※本記事にはアフィリエイトリンク(A8.net経由)が含まれます。
役員に賞与を出して損金にしたい。そのための制度が事前確定届出給与ですが、実務でつまずくのは制度の理解ではありません。「届出書をいつまでに出すのか」と「届け出たとおりに支給できるか」の2点です。届出が1日でも遅れれば、あるいは支給額が1円でもズレれば、支給した賞与はまるごと損金にならない扱いになります。
この記事では、国税庁の手続案内と質疑応答事例の文言を確認しながら、提出期限を自動計算するツールと届出書・付表1の記入例、そして支給後に「届出どおり」かを突合するチェック表までをまとめました。Excelの管理シートとWordの議事録文例も配布します。
📌 この記事でわかること
- 提出期限の3パターン(原則・新設法人・臨時改定事由)と、日付を入れるだけの自動計算ツール
- 届出書と付表1のどの欄に何を書くか(実際の様式に番号を振った図つき)
- 支給額が届出とズレたとき、損金不算入になる範囲は「その役員だけ」か「全員」か
- 2回に分けて支給する場合、職務執行期間を1単位として判定されるという実務上いちばん怖い論点
- Excel管理シート(期限計算+突合チェック+提出前チェックリスト)とWord議事録文例の無料配布
ぜいむたん


【結論】事前確定届出給与は「期限内の届出」と「1円もズレない支給」で決まる
事前確定届出給与とは、役員の職務につき所定の時期に確定した額の金銭等を交付する旨の定めに基づいて支給する給与で、定期同額給与にも業績連動給与にも当たらないものをいいます(国税庁 タックスアンサー No.5211)。損金にするために超えるべきハードルは、実務上は次の2つに集約されます。
損金算入を左右する2つの関門
決議日から1月を経過する日と、会計期間開始から4月を経過する日。早いほうが期限です。1日でも遅れると事前確定届出給与に該当しません。
支給日・支給額が届出と一致していること。金額を減らす、日をずらす、いずれも「定めのとおり」ではなくなります。
複数回に分けて支給する場合、職務執行期間をひとつの単位として全ての支給が判定されます。1回目が合っていても2回目を外すと影響します。
税理士法人での実務でも、届出そのものを失念するケースより「資金繰りが苦しくなって支給額を減らした」「支給日を1週間ずらした」で損金算入を落とすケースのほうが目立ちました。届出を出した時点で気を抜かず、支給日当日まで管理する前提で設計してください。
提出期限はいつ?3パターンを自動計算する






提出期限の3区分(原則・新設法人・臨時改定事由)
国税庁の手続案内では、提出時期は次の3区分で定められています(国税庁 C1-23 事前確定届出給与に関する届出・手続根拠は法人税法施行令第69条第4項)。
| 区分 | 提出期限 |
|---|---|
| 原則 | 株主総会等の決議をした日(同日が職務の執行を開始する日後である場合は、その開始する日)から1月を経過する日。ただしその日が「会計期間4月経過日等」後である場合は会計期間4月経過日等 |
| 新設法人 | その設立の日以後2月を経過する日(設立時に開始する職務についての定めをした場合) |
| 臨時改定事由 | 上記の日と、臨時改定事由が生じた日から1月を経過する日のうち、いずれか遅い日 |
臨時改定事由(役員の職制上の地位の変更、職務内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情)だけは「遅いほう」である点に注意してください。原則と逆です。下のツールに日付を入れると、この判定を自動で行います。
自動計算ツール
事前確定届出給与 届出期限カレンダー
「1月/4月/2月を経過する日」は応当日で計算しています。期限が閉庁日に当たる場合の取扱いや個別の判断は、所轄税務署または顧問税理士にご確認ください。
提出方法はe-Taxソフトでの作成・提出が案内されており、書面の場合は届出書を1部、納税地の所轄税務署長に持参または送付します。閉庁日でも時間外収受箱への投函で提出できます。
届出書の記入例|どの欄に何を書くか






届出書は「どの機関が」「いつ」「誰に」「いつ」「いくら」を特定する書類です。様式そのものは国税庁の手続案内ページからダウンロードできます(届出書本体・付表1(金銭交付用)・付表2(株式交付用)と、それぞれの記載要領)。実際の様式に番号を振って、どの欄に何を書くかを見ていきます。


