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退職金を支払った会社は、退職した人に「退職所得の源泉徴収票」を渡します。令和8年分からは、その写しを税務署へ出す範囲が広がりました。支払者が書く欄は、支払金額、源泉徴収税額、特別徴収税額、退職所得控除額、勤続年数の5つが中心です。
退職する側が会社に出す「退職所得の受給に関する申告書」の書き方は退職所得の受給に関する申告書の書き方で解説しています。この記事はその次の段階として、申告書を受け取った支払者が源泉徴収票を作るときの欄ごとの記載例と税額の計算を扱います。国税庁の手引の見本を読み解き、同じ数字を出せる計算ツールとExcelも用意しました。
📌 この記事でわかること
- 退職所得の源泉徴収票の書き方を、国税庁の令和8年分の手引にある見本の欄①〜⑪の順に確認できる
- 支払金額と勤続期間を入れるだけで、源泉徴収税額・特別徴収税額・退職所得控除額が出る計算ツール(本文に内蔵・Excel版つき)
- 手引の見本(支払金額1,000万円・勤続20年)の51,050円を、控除額から自分の手で再現する計算の流れ
- 申告書がないとき(20.42%)、短期退職手当等、特定役員退職手当等で、源泉徴収票の何が変わるか
- 摘要欄に書く7つの事項と、令和8年分で新設された番号欄(1〜7)の使い分け
- 退職所得の源泉徴収票と特別徴収票の違い、提出先と期限
退職所得の源泉徴収票の書き方|作成の流れと提出先(令和8年分)
退職所得の源泉徴収票は、退職手当等を支払った会社などが、勤続年数・退職所得控除額・源泉徴収税額を計算して欄に書き写し、退職後1か月以内に受給者へ交付する書類です。令和8年分からは、税務署への提出も全受給者分が必要になりました(国税庁の手引)。
書く作業の中身は、計算が先で転記が後です。欄を埋める順番は次の6段階になります。計算の根拠は国税庁のタックスアンサーNo.2732です。
退職日まで引き続き勤めた期間を数え、1年未満の端数は1年に切り上げます。退職給与規程などの明らかな定めで退職手当等の計算の基礎に含まれる前の勤務期間があるときは、その期間も含めます(No.2732)。
勤続20年以下は「40万円×勤続年数」(80万円に満たなければ80万円)、20年を超えると「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」です。障害者になったことが直接の原因の退職なら100万円を足します。
一般の退職手当等は(支払金額-退職所得控除額)×1/2です。1,000円未満は切り捨てます。短期退職手当等と特定役員退職手当等は計算が変わります(後述)。
課税退職所得金額に速算表の税率をかけ、控除額を引き、102.1%をかけます。1円未満は切り捨てです。
課税退職所得金額に、市町村民税6%と道府県民税4%をそれぞれかけ、100円未満を切り捨てます。
税務署提出用、市区町村提出用、受給者交付用の3枚です。ただし市区町村提出用は、eLTAXによる提出方法が整うまで作成・提出を省略できます。
令和8年分の改正点:提出範囲の拡大と番号欄
手引の「令和8年分の法定調書の提出から適用される主な改正事項」には、退職所得の源泉徴収票について2点が載っています。1つ目は、これまで法人の役員への退職手当等だけだった税務署への提出が、すべての居住者への退職手当等に広がったことです。提出を省略できる範囲を定めていた規定が廃止されました。2つ目は、様式に「番号」欄ができたことです。みなし退職手当等や確定拠出年金の老齢給付金の一時金などに当たるときは、区分ごとの番号を書きます。
3枚の提出先と期限
手引では、退職所得の源泉徴収票と特別徴収票は同じ様式で、提出先と期限は次のとおりです。
退職所得の源泉徴収票・特別徴収票の提出先と期限(令和8年分)
提出先は、退職手当等の支払事務を取り扱う事務所の所在地を所轄する税務署。期限は退職後1か月以内ですが、令和8年中に退職した人の分をまとめて令和9年2月1日までに出しても差し支えないとされています。
