「今期は利益が出そうだから、決算賞与を出して税金を抑えたい」——決算期が近づくと必ず出てくる相談です。ただ、決算賞与には落とし穴があります。支給が翌期になる場合、要件を1つでも外すと当期の損金にできません。しかも否認されるのは「賞与を出した後」なので、現金は出ていったのに節税効果だけが消える、という最悪の結果になります。
この記事では、法人税法施行令が定める3つの要件をその場で判定できるツールと、税務調査で必ず求められる支給額通知書・受領確認書のWordひな形、要件チェックと節税額試算がセットになったExcelを用意しました。
📌 この記事でわかること
- 決算賞与を未払計上して当期の損金にするための3要件(法人税法施行令72条の3第2号)
- 要件を満たすかその場で判定でき、節税額まで試算できる判定ツール(記事内で動きます)
- 税務調査で証拠として求められる支給額通知書・受領確認書・通知一覧表のWordひな形(無料配布)
- 要件チェック8項目+節税額シミュレーションが入ったExcelシート(無料配布)
- 「支給日に在職している者に限る」と書くと損金にできなくなる理由と、よくある否認パターン3つ
ぜいむたん


決算賞与は「未払計上」できれば当期の損金になる
使用人賞与の損金算入時期は、原則として実際に支給した日を含む事業年度です。したがって決算日を過ぎてから支払った賞与は、通常なら翌期の経費になります。
ただし例外として、決算日までに支給額を通知したうえで一定の要件を満たせば、通知した日の属する事業年度=当期の損金にできます。根拠は法人税法施行令72条の3で、国税庁のタックスアンサー No.5350 使用人賞与の損金算入時期に整理されています。
当期の損金にするための3要件
3月決算の会社であれば、3月31日までに各人へ通知し、4月30日までに全額を支払い、3月期の決算で未払計上する——という流れです。3つのうち1つでも欠けると、賞与の全額が当期の損金になりません。






【判定ツール】決算賞与を当期の損金にできるか、その場で判定
下のツールで、要件の充足状況と節税額の目安を同時に確認できます。1つでも「いいえ」があれば、当期の損金にはできません。






通知書ひな形(Word)と判定・試算シート(Excel)を無料配布
決算賞与で否認されるケースの多くは、要件そのものより「通知した証拠が残っていない」ことが原因です。口頭で伝えただけ、朝礼で総額を発表しただけ、という状態では、各人別に通知した事実を後から証明できません。下の2点をそのまま使ってください。
決算賞与を実行する手順
着地見込みの利益をもとに総額を決め、各人への配分を確定します。取締役会や社内会議の議事録に決議内容を残しておくと、決定時期の証拠になります。
ひな形の通知書を各人に交付し、受領確認書に自署をもらいます。通知一覧表と合わせて保管します。
決算整理仕訳で「賞与/未払費用」を計上し、決算日の翌日から1か月以内に振込を完了します。振込記録も証拠として保管します。






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決算前に着地見込みを把握できていますか?
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失敗①:「支給日に在職している者に限る」と条件を付けてしまう
就業規則や通知書に「支給日に在職している者に支給する」と書くと、通知した時点では支払う義務が確定していないことになります。その結果、通知した事業年度の損金にはできません。従業員の引き留めを意図した規定が、そのまま否認理由になるパターンです。決算賞与を未払計上する年度については、在職要件を外した通知書を使う必要があります。
失敗②:総額だけを発表して、各人別の通知をしていない
「今期は業績が良いので、決算賞与として総額500万円を支給します」という朝礼での発表だけでは要件を満たしません。求められているのは各人別の金額の通知です。金額を伏せたまま口頭で伝えた、というケースも同様に危険です。
失敗③:一部の従業員だけ支払いが1か月を過ぎてしまう
要件は「通知したすべての使用人に対し、1か月以内に支払っていること」です。休職中の従業員や口座確認が取れなかった人など、一部でも支払いが遅れると、その支給全体について未払計上が認められないおそれがあります。振込は期限のぎりぎりではなく、余裕を持って実行してください。