「1月を経過する日」の数え方
記載要領では、決議をした日の翌日を起算日として暦に従って計算し、起算日が月の初めでないときは翌月の応当日の前日(応当日がない月はその月の末日)とされています。例:決議日が5月25日なら起算日は5月26日、翌月の応当日6月26日の前日である6月25日が「1月を経過する日」です。
実務で迷いやすいのが②です。役員報酬の総額は株主総会で決議し、各人への配分は取締役会や代表取締役に一任している会社では、賞与の額を実際に確定させた機関と日付を書きます。議事録・同意書の作り方は【ひな形3種】役員報酬の決め方と株主総会議事録の書き方|合同会社の同意書サンプルも公開【2026年版】で詳しく扱っています。
※広告(アフィリエイトリンクを含みます)
役員賞与の仕訳・源泉徴収まで、会計ソフトで一気通貫に
事前確定届出給与は、支給日に「届出どおりの金額」を支給し、源泉徴収と社会保険料の控除まで正しく処理する必要があります。マネーフォワード クラウド会計なら、賞与の仕訳から決算書作成までをつなげて管理できます。
マネーフォワード クラウド会計を見る →付表1の記入例|支給時期は「年月日」まで特定する






支給時期・支給金額の書き方
付表1には、支給対象となる役員ごとに氏名・役職名・職務執行期間・支給時期・支給金額を記載します。ポイントは支給時期を年月日で特定することと、職務執行期間を議事録と一致させることです。


いちばん多い書き間違い
今回届け出る賞与を、いちばん上の「届出額」欄に書いてしまうケースです。この欄は前回以前の届出分(支給済分)用で、今回届け出る分は上の図の5「今回の届出額」欄に記載します。初めての届出であれば、4の2行は空欄のままで構いません。
| 記載欄 | 記入例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 役職名・氏名 | 代表取締役 イザーク 太郎 | 登記上の役職名で記載 |
| 職務執行期間 | 令和8年6月26日 〜 令和9年6月25日 | 定時株主総会から次の定時株主総会まで |
| 支給時期(1回目) | 令和8年12月25日 | 「12月」ではなく年月日で特定 |
| 支給金額(1回目) | 3,000,000円 | 税引前の総支給額を記載 |
| 支給時期(2回目) | 令和9年6月25日 | 翌事業年度にまたがる支給も同じ届出に記載 |
| 支給金額(2回目) | 3,000,000円 | 1回目と同額である必要はない |
2回目の支給が翌事業年度になる場合でも、同じ職務執行期間に係る支給として同一の届出に記載します。この「またぎ」が、次に説明する判定の落とし穴につながります。
届出どおりに支給できなかったらどうなる?






判定は職務執行期間を1単位として行われる
国税庁の質疑応答事例では、届け出た支給額と実際の支給額が異なる場合には事前確定届出給与に該当しないこととされ、複数回の支給があるときは「その職務執行期間に係る当該事業年度及び翌事業年度における支給について、その全ての支給が定めどおりに行われたかどうか」で判定するとされています。示されている例では、200万円×2回の届出に対して1回目に100万円しか支給しなかった場合、支給額の全額(300万円)が事前確定届出給与に該当せず損金不算入となる、と説明されています(国税庁 質疑応答事例「定めどおりに支給されたかどうかの判定」)。
損金不算入になるのは「その役員」だけ
一方で、影響が及ぶ範囲はその役員に限られます。特定の役員にだけ届出書の記載額と異なる金額を支給した場合でも、記載額どおり支給した他の役員の給与まで損金不算入になることはないとされています(国税庁 質疑応答事例「特定の役員に届出書の記載額と異なる支給をした場合」)。役員が複数いる会社では、この切り分けを知っているかどうかで申告調整の額が変わります。
損金不算入につながりやすい3つの型
最も多い型。減額した回だけでなく、その職務執行期間の支給全体が判定対象になります。
金額が同じでも、届け出た年月日と違う日に支給すれば「定めのとおり」ではなくなります。
決議はしたが提出を忘れた、期限を1日過ぎた。事後の救済は想定されていません。
税務調査の現場では、事前確定届出給与について「届出書の控え」「議事録」「支給日の預金通帳と賃金台帳」を並べて確認されることが多い項目です。3点が同じ日付・同じ金額でそろっているかを、支給直後に自分で点検しておくと安心です。
支給後の突合チェックとExcel・Wordテンプレート






判定ツール
届出と実支給の突合チェック
| 回 | 届出した支給日 | 届出した支給額 | 実際の支給日 | 実際の支給額 |
|---|
Excel管理シート・Word議事録文例(無料配布)
紙やExcelで管理したい場合のために、期限計算と突合チェック、提出前チェックリストをまとめたExcelシートと、決議用の議事録文例(Word)を用意しました。いずれも自社の状況に合わせて書き換えてお使いください。
賞与を大きくすると社会保険料はどうなる?