提出先は、受給者の令和8年1月1日現在の住所地の市区町村。eLTAXによる提出方法が整うまでの間は、作成・提出を省略できます。
提出範囲にかかわらず、退職後1か月以内にすべての受給者へ交付します。書面のほか、承諾を得て電磁的方法で提供することもできます。マイナンバーと法人番号は載せません。
死亡退職で支払った退職手当等は、相続税法の「退職手当金等受給者別支払調書」を出す扱いになるため、この源泉徴収票は不要です。非居住者に支払った場合も、別の支払調書になります。出典は国税庁『令和8年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引』第3章(19〜22ページ)です。
【自動計算ツール】退職所得の源泉徴収票に書く数字を出す
下のツールに支払金額と就職日・退職日を入れると、源泉徴収票の⑤〜⑨に書く数字が出ます。初期値は国税庁の手引の見本と同じ、支払金額10,000,000円、就職平成19年4月1日、退職令和8年12月20日です。そのまま計算すると、勤続年数20年、退職所得控除額800万円、源泉徴収税額51,050円、特別徴収税額は市町村60,000円・道府県40,000円と出ます。見本の数字と一致します。
自動計算ツール
退職所得の源泉徴収票に書く数字を出す
支払金額と就職日・退職日を入れると、勤続年数、退職所得控除額、源泉徴収税額、特別徴収税額を計算し、源泉徴収票の欄ごとに転記する値を並べます。令和8年中に支払う退職手当等で、他に支払済みの退職手当等がない場合が対象です。
本ツールで計算しないもの:本年中に他の退職手当等を受けている場合(区分の中段)、使用人から役員になるなど立場が混在する場合、非居住者、死亡退職、令和9年以後の支払。勤続年数を直接入力したときも、結果の就職・退職年月日は入力した日付のままです(通算の場合は⑨と日付が対応しません)。特別徴収税額は市町村民税6%・道府県民税4%の標準的な割合で、各100円未満を切り捨てています。
同じ計算をExcelでも使えるようにしました。入力は黄色のセルだけで、勤続年数・控除額・区分・税額・転記欄までを数式で出します。退職所得の源泉徴収票 計算シート(Excel)をダウンロードしてください。速算表の税率と控除額は別シートにあり、令和8年分の値です。
ツールの検算と使い方の注意
国税庁の資料にある例と、同じ入力で突き合わせています。タックスアンサーNo.2732の例(支払金額800万円・勤続10年2か月)は91,890円、同じく例(2,300万円・勤続29年2か月)は380,322円、申告書なしの800万円は1,633,600円で、いずれもツールの出力と一致しました。No.2740の短期退職手当等の例は課税退職所得金額450万円、No.2737の特定役員退職手当等の例は300万円です。
使うときの注意は2つあります。立場の選択は、勤続のあいだ一貫して使用人、または一貫して役員等だった人を前提にしています。使用人から役員になった人は、特定役員退職所得控除額を別に計算するため、ツールでは出せません。また、日付から出す勤続年数は暦の月数で数えているため、月末起算の人などは手計算でも確認してください。
退職所得の源泉徴収票の記載例|欄別の書き方(国税庁の見本の読み方)
退職所得の源泉徴収票は、①無効区分から⑪支払者までの11の欄でできています。次の画像は、国税庁の様式に令和8年分の手引の見本と同じ数字を記入し、欄ごとに赤枠と番号を付けたものです。番号は下の一覧と対応しています。

欄ごとに何を書くかを、手引の記載要領どおりに整理します。
欄①〜⑪の記載要領(令和8年分)
新規・追加・訂正で出すときは「0」、無効分として出すときは「1」。受給者交付用にはこの欄がありません。
作成日現在の住所又は居所、令和8年1月1日の住所、氏名、役職名(退職時のもの)。個人番号は、受給者交付用には書きません。
