泉所得税を書く | 税額 300,000円 |
| ② | 年末調整による不足税額(04) 年末調整で追加徴収した人がいれば、その合計額を書く。(04)と(05)が同時に埋まることもある | 空欄 |
| ③ | 年末調整による超過税額(05)← 還付税額はここ その月の徴収税額を上限に、実際に充当した金額だけを書く。▲は印字済みなので金額だけ記入する | 300,000円 |
| ④ | 本税 (01)などの税額に(04)を足し、(05)を差し引いた金額。マイナスになるときは0円 | 0円 |
| ⑤ | 合計額 本税と同額(加算税等がなければ)。0円でも納付書は必ず提出する | 0円 |
この設例の金額を実際に書き込むと、次のようになります。徴収税額の内訳は給与180,000円・賞与90,000円・税理士等の報酬30,000円の合計300,000円です。


- (05)に書いたのは過納額420,000円ではなく、その月の徴収税額300,000円までの充当額です。残る120,000円は翌月分の納付書で充当します。
- (05)欄の「▲」は印字済みなので、金額だけを記入します。マイナス記号を書き足す必要はありません。
- 本税=300,000−300,000=0円。合計額も0円ですが、納付書は提出します。






【自動計算】超過税額の充当と繰越の計算ツール
12月分(納期の特例なら7月から12月分)の徴収税額と、年末調整で生じた過納額の合計を入れると、納付書に書く金額と翌月へ繰り越す金額を計算します。
初期値(給与180,000円・賞与90,000円・報酬30,000円・超過税額420,000円・翌月以降の見込180,000円)で試すと、充当額300,000円・本税0円・繰越120,000円となり、翌月以降の充当で約1か月で解消する見込みという結果になります。超過税額を800,000円に増やすと繰越が500,000円になり、2か月を超えるため還付請求書の検討対象になります。






