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イザーク📌 この記事でわかること
結論:中小企業向けの賃上げ促進税制は廃止ではなく「縮小」。教育訓練費の上乗せ(+10%)が廃止され、最大控除率が45%→35%に。法人は令和8年4月1日以後に開始する事業年度から、個人事業主は令和9年分から適用されます。
- 企業規模別の改正3本柱(大企業は廃止・中堅は厳格化・中小は縮小して存続)
- 中小45%→35%の中身と、改正前後の決算シミュレーション(控除額がいくら変わるか)
- 縮小時代に中小企業が今すぐできる決算・賃上げ対策3つ
対象読者:中小企業の経営者・経理担当 / 前提知識:不要 / 読了時間:本文約8分(冒頭サマリーは約2分)
賃上げ促進税制とは?令和8年度改正で「縮小」が決まった背景
賃上げ促進税制とは、従業員への給与等の支給額を前年度より増やした企業が、その増加額の一定割合を法人税額(個人事業主は所得税額)から差し引ける制度です。賃上げを行った企業の税負担を軽くすることで、物価高に負けない継続的な賃上げを後押しする目的で設けられています。
現行制度は令和6年度税制改正で拡充され、中小企業向けは最大控除率45%・5年間の繰越控除という手厚い内容でした。ところが令和8年度税制改正の大綱では、この制度を「縮小」する方向に転換。大企業向け措置の廃止、中堅企業向けの要件厳格化、そして中小企業向けの教育訓練費上乗せ廃止という3つの見直しが盛り込まれました。
背景には、賃上げが大企業を中心にある程度定着してきたこと、制度の対象を真に支援が必要な中小・中堅へ絞り込む狙いがあるとされています。とはいえ、中小企業にとっては使える節税枠が実質的に減る改正であり、決算前に内容を把握しておくことが重要です。






令和8年度改正の3本柱を一覧で確認(大企業・中堅・中小)
今回の改正は企業規模ごとに扱いが異なります。まずは大企業向け・中堅企業向け・中小企業向けの3区分でどう変わるのかを全体像として押さえましょう。
【令和8年度改正】企業規模別の見直し早見表
令和8年3月31日で廃止
当初は令和9年3月末までの予定だったが、1年前倒しで終了
要件を厳格化したうえで令和9年3月31日で廃止
継続雇用者給与等の引上げ幅要件が3%以上→4%以上に
制度は当面継続。ただし教育訓練費の上乗せ(+10%)を廃止
最大控除率が45%→35%に縮小
出典: 財務省 令和8年度税制改正の大綱の概要をもとに作成
ポイントは、大企業向けは「廃止」、中小企業向けは「縮小したうえで存続」という違いです。中堅企業向けはその中間で、要件を厳しくしたうえで令和9年3月末に役目を終えます。本記事では、読者の多くが該当する中小企業向けを中心に、具体的な数字と決算への影響を見ていきます。






中小企業向けの控除率はどう変わる?最大45%→35%の中身
中小企業向け賃上げ促進税制の控除率は、「基本部分」+「3つの上乗せ」の積み上げで決まります。国税庁タックスアンサーNo.5927-2で示された現行の内訳と、改正後の姿を比較してみましょう。
中小企業向け控除率の内訳(改正前 → 改正後)
給与等支給額が前年比
・1.5%以上増 → 15%
・2.5%以上増 → 30%
改正後も変更なし
教育訓練費が前年比5%以上増&給与総額の0.05%以上で+10%
改正で廃止 ← 縮小の本丸
プラチナくるみん認定/えるぼし(三段階目以上)で+5%
改正後も継続
改正前の最大控除率
45%
30%+教育訓練10%+くるみん5%
改正後の最大控除率
35%
30%+くるみん5%(教育訓練分が消える)
つまり縮小の正体は、「教育訓練費を増やせば最大10%上乗せ」という枠がなくなることです。基本の15%・30%、そしてくるみん・えるぼしの5%は維持されるため、上限が45%から35%へと10ポイント下がる形になります。社員研修に力を入れて教育訓練費の上乗せを活用していた企業ほど、影響が大きくなります。
控除率が高くても、実際に差し引ける金額はその年の法人税額の20%が上限です(中小企業向け)。控除しきれなかった分は、中小企業のみ翌年度以降5年間の繰越控除が可能です。控除率だけでなく「自社の法人税額」とのバランスで効果が決まる点を押さえておきましょう。