賞与にかかる社会保険料は、税引前の賞与額から1,000円未満を切り捨てた標準賞与額に保険料率を掛けて計算します。この標準賞与額には上限があり、健康保険は年度の累計額573万円(毎年4月1日から翌年3月31日まで)、厚生年金保険は1か月あたり150万円とされています(同じ月に2回以上支給したときは合算して上限を適用)。上限を超えた部分には保険料がかからないため、「月額報酬を抑えて賞与を大きくする」という設計が語られるのはこのためです(日本年金機構「従業員に賞与を支給したときの手続き」)。
回数と給付への影響という2つの副作用
ただし、この設計には副作用があります。ひとつは支給回数です。社会保険で賞与として扱われるのは年3回以下の支給で、年4回以上支給されるものは報酬として標準報酬月額の対象になります(日本年金機構「標準報酬月額・標準賞与額とは」)。分割しすぎると前提が崩れます。
もうひとつは給付面です。標準報酬月額を下げれば、将来受け取る老齢厚生年金のほか、傷病手当金・出産手当金など標準報酬月額をもとに計算される給付も下がります。目先の保険料だけで判断せず、手取りと保障のバランスで考える必要があります。手取り最適化そのものは役員報酬はいくらが手取り最適?所得税と社会保険料の分岐点【2026】と【実務家監修】月給は最低に、賞与は最大に:労使双方で得する社会保険料節税戦略で詳しく扱っています。
社会保険料の圧縮と「届出どおりの支給」はトレードオフ
そして本記事の主題に戻ると、ここに落とし穴があります。社会保険料を抑えるために賞与の金額を大きく設定するほど、その金額を支給日に用意できなかったときの損害も大きくなるからです。前述のとおり、届け出た額と実際の支給額が異なれば事前確定届出給与に該当しない扱いとなり、判定は職務執行期間を1単位として行われます。社会保険料を数十万円圧縮するつもりが、賞与の全額が損金不算入となって法人税の負担が増える、という結果になりかねません。
税理士法人での実務でも、賞与の金額は「最も資金繰りが厳しい月でも確実に払える額」から逆算して決めていました。社会保険料の圧縮は、その範囲内で取れるだけ取る、という順序が安全です。
よくある質問(FAQ)
- 届出書を出し忘れました。あとから提出できますか。
- 提出期限を過ぎた場合、その支給は事前確定届出給与に該当しない扱いとなり、損金算入は認められないのが原則です。期限後の提出による救済は制度上想定されていません。当期の対応としては支給を見送る、または損金不算入を前提に申告調整するかの判断になりますので、顧問税理士にご相談ください。
- 支給額を減額したいのですが、変更届出書を出せば大丈夫ですか。
- 変更届出書が使えるのは、臨時改定事由や業績悪化改定事由など一定の事由がある場合です。単に資金繰りが苦しいという理由だけでは要件を満たさないおそれがあります。国税庁も、法人の一時的な資金繰りの都合や業績目標値に達しなかったことは業績悪化改定事由に含まれないとしています。
- 使用人兼務役員に賞与を出す場合も届出が必要ですか。
- 使用人としての職務に対する賞与を、他の使用人と同じ時期に支給する場合は、使用人分としての取扱いとなります。一方、役員としての職務に対する部分を賞与として支給するのであれば、事前確定届出給与としての届出を検討することになります。区分が不明確だと役員給与として扱われるおそれがあるため、職務内容と支給根拠を書面で残しておくことが重要です。
- 2回に分けて支給する場合、2回目が翌事業年度になっても同じ届出でよいですか。
- 同じ職務執行期間に係る支給であれば、同一の届出に記載します。ただし判定は職務執行期間を1単位として、当該事業年度と翌事業年度の支給を通じて行われるとされているため、翌期の支給まで含めて「届出どおり」に実行できる金額設計にしておくことが大切です。
まとめ
株主総会等で支給時期と支給金額を確定し、議事録に残す。届出書の「決議をした日」「決議をした機関等」はここから転記する。
起算日から1月を経過する日と会計期間4月経過日等の早いほうが期限。新設法人は設立の日以後2月を経過する日、臨時改定事由がある場合は遅いほう。
支給日・支給額を1円もズラさない。減額や日程変更が避けられないときは、実行前に税理士に相談する。
届出書の控え・議事録・通帳・賃金台帳を突き合わせ、日付と金額の一致を確認して保管する。



※広告(アフィリエイトリンクを含みます)
支給日と支給額の管理を、会計データと一緒に残す
事前確定届出給与は、支給の記録がそのまま証拠になります。マネーフォワード クラウド会計なら、賞与の仕訳・源泉徴収の処理から決算書作成までを1か所に集約でき、支給日と金額の履歴も追いやすくなります。
マネーフォワード クラウド会計を見る →あわせて読みたい
イザークコンサルティング
記事執筆代行・Web/LP制作
公認会計士試験合格者が、専門性とSEOを両立した記事制作と、WordPress×SWELLのWeb/LP制作までワンストップで対応します。
▶ 記事執筆代行を見る
▶ Web・LP制作を見る


コメント