「2026年10月から106万円の壁がなくなる」という説明を見て、パート・アルバイトの社会保険料を今から見込んでいる会社は少なくありません。ところが厚生労働省の資料を確認すると、賃金要件(月額8.8万円以上)の撤廃時期は「法律の公布から3年以内の政令で定める日」とされており、2026年10月と決まっているわけではありません。
一方で、2026年10月から確実に始まるものもあります。新たに加入対象となる短時間労働者の保険料負担を軽くする特例措置です。この記事では、施行スケジュールを一次資料で整理したうえで、従業員ごとの加入判定と会社負担の増加額を計算できるツールを用意しました。Excelの試算シートと、従業員向け説明文書のWordひな形も配布します。
📌 この記事でわかること
- 賃金要件(月額8.8万円)の撤廃時期は未定で、最低賃金の引上げ状況を見て決まること
- 企業規模要件が2027年10月に36人以上、2029年10月に21人以上と段階的に広がるスケジュール
- 週の労働時間と月額賃金を入れると加入対象かを判定し、会社負担の年額まで出す試算ツール(記事内で動きます)
- 2026年10月に始まる保険料負担軽減の特例(月収12.6万円以下・最大3年間)で本人負担がどう変わるか
- 従業員別の年間コストを積み上げるExcel試算シートと、Word版の従業員向け説明文書(無料ダウンロード)
ぜいむたん


社会保険の適用拡大はいつから?施行スケジュールを一次資料で確認
結論から書くと、短時間労働者の適用拡大は1回の改正でまとめて起きるのではなく、2026年10月から2035年10月まで段階的に進みます。根拠は2025年6月13日に成立した年金制度改正法で、施行時期は厚生労働省年金局『年金制度改正法に関する広報について』(令和7年7月30日・第21回年金広報検討会 資料2-3)に整理されています。
| 時期 | 何が変わるか | 会社がやること |
|---|---|---|
| 2026年10月〜 | 新たに加入対象となる短時間労働者への保険料負担軽減の特例が開始(3年間) | 特例を使うには会社からの申請が必要 |
| 2027年10月〜 | 企業規模要件が従業員36人以上まで拡大 | 対象者の洗い出しと説明・資金繰りの手当て |
| 2029年10月〜 | 企業規模要件が従業員21人以上まで拡大/常時5人以上を使用する個人事業所の適用業種も拡大 | 個人事業所は自社の業種を確認 |
| 2032年10月〜 | 企業規模要件が従業員11人以上まで拡大 | 小規模事業所も準備が必要に |
| 2035年10月〜 | 企業規模要件を撤廃(従業員10人以下も対象) | 規模にかかわらず週20時間以上で加入 |
| 公布から3年以内の政令で定める日 | 賃金要件(月額8.8万円以上)を撤廃。時期は全国の最低賃金の引上げ状況を見極めて判断 | 週20時間以上の全員が対象になる前提で試算しておく |
ここでいう「従業員数」は、厚生年金保険の被保険者数(フルタイム+週労働時間がフルタイムの4分の3以上の方)でカウントします。パート従業員が多い会社では、実際の在籍人数よりも小さくなる点に注意してください。






短時間労働者の加入要件はこう変わる
週20時間以上(維持)
所定労働時間が週20時間以上という要件は残ります。改正後は、実質この1本が判定の軸になります。
月額8.8万円以上(撤廃予定)
いわゆる106万円の壁。撤廃されると、週20時間以上なら賃金の多寡にかかわらず加入対象になります。
企業規模(段階的に撤廃)
現在の51人以上から、2027年10月に36人以上、最終的に2035年10月で撤廃されます。学生は引き続き対象外です。
【試算ツール】会社負担はいくら増える?従業員別コストシミュレーター
会社の負担は「標準報酬月額 ×(健康保険料率+介護保険料率+厚生年金保険料率)÷ 2」で計算します。厚生年金は18.3%で固定ですが、健康保険料率は協会けんぽの都道府県別料率や健康保険組合の料率によって変わるため、下のツールでは入力できるようにしています。