会社全体の仕訳|12月給与の中で還付と徴収が同時に起きる
年末調整の還付や追加徴収は、単独の仕訳として出てくるわけではありません。12月給与の仕訳の中に、毎月の源泉徴収と並んで混ざって出てきます。そして動くのは預り金だけで、会社の費用や収益は動きません。ここを雑収入や法定福利費で処理すると、預り金の残高が永久にずれます。
まず12月給与の仕訳を丸ごと見る(還付だけのケース)
これまでの設例(過納額420,000円・12月分の徴収税額300,000円)に給与の数字を足すと、12月の給与支給はこうなります。
| 12月給与の内訳 | 金額 |
|---|---|
| 総支給額 | 10,000,000円 |
| 社会保険料(従業員負担分) | △1,400,000円 |
| 源泉所得税(12月分・月額表による徴収) | △300,000円 |
| 年末調整による還付 | +420,000円 |
| 差引支給額(振込額) | 8,720,000円 |
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 給与手当 | 10,000,000 | 預り金(社会保険料) | 1,400,000 |
| 預り金(源泉所得税) 年末調整による還付 | 420,000 | 預り金(源泉所得税) 12月分の源泉徴収 | 300,000 |
| — | — | 現金預金 | 8,720,000 |
ここで注目したいのは、預り金(源泉所得税)が借方420,000円・貸方300,000円と、同じ勘定科目の両側に並ぶことです。差し引くと借方120,000円。これは翌月へ繰り越す金額とぴったり一致します。仕訳を見れば繰越額がわかるので、納付書を書く前の検算に使えます。
還付する人と追加徴収する人が両方いるとき
実際の会社では、扶養が増えて還付になる人と、控除の申告漏れなどで追加徴収になる人が混在します。この場合も考え方は同じで、還付は預り金の借方、追加徴収は預り金の貸方に立てます。納付書も同じ構造で、(04)不足税額と(05)超過税額の両方が同時に埋まります。
還付する人と追加徴収する人が両方いるとき
預り金の動きと、納付書の本税のつながり
設例:12月給与の総支給8,000,000円/源泉徴収250,000円/年末調整の還付180,000円・追加徴収60,000円
なぜ預り金が借方と貸方の両方に出てくるのか(両建て)
会計ソフトは給与明細の項目ごとに1行ずつ仕訳を作るため、「源泉徴収」「年末調整の追加徴収」は貸方、「年末調整の還付」は借方と、同じ預り金が両側に並びます。手で相殺して貸方130,000円の1行にまとめても、預り金の残高も納付額も変わりません。両建てのままにしておくと、還付・徴収それぞれの合計額が仕訳から拾えるので、納付書の(04)と(05)を書くときに楽になります。
設例を変えて確かめます。12月給与の総支給8,000,000円、社会保険料1,200,000円、12月分の源泉徴収250,000円、年末調整で還付した人の合計180,000円、追加徴収した人の合計60,000円。差引支給額は6,670,000円です。
①「両建て」の仕訳(会計ソフトが自動で作る形)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 給与手当 | 8,000,000 | 預り金(社会保険料) | 1,200,000 |
| 預り金(源泉所得税) 年末調整による還付 | 180,000 | 預り金(源泉所得税) 12月分の源泉徴収 | 250,000 |
| — | — | 預り金(源泉所得税) 年末調整による追加徴収 | 60,000 |
| — | — | 現金預金 | 6,670,000 |
freeeやマネーフォワードなどの会計ソフトは、給与明細の項目ごとに1行ずつ仕訳を作ります。そのため同じ預り金という勘定科目が、借方にも貸方にも並ぶ「両建て」の形になります。見慣れないと落ち着かないのですが、これで正しい形です。
②「相殺」した仕訳(手で1行にまとめる形)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 給与手当 | 8,000,000 | 預り金(社会保険料) | 1,200,000 |
| — | — | 預り金(源泉所得税) 250,000+60,000−180,000 | 130,000 |
| — | — | 現金預金 | 6,670,000 |
①と②は、預り金の残高も納付額も同じです。どちらで記帳しても間違いではありません。ただし相殺してしまうと、還付の合計額180,000円と追加徴収の合計額60,000円が仕訳から拾えなくなります。納付書には(04)と(05)を分けて書く必要があるので、実務では両建てのままにしておくほうが、あとで納付書を書くときに楽です。
この設例の納付書は、(01)の税額250,000円、(04)不足税額60,000円、(05)超過税額180,000円、本税は250,000+60,000−180,000=130,000円になります。預り金の貸方残高130,000円と一致するので、ここが合わなければどこかで転記を間違えています。
納付したときの仕訳
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 預り金(源泉所得税) | 130,000 | 現金預金 | 130,000 |
一方、はじめの設例(還付だけのケース)は納付額が0円なので、納付時の仕訳はありません。引ききれなかった120,000円は、預り金が借方残(マイナス残高)のまま翌月へ持ち越されます。これは会社が税務署に対して立て替えている状態を表しているだけなので、決算をまたぐ場合でも無理に振り替える必要はありません。監査法人・税理士法人での実務でも、12月から1月にかけて預り金が借方残になる会社は珍しくありません。