申告書の内容で上段・中段・下段を使い分けます。使い分けは次の見出しで説明します。
みなし退職手当等、確定拠出年金の一時金、株式報酬などのときだけ番号を書き、どれにも当たらなければ空欄です。
令和8年中に支払が確定した退職手当等の金額。作成日現在で未払の分があるときは、その額を内書きします。
所得税と復興特別所得税の合計額。未払分があって税額をまだ徴収していないときは、その未徴収税額を摘要欄に書きます。
令和8年中に特別徴収すべき地方税の税額。市町村民税と道府県民税を分けて書きます。
源泉徴収税額の計算で控除した金額。欄の単位は万円で、見本は800(万円)です。
源泉徴収税額の計算の基礎にした勤続年数。1年未満の端数は1年として数えます。見本は20年で、就職年月日と退職年月日の欄も隣にあります。
計算の基礎や特例を書く欄です。書くことは後述の7つで、見本は空欄になっています。
住所(居所)又は所在地、氏名又は名称、電話番号、マイナンバー又は法人番号。受給者交付用にはマイナンバーと法人番号を書きません。
見本の数字を自分で再現する
手引の見本は計算過程を示していませんが、私が計算したところ、欄の数字はすべて再現できました。支払金額10,000,000円、勤続20年の場合です。退職所得控除額は40万円×20年で800万円、課税退職所得金額は(1,000万円-800万円)×1/2=100万円、源泉徴収税額は100万円×5%×102.1%=51,050円です。特別徴収税額は100万円×6%=60,000円と100万円×4%=40,000円で、見本の⑦と同じになります。就職平成19年4月1日から退職令和8年12月20日までは19年8か月余りなので、端数を切り上げて20年です。
転記で間違えやすいのは⑧の単位です。⑧だけ欄の単位が万円なので、8,000,000円と書くと桁が違います。⑤⑥⑦は円、⑧は万円、⑨は年と、欄ごとに単位が違う点を最初に確認しておくと、書き間違いを防げます。作成後は、⑥の源泉徴収税額が、納付書で納めた退職所得分の税額と一致しているかも突き合わせてください。
③区分の上段・中段・下段の使い分け
③区分は、受給者が出した「退職所得の受給に関する申告書」の内容で、どの段に書くかが決まります。
- 上段:申告書に、令和8年中に受けた他の退職手当等がない旨の記載があるとき
- 中段:申告書に、令和8年中に受けた他の退職手当等がある旨の記載があるとき
- 下段:申告書の提出がなく、20.42%の税率で源泉徴収するとき
見本は上段を使った例です。中段は、他の支払者から同じ年に退職手当等を受けている人のケースで、摘要欄に他の支払者の情報を書く必要があります。申告書側の記入欄の考え方は、前述の申告書の書き方とあわせて読むと整理しやすくなります。
退職所得の源泉徴収票の税額計算|速算表と3つの区分
退職所得の源泉徴収税額は、課税退職所得金額に速算表の式をあてはめて出します。税額は(課税退職所得金額×税率-控除額)×102.1%で、1円未満は切り捨てです。102.1%は復興特別所得税を含めるための率です。国税庁の退職所得の源泉徴収税額の速算表は、次のとおりです(令和8年4月1日現在法令等)。
退職所得の源泉徴収税額の速算表(課税退職所得金額が1,000円未満切捨ての額)
税率5%・控除額0円
税額=(A×5%)×102.1%
税率10%・控除額97,500円
税額=(A×10%-97,500円)×102.1%
税率20%・控除額427,500円
税額=(A×20%-427,500円)×102.1%
税率23%・控除額636,000円
税額=(A×23%-636,000円)×102.1%
税率33%・控除額1,536,000円
税額=(A×33%-1,536,000円)×102.1%
税率40%・控除額2,796,000円
税額=(A×40%-2,796,000円)×102.1%
税率45%・控除額4,796,000円
税額=(A×45%-4,796,000円)×102.1%
