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2023年10月に始まったインボイス制度。免税事業者からインボイス発行事業者になった個人事業主の多くが活用してきた「2割特例」が、2026年(令和8年)の申告分でついに終了します。
そこで令和8年度税制改正により新設されたのが「3割特例」です。個人事業者に限定し、令和9年分・10年分(2027年・2028年の申告)の消費税について、納付税額を売上税額の3割に軽減できる激変緩和措置です。
本記事では、3割特例の適用要件・計算シミュレーション・2割特例との違い・法人が除外される理由まで、国税庁の公式資料をもとに正確に解説します。
インボイス「3割特例」とは何か【令和8年度改正の新設措置】
ぜいむたん


3割特例の正式名称は「インボイス発行事業者の登録を受けたことにより免税事業者から課税事業者となった個人事業者に係る消費税額の特例」です(国税庁 令和8年度税制改正特集)。
ひと言でいえば、インボイス登録したことで課税事業者になった個人事業主が、令和9年分・10年分の消費税を「売上税額の3割だけ」納めればよいという制度です。残り7割分の消費税は納めなくてよいため、実質的な税負担が大幅に軽減されます。
3割特例が創設された背景
インボイス制度が始まるまで免税事業者だった個人事業主は、インボイス登録と同時に消費税の申告・納税義務が発生しました。2割特例はこの急激な負担増を3年間抑える措置でしたが、2026年9月30日でその期間が終了します。
しかし2割特例が終わって突然、本則課税・簡易課税に移行すると、手取りが大きく減少する人が続出することが懸念されました。そこで令和8年度税制改正により、さらに2年間の激変緩和措置として3割特例が設けられたのです。
制度の連続性——2割特例・3割特例・本則課税の時系列
個人事業主にとっての消費税負担軽減措置の流れを整理すると以下のようになります。
📅 個人事業主のインボイス軽減措置タイムライン
令和5年分〜令和8年分(〜2026年申告)
🟢 2割特例:売上税額の2割を納税(8割分は控除)
令和9年分・令和10年分(2027年・2028年申告)
🟡 3割特例(新設):売上税額の3割を納税(7割分は控除)
令和11年分以降(2029年申告〜)
🔴 本則課税または簡易課税:軽減措置なし(原則どおり)
※個人事業者の課税期間は1月1日〜12月31日(暦年)。令和8年分(2026年)の申告で2割特例が使えるのは、令和8年9月30日が令和8年分の課税期間中に含まれるためです。
2割特例から3割特例へ——何がどう変わったのか






2割特例と3割特例の違いを表で確認しましょう。
📊 2割特例 vs 3割特例 比較表
| 項目 | 2割特例(終了) | 3割特例(新設) |
|---|---|---|
| 適用期間 | 令和5年〜令和8年分 | 令和9年・10年分 |
| 納税額 | 売上税額の2割 | 売上税額の3割 |
| 対象者 | 個人・法人 | 個人事業者のみ |
| 基準期間売上要件 | 1,000万円以下 | 1,000万円以下 |
| 事前届出 | 不要 | 不要(申告書に付記) |
出典:国税庁 令和8年度税制改正特集 をもとに作成
法人が除外された理由
3割特例が個人事業者だけを対象にしている理由は、政策の意図にあります。インボイス制度の影響が特に大きかったのは、零細なフリーランスや個人事業主です。法人は設立時点で課税事業者になることが多く、法人化によって得た節税メリットとのバランスを考慮して適用外とされました。
マイクロ法人(一人法人)も法人に該当するため、3割特例は使えません。2割特例終了後、法人は本則課税か簡易課税かを選択する必要があります。
⚠️ 注意:マイクロ法人(一人会社)はたとえ規模が小さくても「法人」として扱われるため、3割特例の適用外です。令和8年度に法人成りをした場合も同様です。
3割特例を使える人・使えない人の見極め方






