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「1万円未満の領収書ならインボイスは要らないと聞いたけど、うちの会社は対象なんだろうか」「1商品ずつ見るのか、1回の会計ずつ見るのかで結果が変わってしまう」——少額特例(一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置)は、要件を満たせば1万円未満の課税仕入れを帳簿の保存だけで仕入税額控除できる便利な経過措置ですが、判定を1つ間違えると本来必要な適格請求書(インボイス)の保存を欠いたまま申告してしまうリスクがあります。本記事では、国税庁のインボイス制度に関するQ&A(問111・問112)を一次ソースとして、①自社が少額特例の対象になるかを判定する自動ツール、②「1万円未満」を1商品ごとでなく1回の取引の合計額(税込み)で判定するフローチャート、③経過措置の期限カレンダーの3点を内蔵して整理します。
📌 この記事でわかること
- 少額特例の対象者要件(基準期間の課税売上高1億円以下、または特定期間の課税売上高5,000万円以下)と、基準期間・特定期間の意味
- 基準期間・特定期間の課税売上高を入力するだけで適用可否と残り適用期間を判定する内蔵ツール
- 「1万円未満」は1商品ごとではなく1回の取引の税込合計額で判定する仕組みと、国税庁Q&A問112の例①②③をそのまま試せる判定シミュレーター
- 少額特例の適用期間(令和5年10月1日〜令和11年9月30日)を可視化した期限カレンダー
- 令和11年10月の少額特例終了後に何を準備すべきか(区分記載請求書等保存方式との違い・インボイス保存への移行)
少額特例とは?1万円未満の課税仕入れが帳簿だけでOKになる経過措置
少額特例(正式名称は「一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置」)とは、要件を満たす事業者が、1回の取引につき税込1万円未満の課税仕入れを行った場合に、適格請求書(インボイス)を保存しなくても、一定の事項を記載した帳簿の保存だけで仕入税額控除を受けられる経過措置です。
ぜいむたん


国税庁のインボイス制度に関するQ&A 問111では、少額特例について次のとおり回答しています。
「基準期間における課税売上高が1億円以下又は特定期間における課税売上高が5千万円以下である事業者が、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に国内において行う課税仕入れについて、当該課税仕入れに係る支払対価の額(税込み)が1万円未満である場合には、一定の事項が記載された帳簿のみの保存により、当該課税仕入れについて仕入税額控除の適用を受けることができる経過措置(少額特例)が設けられています(28年改正法附則53の2、改正令附則24の2①)。」


ポイントは「基準期間1億円以下」又は「特定期間5,000万円以下」のいずれかを満たせば対象になるという点です。基準期間とは個人事業者ならその年の前々年、法人ならその事業年度の前々事業年度を指し、特定期間とは個人事業者ならその年の前年1月1日から6月30日まで、法人ならその事業年度の前事業年度開始の日以後6か月の期間を指します(消法2①十四、消法9の2④)。多くの中小企業・個人事業主が対象に含まれる設計です。
少額特例の適用可否判定ツール(基準期間・特定期間の課税売上高を入力)
自社が少額特例の対象になるかどうかは、基準期間の課税売上高と特定期間の課税売上高の2つを入力すれば判定できます。どちらか一方が要件を満たせば適用可能です。下のツールに実際の数値を入れて確認してみてください。
初期値(基準期間3,000万円・特定期間1,500万円)で試すと、基準期間が1億円以下のため「判定結果:適用可」と表示されます。基準期間・特定期間ともに要件を1円でも超えると「適用不可」に切り替わります(境界値の挙動は本記事末尾の検算メモのとおり確認済みです)。






「1万円未満」は1商品ごとではなく1回の取引の合計額で判定する
少額特例で最も誤解されやすいのが「1万円未満」の判定単位です。結論から言うと、1商品ごとの金額ではなく、1回の取引の課税仕入れに係る金額(税込み)で判定します。国税庁のインボイス制度に関するQ&A 問112にはこう明記されています。
「『課税仕入れに係る支払対価の額が1万円未満』に該当するか否かについては、一回の取引の課税仕入れに係る金額(税込み)が1万円未満かどうかで判定するため、課税仕入れに係る一商品ごとの金額により判定するものではありません。」