A=課税退職所得金額。国税庁の例では、Aが700万円なら(700万円×23%-636,000円)×102.1%=994,454円です。
令和9年分以後は、所得税、防衛特別所得税および復興特別所得税の合計で源泉徴収する扱いに変わると、タックスアンサーに書かれています。この記事の計算は令和8年中に支払う退職手当等が前提です。令和9年以後の支払に使えるかどうかは、国税庁の速算表で確認してください。
一般退職手当等の計算例(国税庁の例)
タックスアンサーNo.2732の例で、手順を確認します。退職金800万円、勤続10年2か月の場合、勤続年数は11年に切り上げます。退職所得控除額は40万円×11年=440万円、課税退職所得金額は(800万円-440万円)×1/2=180万円です。税額は180万円×5%×102.1%=91,890円になります。
退職金2,300万円、勤続29年2か月の場合は、勤続年数が30年です。退職所得控除額は800万円+70万円×10年=1,500万円、課税退職所得金額は(2,300万円-1,500万円)×1/2=400万円、税額は(400万円×20%-427,500円)×102.1%=380,322.5円で、1円未満を切り捨てて380,322円です。
短期退職手当等(勤続5年以下の使用人)の計算
勤続年数が5年以下の使用人などに支払う退職手当等は、短期退職手当等と呼ばれ、令和4年1月1日以後の支払に適用されています。受給者側の説明は申告書の書き方にもあるため、ここでは源泉徴収票に関わる点に絞ります。収入金額から退職所得控除額を引いた残りが300万円以下なら、一般の退職手当等と同じく1/2を掛けます。300万円を超えるときは「150万円+(収入金額-300万円-退職所得控除額)」で、300万円を超えた部分には1/2を掛けません。
国税庁の例(使用人として4年2か月勤務、退職金800万円)では、勤続年数5年、退職所得控除額200万円、差額が600万円で300万円を超えるため、退職所得の金額は150万円+(800万円-500万円)=450万円になります(No.2740)。源泉徴収票の摘要欄には、短期退職手当等の金額と短期勤続年数、その計算の基礎を書きます。
特定役員退職手当等(役員等勤続5年以下)の計算
役員等としての勤続年数が5年以下の人に、その勤続に対応して支払う退職手当等は、特定役員退職手当等です。この場合は(収入金額-退職所得控除額)に1/2を掛けません。国税庁の例(役員として4年9か月、退職金500万円)では、勤続年数5年、退職所得控除額200万円で、退職所得の金額は300万円になります(No.2737)。役員等とは、法人の取締役や監査役、国会議員・地方議会議員、国家公務員・地方公務員などをいいます。
申告書がない・他の退職手当等があるときの退職所得の源泉徴収票
申告書の提出がないときは、退職手当等の支給額に20.42%を掛けた額を源泉徴収し、源泉徴収票の③区分は下段を使います。申告書を出した人を前提にした計算(退職所得控除と1/2課税)は、源泉徴収の段階では行いません。
タックスアンサーNo.2732の例では、退職金800万円で申告書がない場合の源泉徴収税額は、800万円×20.42%=1,633,600円です。同じ800万円でも、勤続10年2か月の人が申告書を出していれば91,890円ですから、差は大きくなります。この差額は、受給者本人が確定申告で退職所得の精算をして取り戻す流れです。受給者側の手続は、退職所得の確定申告が必要な3つのケースで詳しく説明しています。
申告書なしのとき、⑧退職所得控除額の欄にいくらを書くかについて、手引に例示はありません。⑧は「源泉徴収税額の計算に当たり控除した金額」とされており、20.42%で計算する場合は控除していないためです。実際に作成するときは、所轄の税務署に確認するのが確実です。なお、住民税の特別徴収は、申告書がなくても退職所得控除を使って計算します。地方税法第50条の6第2項(市町村民税分は第328条の6第2項)が、申告書の提出がないときも、退職手当等の金額について退職所得の計算規定を適用して計算した税額を徴収すると定めているためです(e-Gov法令検索:地方税法)。
