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退職する社員の住民税は、最終給与からまとめて引くのか、本人が自分で納めるのかで、会社の経理の仕事も本人の手取りも変わります。このページでは、退職月ごとに最終給与(または退職金)からいくら引くのか、その仕訳、納付の期限までを、計算ツールとExcelで確認できるようにしました。
住民税の仕組みそのもの(所得割と均等割、特別徴収と普通徴収の違い)は住民税の仕組みと計算方法で解説しているので、ここでは退職時の金額と会社側の処理に絞ります。給与所得者異動届出書の欄ごとの書き方は、別の記事にゆずります。
📌 この記事でわかること
- 退職月が1〜4月なら一括徴収は義務、6〜12月なら本人の希望しだい、5月なら残額なし、という判定
- 一括徴収額は「通知書の月割額×退職月の翌月から5月までの月数」。年税額148,500円の人が10月に退職すると86,100円
- 退職月と年税額を入れるだけで、一括徴収額と最終給与の仕訳まで出る自動計算ツールとExcel
- 最終給与から引くときの預り金の仕訳と、徴収した月の翌月10日までの納付
- 給与や退職金が残額に足りないとき、普通徴収に切り替えるときの扱い
退職時の住民税の一括徴収が義務になる月と、本人の希望になる月
結論から言うと、退職時の住民税の一括徴収は、1月1日から4月30日までに退職する人は本人の申出がなくても会社が行い、6月1日から12月31日までに退職する人は本人が申し出たときだけ行います。どちらも、5月31日までに支払う給与・退職金等が残額を超えることが条件です。根拠は地方税法第321条の5第2項です。5月に退職する人は、5月分まで通常どおり天引きすれば、一括徴収する残額は残りません。
退職月別の判定
住民税の特別徴収は、前年の所得をもとに6月から翌年5月までの12回に分けて給与から引く仕組みです。退職すると退職月の翌月以降は引けなくなるので、残りをどうするかが退職月で分かれます。
退職月別の取扱い
本人の申出がなくても、5月31日までに支払う給与・退職金から残額を一括徴収します。ただし支払う給与等が残額を超えないときは、一括徴収にならず普通徴収に切り替わります。再就職先で特別徴収を続ける場合は、一括徴収の対象外です。
5月分の月割額は最終給与から通常どおり引きます。この年度の残りがないので、一括徴収の対象になる金額は出ません。
本人が一括徴収を申し出たときは、最終給与などから残額をまとめて引きます。申出がなければ、残りは市区町村から本人に届く納付書で納める普通徴収になります。
この区分は自治体の案内でも同じです。香川県の特別徴収Q&Aは、6月1日から12月31日の退職で本人から申出があった場合と、1月1日から4月30日の退職で5月31日までに支払う給与・退職金が残りの税額を超える場合を、特別徴収で納める例として挙げています。横浜市も、退職日が6〜12月なら普通徴収か本人申出の一括徴収、1〜4月なら本人の申出なしの一括徴収と案内しています。
一括徴収と普通徴収で、会社の仕事はこう変わる
一括徴収では、会社が残額を最終給与などから引いて、市区町村に納めます。普通徴収に切り替える場合、会社は残額を引かず、異動届出書で市区町村に退職を知らせるだけです。残りの税額は、後日本人に納付書が届きます。
どちらの場合も、異動届出書は退職の翌月10日までに出します。江戸川区の案内にもその期限が書かれています。届出書の欄ごとの書き方は、別の記事で扱います。
退職金にかかる住民税は別の計算
ここまでの住民税は、前年の所得にかかるものです。退職金にかかる住民税は、これとは別に、退職手当等を支払うときに会社が特別徴収します。退職所得の金額に税率10%(市町村民税6%・道府県民税4%)をかけて求める仕組みで、総務省のページに計算の流れが載っています(勤続5年以内の法人役員等は2分の1を乗じない扱いが別にあります)。徴収した月の翌月10日までに、納入申告書を出して納入します(地方税法第328条の5第2項)。納期の特例も準用されます。退職所得の計算は退職所得の受給に関する申告書の書き方をご覧ください。
退職 住民税 一括徴収の金額はいくら?退職月別の計算ツール
一括徴収額は、特別徴収税額の通知書に書かれた7月〜翌5月分の月割額に、退職月の翌月から5月までの月数を掛けて求めます。年税額148,500円の人が10月に退職すると、月割額12,300円に残り7か月を掛けて86,100円です。
月割額の出し方と6月に寄る端数