試算の使い方(3ステップ)
雇用契約書の所定労働時間で判定します。残業を含む実労働時間ではありません(学生は対象外)。
「月9〜10万円が10人」のように賃金帯でまとめると早く概算できます。40歳以上の方は介護保険料も加わります。
従業員36人以上の会社は2027年10月から。年度予算と価格設定の見直しを、その1年前には始めておきたいところです。
2026年10月開始の「保険料負担軽減の特例」とは
2026年10月から始まるのが、新たに社会保険の加入対象となる短時間労働者への支援措置です。会社が労使折半を超えて保険料を多く負担することで本人負担を軽くし、会社が追加負担した分は制度全体から全額支援されるという仕組みです。
| 標準報酬月額(年収換算の目安) | 本人負担(本来の負担に対する割合) |
|---|---|
| 8.8万円(約106万円) | 25/50 |
| 9.8万円(約118万円) | 30/50 |
| 10.4万円(約125万円) | 36/50 |
| 11万円(約132万円) | 41/50 |
| 11.8万円(約142万円) | 45/50 |
| 12.6万円(約151万円) | 48/50 |
| 13.4万円(約161万円)以上 | 50/50(軽減なし) |
特例を使うには会社からの申請が必要で、期間は最大3年間、3年目は軽減割合が半減します。軽減を受けても将来の年金額が減ることはありません。労使合意に基づいて任意に社会保険を適用する場合でも、この支援措置を活用できるとされています。






Excel試算シートとWord説明文書を無料配布
記事内のツールは賃金帯ごとの概算用です。従業員ごとに積み上げて年度予算に落とし込むには、下のExcelを使ってください。従業員への案内文は、Word版のひな形を社名と日付だけ入れて使えます。会員登録もメールアドレスの入力も不要です。






会社が今からできる3つの準備
適用時期が来てから慌てると、対象者への説明とシフト調整が同時に発生して現場が混乱します。実務では、適用の1年前から次の3つを進めておくと落ち着いて移行できます。
1. 週20時間前後の従業員をリスト化する
雇用契約書の所定労働時間で判定するため、契約と実態がずれている場合は先に整理が必要です。週19.5時間と20時間では扱いが変わるため、契約更新のタイミングで方針を決めておきます。
2. 増加する法定福利費を年度予算に織り込む
会社負担は損益計算書上の法定福利費として毎月発生します。人件費率の上昇分を価格に反映するのか、労働時間の配分を見直すのかは、数字を出したうえで判断すべき経営判断です。配布のExcelで年額を積み上げてから検討してください。
3. 任意適用と支援措置の活用を検討する
企業規模要件を満たさない事業所でも、労使合意に基づいて任意に社会保険を適用できます。人材確保の観点から先行して適用する選択肢もあり、その場合も保険料負担軽減の支援措置を活用できるとされています。あわせて、賃上げに関する助成金や税制も確認しておくとよいでしょう。
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よくある質問(FAQ)
- 2026年10月から106万円の壁は撤廃されるのですか?
- 賃金要件(月額8.8万円以上)の撤廃時期は、法律の公布から3年以内の政令で定める日とされており、2026年10月と決まっているわけではありません。厚生労働省は全国の最低賃金の引上げ状況を見極めて判断するとしています。2026年10月から始まるのは、新たに加入対象となる方への保険料負担軽減の特例措置です。
- 企業規模要件の「従業員数」はどう数えますか?
- 厚生年金保険の被保険者数でカウントします。フルタイムの従業員と、週の所定労働時間がフルタイムの4分の3以上の従業員が対象で、短時間労働者本人は含みません。実際の在籍人数より少なくなるのが一般的です。
- 保険料負担軽減の特例は自動的に適用されますか?
- 会社からの申請が必要です。対象は月収12.6万円以下の短時間労働者で、期間は最大3年間、3年目は軽減割合が半減します。会社が追加負担した保険料は制度全体から全額支援されます。
- 学生アルバイトも加入対象になりますか?
- 昼間部の学生は短時間労働者の適用対象から除かれています。ただし卒業後も継続して働く場合や、定時制・通信制など一部の学生は扱いが異なります。個別の判断は年金事務所または社会保険労務士にご確認ください。
まとめ:時期を正しく押さえて、金額を先に出しておく
従業員36人以上は2027年10月、21人以上は2029年10月から。賃金要件の撤廃は公布から3年以内の政令で定める日です。
週20時間以上の従業員をリスト化し、記事内のツールとExcelで年間コストを積み上げます。
2026年10月開始の負担軽減特例は申請が必要です。Word版の説明文書で、加入のメリットも含めて事前に伝えておきます。



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