【決算シミュレーション】改正前後で控除額はいくら変わるか
「45%→35%」が自社にどう効くのかは、金額に置き換えると分かりやすくなります。給与等支給増加額600万円のモデル中小企業で、教育訓練費の上乗せ要件を満たしているケースを比較してみましょう。
改正前(令和8年3月期まで)
控除率:30%+教育訓練10%=40%
控除額:600万円 × 40% = 240万円
※法人税額の20%が上限
改正後(令和9年3月期から)
控除率:30%(教育訓練の上乗せなし)
控除額:600万円 × 30% = 180万円
※法人税額の20%が上限
同じ賃上げ・同じ研修投資をしても、教育訓練費の上乗せ廃止により控除可能額が240万円→180万円へ60万円減少します(いずれも法人税額の20%上限の範囲内であることが前提)。控除しきれない分は5年繰越が使えるとはいえ、単年度のキャッシュ効果は確実に薄くなります。
上記はあくまで控除率の差を分かりやすくしたモデルケースであり、実際の控除額は各社の法人税額・給与増加額・認定状況によって変動します。自社の正確な試算は、決算データをもとに税理士に確認することをおすすめします。実務の現場でも、改正の公表後は「令和8年3月期までに教育訓練費の駆け込み計上をすべきか」という相談が増えています。「現行の45%枠を取り切るか」は、3月決算法人にとって検討価値のある論点です。






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中小企業向けが「縮小して存続」なのに対し、規模の大きい企業向けは段階的な廃止が決まりました。自社や取引先がどの区分にあたるかを確認しておきましょう。
大企業向け(全企業向け)措置:令和8年3月31日で廃止
資本金規模の大きい企業も含めて適用できた「全企業向け措置」は、令和8年3月31日までに開始する事業年度をもって廃止されます。もともと令和9年3月末までの制度でしたが、1年前倒しで終了する形です。賃上げが相対的に進んだ大企業については、税制での後押しを縮小する方針が反映されています。
中堅企業向け:要件を厳格化したうえで令和9年3月31日で廃止
中堅企業向け措置は、継続雇用者給与等支給額の引上げ幅要件が「3%以上」から「4%以上」へ引き上げられます。要件を満たすハードルを上げたうえで、令和9年3月31日までに開始する事業年度をもって廃止される予定です。令和8年4月1日以降に始まる事業年度では、見直し後の厳しい要件が適用される点に注意が必要です。
一方で、子育て支援・女性活躍に関するくるみん/えるぼし認定による上乗せ措置は引き続き存置されます。賃上げそのものへの上乗せは絞られても、両立支援・女性活躍の取組を評価する枠は残る、という方向性です。






いつから適用?法人・個人事業主の適用時期と繰越控除
「いつの決算から縮小されるのか」は、法人と個人事業主で区切りが異なります。混同しやすいポイントなので整理しておきましょう。
- 法人:令和8年4月1日以後に開始する事業年度から、教育訓練費の上乗せ廃止(最大35%)が適用されます。3月決算なら令和9年3月期から、12月決算なら令和9年12月期からが対象です。
- 個人事業主:所得税の制度として、令和9年分(2027年分)から改正後の内容が適用されます。令和8年分(2026年分)までは現行の内容で計算できます。
- 5年間の繰越控除(中小のみ):令和6年度改正で導入された、控除しきれない額を翌年度以降5年間繰り越せる仕組みは継続されます。赤字の年でも将来の黒字に備えて積み上げられます。
逆算すると、現行の最大45%(教育訓練費の上乗せ含む)が使えるのは、法人は令和8年3月31日までに開始する事業年度まで、個人は令和8年分までということになります。研修投資による上乗せを取りに行くなら、この期限を意識した決算対策が有効です。次の3ステップで、自社がいつ縮小の影響を受けるかをセルフチェックしてみましょう。
資本金1億円以下、または従業員1,000人以下なら中小企業向けの区分です。個人事業主も従業員1,000人以下なら対象になります。
3月決算なら令和9年3月期、12月決算なら令和9年12月期が、最大35%(教育訓練費の上乗せ廃止)の最初の対象です。個人事業主は令和9年分からが対象です。
その直前の事業年度(法人は令和8年3月期まで・個人は令和8年分まで)が、教育訓練費の上乗せを含む最大45%を使える最後のチャンスです。研修投資の前倒しを検討する場合の基準にします。






縮小時代に中小企業がとるべき決算・賃上げ対策3つ
控除枠が縮む令和8年度改正を踏まえ、中小企業が決算前にできる現実的な対策を3つに整理しました。いずれも「制度が手厚いうちに使い切る」「残る枠を確実に取る」という発想です。
対策1:令和8年3月期(個人は令和8年分)までに教育訓練費の上乗せを取り切る
教育訓練費の上乗せ(+10%)が使えるのは改正前の事業年度までです。社員研修・資格取得支援・外部セミナーなどの計画があるなら、要件(前年比5%以上増&給与総額の0.05%以上)を満たす形で改正前に前倒しすることで、45%枠を活かせる可能性があります。ただし支出ありきで無理に計上すると本末転倒なので、本来必要な投資の範囲で検討しましょう。
対策2:くるみん・えるぼし認定で+5%枠を確保する
改正後も存置される数少ない上乗せが、プラチナくるみん認定・えるぼし認定(三段階目以上)による+5%です。両立支援や女性活躍の取組は採用・定着の面でもメリットがあり、認定を取得すれば縮小後も35%枠をフルに狙えます。中長期で見れば、教育訓練費上乗せの代替として検討する価値があります。
対策3:5年繰越控除を前提に、赤字でも申告を切らさない
その年の法人税額が小さく控除しきれない場合でも、明細書を添付して申告しておけば5年間の繰越が可能です。創業期や投資先行で赤字の中小企業ほど、この繰越の権利を確保しておく意味が大きくなります。毎期の申告で明細添付を忘れないことが、将来の節税につながります。
賃上げ促進税制は要件の判定が細かく、適用を誤ると後から控除を受けられないリスクがあります。自社が「いつの事業年度から縮小の影響を受けるか」「教育訓練費の上乗せを取り切れるか」は、決算データをもとに早めに税理士へ相談しておくと安心です。