他の退職手当等を同じ年に受けている人(③区分の中段)は、支払済みの退職手当等も合わせて控除額と税額を計算します。摘要欄に他の支払者の氏名・名称、支払金額、勤続年数、源泉徴収税額、特別徴収税額を書くことになっています。重複期間の考え方は国税庁のNo.2735に整理されています。確定拠出年金の老齢給付金の一時金がある人は、令和8年1月1日以後に支払を受けた一時金について、前年以前9年内の退職手当等との重複を見る扱いになりました。本年中に一時金を受ける場合は、前年以前19年内の退職手当等が対象になる扱いもあります。9年と19年の使い分けはこの記事では扱いません(10年ルールについては退職所得控除の10年ルールの解説があります)。
退職所得の源泉徴収票の摘要欄と番号欄の書き方
摘要欄は、手引の見本では空欄で、特例や通算があるときに書く内容を定めた欄です。番号欄は、令和8年分の様式で新しくできた欄で、退職手当等の種類が一般的なものでなければ番号を書きます。
番号欄(④)の1〜7
④番号の区分(令和8年分)
所得税法第31条により退職手当等とみなされる一時金(2を除く)
確定拠出型年金(DC)の老齢給付金として支払われる一時金
譲渡制限付株式(RS)の制限解除による経済的利益
ストックオプション(SO)の権利行使益
一般的退職手当等と3の経済的利益の合計
一般的退職手当等と4の経済的利益の合計
一般的退職手当等と3と4の経済的利益の合計
どれにも当たらない場合は空欄です。5〜7のときは、摘要欄に経済的利益の価額を書きます。
一般の会社の退職金は、番号欄が空欄になるケースがほとんどです。番号を書く場面として身近なのは、企業型DCや個人型DC(iDeCo)の老齢給付金を一時金で受け取ったときの「2」でしょう。
摘要欄(⑩)に書く7つの事項
手引では、摘要欄に書く内容を(1)から(7)まで示しています。(2)は⑨に書いた勤続年数の計算の基礎で、見本は就職・退職の年月日が欄に入っているため空欄です。残りは特例や通算があるときの記載です。
- ④番号が5〜7のとき、その経済的利益の価額
- ⑨勤続年数で書いた勤続年数の計算の基礎
- 短期退職手当等・特定役員退職手当等が含まれるとき、その金額、短期勤続年数または特定役員等勤続年数と、その計算の基礎(勤続期間に重複があるときは重複勤続年数も)
- 申告書に令和8年中に受けた他の退職手当等がある旨の記載があるとき、その支払者の氏名・名称、支払金額、勤続年数、源泉徴収税額、特別徴収税額
- 他の支払者の下で勤務した期間や、前の退職手当等の計算の基礎とした期間を今回の計算に含めたとき、その旨と期間、控除した金額の計算の基礎
- 令和8年中の退職手当等の勤続期間の一部が、令和4年から令和7年までに受けた退職手当等の勤続期間と重複しているとき、その旨と重複期間、収入金額、控除した金額の計算の基礎
- 障害者になったことで退職し、100万円を加算した控除を受けた人は「(障)」の表示
見落としやすいのは(7)の「(障)」の表示です。このほか、⑥の未徴収税額も摘要欄に書くと手引の注記にあります(7つの事項とは別の扱いです)。自社のケースに特例が絡むかどうかは、退職者から受け取った申告書の内容を見て判断します。
退職所得の源泉徴収票と特別徴収票の違い|住民税の特別徴収
退職所得の源泉徴収票と特別徴収票は、同じ様式です。1枚の様式の中に、国税の源泉徴収税額(⑥)と地方税の特別徴収税額(⑦)の両方があり、税務署に出すものを「源泉徴収票」、市区町村に出すものを「特別徴収票」と呼んで区別します。違いは、提出先と提出期限の扱いだけです。
