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雇用保険料の計算式そのものは「賃金総額×料率」だけです。にもかかわらずエクセルで組むと合わなくなるのは、1円未満の端数処理が四捨五入ではないからです。給与から天引きする場合、50銭ちょうどは切り捨てます。四捨五入で組んだシートは、この一点だけで従業員ごとに1円ずれます。
本記事では、令和8年度の料率を厚生労働省のリーフレットで確認したうえで、ブラウザ上で動く自動計算ツールと、エクセルにそのまま貼れる数式を用意しました。源泉控除用と現金払い用で式が違う理由まで、厚労省の原文に当たって説明します。
📌 この記事でわかること
- 令和8年度の雇用保険料率(一般13.5/農林水産・清酒製造15.5/建設16.5・いずれも1,000分比)と、令和7年度からの引き下げ幅
- 総支給額と事業の種類を入れるだけで労働者負担・事業主負担が出る自動計算ツール
- エクセルにそのまま貼れる数式(源泉控除用・現金払い用の2種類)
- 端数が50銭ちょうどのとき、天引きと現金払いで金額が1円変わる理由
- 賃金総額に含めるもの・含めないものの判定表
- 月々の給与計算と年度更新で端数処理のルールが違うこと
雇用保険料の計算式|賃金総額×料率で出したあとが本題
雇用保険料のうち従業員から預かる分は、その月の賃金総額(総支給額)に被保険者負担分の料率を掛けて計算します。厚生労働省の年度更新パンフレットも「被保険者の賃金総額(総支給額)に被保険者負担分雇用保険料率を乗じて算定し」と書いています。社会保険料のように標準報酬月額を使わないので、残業代が増えた月は保険料も増えます。
ぜいむたん


賃金総額に含めるもの・含めないもの
ここを取り違えると、料率が正しくても金額が合いません。判断に迷いやすいものを並べます。
| 含める | 含めない |
|---|---|
| 基本給・家族手当・役職手当 | 退職金 |
| 通勤手当(非課税分も含む) | 結婚祝金・弔慰金などの恩恵的給付 |
| 時間外手当・深夜手当 | 出張旅費・宿泊費などの実費弁償 |
| 賞与(賞与の支給月に合算) | 休業補償費 |
| 住宅手当 | 役員報酬(従業員兼務役員の従業員分を除く) |
税理士法人で給与計算を受託していた頃、最も多かった誤りがこの通勤手当でした。所得税の計算で非課税欄に分けている流れのまま、雇用保険料の計算基礎からも外してしまうパターンです。定期代を6か月分まとめて支給した月は差額が大きくなります。
令和8年度の雇用保険料率|一般の事業は13.5/1,000へ引き下げ
令和8(2026)年4月1日から令和9(2027)年3月31日までの料率は、厚生労働省『令和8(2026)年度雇用保険料率のご案内』のとおりです。失業等給付等の保険料率が労使とも引き下げられ、一般の事業は合計14.5/1,000から13.5/1,000になりました。






| 事業の種類 | 労働者負担 | 事業主負担 | 合計(令和8年度) | 参考:令和7年度 |
|---|---|---|---|---|
| 一般の事業 | 5/1,000 | 8.5/1,000 | 13.5/1,000 | 14.5/1,000 |
| 農林水産・清酒製造の事業 | 6/1,000 | 9.5/1,000 | 15.5/1,000 | 16.5/1,000 |
| 建設の事業 | 6/1,000 | 10.5/1,000 | 16.5/1,000 | 17.5/1,000 |


園芸サービス・酪農などは「一般の事業」の率
同リーフレットの注記により、園芸サービス、牛馬の育成、酪農、養鶏、養豚、内水面養殖および特定の船員を雇用する事業は、農林水産の事業ではなく一般の事業の率が適用されます。農業だから15.5、と機械的に判断すると誤ります。
【自動計算】雇用保険料シミュレーター
総支給額と事業の種類を入れると、労働者負担・事業主負担・合計が出ます。端数処理の方法も切り替えられるので、天引きと現金払いで金額が変わるケースをその場で確認できます。
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給与計算シートに組み込むなら、次の2つの式を使い分けます。A2セルに総支給額、B2セルに料率(一般の事業の労働者負担なら0.005)が入っている前提です。