よくある質問(FAQ)






- 賃上げ促進税制は廃止されてしまうのですか?
-
中小企業向けの制度は廃止ではなく、教育訓練費の上乗せ(+10%)を廃止して最大控除率を45%から35%に縮小したうえで当面継続します。一方、大企業向け(全企業向け)措置は令和8年3月31日までに開始する事業年度で廃止、中堅企業向けは要件を厳格化したうえで令和9年3月31日までに開始する事業年度で廃止される予定です。詳細は財務省の令和8年度税制改正の大綱の概要をご確認ください。
- 中小企業向けの基本の控除率は変わりますか?
-
基本部分(給与等支給額が前年比1.5%以上増で15%、2.5%以上増で30%)は改正後も維持されます。変わるのは「教育訓練費の上乗せ(+10%)」が廃止される点です。くるみん・えるぼし認定による上乗せ(+5%)も存置されるため、最大控除率は30%+5%=35%となります。
- いつの決算から最大35%になりますか?
-
法人は令和8年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。3月決算なら令和9年3月期から、12月決算なら令和9年12月期からが対象です。個人事業主は所得税の制度として令和9年分(2027年分)から適用されます。それ以前の事業年度・年分は現行(最大45%)で計算できます。
- 教育訓練費の上乗せを今のうちに使うべきですか?
-
研修や資格取得支援などの投資予定があり、要件(教育訓練費が前年比5%以上増かつ給与等支給額の0.05%以上)を満たせる見込みがあるなら、改正前の事業年度に活用することで45%枠を活かせる可能性があります。ただし控除目的だけで不要な支出を行うのは避け、本来必要な人材投資の範囲で判断してください。具体的な適否は税理士にご相談ください。
- 赤字で法人税額が出ない年でも、この制度を使う意味はありますか?
-
中小企業向けには5年間の繰越控除があります。控除しきれなかった額は、超過額が生じた事業年度から毎年確定申告書に明細書を添付し続けることで、翌年度以降5年間繰り越して控除できます。赤字の年に申告を切らさず繰越の権利を確保しておけば、将来黒字化したときに控除を受けられます。
賃上げ促進税制の縮小2026まとめ:今すぐできる決算チェックリスト
資本金1億円以下または従業員1,000人以下なら「中小企業向け」です。自社の決算期から、いつの事業年度が令和8年4月1日以後開始(=最大35%)になるかを確認しましょう。3月決算なら令和9年3月期から縮小の影響を受けます。
現行の45%枠が使える事業年度(法人は令和8年3月期まで・個人は令和8年分まで)に、必要な研修投資を計画的に行い、教育訓練費の上乗せ要件を満たせるか検討します。支出ありきにならない範囲で前倒しを判断してください。
改正後も存置される上乗せ枠です。両立支援・女性活躍の取組を進めて認定を取得すれば、縮小後も35%枠をフルに狙えます。採用・定着のメリットも見込めるため、教育訓練費上乗せの代替として検討しましょう。
控除しきれない額は5年繰越が可能です。赤字の年でも、超過額が生じた事業年度から明細書を申告書に添付し続けることで繰越の権利を確保できます。毎期の申告で添付を切らさないことが将来の節税につながります。
賃上げ促進税制は要件判定が細かく、自社の正確な控除額は法人税額や賃上げ率によって変わります。クラウド会計で賃上げ率・対象経費を集計しつつ、適用の可否は決算データをもとに税理士へ早めに確認しておくと安心です。



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この記事の監修
公認会計士試験合格者が在籍。税務・会計の実務経験に基づき、正確な情報提供を心がけています。
公認会計士試験合格者在籍、Big4監査法人・税理士法人での実務経験、財務省勤務経験
免責事項
本記事の内容は情報提供を目的としたものであり、特定の税務判断を推奨するものではありません。賃上げ促進税制の適用可否や控除額は各社の状況により異なります。具体的な税務・会計の判断については、必ず税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。記事の内容は執筆時点(2026年6月)の令和8年度税制改正の大綱等に基づいており、今後の法令・通達により変更される可能性があります。


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