適用要件①:個人事業者であること
最も基本的な要件です。個人事業主・フリーランス・個人の農業者などが対象です。法人(株式会社・合同会社・一般社団法人など)は業種・規模を問わず一律で対象外です。
適用要件②:インボイス発行事業者の登録を受けていること
インボイス(適格請求書)を発行できる「適格請求書発行事業者」として国税庁に登録されていることが必要です。免税事業者のままインボイス未登録の方は、そもそも消費税の納税義務がないため3割特例も関係ありません(特例の意味がないため対象外)。
適用要件③:基準期間の課税売上高が1,000万円以下
「基準期間」とは適用を受ける年の2年前を指します。
たとえば令和9年分(2027年分)の申告で3割特例を使いたい場合、基準期間は令和7年(2025年)の課税売上高です。これが1,000万円を超えていると、元々の免税事業者要件を満たせず対象外になります。
✅ 3割特例 適用可否チェックリスト
個人事業者であること
法人(マイクロ法人含む)は✕。個人でフリーランス・自営業を営んでいれば○
インボイス発行事業者(適格請求書発行事業者)として登録済み
登録番号(T+13桁)が交付されていれば○。未登録の免税事業者は✕
基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円以下
令和9年分なら令和7年(2025年)の売上を確認。1,000万超なら通常の課税事業者として本則/簡易課税
3つ全てにチェックが入れば、令和9年分・10年分の消費税申告で3割特例が使えます。
なお、3割特例の適用には事前の届出は一切不要です。消費税の確定申告書を提出する際に、その旨を付記するだけで適用できます(国税庁令和8年度税制改正特集)。
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年間売上別・消費税納付額シミュレーション
売上税額は「税込売上高 ÷ 1.1 × 0.1」で計算します。以下は消費税率10%の課税売上のみの場合のシミュレーションです。
💰 年間売上別 消費税納付額シミュレーション(税込売上ベース)
| 税込年間売上 | 売上税額 | 2割特例 (終了) |
3割特例 (新設) |
簡易課税 第五種 (50%) |
|---|---|---|---|---|
| 330万円 | 約30万円 | 約6万円 | 約9万円 | 約15万円 |
| 550万円 | 約50万円 | 約10万円 | 約15万円 | 約25万円 |
| 770万円 | 約70万円 | 約14万円 | 約21万円 | 約35万円 |
| 1,100万円 | 約100万円 | 約20万円 | 約30万円 | 約50万円 |
※売上税額=税込売上÷1.1×0.1で計算。第五種(サービス業・みなし仕入率50%)での比較。端数処理により概算値。課税仕入が多い業種では本則課税が有利な場合もあります。具体的な税額は必ず税理士・公認会計士試験合格者にご確認ください。
3割特例 vs 簡易課税——どちらが有利?
3割特例は業種を問わず売上税額の3割が一律の納税額になります。一方、簡易課税制度は業種ごとに「みなし仕入率」が設定されており、率が高いほど納税額が少なくなります。
サービス業・フリーランスが多く該当する第五種事業(みなし仕入率50%)では、3割特例のほうが有利です。一方、小売業(第二種・80%)や卸売業(第一種・90%)では簡易課税の方が有利になる場合があります。
💡 ポイント:3割特例は届出不要で確定申告書に付記するだけ。簡易課税への移行には「消費税簡易課税制度選択届出書」を前課税期間末日までに提出する必要があります。令和11年分から簡易課税を使いたい場合は令和10年12月31日までに届出が必要です。
令和8年分(2026年1月〜12月)の消費税申告(2027年3月)は2割特例が使えます。令和8年分の申告で使える最後のチャンスです。申告書に「2割特例の適用を受ける」旨を付記して確定申告を行いましょう。
令和9年分(2028年3月申告)・令和10年分(2029年3月申告)では3割特例に自動移行します。事前届出は不要ですが、申告書に付記を忘れずに。簡易課税選択届出書は提出しないこと(3割特例と簡易課税は択一)。
令和11年分以降の課税方式(本則課税 or 簡易課税)を選択します。簡易課税を選ぶ場合は令和10年12月31日までに届出書を提出。自分の業種・仕入率・実際の仕入コストを確認して判断しましょう。
令和8年分(2026年)から令和9年分(2027年)への移行——注意すべきタイミング