月割額は、年税額を12で割って100円未満を切り捨てた額が基本です。切り捨てた端数は、最初の月である6月分にまとめられます。たとえば年税額148,500円なら、7月〜翌5月の月割額は12,300円、6月分は13,200円です。12,300円×11か月+13,200円で、年税額に戻ります。さいたま市のFAQにも、同じ考え方(残りの税額を月数で割り、100円未満の端数を最初の月にまとめる)の計算例があります。
一括徴収の対象は退職月の翌月以降なので、6月分の端数は一括徴収額に入りません。6月に退職する人の6月分は、通常の月割額として最終給与から引きます。自治体によって端数の寄せ方が違うこともあるため、通知書に月割額が書いてあれば、その金額を優先します。
退職月別の一括徴収額の早見表(年税額148,500円の例)
年税額148,500円の人が、各月に退職したときの金額です。「最終給与で引く合計」は、退職月の通常の月割額と一括徴収額を足した額で、退職月に最終給与を払う会社の目安になります。
| 退職月 | 一括徴収 | 残り月数 | 一括徴収額 | 最終給与で引く合計 |
|---|---|---|---|---|
| 6月 | 本人の希望 | 11か月 | 135,300円 | 148,500円 |
| 7月 | 本人の希望 | 10か月 | 123,000円 | 135,300円 |
| 8月 | 本人の希望 | 9か月 | 110,700円 | 123,000円 |
| 9月 | 本人の希望 | 8か月 | 98,400円 | 110,700円 |
| 10月 | 本人の希望 | 7か月 | 86,100円 | 98,400円 |
| 11月 | 本人の希望 | 6か月 | 73,800円 | 86,100円 |
| 12月 | 本人の希望 | 5か月 | 61,500円 | 73,800円 |
| 1月 | 義務(条件あり) | 4か月 | 49,200円 | 61,500円 |
| 2月 | 義務(条件あり) | 3か月 | 36,900円 | 49,200円 |
| 3月 | 義務(条件あり) | 2か月 | 24,600円 | 36,900円 |
| 4月 | 義務(条件あり) | 1か月 | 12,300円 | 24,600円 |
| 5月 | 残額なし | 0か月 | 0円 | 12,300円 |
一括徴収額は、退職月が早いほど大きくなります。6月に退職すれば残りの11か月分がまとまって引かれ、12月なら5か月分です。1月に退職すると4か月分、4月なら1か月分まで小さくなります。
退職月と年税額を入れて計算する【自動計算ツール】
通知書の年税額と退職月を入れると、一括徴収額、最終給与で引く合計、最終給与の仕訳までが出ます。最初に入っている値(年税額148,500円・10月退職・総支給額300,000円)で、上の早見表と同じ金額になります。
計算ツール
退職時の住民税 一括徴収額と最終給与の仕訳
① 通知書と退職月
② 最終給与の内訳(仕訳をつくるとき)
※ 月割額は、通知書に書かれた金額を優先してください。空欄のときは年税額を12で割り、100円未満を切り捨てた額(端数は6月分)で計算します。自治体によって端数の扱いが違うことがあります。
※ このツールは前年所得にかかる住民税の一括徴収額です。退職金にかかる住民税(退職所得の10%)は含みません。
※ 年税額が均等割額以下の人は、最初の月に全額が徴収済みで、残額は出ません(ツールは判定せず、6,000円以下で注意を出します)。
※ 「最終給与で引く合計」と仕訳は、退職月に最終給与を払う当月払いの会社の例です。翌月払いの会社は、退職月分を含めずに一括徴収額だけを見てください。
Excelの中身
| シート | 入れるもの | 出てくるもの |
|---|---|---|
| 一括徴収額計算 | 年税額・月割額(任意)・退職月 | 一括徴収額、退職月の分、最終給与で引く合計 |
| 退職月別早見 | (上のシートの年税額を参照) | 12か月分の一括徴収額と合計 |
| 仕訳早見 | 総支給額・源泉所得税・社会保険料 | 最終給与の仕訳と差引支給額 |
給与や退職金が足りなくて引ききれないとき
1月〜4月の退職では、5月31日までに支払う給与・退職金などが残りの税額を超えるときに、会社が一括徴収します(地方税法第321条の5第2項ただし書)。香川県や京都府のQ&Aも、この条件で説明しています。最終給与が少なく、退職金もない場合は、超えないので一括徴収にならず、残りは普通徴収に切り替わります。条文には、見込みどおりに支払われなかったときは、5月31日までに実際に支払われた額から徴収できる額を徴収するという括弧書きもあります。見込みと実際がずれそうなときは、市区町村に確認してください。