社会保険料と源泉徴収はどうなる?
会社負担の社会保険料は翌期の損金になるのが原則
賞与に係る社会保険料は、支給した月の保険料として計算されます。決算賞与の支払いが翌期になるのであれば、会社負担分は原則として翌期の損金です。賞与本体と一緒に当期で未払計上してしまうと、その分が否認されます。取扱いの根拠は法人税基本通達 第3節 保険料等(9-3-2)に置かれています。
源泉徴収は「支払った月」で処理する
源泉所得税は実際に支払ったときに徴収し、翌月10日(納期の特例を受けている場合は所定の期限)までに納付します。未払計上した時点では源泉徴収は行いません。賞与に対する源泉徴収税額は前月の給与額と扶養親族等の数から率を求めて計算します。具体的な計算方法は夏の賞与(ボーナス)にかかる社会保険料と源泉所得税の計算方法【2026年版】で解説しています。






役員に決算賞与を出すことはできる?
役員に対する賞与は、原則として損金になりません。損金にするには事前確定届出給与として、あらかじめ支給時期と金額を届け出ておく必要があり、決算間際に「利益が出たから役員にも賞与を」という使い方はできない仕組みです。役員の使用人兼務役員に対する使用人分賞与など例外的な取扱いもありますが、判断が分かれやすい領域なので顧問税理士に確認してください。
役員側で報酬を調整したい場合は、期首から3か月以内の定期同額給与の見直しが基本になります。決め方と議事録の残し方は【ひな形3種】役員報酬の決め方と株主総会議事録の書き方|合同会社の同意書サンプルも公開【2026年版】にまとめています。






よくある質問(FAQ)
- 通知はメールやチャットでも認められますか?
- 各人別に支給額を通知した事実が客観的に残っていればよいとされており、書面に限定されてはいません。ただし本人が受け取ったことまで示せる形が安全です。書面での交付と受領確認の自署を基本にし、遠隔地の従業員は開封確認が取れる形で送るなど、証拠が残る方法を選んでください。
- 通知後に業績が悪化したら、支給額を減らせますか?
- 通知した金額と実際の支給額が異なると、通知した金額を支払ったという要件を満たさなくなります。減額して支給した場合、当期の損金算入が認められないおそれがあります。通知する時点で確実に支払える金額に抑えておくことが重要です。
- パート・アルバイトも通知の対象に含める必要がありますか?
- 要件は「同時期に支給を受けるすべての使用人」に通知することです。同じ時期に賞与を支給する対象にパート・アルバイトが含まれるのであれば、その方々にも各人別の通知が必要になります。支給対象の範囲は、通知の前に支給規程などで整理しておきましょう。
- 決算賞与を支給すると、社会保険料の負担も増えますか?
- はい。賞与にも健康保険・厚生年金保険の保険料がかかり、会社負担分が発生します。記事内のツールでは賞与額の15%を目安として試算していますが、実際の率は加入している健康保険組合や年齢によって変わります。標準賞与額には上限があるため、高額の賞与では負担割合が下がる場合もあります。
まとめ:通知書を残せるかどうかで決まる
記事内のツールかExcel判定シートで、3要件と在職要件・役員除外まで含めて確認します。1つでも欠ければ当期の損金にはなりません。
Wordひな形の通知書・受領確認書・通知一覧表をセットで保管します。在職要件を付さない文言にすることが要点です。
決算整理で未払計上し、決算日の翌日から1か月以内に振込を完了。社会保険料の会社負担分は翌期の損金になる点に注意します。
決算賞与は、要件さえ押さえれば確実に当期の損金にできる数少ない手段です。一方で、現金は実際に社外へ出ていきます。「税金を減らすため」ではなく「従業員へ還元したい。ついでに当期の損金にもできる」という順番で判断すると、無理のない金額に落ち着きます。



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