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預り金の残高が合わない、を年末で終わらせる
年末調整の還付と充当をまたぐ月は、預り金の残高が動いて追いにくくなります。マネーフォワード クラウド会計なら給与データと仕訳がつながり、預り金の増減を月次で突合できます。
マネーフォワード クラウド会計を見る →令和8年9月24日からの納付書の様式変更
国税庁は、令和8年9月24日に、税務署の窓口で配付する所得税徴収高計算書(納付書)の様式変更等を予定していると公表しています。年末調整の納付書を書く前に、次の点を押さえておいてください。
「防衛特別所得税」の記載は読み替える
変更後の様式では「納期等の区分」欄に「源泉所得税、復興特別所得税及び防衛特別所得税」と記載されますが、国税庁は令和8年12月以前に生じた所得についての源泉徴収税額には防衛特別所得税を含まないため、それまでの期間は「源泉所得税及び復興特別所得税」に読み替えるとしています。令和8年分の年末調整で使う納付書は、この読み替えの対象です。
現行様式は令和10年9月頃まで使える
なお国税庁は、A4単票式では記載事項を各片に3回書く必要があるため、記載事項を市販のプリンターで印字するツールを国税庁ホームページに掲載する予定としています。手書きの負担が気になる場合は、切り替え前にこのツールの公開状況を確認しておくとよいでしょう。
手元にある整理番号欄付きの複写式の納付書は、令和10年9月頃まで使用できる予定とされています。今年の年末調整のために慌てて交換する必要はありません。なお納付書は、必ず税務署や業務センターから交付された所定の用紙を使う点は変わりません。






12月から1月にかけての手順とよくある失敗
ここまでの内容を、12月分と翌1月分の納付書2枚で並べて確認します。1月分の徴収税額が280,000円だったとすると、繰り越した120,000円をここで充当して精算が完了します。
還付しきれない分は翌月へ
納付書2枚の書き分け
設例:過納額420,000円/12月分の徴収税額300,000円/1月分の徴収税額280,000円
つまずきやすいポイント
(05)に過納額の全額420,000円を書いてはいけません。書けるのは、その月の徴収税額を上限とした「実際に充当した金額」だけです。
全員分の超過税額と不足税額をそれぞれ合計します。相殺前の金額を把握しておくと納付書の記載が楽になります。
その月の徴収税額を上限として充当します。超える金額は納付書に書かず、翌月へ繰り越します。
納付額が0円でも納付書は提出します。原則は翌月10日、納期の特例の承認を受けている場合は7月から12月分をまとめて翌年1月20日までです。
年末調整過納額還付請求書兼残存過納額明細書を所轄税務署に提出して、直接還付を受けます。
よくある失敗・ミス3選
ミス1:超過税額の欄に過納額の全額を書く。その月の徴収税額を超える金額は書けません。差額は翌月へ繰り越します。
ミス2:納付額が0円だから納付書を出さない。0円でも提出が必要です。未提出だと納付漏れとして連絡が来ます。
ミス3:還付額を雑収入や給与で処理する。還付・充当・繰越はいずれも預り金の中で完結します。損益は動きません。
税理士法人での実務では、12月の還付処理そのものより、1月の納付書で繰越分をきちんと充当し忘れないことのほうが事故が多い印象です。12月に「繰越◯◯円」とメモを残しておくだけで、翌月の担当者が変わっても引き継げます。
よくある質問(FAQ)
- 納付額が0円のときも納付書を提出しますか。
- 提出します。徴収した税額を全額充当した結果0円になったことを税務署に伝える必要があるためです。e-Taxでも0円の徴収高計算書を送信できます。
- 納期の特例の場合、超過税額はいつの納付書で充当しますか。
- 納期の特例の承認を受けている場合、年末調整を行った月分は7月から12月までの分にあたります。その納付書(翌年1月20日期限)で充当し、引ききれない分は次の期間へ繰り越します。
- 還付請求書はいつ出せますか。
- 還付することとなった日の翌月から2か月を経過しても還付しきれないと見込まれる場合に提出できます。2か月を実際に待つ必要はなく、見込みの段階で判断します。
- 令和8年分の納付書に防衛特別所得税は関係しますか。
- 令和8年12月以前に生じた所得についての源泉徴収税額には防衛特別所得税は含まれません。変更後の様式に記載があっても「源泉所得税及び復興特別所得税」と読み替えます。
まとめ
納付書の「年末調整による超過税額」欄には、実際に充当した金額だけを書きます。
2か月を経過しても還付しきれない見込みなら、年末調整過納額還付請求書で直接還付を受けられます。
還付・充当・繰越で損益は動きません。繰越期間中に預り金が借方残になるのは正常な状態です。



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