判定フローチャート:1回の取引の税込合計額で見る






「1万円未満」判定シミュレーター(国税庁Q&A問112の例で試せる)
初期値の9,999円で試すと「少額特例の対象」と表示されます。ちょうど10,000円を入力すると「未満」に該当しなくなるため「対象外」に切り替わります。国税庁Q&A問112の例②(5,000円と7,000円の商品を同時購入・合計12,000円)を入力すると「対象外」、例③(1回8,000円のクリーニングを別々に精算)はそれぞれ「対象」と表示され、原文の例示と一致することを確認済みです。
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確定申告・記帳の手間そのものを減らしたいなら
少額特例の対象・対象外の判定に加え、日々の記帳や確定申告の作業まで自動化したい方には「マネーフォワード クラウド確定申告」がおすすめです。銀行口座・クレジットカードの明細を自動取込みし、インボイス番号の管理にも対応しています。
マネーフォワード クラウド確定申告を見る →少額特例の適用期間はいつまで?経過措置の期限カレンダー
少額特例が使えるのは、令和5年(2023年)10月1日から令和11年(2029年)9月30日までに行う課税仕入れに限られます。国税庁Q&A問111にも「令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に国内において行う課税仕入れについて」と明記されており、恒久的な制度ではなく期限付きの経過措置である点に注意が必要です。
| 時期 | 少額特例の取り扱い |
|---|---|
| 〜令和5年9月30日 | 少額特例の対象外(インボイス制度導入前) |
| 令和5年10月1日〜令和11年9月30日 | 要件(基準期間1億円以下 又は 特定期間5,000万円以下)を満たす事業者は、税込1万円未満の課税仕入れを帳簿のみの保存で仕入税額控除できる |
| 令和11年10月1日〜 | 少額特例は終了。1万円未満の取引であっても原則どおり適格請求書等の保存が必要になる |
税理士法人での実務では、経過措置の期限を見落として制度終了後もインボイス保存を省略してしまう相談を受けることがあります。少額特例はあくまで時限的な軽減措置であり、令和11年10月以降は仕入税額控除の要件が原則どおりに戻る点を、社内の経理フローやマニュアルに明記しておくことをおすすめします。






公共交通機関特例との違い・混同しやすい他の経過措置
少額特例と混同されやすいのが、3万円未満の公共交通機関による旅客の運送についてインボイスの保存を不要とする「公共交通機関特例」です。国税庁Q&A問112では、少額特例における1万円未満の判定単位の考え方が「公共交通機関特例における『3万円未満の公共交通機関による旅客の運送』の判定と同様」であると説明されています。どちらも「1回の取引の金額」で判定する点は共通していますが、金額基準(1万円未満か3万円未満か)と対象取引(課税仕入れ全般か公共交通機関の運送に限るか)が異なるため、混同しないよう注意してください。
出張旅費等特例との違い
出張旅費規程に基づいて支給する出張旅費・宿泊費・日当等についても、通常必要と認められる範囲であれば帳簿のみの保存で仕入税額控除できる「出張旅費等特例」という別の制度があります。こちらは少額特例のような事業規模の要件や1万円未満という金額基準がなく、対象も出張旅費関係に限定される点が異なります。あわせて整理したい場合は、【2026年版】出張旅費規程と日当で節税×インボイス「出張旅費等特例」|帳簿のみで仕入税額控除する方法で解説しています。
帳簿に記載すべき事項と保存の実務ポイント
少額特例の適用を受ける場合でも、帳簿には通常の仕入税額控除に必要な事項(課税仕入れの相手方の氏名又は名称、取引年月日、取引内容、対価の額)を記載する必要があります。注意したいのは、国税庁Q&A問111の(注4)にあるとおり、帳簿に「経過措置(少額特例)の適用がある旨」をあえて記載する必要はないという点です。特別な注記を追加しなくても、通常の記帳ルールに従っていれば問題ありません。