源泉控除(天引き)する場合の数式
=MAX(0,ROUNDUP(ROUND(A2*B2,3)-0.5,0))
0.5を引いてから切り上げることで、「端数が50銭以下なら切り捨て、50銭1厘以上なら切り上げ」と同じ結果になります。内側のROUND(…,3)は厘(小数第3位)までで丸め、浮動小数点の誤差で50銭ちょうどの判定がぶれるのを防ぐためです。
外側のMAX(0,…)は省略しないでください。エクセルのROUNDUP関数は「0から離れる方向」に丸めるため、総支給額が0円の行や100円未満の行ではROUND(A2*B2,3)-0.5がマイナスになり、ROUNDUP(-0.5,0)が-1を返します。退職者・休職者・未入社の空行がある給与シートでは実際に起きるので、0で下限を切っておきます。
被保険者が現金で支払う場合の数式
=ROUND(A2*B2,0)
こちらは「50銭未満は切り捨て、50銭以上は切り上げ」なので、通常の四捨五入と一致します。エクセルのROUND関数は0.5を切り上げる仕様なので、そのまま使えます。
1円ずれるのはこの1ケースだけ
2つの式が食い違うのは、端数がちょうど50銭になったときだけです。一般の事業(0.005)なら、総支給額を200で割った余りが100円になるときです。300,100円・300,300円・300,500円……と、200円おきに現れます。
| 総支給額 | ×5/1,000 | 源泉控除(天引き) | 現金払い |
|---|---|---|---|
| 255,935円 | 1,279.675円 | 1,280円 | 1,280円 |
| 300,000円 | 1,500.000円 | 1,500円 | 1,500円 |
| 300,100円 | 1,500.500円 | 1,500円(切り捨て) | 1,501円(切り上げ) |
| 300,200円 | 1,501.000円 | 1,501円 | 1,501円 |
| 300,300円 | 1,501.500円 | 1,501円 | 1,502円 |


計算シートの作り方|5ステップ
料率を数式に直書きすると、年度が変わったときに全員分を書き換えることになります。料率は必ず別セルに置いてください。






「設定」シートに事業の種類ごとの労働者負担率・事業主負担率を置きます。令和8年度の一般の事業なら0.005と0.0085です。
通勤手当を含めた総支給額です。非課税通勤手当を別列にしている場合は、合算した列を作ってから参照します。
天引きなら =MAX(0,ROUNDUP(ROUND(総支給額*料率,3)-0.5,0)) を入れます。料率は設定シートを絶対参照にします。
月次では概算です。年度更新で確定保険料を計算するときに、賃金総額の合計から計算し直します。
毎月の控除額を累計しておくと、年度更新時に申告した保険料との差を月単位で追えます。
よくある間違い3つ






間違い1:料率の切替を「4月分の給与」で判断する
新しい料率は令和8年4月1日から適用されます。判断の基準になるのは賃金を支払う日です。3月締め4月払いの給与は、対象期間が3月でも4月1日以後に支払うのであれば新料率で計算します。締め日で判断すると1か月ずれます。
間違い2:年度更新でも1円単位で足し上げる
年度更新の確定保険料は、毎月の控除額を合計するのではなく、年間の賃金総額に料率を掛け直して計算します。厚生労働省のパンフレットも、労災保険と雇用保険の算定基礎額が同額の場合は「別々に計算して切り捨てるのではなく、両保険の算定基礎額の合計を両保険の料率の合計に乗じ、その後切り捨ててください」としています。月次の積み上げとは必ず端数分がずれます。
間違い3:64歳以上を免除のまま計算している
かつて存在した高年齢労働者(64歳以上)の保険料免除は、令和2年度に廃止されています。現在は年齢にかかわらず、被保険者であれば保険料がかかります。古いテンプレートを使い回していると、この分岐が残っていることがあります。
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- 賞与からも雇用保険料を引きますか?
-
引きます。雇用保険料の計算基礎は標準報酬月額ではなく賃金総額なので、賞与も労働の対償として支払われる以上は対象です。社会保険料のように賞与用の別料率があるわけではなく、月給と同じ料率をそのまま掛けます。端数処理も同じルールです。
- 端数を切り捨てにするか切り上げにするか、会社で決めてよいですか?
-
厚生労働省のパンフレットは、原則を示したうえで「ただし、慣習的な取扱い等の特約がある場合には、この限りではありません」と注記しています。したがって労使の合意など特約がある場合は別の取扱いもあり得ますが、特約がないのであれば原則どおり、源泉控除は50銭以下切り捨て・50銭1厘以上切り上げで処理するのが安全です。個別の取扱いは所轄の労働局にご確認ください。
- 月々に預かった額の合計と、年度更新で納める額が一致しません。
-
一致しないのが通常です。月々の控除は1円未満を毎月端数処理しているのに対し、年度更新の確定保険料は年間の賃金総額にまとめて料率を掛けて計算するためです。差額が数十円から数百円の範囲であれば端数処理の累積によるもので、会社の負担として処理します。桁が違う差が出ている場合は、賃金総額に含める範囲を取り違えている可能性があります。
- 役員には雇用保険料がかかりますか?
-
原則として役員は雇用保険の被保険者になりません。ただし、部長など従業員としての身分を併せ持つ兼務役員で、労働者性が認められる場合には被保険者となることがあります。その場合の計算基礎は役員報酬部分を除いた従業員分の賃金です。判断はハローワークが行うため、兼務役員の届出とあわせてご確認ください。
まとめ|4月に見直す3つの手順
雇用保険料の計算は式が単純なぶん、端数処理と料率の切替という2か所にミスが集中します。逆に言えば、この2つを押さえたシートを一度作れば、あとは毎年4月に料率セルを書き換えるだけで回ります。
一般の事業なら労働者0.005・事業主0.0085です。4月1日以後に支払う給与から適用します。
=ROUND(…,0) のままなら、端数50銭ちょうどの月だけ1円多く控除しています。
所得税と違い、非課税分の通勤手当も賃金総額に含めます。定期代の一括支給月は特に影響が出ます。



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