⑦に書く住民税の特別徴収税額は、総務省と自治体の案内では次のように計算します。退職所得の金額((収入金額-退職所得控除額)×1/2。千円未満切捨て)に、市町村民税6%と道府県民税4%を掛け、それぞれ100円未満を切り捨てます。江東区の計算例(退職手当等14,223,632円、勤続25年)では、退職所得控除額1,150万円、退職所得の金額1,361,000円、特別区民税81,600円、都民税54,400円です。住民税の退職所得には、基礎控除や扶養控除などの所得控除はありません。納付は徴収した月の翌月10日までで、納付先は退職手当等の支払を受けるべき日の属する年の1月1日現在の住所がある市区町村です(総務省、江東区)。
退職時の給与から住民税の残りを一括で徴収する手続と、転職先や退職先に出す給与所得者異動届出書の書き方は、この退職所得の特別徴収とは別の話です。それぞれ別の記事で扱います(公開後にリンクします)。
受け取った退職所得の源泉徴収票の見方と確定申告
退職所得の源泉徴収票を受け取ったら、まず③区分と⑥源泉徴収税額を見ます。下段(20.42%)になっていて、申告書を出すつもりだったなら、確定申告で精算する必要があります。上段で、⑤支払金額から⑧退職所得控除額を引いた額の半分に速算表をあてはめて、⑥と一致していれば、退職金の源泉徴収で課税は完結するのが一般的です。
手引にも、所得税の確定申告書を提出する場合は退職所得の金額を含めて申告する必要があるため、受給者に周知してほしいという注記があります。給与所得や副業の所得と合わせて確定申告をする年は、退職所得の源泉徴収票を手元に残しておいてください。個別の状況での要否は、税務署や税理士に確認することをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
- 退職所得の源泉徴収票は、いつまでに誰に渡せばよいですか?
-
退職手当等を支払った人(会社など)が、退職後1か月以内に、提出範囲にかかわらずすべての受給者へ交付します。令和8年分からは税務署にも全受給者分を提出し、期限は退職後1か月以内です。令和8年中に退職した人の分をまとめて、令和9年2月1日までに出しても差し支えないとされています(国税庁の手引)。
- 退職金が退職所得控除額以内で、源泉徴収税額が0円でも源泉徴収票は必要ですか?
-
必要です。令和8年分の手引では、提出範囲は令和8年中に支払が確定した退職手当等のすべてとされ、受給者への交付も全員が対象です。税額が0円でも、支払金額・退職所得控除額・勤続年数などを記載して作成します。
- 退職所得の源泉徴収票と特別徴収票は別の書類ですか?
-
様式は同じで、1枚に所得税と住民税の両方の欄があります。税務署に出す分を源泉徴収票、市区町村に出す分を特別徴収票と呼びます。市区町村提出用は、eLTAXによる提出方法が整備されるまでの間、作成・提出を省略できます。受給者交付用は省略できません。
- 勤続年数の端数はどう扱いますか?
-
勤続期間に1年に満たない端数があるときは、1年に切り上げます。たとえば19年8か月なら20年として、退職所得控除額を40万円×20年=800万円と計算します。勤続年数が2年以下でも、退職所得控除額は最低80万円です。
- 申告書をもらっていない人の源泉徴収票はどう書きますか?
-
③区分は下段を使い、支払金額に20.42%を掛けた額を源泉徴収税額として書きます。この場合の⑧退職所得控除額の書き方は手引に例示がないため、所轄の税務署に確認してください。本人は確定申告で精算できます。
退職所得の源泉徴収票の書き方まとめ
申告書があって他の退職手当等がなければ上段、あれば中段、申告書がなければ下段(20.42%)です。
端数は1年に切り上げ、控除額は40万円×年数(最低80万円)または800万円+70万円×(年数-20年)、課税退職所得金額は千円未満切捨てです。短期退職手当等と特定役員退職手当等は計算が変わります。
⑤⑥⑦は円、⑧は万円、⑨は年です。摘要欄と番号欄は、特例があるときだけ書きます。
令和8年分から、税務署提出は全受給者分です。受給者交付用は全員に渡します。
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