6月〜12月の退職で本人が一括徴収を希望している場合も、条文のただし書は同じ「超えるとき」の条件でつながっています。自治体のQ&A(京都府など)は、6月〜12月の申出分についてこの条件には触れていません。最終給与の手取りが足りないときは、引ける範囲を市区町村に確認してください。
退職時の住民税を一括徴収する会社側の手順と納付期限
会社の作業は、退職者の意向の確認、一括徴収額の計算、最終給与からの天引き、異動届出書の提出、翌月10日までの納付の5つです。順番に見ていきます。
退職日の属する月を確かめます。6月〜12月の退職なら、一括徴収を希望するかを本人に聞き、希望の有無を記録に残します。1月〜4月の退職は、支払う給与等が残額を超えるとき、本人の希望にかかわらず一括徴収が必要です。
特別徴収税額の決定通知書にある7月〜翌5月分の月割額に、退職月の翌月から5月までの月数を掛けます。上の計算ツールかExcelで確認してください。
退職月の通常の月割額に、一括徴収額を足した金額を引きます。引いた住民税は預り金で処理します(仕訳は次の章)。
この届出書は退職の翌月10日までに、eLTAXか郵送で市区町村に出します。一括徴収にするか普通徴収にするかを欄で選ぶため、STEP 1の結果をここに書きます。欄ごとの書き方は、別の記事で解説しています。
最終給与から引いた月の翌月10日が納付期限です。納期の特例の承認を受けている会社は、次の項目の納期になります。
納付期限は翌月10日。納期の特例なら12月10日と6月10日
一括徴収した住民税も、通常の月割額と同じく、徴収した月の翌月10日までに納めます(地方税法第321条の5第2項)。従業員が常時10人未満で、市区町村の承認を受けている会社は、納期の特例が使えます。6月〜11月に払った給与から引いた分は12月10日、12月〜翌5月に払った分は6月10日にまとめて納めます(同法第321条の5の2第1項)。条文は、第2項ただし書の規定で徴収した一括徴収分も同様と定めているので、一括徴収した分だけ別に納める必要はありません。
納期の特例そのものは源泉所得税の納期の特例で解説しています。住民税の特例は申請先が市区町村で、源泉所得税の特例とは別の承認です。
給与の支払いが翌月払いの会社の見方
給与を締め日の翌月に払う会社では、退職月の給与が翌月に支払われます。ただ、一括徴収の対象は、法律上「退職月の翌月以降」の月割額です。8月31日に退職して最終給与を9月に払う場合も、8月分の月割額は通常、8月に払った給与から引き済みです。そのため9月〜翌5月分が一括徴収の対象になります。一括徴収額は、本記事の計算ツールと同じです。ただし「最終給与で引く合計」は、退職月分(この例では8月分)を含まない点が違います。ツールとExcelの合計は、退職月に最終給与を払う当月払いの会社の目安です。
引き忘れ・納め忘れたときの扱い
特別徴収した住民税は従業員からの預り金で、事業資金ではありません。納入が遅れると延滞金が加算され、それは特別徴収義務者である会社の負担です。従業員から延滞金を徴収することはできません。香川県のQ&Aはこの点を明記しています。1月〜4月の退職は、支払う給与等が残額を超えるときに引く義務があるので、退職の連絡を受けたら、最初に退職月を確認する流れを作っておくと見落としを防げます。
退職時の住民税の仕訳(預り金の処理)
一括徴収した住民税は会社の費用ではなく、従業員から預かって市区町村に納めるお金です。給与から引くときに貸方で預り金に入れ、納付するときに預り金を取り崩します。
場面別の仕訳早見
| 場面 | 借方 | 貸方 | メモ |
|---|---|---|---|
| 毎月の給与で月割額を天引き | 給料手当 | 預り金(住民税) | 給与全体の仕訳の一部として計上する |
| 退職時に最終給与から一括徴収 | 給料手当 | 預り金(住民税) | 退職月の月割額と一括徴収額を合算して1本で切ってよい |
| 退職時に退職金から一括徴収 | 退職金 | 預り金(住民税) | 給与から引ききれない分を退職金から引く場合 |
| 翌月10日に市区町村へ納付 | 預り金(住民税) | 普通預金 | 納期の特例の会社は12月10日・6月10日にまとめて |
| 普通徴収に切り替える | 仕訳なし | 仕訳なし | 会社が引かないので預り金は発生しない |
最終給与の仕訳の例(年税額148,500円・10月退職・当月払い)