個人事業主の消費税の課税期間は1月1日〜12月31日(暦年)です。2割特例の適用期間は「令和8年9月30日までの日の属する課税期間」とされているため、令和8年分(2026年1月〜12月31日)の課税期間はこれに該当します。
そのため令和8年分の消費税申告(2027年3月)では2割特例がまだ使えます。令和9年分の申告(2028年3月)から3割特例に移行するという流れになります。法人とは違い個人事業主には「空白期間」はありません。
3割特例が終了した後(令和11年分以降)の準備
令和11年分(2029年申告〜)以降は、3割特例・2割特例ともに終了します。この時点では本則課税か簡易課税かを選択しなければなりません。
簡易課税を令和11年分から適用したい場合、「消費税簡易課税制度選択届出書」を令和10年12月31日(前課税期間の末日)までに提出する必要があります。3割特例の2年間で準備をしておくことが重要です。
令和8年度改正で経過措置も2年延長——買い手側への影響






3割特例は「売り手側(個人事業主)」の消費税負担を軽減するものでしたが、令和8年度改正では「買い手側(インボイス未登録の免税事業者から仕入れをする課税事業者)」の経過措置も2年間延長されました。
📋 免税事業者からの仕入れ控除スケジュール(令和8年度改正後)
★印が令和8年度改正で2年延長された期間。改正前は令和8年10月以降が50%→30%→0%の予定でした。
免税事業者と取引を続ける課税事業者は、この経過措置スケジュールにもとづいて仕入税額控除の計算を行う必要があります。取引先がインボイス未登録かどうかを改めて確認することをお勧めします。
まとめ——3割特例を最大限に活用するための3ステップ
①個人事業者 ②インボイス登録済み ③基準期間の課税売上高1,000万円以下——この3つを確認。法人、未登録の免税事業者、基準期間1,000万円超の方は対象外です。マイクロ法人も法人扱いのため注意。
事前届出は不要。令和9年分(2028年3月申告)と令和10年分(2029年3月申告)の消費税確定申告書に3割特例の適用を受ける旨を記載するだけで完了。申告ソフトがあれば選択欄にチェックを入れるだけです。
3割特例は令和10年分で終了。令和11年分から簡易課税を使いたい場合は、令和10年12月31日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。3割特例の2年間で自分の業種・仕入率に合った課税方式を検討しましょう。
よくある質問(FAQ)
- 3割特例を使うために届出書の提出は必要ですか?
-
不要です。令和9年分・10年分の消費税確定申告書を提出する際に、その旨を付記するだけで適用できます(国税庁 令和8年度税制改正特集より)。簡易課税と異なり、前課税期間末日までの届出は一切必要ありません。申告ソフトを使っている場合は「3割特例を適用する」の選択欄にチェックするだけです。
- 会社を設立して法人化した場合、3割特例は使えますか?
-
使えません。3割特例は「個人事業者」に限定された措置です。株式会社・合同会社・一般社団法人などの法人は、規模の大小に関わらず対象外となります。マイクロ法人(一人会社)も同様です。法人は2割特例終了後、本則課税または簡易課税の選択が必要となります。
- 令和8年分(2026年)の申告でも3割特例は使えますか?
-
使えません。令和8年分(2026年1月〜12月)の申告では、2割特例(売上税額の2割を納税)が適用されます。3割特例が適用されるのは令和9年分・令和10年分のみです。個人事業主の場合、令和8年9月30日が令和8年分の課税期間(1月〜12月)中に含まれるため、令和8年分の確定申告(2027年3月提出)まで2割特例が使えます。
- 途中で売上が増えて1,000万円を超えた場合はどうなりますか?
-
基準期間(適用年の2年前)の課税売上高で判定します。令和9年分で3割特例を使う場合の基準期間は令和7年(2025年)です。この年の売上が1,000万円以下であれば適用可能です。なお令和9年・10年の申告年本体の売上がいくら増えても、基準期間要件を満たしていれば3割特例は使えます。ただし令和11年以降も1,000万円超が続く場合は通常の課税事業者として本則・簡易課税の適用になります。






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イザークコンサルティング株式会社(公認会計士試験合格者在籍)
本記事は令和8年度税制改正の公式資料および国税庁の公表情報をもとに作成しています。
⚠️ 免責事項:本記事の内容は情報提供を目的としたものです。具体的な税務判断は税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。3割特例・インボイス制度に関する情報は2026年6月時点のものです。今後の法令改正により内容が変更になる場合があります。


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