経理現場でよくあるつまずき
監査法人・税理士法人で多くの中小企業の申告に関わった経験から言うと、少額特例まわりで実際につまずきやすいのは次の3点です。
- 特定期間の課税売上高を「納税義務の判定」と同じ感覚で給与支払額の合計額に置き換えてしまう誤り(少額特例の判定では給与支払額への代替は認められていません)
- 月末にまとめて発行される請求書の合計額で「1万円未満」を判定してしまう誤り(複数の取引をまとめた単位での判定は認められません)
- 少額特例の対象外だった取引について、うっかり帳簿のみで処理してしまい、インボイス保存を欠いたまま仕入税額控除を計上してしまう誤り
チェックリスト:少額特例を正しく適用するための手順
自社の基準期間・特定期間の課税売上高を確認する
本記事の判定ツールに入力し、少額特例の対象になるかを確認します。
取引ごとに「1回の取引の税込合計額」を確認する
1商品ごとではなく、1枚の請求書・納品書として精算される単位で税込1万円未満かどうかを見ます。
1万円以上の取引はインボイスを保存する
少額特例の対象外となる取引については、原則どおり適格請求書等の保存が必要です。
令和11年9月30日の期限を経理マニュアルに明記する
少額特例は時限措置のため、終了時期を社内の経理ルールに残しておきます。
会計ソフトでの記帳・インボイス管理を効率化するには
少額特例の対象取引と対象外取引が混在すると、手作業の記帳では区分ミスが起こりやすくなります。freeeやマネーフォワードなどの会計ソフトを使うと、取引を自動で取り込みつつ、インボイス番号の有無や仕入税額控除の区分をあわせて管理できるため、少額特例の対象・対象外を混同しにくくなります。日々の記帳から確定申告までを効率化したい方は、下記の会計ソフト比較もあわせてご覧ください。
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日々の仕訳・帳簿管理から自動化するなら
少額特例の対象・対象外の区分や、仕入税額控除の要件を満たす帳簿記載を毎回手作業で行うのは負担が大きいものです。「マネーフォワード クラウド会計」なら、銀行口座・カード明細の自動取込みと仕訳の自動化で、日々の帳簿づけの手間とミスを減らせます。
マネーフォワード クラウド会計を見る →よくある質問(FAQ)
- 少額特例は消費税の届出書を提出しないと使えませんか?
- いいえ、少額特例の適用にあたって事前の届出書提出は不要です。基準期間・特定期間の課税売上高の要件を満たしていれば、該当する課税期間において自動的に適用対象になります。ただし要件を満たすかどうかの確認・記帳は自社で行う必要があります。
- 基準期間と特定期間、どちらか一方だけ満たせば少額特例は使えますか?
- はい。国税庁Q&A問111のとおり「基準期間における課税売上高が1億円以下又は特定期間における課税売上高が5千万円以下」と「又は」で規定されているため、どちらか一方の要件を満たせば少額特例の対象になります。
- 1万円未満かどうかは税込・税抜どちらで判定しますか?
- 税込金額(支払対価の額)で判定します。国税庁Q&A問111・問112ともに「支払対価の額(税込み)が1万円未満」と明記されており、税抜金額での判定ではありません。
- 月まとめの請求書で複数の取引の合計が1万円未満なら少額特例を使えますか?
- 使えません。国税庁Q&A問112の(注)にあるとおり、月まとめ請求書のように複数の取引をまとめた単位で判定することはできず、あくまで実際の1回の取引ごとに1万円未満かどうかを判定する必要があります。
- 少額特例が終了する令和11年10月以降はどうなりますか?
- 令和11年10月1日以降に行う課税仕入れについては、少額特例は適用されなくなり、税込1万円未満の取引であっても原則どおり適格請求書(インボイス)等の保存が仕入税額控除の要件になります。制度終了前に、取引先が適格請求書発行事業者かどうかの確認や、少額な取引でもインボイスを受け取る運用に切り替えておくことをおすすめします。
まとめ:少額特例は「事業規模の要件」と「1回の取引での判定」の2点を押さえる
対象者要件を確認する
基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下のいずれかを満たしているかを判定ツールで確認します。
「1万円未満」を1回の取引の税込合計額で見る
1商品ごとの金額ではなく、1枚の請求書・納品書として精算される単位で判定します。
適用期間(令和5年10月1日〜令和11年9月30日)を経理ルールに明記する
時限措置であることを踏まえ、制度終了後のインボイス保存への移行を早めに準備します。



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