総支給額300,000円、源泉所得税6,000円、社会保険料(従業員負担分)45,000円の最終給与から、住民税を98,400円(退職月の12,300円+一括徴収額86,100円)引く例です。差引支給額は150,600円です。
| 区分 | 勘定科目 | 金額 |
|---|---|---|
| 借方 | 給料手当 | 300,000円 |
| 貸方 | 預り金(源泉所得税) | 6,000円 |
| 貸方 | 預り金(社会保険料) | 45,000円 |
| 貸方 | 預り金(住民税) | 98,400円 |
| 貸方 | 普通預金 | 150,600円 |
納付のときは、98,400円を、借方「預り金(住民税)」・貸方「普通預金」で処理します。納期は、この給与を払った月の翌月10日です。預り金の考え方は立替金とは?仕訳と仮払金・預り金との違いにもまとめています。
退職金の住民税と、前年所得の住民税は科目を分ける
退職金から引く退職所得の住民税と、前年の所得にかかる住民税の一括徴収分は、納付書も申告書も別です。同じ「預り金(住民税)」に入れる場合は、補助科目や摘要で分けておくと、納付のときに残高と納付額を突き合わせやすくなります。納付の前に、預り金の内訳が納付額と合っているかを確認しておくと、金額の間違いに早く気づけます。
普通徴収に切り替えたとき、すでに引いた分はどうするか
異動届出書で普通徴収を選んだのに、最終給与から住民税を引いてしまうと、本人に二重で納付書が届きます。すでに引いてしまった場合の精算方法は、提出先の市区町村に確認してください。
よくある質問(FAQ)
- 6月〜12月に退職する人が一括徴収を希望したら、会社は断れますか?
-
本人から申出があったときは、会社は残りの税額を給与などから一括して徴収し、市区町村に納める扱いです。地方税法第321条の5第2項ただし書は、その事由が6月1日から12月31日に生じ、本人から申出があった場合を特別徴収の対象としています。ただし、同じただし書は5月31日までに支払う給与等が残額を超えることを条件にしているため、引けない事情があるときは市区町村に相談してください。
- 最終給与が少なくて、一括徴収額を引ききれません。どうすればよいですか?
-
1月〜4月の退職では、5月31日までに支払う給与・退職金等が残額を超えるときだけ一括徴収になります。超えない場合は一括徴収にならず、残りは普通徴収に切り替わります。支払い見込みと実際がずれたときは、実際に支払われた額から徴収できる額を徴収するという括弧書きが条文にあります。6月〜12月の退職で本人が希望している場合も、引ける範囲と普通徴収にする部分を市区町村に確認して、異動届出書の欄に反映します。
- 退職金から一括徴収してもよいのですか?
-
よいです。地方税法第321条の5第2項ただし書は、5月31日までに支払われる「給与又は退職手当等」から徴収すると定めています。退職金から引く場合の仕訳は、借方が退職金、貸方が預り金(住民税)です。退職所得そのものにかかる住民税とは別の計算なので、混同しないようにしてください。
- 異動届出書は、住民税が非課税の退職者でも出しますか?
-
出します。香川県のQ&Aは、非課税の従業員が異動した場合も、異動が生じた翌月の10日までに提出するよう案内しています。また、京都府のQ&Aは、1月2日から5月31日までに退職した人についても、給与支払報告書を出した後であれば提出が必要とし、期限の10日が土日祝日のときは翌日になるとしています。
- 退職後すぐに再就職する場合も、住民税は一括徴収しますか?
-
再就職先で引き続き特別徴収を希望する場合は、一括徴収ではなく、再就職先の給与から引き続き引く方法があります。香川県のQ&Aは、退職後に再就職して本人が転職先からの特別徴収を希望したケースを、特別徴収で納める例として挙げています。手続きは、届出書の「特別徴収継続」の欄を使うため、提出先の市区町村の案内に従ってください。
退職 住民税 一括徴収まとめ:退職月と月割額から金額を決める
1月〜4月の退職は支払う給与等が残額を超えるとき一括徴収が必要、6月〜12月は本人が申し出たときだけ、5月は残額なしです。
通知書の7月〜翌5月分の月割額に、退職月の翌月から5月までの月数を掛けます。年税額148,500円・10月退職なら86,100円です。
退職月の月割額と一括徴収額を合わせて天引きし、貸方は預り金(住民税)にします。
異動届出書は退職の翌月10日までに出します。納付も徴収した月の翌月10日が期限で、納期の特例の会社は12月10日・6月10日です。
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